【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那

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第4章

53・逃走劇

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「……っい、いや……!」

 私は全身の体重をかけて、連れていかれるのを阻止しようと抵抗を試みる。
 よく分からないが、あの魔法陣の上にいってはまずい気がする。
 しかし私の必死の抵抗虚しく、国王様にずるずると引きずられていく。

『ま、待て、今ここで君の力を抜き取られるのはまずいぞ……!? その力は、君を元の世界に返すために貯めていた力なんだぞ!?』

 ――な、なんですって……!?

『それを取られたら僕も消えるし、君は帰れない! 詰むぞ!』
 
 神様の焦った声が聞こえる。
 私は自分の顔からさぁっと血の気が引いていくのを感じていた。
 神様が消えるのも嫌だし、私が帰る道を今ここで絶たれてしまうのは非常に困る!
 
「この力は、神様のもの。だから、あなたには渡せない……っ」

 私は最後のあがきとばかりに、私の腕を掴む国王様の手に思い切り噛み付いた。
 
「……っう!!」

 国王様が短く呻いた瞬間、私から手が離れる。
 その隙に、私はすぐさま国王様から距離をとった。

『逃げろ!』

 神様の声に導かれるようにして、私はすぐ後ろにあった扉へ飛びつく。

「待て……!」

 国王様の慌てた声が聞こえる。
 追いかけてくる気配を感じて、私は捕まってなるものかと駆け出した。
 
「……う、ごほっ」

 ――えっ。

 だが、突然聞こえてきた湿った咳に、反射的に振り向いてしまう。
 見れば部屋を出てすぐのところで、国王様が体を折り曲げて咳き込んでいた。
 手で口元を押えているが、咳がひどい。
 国王様の口元からは、たらりと血が垂れている……。
 
『早く走れ!』

「……っ」

 神様の声に、私はハッと我に返った。
 止まっていた足を、再度動かし始める。
 
「……っま、まて……っ」

 国王様が、弱っているであろう体を引きずって私を追いかけてきているのが音で分かった。だが、先程よりも声が弱々しい。
 
 血を吐いて咳き込んでいる人を放置して逃げるというのはなかなか心が痛む状況ではあるが、こちらとしては今しかチャンスがないのだ。それどころでは無い。逃げなくては。

 この屋敷へ連れてこられた時の道を思い出しながら、ただただ廊下をひた走る。
 と、視界に階下へ繋がる階段が入ってきた。
 二段飛ばしで駆け下りる。
 
 降りた先は、開けた場所だった。
 ここ、屋敷に来た時に見た覚えある!

 エントランスホールだ。目の前には、大きな重たい扉がある。
 私が外へ飛び出したその時、遠くの方から馬が駆けてきているのが見えた。

 あれは――。
 
「――イさま……。アオイ様……っ!」

「ジェラルドっ!?」

 ――助けに来てくれたのっ!?

 外までたどり着いたはいいものの、どこへ向かって逃げればいいのか分からなかったのだ。
 このタイミングでジェラルドが現れてくれるなんて、これほど感謝することはない。

 私もジェラルドに向かって駆け出す。
 目の前までやってきたジェラルドは、馬上から安心したようにほっと息をついていた。

「ご無事でよかった……!」
 
「ジェラルド、悪いんだけどすぐにここを出発させて! 国王様に追われてるの!」

「……っ!? 分かりました」

 ジェラルドは私の体をふわりと引き上げ、馬の上に乗せてくれた。
 まるで、私の体を抱き込むような体制だ。

「神子殿……!」

 後ろから聞こえてきた声に、走り出す馬上から私は振り返る。
 見れば、屋敷の扉にすがるようにして国王様が立っていた。

「この私から、逃げられると思うなよ……!」
 
「……っ」

 恐ろしい捨て台詞のような言葉が聞こえる。
 国王様の言葉に執念が宿っている気がして、私は体が震えるのを止められなかった。

「アオイ様。もう、大丈夫です。俺がいますから」

「ジェラルド……。ありがとう」

 私を落ち着かせるようにジェラルドが声をかけてくれる。
 背中から伝わる優しい温かさに、泣きたくなるほどほっとする。
 ジェラルドがそう言ってくれるなら、安心できる。

 私は走る馬の上で、ようやっと体の力を抜くことができたのだった。
 
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