【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那

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第4章

51・呪いの元凶

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「な、なんなの、あの国王様は……」

 国王様が部屋を出ていったあと、ソファに脱力してしまった。
 彼の言い分は、自分勝手だ。
 神様を呪い、力を奪ったのも、私がさらわれているのも、全てジェラルドに勝つためということか?

 ジェラルドは国王様について「あまり仲は良くないんです」と言っていたが、そんな可愛いレベルではない。
 下手をしなくても国王様は、ジェラルドのことを憎んでいるんじゃないだろうか。それくらいに兄弟仲がこじれていると感じた……。
 なまじ、長年屈折した思いを抱え続けていたせいもあるのだろう。

『いやぁ……随分とこじれた兄弟仲だなぁ』

 突如聞こえた、呑気な声。
 はっと顔を上げると、目の前に神様がふわりと浮いていた。
 近くで見た神様の姿は、やはりいつもよりも透けていて、揺らいでいるようだった。

「神様!?」

 思わず声を上げてしまって、私はすぐに口元を押さえ込んだ。
 何事か、と国王様がこの部屋に舞い戻って来ては困る。

「どうして肝心な時に助けてくれなかったの……! 話が違うじゃない!」

 私は声を潜めて神様に言った。
 この神様、「遠慮せずに呼びたまえ」だの「僕も君を守ろう」だの言ってくれていた気がするのだけど、あれは嘘だったのか。
 責めるように見つめる私に、神様は「ぐっ」と言葉に詰まっているようだった。

「し、仕方ないだろう! あの王が持っていた杖の気配にやられたんだ!」

「……杖?」

 確かに国王様が持っていた杖からは変な気配がした。それに、国王様自身からも。

『君の世界にはなかったのだろうが、この世界にはまじないというものが存在する』

 神様の言葉に、私は以前ニコラスやジェラルドと話したことを思い出していた。

 まじないとは、道具を使った呪詛のようなもの。
 術者の命を使うために、この国では禁忌とされている、と。

 確かジェラルドが、そう言っていたはずだ。

『よく覚えていたな』

 私の思考を読んだ神様が、驚いた様子で褒めてくれる。
 しかし、すぐに神様は表情を引き締めた。

『あの杖は呪具だ。あの国王は、杖を媒介に僕を呪ったんだ』

「……っ」

 神様本人の口から放たれたその事実に、どうしても衝撃を受けてしまう。
 国を守護している神様を、国を統治すべき国王が私情で呪うなど……。
 そんなことがあっていいのか。

「私は、どうしたらいい……?」

 気持ちとしては、神様を助けたいのだ。
 神様のことを助けたいと、ずっと願ってきた。
 だが、まじないとやらは私の世界にないし、対処法が分からない。
 あの杖を壊したらいいのだろうか……?

『いや……。一旦逃げた方がいいだろう。あの国王は、長くはもたない』

 ――長くはもたない?

 言葉の意味を捉えられなくて、私は眉をひそめてしまう。神様はどこか考えるような視線をしていた。

『まじないは、術者の命を使って行うものだ。国王は命の大半を使って僕を呪っている。……それに、国王は人の子だ。神の力は人の身に余る。そのうちに、力に乗っ取られるだろう』

 ――えーと、難しくてよく分からないけど……。

「このままここにいてもまずい?」

 理解しきれないまま尋ねると、神様はふむと顎に手を当てて考える素振りを見せた。

『……まぁ、そうだな。騎士もいない、まじないへの対処法もない、僕も君を助けられるか分からない。この状況で国王に挑むのは無謀ではないか?』

「確かに……」

 ジェラルドもいない、ニコラスもいない、土地勘もないし、知らない屋敷の中。この状況、私にとって圧倒的に不利だ。
 いくら神様の後ろ盾があるとはいえあてにはならないし、ただの16の小娘が国王陛下に対してどうにかできるとは思えない。

「でも、逃げるっていってもどうやって?」

 私は立ち上がると、扉の方へ近づいた。
 ドアノブを握って捻ってみるが、やはり外側から鍵をかけられているらしい。
 扉は開きそうにもなかった。

「ドアは開かないし、ここ二階だよ?」

 今度は窓の方へ近づいてみる。
 私の身長の二倍はあるだろう、背が高くて大きな窓ガラスだ。
 はめ殺し窓なのか、鍵も見当たらない。

『そのうち騎士が迎えに来るだろう。だがまぁ、いろいろ部屋を探ってみるのも悪くない』

「それはそうだね」

 私は神様の提案に頷くと、部屋の中を片っ端から漁ってみることにした。
 立派なお屋敷の一室だ。もしかしたら隠し扉の一つや二つ、あるかもしれない。

『隠し部屋があったら確かに面白いなぁ。今度ニコラスの夢に出て、作るよう言ってみようか』

「やめて」

 信心深いニコラスなら、神様がなにか頼めば嬉々として動きそうで怖い。

 神様とそんな会話しながら、私は自分の心が落ち着いていくのを感じていた。
 この変な神様でも、やはりいるだけで違う。
 あのまま一人だったら、どうしたらいいか分からなかった。
 神様が現れてくれて良かった、と心の片隅で思う。

『ふふん、そうだろう? 僕の存在に感謝するといい!』

「ちょ、人の心勝手に読まないでよ!」

 神様の読心の力は、考えただけで伝わるから便利ではあるが……少し恥ずかしいものがある。

 神様と軽口を叩きながら、私は窓の様子をもう一度確認した。
 窓の外はどんよりとした灰色の雲が広がっている。
 もしかしたら、雨でも降るかもしれない。
 

 
 

 
 
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