12 / 19
12 会議
しおりを挟む
室内で可愛らしいアラームが鳴り、パソコンを操作していた不知火 亜美が手を止める。
「あらっ!もうそんな時間なのね」
人工知能用のアプリを作っていた彼女は、コンピュータ画面をテレビ会議に切り替えた。
会議には、既に50人以上がエントリーしている表示がされている。
「日本のメンバーは、あと一人来てないのね。またガールハントかしら?」
いつも遅いのは笹生だと相場が決まっている。欠席する事も多々ある男だ。
『時間なので、そろそろIHS会議を始めたいと思います。欠席者には同国人に伝達を頼みます』
今回の司会はアメリカのニューフェイスだ。
この辺りは交代制になっている。
ここで言う【IHS】とは、イギリスに長期滞在する旅行者が公共医療サービスを受けるのに必要な費用・・・・ではない。
【Intelligence Human Society/知的人間の集い】と言う御大層な名称の略だ。
日本では【イース】と呼んでいるが、いろんな意味で好ましいと思う者は少ない。
議長を兼ねた司会のアメリカのアルバート・スミスが、まず、発言する。
『各国の近況として最も大きい話題の一つが、【ネフィリムの宣戦布告】ではないだろうか?』
『そうね。主に、我々ニューフェイスの存在している国々で宣言されているけど、他にも人工過密な国で一般人の被害が出ているみたいね』
『(笑)』
『(笑)』
『(笑)』
一応、話題にあげているが、誰もが真剣に考えてはいない。
彼等ニューフェイス自身の被害が出ていないからなのかも知れない。
そもそも彼等も、人間の人口が多すぎると判断しているので、自分達に害が無ければと他人事なのだ。
『それぞれの国のニューフェイスが、ネフィリムの対処にあたっていると思うが、うまく政府のコントロールを行って欲しいと思う』
『政府は勿論だが、そのネフィリムのせいで、国民の後進国に対する風評が発生しはじめてるぞ』
『ネフィリムの援助国が不明なんだから、オールドタイプには敵意の向かう先が必要よね』
世論では、ニューフェイスの遺伝子情報が国連から与えられていても、それを活かす技術の無い後進国が、先進国の技術を奪って国民のニューフェイス化である【遺伝子治療】を行う為に、ネフィリムを作ったという噂が流れている。
ネットでの風評は抑制しているが、街頭演説や集会などは禁止する事ができない。
想像や妄想が盲信に変わり、真実の様に言い伝えられていく。
『その辺りは、工作員を潜入させたりして、わざと暴動や破壊活動をさせ、警察に抑制させるしかないよ』
『毎度ながらマッチポンプよね』
被害の無い解決方法は、ニューフェイス達にも思い付かなかったのか?
いや、犯罪者を増やす事により、ニューフェイス化の権利を剥奪する目的かも知れない。
ニューフェイスは、生きていくだけなら環境破壊をしなくても済む。
だが、【文明】を維持するには、いくらかの環境破壊をしなくてはならない。
現在までの文明が環境破壊で滅びへ向かっているのは、【環境破壊】と【環境の再生能力】のバランスが崩れているからだ。
その主な原因は、【人口数 × 環境破壊力 > 環境の再生能力】となっているからだと言える。
どんなにエコだリサイクルだと努力して環境破壊力を小さくしても、人口数が増えていた過去では、この公式が崩れなかった。
環境破壊力を小さくし、人口数を少なくすれば、文明を維持する上での環境破壊をしても自然は滅びない。
『情報共有は従来通り、例のAIで行う』
『あの、Linking interface & Logical intelligence searcherね』
日本語で言えば【同期 接続機器 と 論理的 創造性 探究者】となるのであろうか。
一般にも政府にも非公式非公開非公認のニューフェイスだけのデータ収集集積型人工知能だ。
今回の【ニューフェイスの標準化】は、各国のバラバラだったニューフェイス化情報を、このAIを介して【標準化】したものだった。
ニューフェイスの親達は、ニューフェイス計画の科学者なので、その名義を借りて【共同開発】として国連へと提出したのである。
実際、ある程度の制約内で遺伝子組み換えをしたとは言え、各国で違う開発をしていては、国単位で人間の能力差ができてしまうし、国際結婚も互換性が無くなってしまう可能性がある。
特に国連でも数の多い途上国からは、この【標準化】に賛同を受けた。
『途上国と言えば、【Newface Operation Aid/ニューフェイス化支援】の方は順調なのよね?』
標準化が決まってから、ニューフェイスの遺伝子情報は全世界に公表されたが、それを行うことのできる技術のある国は、限られている。
