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第1章
9・神様再び①
しおりを挟む私にあてがわれたというこの部屋を一通り案内すると、ジェラルドは部屋を出て行った。
といっても、この部屋の外には控えているとのことだ。
彼は、私を守るという役目を与えられた騎士らしいから。
多分だけど、私に一人になる時間をくれたんだろう。
その気遣いが、たまらなくありがたい。
あまりにも一気にさまざまなことが起きたせいで、私の頭の中はもうぱんぱんだった。
整理できる時間がようやくできて、少しは今の状況が理解できるようになるだろう。多分!
「それにしても、すごい部屋……」
くるり、と改めて部屋を見渡してみる。
ここはまるで、お金持ちが住んでいるお屋敷か何かのようだ。もしくは超高級ホテル。
見晴らしの良い立派なバルコニーに、質の良さそうな調度品。奥にはお姫様が寝るような天蓋付きのベッドまである。
――私、ただの女子高生で、神子でもなんでもないのに。
私は恐る恐るベッドに座ってみた。
うわすごい。超ふかふか。
こんな豪華な部屋を使わせてもらって、本当に良いのだろうか。
あまりにも高待遇すぎて逆に不安になってくる。
夢かもしれないこの異世界に来てから、少し時間が経った。少しだけど、分かったことがある。
ここは、ルチアナ聖王国という国で、この国はあの頭のおかしい神様を崇めているということ。
そしてこの神殿はあの神様を祀るためのもので、私は『神子様』という最上級に近い扱いを受けているっぽいこと。
現に、私に与えられたこの部屋は、オーシャンビューな高級ホテルの一室にしか見えない。部屋の中ににシャワーやトイレも備え付けてあったし、豪華だ。
いきなり現れた異世界の小娘が不審者扱いされないように環境を整えてくれたことには、あの神様に感謝してもいいかなとは思う。あの神様が全ての元凶なんだけども。
それから、ジェラルドは思いのほかにいい人だということが分かった。
正直、こちらが申し訳なくなるくらいのいい人だ。
優しいし、真面目そうだし、イケメンだし、高身長だし。はっきりいって非の打ち所がない。
だが、なんとなくではあるが近寄りにくさを感じる。というか、ただの女子高生が勝手に近寄ってもいい人なのかと思ってしまう。
それは、ジェラルドが完璧すぎるからなのかもしれない。
『ふむ……。確かにあの騎士はかなり有能な男だが、神である僕の方が完璧だと思わないか?』
「うわっ!」
考え込んでいた時に突然あの神様の声がして、私は思わず飛び上がった。
なになになに!? なんであの神様の声がするわけ!?
ここには神様の石像なんてないし、よく分からない真っ白な不思議空間でもない。
どこから声がしたのか、ときょろきょろ周りを見回せばとんでもないところに奴はいた。
神様だというのに、机の上にあぐらをかいている。
「あ、あんたねぇ! 行儀悪く机の上に座っててどこが完璧なのよ!」
ジェラルドから聞いた話のおかげもあって、せっかくこの神様のことを見直し始めていたというのに。
取り消しだ! 取り消し! やっぱりこの神様はとんでもない!
『い、いいだろう、別に! 僕は神様なんだから!』
「そういう問題じゃなーい! ていうか、なんでここにいるの!?」
てっきり、あの石像に神様の意思でも宿っているのかと思っていた。そうではないのだろうか?
『僕は神様だからね。どこにでも現れるさ』
神様はふふん、と得意げな様子だ。
自由にいつでもどこでも現れることができる?
げ……っ、それは勘弁して!
『君を心配して来てやったというのにその言い草はないだろう!? げ、とはなんだ! げ、とは!』
「……。ちょっと待って……?」
私、げっ! とは思ったけど、口には出していませんが……? まさか心の中まで読めるというのだろうか。
不審げな視線を神様に向ければ、神様はさらっとこともなげに答えた。
『ああ、もちろん君の心の中も読める。だって僕は神様だからね!』
「…………」
もう、ショックで返す言葉が見つからない。
最悪だ。最悪でしかない。
『そ、そんなに心が無になるほど感激しなくてもいいだろう……?』
「違うわよ……。あんたみたいな神様がいることが衝撃すぎて心が無なのよ」
『失礼な!』
「そもそもあんた、私の世界で何してたわけ? 遊んでたのよね?」
『それはそうだが、それにも深い事情があってだなぁ……!』
私のことを心配するも何も、すべての原因はこの神様じゃないか!
やっぱり一発殴らせてもらわないと気が収まらない。
神様とわーわー騒いでいると、突然外側から扉が乱暴に叩かれた。
あまりにも相手が強く叩いてくるものだから、私はついびくりと肩をはね上げてしまう。
「神子様! どうかなされましたか!? 神子様!」
ジェラルドだ。
扉の向こうで心配そうに叫んでいる声が聞こえてくる。
ていうか強く叩きすぎ! その勢いだと扉に穴が開くから!
「神子様! 何か不審者でも!? 今お助けに参ります!」
いや、不審者なのはあながち間違いじゃないのだけれども。
このままだと、ジェラルドの誤解がどんどん加速していく。
「ままま、待って待って待って!」
神様が私に不審者扱いされたことに憤って何か言っているが無視だ。それどころじゃない。
私は慌てて扉に駆け寄ると、今にも扉を蹴破ってきそうなジェラルドに制止の言葉をかけた。
「だ、大丈夫だから! 何もないから!」
「ですが……!」
なおも心配そうに声をかけてくるジェラルドに、私は「大丈夫だ」と重ねて言う。
「そうですか……。何かあればお呼びくださいね……?」
渋々ながらもどうにか引き下がってくれたジェラルドに、私はほっと息を吐き出した。
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