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第2章
26・気になる関係
しおりを挟む「まぁいいわ。この子に似合う服を選べばいいのね? 任せて頂戴」
「お願いします」
「え、え? ちょ……」
エミールさんが私の手をとる。
ひんやりとした薄い手のひらだ。
女性らしい華奢な腕の割には、私を掴む力が強い。まるで逃がさないとでも言うような……。
「じ、ジェラルド……!」
エルミナさんに強引に店の奥へと連れていかれながら、助けを求めるようにジェラルドを見る。
しかしジェラルドは、爽やかな笑顔で私に軽く手を振った。
「神子様、俺はここでお待ちしておりますね」
――そうじゃなくてえぇ!
◇◇◇◇◇◇
連れてこられた店の奥には、服飾店らしく様々な衣服が並べられてあった。
ぱっと見る限り女性ものの方が多いが、男性ものも置いてある。
繊細な刺繍が施されたワンピースや、ジャケット。小物類も売っているようで、ネックレスなども飾られている。
どれもこれも質が良い品物であろうことは、素人目にも明らかだった。
「ふふふふ……。若い女の子を着飾るのなんて久しぶりだわぁ……」
怪しげな笑みを浮かべてそう言っているが、エルミナさんだって若い方だと思う。
見たところ、ジェラルドよりは年上だろうが、30は超えていないだろう。
「あ、あの、お手柔らかにお願いします……」
嬉々とした様子で店の服を漁り始めたエルミナさんに、私は縮こまりながら声をかけた。
エルミナさんは、時折私の体に服を当て、また探しに戻るを繰り返している。
「あの……」
「なぁにー?」
私がそっと話しかけると、エルミナさんは服を探しながら返事をしてくれた。
「エルミナさんは、ジェラルドとどういうお知り合いなんですか?」
それは、この店に来た時から気になっていたことだった。
二人は美男美女だからお似合いではあるが、ジェラルドの態度からは恋人同士には思えない。
友だちなのだろうか? だが、それにもどこか違和感を感じる。
私の質問が思いもよらぬものだったのか、エルミナさんははぱちぱちと目を瞬かせた。
「あ! 別に無理に詮索するつもりじゃないんです! 何となく気になっただけで!」
エルミナの様子に私は慌てて言葉を付け足した。
会ったばかりの人間には話したくないかもしれない。無闇に聞き出そうとするほど、非常識な人間では無いつもりだ。引き際は心得ている。
そんな私の様子がおかしかったのか、エルミナさんは堪えきれないというように吹き出した。
「ぷ……っ。あははっ! 面白いわね、あなた」
「え、え?」
「あなた、ジェラルド様のことが気になるの?」
「い、いや、そういうわけじゃ……」
エルミナさんの言葉に私は動揺してしまう。
確かに、ジェラルドは文句なしにかっこいい。気になるかと聞かれれば、確かにいろいろな意味で気にはなる。
だけどそれは、年上の男性に優しくされることに慣れていないからついドキっとしてしまったり、近づきがたいような雰囲気の理由が気になるだけで……。
きっとエルミナさんが求めているであろう恋愛的な『気になる』ではない、と思う。多分。
「あら残念。ジェラルド様の片想いなのね」
「片想い……?」
私は思わず首を傾げた。
片想い?
それだと、ジェラルドが私のことを恋愛的な意味で気になっているようではないか。
「あらら……。しかも気づかれていないのか。これは大変ね」
「?」
一体エルミナさんは何の話をしているのだろう。
私がもう一度尋ねようとした時、衣服一式を渡された。
「ま、いいわ。あなたにはこれが似合うと思う。さ、着てきて頂戴」
「えっ?」
聞き返す間もない。
私は笑顔のエルミナさんに背を押され、フィッティングルームへ行くことになった。
結局、エルミナさんとジェラルドはどんな関係なのかは分からずじまいだった。
あんなふうにはぐらかされると、余計に気になってしまう。
友だちでもなさそうだし、恋人でもなさそう。
二人はどんな繋がりなんだろう。
それは私の心に、小さなさざ波を起こした。
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