だが、それでは将来的にニューフェイスの国と、旧人類の国とで戦争が起きかねない。
そこで、国連とは別の非営利団体を用いて、途上国にニューフェイス化の支援を行う計画が、彼等によって進められていた。
『移動施設の準備も、アレ等の協力を得て順調だよ。ある団体を通して幾つかの国とは既に契約を終えている。勿論、【遺伝子審査】と称して数の制限もしているがね』
『実際に遺伝子の変質も増えてる時代だからね』
人間としての基本的な遺伝子だけではなく、家系特有の遺伝子にも異常が生じている人間が増えており、それらを残すと【親と似つかない子供】が生まれてしまう。
特に体外受精を行うニューフェイス化において親子が似つかないのは、子供の成長過程に悪い問題を生じる。
遺伝子操作を親が直接行うのではないので、親としては昔の【赤子の取り違え】と考えてしまうのだ。
『これが上手くいけば、【国同士の戦争】ではなく【国内での内乱】で物事が片付き、核や兵器による環境破壊も抑制できる』
国内で、行政や権力を握るニューフェイスと、ニューフェイス化できない者の対立であれば、デモやテロなどとして警察機構で抑制や処分ができる。
そうして、時間を掛けて国民数を環境に適した数まで調整できるだろう。
『後は、【調査継続中】となっている【火星移住計画】だが、やはり問題は地質調査か?』
『そうね。地質さえ合格すれば気温も大気組成も、許容範囲内なんだけど。調査には、かなり大きめの機材を送り込まないと浅い範囲の酸化鉄しか調べられないわ』
火星が赤く見えるのは、地表の大部分が火山性成分である酸化鉄の為だ。
20世紀から人類が移住計画を考えている火星は、かなり過酷な天体なのだ。
気圧は地球の1%以下
地下と極地に氷の状態の水
表面の大半は酸化鉄
半径は地球の半分
重力は地球の40%
表面積地球の25%
自転周期24時間39分
公転周期687日
表面温度はー140~19度
大気は二酸化炭素95%、窒素3%弱、酸素0.1%
『火星は気圧が低いから、地表の成分の多くが宇宙に流れ出てるのよ。カプセル都市を作っても地下の岩石に、どのくらいの有用物質が残っているかによって、火星開発は推進するか断念するかが変わるわね』
植物が成育する為にも、土壌には多くの種類の成分が必要になる。
それは即ち、人間をも構成する元素の種類と同じだ。
ある程度はリサイクルできるが短期滞在するなら兎も角、移住するとなれば生物に必須な元素が大量に必要となり、現地調達できずにソレを地球から持ち込む労力を考えると、移住は非効率な行為に他ならない。
『まぁ、今後も随時の変更や調整は必要になるだろうが、各位の努力を期待する。あとはセグメント会議に移行しよう』
総合会議の締めを司会であるアルバート・スミスが宣言する。
会議は短い。
情報はAIによって共有されているので、会議の意味は、将来の事を考えての【顔見せ会議】に過ぎない。
この後は、AIにあげていない考えや研究について、各専門分野単位の会議がチャンネルを変えて行われる。
「じゃあ私達は、いつも通りに、これから開発するアプリの分担についてと、完成したアプリの改良について始めましょうか?」
不知火 亜美が、やっと発言を始める。
彼女達は、製作アプリの重複が無い様に分担し、他者の作ったアプリの改良案を提案して、時間の節約と作品の品質向上を行っているのだ。
『誰かアプリの製作が完了した人居るの?』
「私はマダ」
『同じく』
『未完』
『手こずってます』
『・・・・・・』
天才は、どんな事も直ぐに解決できるものではない。
曰く、『天才とは1%の閃きと99%の努力である』なのだ。閃きが無ければ何も進まない。
いくら努力しても徒労に終わるのが、閃きの無く天才に至れなかった者の実態だ。
『諦めなければ夢は叶う』や『努力は裏切らない』は、嘘八百なのだ。自分の努力を無意味にしたくない現実逃避の言葉なのだから。
その閃きにも複数の種類がある。
人間関係や偶然、または物との出会いなど複数だ。
ニューフェイスの場合は、国の支援による多くの出会いや閲覧許可、国を越えた交流に加えて、既存の人類よりも本能が抑えられることによる集中力と、強化された肉体からくる持久力にあった。
彼等には、従来の人間を上回る【閃きと努力】があるのだ。
だが、現実は上手くいくものではない様だ。
「じゃあ、アプリの改善については?」
『アメリカの人事データベースへの介入アプリだけど、前のバージョンの方が軽くて良くなかった?』
『アレは、アクセスの多いデータだと改竄がバレやすいから、そういったデータを除外する様にしたのが新バージョンなのよ』
