【完結】氷狼魔術師長様と私の、甘い契約結婚~実は溺愛されていたなんて聞いていません!~

雨宮羽那

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エピローグ

68・氷狼魔術師長様と私の、甘い結婚①

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 アルフレッドが巻き起こした騒動から、しばらくの時が過ぎた。
 今日は、シリウス様と私の結婚式が行われる日だ。

 私は控え室の鏡の前で一人、ドレスを持ってきてくれるエリゼ様を待ちながら、心を落ち着かせていた。
 こんな晴れの日だというのに、静かにしているとどうしても考えてしまう。

 (……お義兄様)
 
 シリウス様の話によれば、アルフレッドは誘拐及び暴行未遂、攻撃魔術不正使用、横領の罪で、五年の禁固刑が言い渡される予定だという。
 
 義理とはいえ、身内がそれだけのことをしでかしてしまったことに胸が痛まないわけではない。
 けれどもそれ以上に、どこか胸の内が軽くなったのも事実だった。

 (私は、シリウス様と幸せになります)

 彼が刑期を終え、もし再び会うことがあったなら。
 私は胸を張って、自分の選んだ道は間違っていなかったと伝えたい。
 そして今度こそ、彼自身も幸せになれる道を見つけてほしい。
 私はそう願っている。

 私がそんなことを考えていると、控え室の扉がノックされた。

「セレフィア様、失礼しますよ」

 姿を現したのは、魔術裁縫師のエリゼ様だった。
 エリゼ様の後ろにはマーサもいる。
 
「エリゼ様……!」

「ドレスを持ってまいりました」

 エリゼ様は私の近くまでやってくると、軽く指を動かした。
 ふわりと空気が揺れ、純白のドレスが宙を舞うようにして現れる。

「わぁ……」
 
 少し前に、エリゼ様とデザインを決めたウェディングドレス。
 試着の段階でも美しかったが、完成品は息を飲むほどだ。
 裾が花びらのように幾重にも重なり、光を受けて淡くきらめいている。

「あたくしが願いを込めて魔術を織り込みましたわ。どうか、セレフィア様とシリウス様の未来に、幸多からんことを」

「エリゼ様……ありがとうございます」

 瞳を伏せて祈るように話すエリゼ様に、私の胸がじんと熱くなる。

「さぁ、着替えましょうか。今日はあなたとシリウス様が主役ですもの。とびっきり綺麗にして差し上げますわ」

「わたくしもお手伝いいたします!」

 エリゼ様に続いて、マーサも張り切った様子で声を上げる。
 エリゼ様とマーサの手際は見事なもので、あっという間にメイクにヘアアレンジ、着替えが整っていく。

「セレフィア様、とてもお綺麗ですわ」

「ええ本当に! 旦那様がご覧になったら、以前よりもさらに真っ赤になりそうなくらいですわ!」

「そ、そう……?」

 鏡に映る自分の姿をじっと見つめる。
 このドレスを試着したあの日、私は『シリウス様の隣に、自信を持って立ちたい』と願った。

 (……きっと、大丈夫)
 
 今ならば、胸を張ってシリウス様の隣に立てる気がする。
 それはきっと、シリウス様からたくさんの気持ちをもらったからだ。

 
 支度を終え式場へ向かっていると、廊下の途中でシリウス様が待っていた。
 深い紺のタキシードに身を包み、銀の髪を整えた姿はまるで絵画のように美しい。
 元々整った造形がさらに際立って見えた。

「……セレフィア」

 私の姿を見た瞬間、シリウス様はわずかに目を見開く。
 それから視線を逸らし、小さく息を整える。

「シリウス様……?」

 見上げると、シリウス様の顔はほんの少し赤く染まっていた。
 まるで、試着をしたあの日のようだ。
 あの日、シリウス様は「耐えることができない」と言って私から逃げていった。
 けれど、今日は逃げることなく真っ直ぐに私を見つめた。

「……綺麗です。私はとても、幸せだ」

 シリウス様は、まるで幸せを噛み締めるように呟いている。

「……ありがとう、ございます」

 私だって、幸せだ。
 この人の隣に立てる今日が、目がくらみそうなほどに。
 
「行きましょうか、セレフィア」

「はい」

 差し出されたシリウス様の腕を取る。

 式場の扉が開くとたくさんの視線が一斉に私たちへ向けられた。

「セレフィア~! めっちゃ綺麗だよ~!」

 アリスは席に座ったまま、抑えきれない喜びを込めて小さく手を振ってくれている。

 マーサとオリバーは、穏やかな微笑みをうかべていた。
 事務室の同僚たちも、口々に祝福の言葉をくれる。
 国王陛下と王妃殿下も、静かに席から見守っていてくださっている。

  義両親は……どうしても都合が合わなかったようで、出席することが叶わなかった。
 その代わりに、花束と手紙が届けられていた。
 『どうか幸せに』という短い手紙。
 今までの彼らの私への言動を考えれば少々不気味ではあるが……。もし、彼らに良い変化があったのなら、それはいいことなのだろう。

 (私は、幸せです)

 多くの人たちから祝福を受けながら、私とシリウス様は、誓いの言葉を交わした。


 やがて式が終わり、披露宴も賑やかに幕を閉じた。
 笑顔と祝福に満ちた一日が、ゆっくりと夜へ向かっていく。

 そしてその夜。
 屋敷に戻ると、シリウス様が静かに私へ向き直った。

「セレフィア」

「はい?」

「眠る前に私の部屋へ来てください。あなたに話したいことがあります」

 シリウス様の声音は、落ち着いていていつもと変わらない。
 けれど、どこか真剣な色があった。

 (話したいこと……?)

 一体どんな話だろう。
 式の余韻に心がまだ浮ついている。
 私はただ素直に頷いた。

「わかりました。あとでうかがいます」

 

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