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第3章
42・騎士様と花畑①
しおりを挟む翌日の昼過ぎ。
ジェラルドに連れられてやってきたのは、街を抜けた外れにある森だった。
街から離れるにつれ人気がどんどんと少なくなり、今はもう私たちの周囲には誰もいない。
「ジェラルド、花畑ってここにあるの?」
穴場で人が少ない、とジェラルドは言っていたが、こんな森の中に花畑があるのだろうか。
一応道は整備されていているようだが……。
道の両脇には深い緑の木々が生い茂り、頭上からは木漏れ日が降り注いでいる。
空気は澄んでいて、天気も良い。なんだか森林浴に来たような気分だ。
ジェラルドの先導のもと、森の中を歩いていく。
「ええ。リース家が管理している森があるそうですよ」
ジェラルドはこちらを振り返りながら言った。
「リース家?」
ってことは、エミールくんやエルミナさんの家ってことか。
「俺は女性の好むものが分からないので……実は、エルミナ嬢にここのことを教えてもらったんですよ」
「へ、へぇ……」
どうしてだろう。
ジェラルドからエルミナさんの話を聞くと、もやもやとしてしまう。
きっと、ジェラルドは私のためにエルミナさんにこの場所のことを聞いてくれた。
そう分かっているのに、なんだか自分の中に消化しきれないものが残ってしまう感じだ。
――結局、ジェラルドとエルミナさんってどういう関係なんだろう。
エミールくんから聞いた話を総合すると、ジェラルドとエルミナさんも六年前からの知り合いなのだろうか?
「神子様? どうかされましたか?」
ジェラルドの声に私ははっと顔を上げる。
こちらを見下ろすジェラルドは不思議そうな顔をしていた。
――ダメだ。今は考えるのをやめよう。
私が一人考えたところで、答えなんてでないのだ。
せっかく誘ってくれたのだから、ただ楽しみたい。
「あ、着いたみたいですよ、神子様」
ジェラルドの視線の方を見やれば、木々の隙間から青い花が溢れんばかりに咲き乱れていた。
「す、すごい……」
森の奥は開けた場所になっているようだった。一面に青い小花が咲いていて、さらにその奥には小川が流れている。
「綺麗……」
私はしゃがんで青い花を見つめた。
近づくと、花の香りをより強く感じる。
少し甘くて爽やかな香りだ。心地よい。
「ジェラルド、連れてきてくれてありがとう!」
私が振り向いてそう告げると、ジェラルドは嬉しそうに目元を緩めた。
「……あなたが喜んでくれたならよかった」
◇◇◇◇◇◇
「ね、ジェラルド。この花って摘んでも大丈夫かな?」
花畑に座り込んでしばらく青い花に見入ったあと、私は隣に座るジェラルドにそう尋ねた。
「エルミナ嬢からは自由にくつろいでいいと言われているので大丈夫だと思いますが……。持って帰られるんですか?」
ジェラルドの言葉に私は首を横に振る。
「それも素敵だけど……、花かんむりを作りたいなって!」
言いながら、私は数本青い花を摘んだ。
この青い花、見た目は私の世界のネモフィラという花によく似ている。茎が細長くてやわらかい。
眺めていて思ったが、実際に摘んでみるとやっぱり花かんむりを作れそうだ。
「花かんむり……ですか?」
「知らない? こう、お花で作った輪っかのことなんだけど」
茎を巻き付けながら、私はジェラルドに答える。
「小さい頃、よく友だちと一緒に作ったんだ」
「なるほど、そんなものがあるんですね。初めて知りました」
ジェラルドは私が花かんむりを作る様を興味深そうに見ていた。
そういえば、この騎士様はどんな子ども時代だったのだろう。あまり想像がつかない。
――ええい、聞いてしまえ。
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