『でも、バックドアがメチャ重くてワクチンに引っ掛りやすいっしょ?』
「それって、バックドアと改竄システムを分ければ良いんじゃない?」
自分担当のアプリ開発が捗らない時は他の案件をやったり、他者のアプリを解析して気分転換を図るのが一番だ。
他者への意見は頻繁に出る。
『私達、他人の粗捜しばかりやってるから、担当アプリが捗らないんじゃない?』
『だって、アイデアが降りてこないんだもん』
彼等は、強靱で我慢強く思考も早いが超人ではない。
速く走れても飛べはしないのだ。
だから、そういった点は凡人と変わらないのだった。
他のセグメントでは、火星のテラフォーミングについて話されていた。
『各々に頼んであるプラントの状況は?』
『放射線を浴びせて突然変異を促しているけど、芳しくはないな』
シベリアや南極、ヒマラヤで棲息している苔を、低い気圧でも繁殖できる様に品種改良を試みている。
これが火星の気圧に対応できる様になれば、火星の赤道付近に移植して繁殖させ、大気の量と組成を変える事が可能となるだろう。
ただ、地球には極低気圧に対応した生物が希少な為に、火星ほどの低気圧に順応するには、既存の遺伝子操作では追い付かないのが現状だ。
その為に、放射線による突然変異で新たなる特性を見出だそうとしているのだった。
『3,000メートル旧の火山に棲息する苔や植物の遺伝子も、大変に参考とさせてもらっている』
日本の富士山や、バリ島のアグン山などの頂上付近には、低温低気圧に順応した生態系がある。
火山の多くには酸化鉄となった溶岩の土壌があり、これらの生物は、その上で生存している。
確かに、後に付加された成分も有るが、火星の大地に似た土壌で生きている生物は参考になっていた。
ただ、高地生物の能力でも太刀打ちできない程の、火星の低気圧には、いまだに手を焼いていた。
『やはり、火星での定住やテラフォーミングは諦めるべきなのか?』
超人とも呼ばれるニューフェイスにも、不可能は有るのかも知れない。
「あらっ!もうそんな時間なのね」
人工知能用のアプリを作っていた彼女は、コンピュータ画面をテレビ会議に切り替えた。
会議には、既に50人以上がエントリーしている表示がされている。
「日本のメンバーは、あと一人来てないのね。またガールハントかしら?」
いつも遅いのは笹生だと相場が決まっている。欠席する事も多々ある男だ。
『時間なので、そろそろIHS会議を始めたいと思います。欠席者には同国人に伝達を頼みます』
今回の司会はアメリカのニューフェイスだ。
この辺りは交代制になっている。
ここで言う【IHS】とは、イギリスに長期滞在する旅行者が公共医療サービスを受けるのに必要な費用・・・・ではない。
【Intelligence Human Society/知的人間の集い】と言う御大層な名称の略だ。
日本では【イース】と呼んでいるが、いろんな意味で好ましいと思う者は少ない。
議長を兼ねた司会のアメリカのアルバート・スミスが、まず、発言する。
『各国の近況として最も大きい話題の一つが、【ネフィリムの宣戦布告】ではないだろうか?』
『そうね。主に、我々ニューフェイスの存在している国々で宣言されているけど、他にも人工過密な国で一般人の被害が出ているみたいね』
『(笑)』
『(笑)』
『(笑)』
一応、話題にあげているが、誰もが真剣に考えてはいない。
彼等ニューフェイス自身の被害が出ていないからなのかも知れない。
そもそも彼等も、人間の人口が多すぎると判断しているので、自分達に害が無ければと他人事なのだ。
『それぞれの国のニューフェイスが、ネフィリムの対処にあたっていると思うが、うまく政府のコントロールを行って欲しいと思う』
『政府は勿論だが、そのネフィリムのせいで、国民の後進国に対する風評が発生しはじめてるぞ』
『ネフィリムの援助国が不明なんだから、オールドタイプには敵意の向かう先が必要よね』
世論では、ニューフェイスの遺伝子情報が国連から与えられていても、それを活かす技術の無い後進国が、先進国の技術を奪って国民のニューフェイス化である【遺伝子治療】を行う為に、ネフィリムを作ったという噂が流れている。
ネットでの風評は抑制しているが、街頭演説や集会などは禁止する事ができない。
想像や妄想が盲信に変わり、真実の様に言い伝えられていく。
『その辺りは、工作員を潜入させたりして、わざと暴動や破壊活動をさせ、警察に抑制させるしかないよ』
『毎度ながらマッチポンプよね』
被害の無い解決方法は、ニューフェイス達にも思い付かなかったのか?
いや、犯罪者を増やす事により、ニューフェイス化の権利を剥奪する目的かも知れない。
ニューフェイスは、生きていくだけなら環境破壊をしなくても済む。
だが、【文明】を維持するには、いくらかの環境破壊をしなくてはならない。
現在までの文明が環境破壊で滅びへ向かっているのは、【環境破壊】と【環境の再生能力】のバランスが崩れているからだ。
その主な原因は、【人口数 × 環境破壊力 > 環境の再生能力】となっているからだと言える。
どんなにエコだリサイクルだと努力して環境破壊力を小さくしても、人口数が増えていた過去では、この公式が崩れなかった。
環境破壊力を小さくし、人口数を少なくすれば、文明を維持する上での環境破壊をしても自然は滅びない。
『情報共有は従来通り、例のAIで行う』
『あの、Linking interface & Logical intelligence searcherね』
日本語で言えば【同期 接続機器 と 論理的 創造性 探究者】となるのであろうか。
一般にも政府にも非公式非公開非公認のニューフェイスだけのデータ収集集積型人工知能だ。
今回の【ニューフェイスの標準化】は、各国のバラバラだったニューフェイス化情報を、このAIを介して【標準化】したものだった。
ニューフェイスの親達は、ニューフェイス計画の科学者なので、その名義を借りて【共同開発】として国連へと提出したのである。
実際、ある程度の制約内で遺伝子組み換えをしたとは言え、各国で違う開発をしていては、国単位で人間の能力差ができてしまうし、国際結婚も互換性が無くなってしまう可能性がある。
特に国連でも数の多い途上国からは、この【標準化】に賛同を受けた。
『途上国と言えば、【Newface Operation Aid/ニューフェイス化支援】の方は順調なのよね?』
標準化が決まってから、ニューフェイスの遺伝子情報は全世界に公表されたが、それを行うことのできる技術のある国は、限られている。
だが、それでは将来的にニューフェイスの国と、旧人類の国とで戦争が起きかねない。
そこで、国連とは別の非営利団体を用いて、途上国にニューフェイス化の支援を行う計画が、彼等によって進められていた。
『移動施設の準備も、アレ等の協力を得て順調だよ。ある団体を通して幾つかの国とは既に契約を終えている。勿論、【遺伝子審査】と称して数の制限もしているがね』
『実際に遺伝子の変質も増えてる時代だからね』
人間としての基本的な遺伝子だけではなく、家系特有の遺伝子にも異常が生じている人間が増えており、それらを残すと【親と似つかない子供】が生まれてしまう。
特に体外受精を行うニューフェイス化において親子が似つかないのは、子供の成長過程に悪い問題を生じる。
遺伝子操作を親が直接行うのではないので、親としては昔の【赤子の取り違え】と考えてしまうのだ。
『これが上手くいけば、【国同士の戦争】ではなく【国内での内乱】で物事が片付き、核や兵器による環境破壊も抑制できる』
国内で、行政や権力を握るニューフェイスと、ニューフェイス化できない者の対立であれば、デモやテロなどとして警察機構で抑制や処分ができる。
そうして、時間を掛けて国民数を環境に適した数まで調整できるだろう。
『後は、【調査継続中】となっている【火星移住計画】だが、やはり問題は地質調査か?』
『そうね。地質さえ合格すれば気温も大気組成も、許容範囲内なんだけど。調査には、かなり大きめの機材を送り込まないと浅い範囲の酸化鉄しか調べられないわ』
火星が赤く見えるのは、地表の大部分が火山性成分である酸化鉄の為だ。
20世紀から人類が移住計画を考えている火星は、かなり過酷な天体なのだ。
気圧は地球の1%以下
地下と極地に氷の状態の水
表面の大半は酸化鉄
半径は地球の半分
重力は地球の40%
表面積地球の25%
自転周期24時間39分
公転周期687日
表面温度はー140~19度
大気は二酸化炭素95%、窒素3%弱、酸素0.1%
『火星は気圧が低いから、地表の成分の多くが宇宙に流れ出てるのよ。カプセル都市を作っても地下の岩石に、どのくらいの有用物質が残っているかによって、火星開発は推進するか断念するかが変わるわね』
植物が成育する為にも、土壌には多くの種類の成分が必要になる。
それは即ち、人間をも構成する元素の種類と同じだ。
ある程度はリサイクルできるが短期滞在するなら兎も角、移住するとなれば生物に必須な元素が大量に必要となり、現地調達できずにソレを地球から持ち込む労力を考えると、移住は非効率な行為に他ならない。
『まぁ、今後も随時の変更や調整は必要になるだろうが、各位の努力を期待する。あとはセグメント会議に移行しよう』
総合会議の締めを司会であるアルバート・スミスが宣言する。
会議は短い。
情報はAIによって共有されているので、会議の意味は、将来の事を考えての【顔見せ会議】に過ぎない。
この後は、AIにあげていない考えや研究について、各専門分野単位の会議がチャンネルを変えて行われる。
「じゃあ私達は、いつも通りに、これから開発するアプリの分担についてと、完成したアプリの改良について始めましょうか?」
不知火 亜美が、やっと発言を始める。
彼女達は、製作アプリの重複が無い様に分担し、他者の作ったアプリの改良案を提案して、時間の節約と作品の品質向上を行っているのだ。
『誰かアプリの製作が完了した人居るの?』
「私はマダ」
『同じく』
『未完』
『手こずってます』
『・・・・・・』
天才は、どんな事も直ぐに解決できるものではない。
曰く、『天才とは1%の閃きと99%の努力である』なのだ。閃きが無ければ何も進まない。
いくら努力しても徒労に終わるのが、閃きの無く天才に至れなかった者の実態だ。
『諦めなければ夢は叶う』や『努力は裏切らない』は、嘘八百なのだ。自分の努力を無意味にしたくない現実逃避の言葉なのだから。
その閃きにも複数の種類がある。
人間関係や偶然、または物との出会いなど複数だ。
ニューフェイスの場合は、国の支援による多くの出会いや閲覧許可、国を越えた交流に加えて、既存の人類よりも本能が抑えられることによる集中力と、強化された肉体からくる持久力にあった。
彼等には、従来の人間を上回る【閃きと努力】があるのだ。
だが、現実は上手くいくものではない様だ。
「じゃあ、アプリの改善については?」
『アメリカの人事データベースへの介入アプリだけど、前のバージョンの方が軽くて良くなかった?』
『アレは、アクセスの多いデータだと改竄がバレやすいから、そういったデータを除外する様にしたのが新バージョンなのよ』
『でも、バックドアがメチャ重くてワクチンに引っ掛りやすいっしょ?』
「それって、バックドアと改竄システムを分ければ良いんじゃない?」
自分担当のアプリ開発が捗らない時は他の案件をやったり、他者のアプリを解析して気分転換を図るのが一番だ。
他者への意見は頻繁に出る。
『私達、他人の粗捜しばかりやってるから、担当アプリが捗らないんじゃない?』
『だって、アイデアが降りてこないんだもん』
彼等は、強靱で我慢強く思考も早いが超人ではない。
速く走れても飛べはしないのだ。
だから、そういった点は凡人と変わらないのだった。
他のセグメントでは、火星のテラフォーミングについて話されていた。
『各々に頼んであるプラントの状況は?』
『放射線を浴びせて突然変異を促しているけど、芳しくはないな』
シベリアや南極、ヒマラヤで棲息している苔を、低い気圧でも繁殖できる様に品種改良を試みている。
これが火星の気圧に対応できる様になれば、火星の赤道付近に移植して繁殖させ、大気の量と組成を変える事が可能となるだろう。
ただ、地球には極低気圧に対応した生物が希少な為に、火星ほどの低気圧に順応するには、既存の遺伝子操作では追い付かないのが現状だ。
その為に、放射線による突然変異で新たなる特性を見出だそうとしているのだった。
『3,000メートル旧の火山に棲息する苔や植物の遺伝子も、大変に参考とさせてもらっている』
日本の富士山や、バリ島のアグン山などの頂上付近には、低温低気圧に順応した生態系がある。
火山の多くには酸化鉄となった溶岩の土壌があり、これらの生物は、その上で生存している。
確かに、後に付加された成分も有るが、火星の大地に似た土壌で生きている生物は参考になっていた。
ただ、高地生物の能力でも太刀打ちできない程の、火星の低気圧には、いまだに手を焼いていた。
『やはり、火星での定住やテラフォーミングは諦めるべきなのか?』
超人とも呼ばれるニューフェイスにも、不可能は有るのかも知れない。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる