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17 横峯の休日
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私、恋しています。
二次元に!
嗚呼、ムサシ様かっこいい。尊い。
帰りの電車で思わずスマホを抱きしめそうになる。
ゲーム最高!
和装男子最高!
日本に産まれて良かった!
今日は仕事がめちゃくちゃハードで、お昼ご飯も食べられなかった。合間のお菓子で気持ちをつないだ。だからテンションが微妙におかしい。おかげで涙腺も弱ってるみたいだ。
ムサシ様が囁く。
キラリ、今日もお疲れ様
頑張ってるおまえは、誰よりかっこいいよ
惚れ直した
やばい。
鼻血でる。
さすがにそれは二十代女子として終わってしまう。ティッシュ、いやハンカチで鼻をおさえて誤魔化そう。泣くのは自室に帰ってからだ。
二次元最高。
これを越える三次元なんて絶対いない。
私はもう一生この平面の世界で生きていく。
そう思っていた。
いや、ムサシ様一筋と誓っていた。
それなのに!
ごめんなさい、ムサシ様。
私、恋をしてしまいました。
落ちました。
なにこの超絶イケメンのアイドルくんは!
歌って踊れる声優さんで、しかもお笑いが大好きらしく、トークも抜群。
イケメンで話も面白いって最高!
はあ、溜め息しか出ない。
次の週末は彼のために東京遠征する。ライブがある。チケットが当選した時は本当に昇天してしまうんじゃないかと思った。隣の席の楠ノ宮さんが、本気で引いた顔をしていた。笑える。
「休み、ちゃんと取れたの?」
「はい!」
「宿も?」
「たぶん仲間たちとカラオケでオールするんで」
「元気だね。楽しんできてね」
楠ノ宮さんは私の趣味を馬鹿にしたりしない。
それに楠ノ宮さん自身は二次元が好きでも、アイドル少年が好きでもないのに、私の話を聞いてくれる。
ありがたやー。
まさか社会人になって、仕事の合間に趣味の話ができるなんて、思ってなかった。
大好きなのに、大好きだけど、あんまり公言しないほうがいいんだろうなって思ってた。
でも、たまたま楠ノ宮さんにスマホ画面を見られてしまって、二次元好きがバレた。
入社二ヶ月目のことだ。
私もまだまだ学生気分で、つめが甘かった。
終わったと思った。
本気で終わったと。
でも楠ノ宮さんは、何それ?とナチュラルに聞いてくれた。
本当に、ただの好奇心だけの、疑問符。
私が恐る恐る説明すると、自分の知らない世界の話に、ふむふむと相槌を打ちながら聞いてくれた。
それは今も変わらない。
楠ノ宮さんが私のようにムサシ様大好きになることはなかったけど、イベントやライブがあって、こんなことが楽しかったと話すと、面白そうに聞いてくれる。
趣味の話ができる相手が職場に、それも近しい場所にいるのは、とっても嬉しい。
そんな楠ノ宮さんは、旅行や読書が好き。
私とは正反対。
でも私は楠ノ宮さんの話を聞くのも好きだ。
「私、結婚するなら、楠ノ宮さんみたいな人がいいですー」
前に告白したことがある。
酔っぱらってた。
楠ノ宮さんは笑って、ありがと、って言ってくれた。
べつに女性が好きなわけじゃない。
でも男性とお付き合いしたいとも思わない。
だって次の休みはライブだ。
翌日はそのままカラオケオールして、聖地巡礼して最終の新幹線で帰ってくる。
その次の休みは大学時代の友達とご飯。
平日の夜にも職場の同期や、昔からの友達と約束がある。
その後はまたイベント参加。
その次の週くらいから仕事が忙しいので、アフターに予定は入れたくない。
そんな感じで、私はそこそこ忙しい。
恋愛してる暇なんかない。
恋愛なんて、どこでするの?
こんなに忙しいのに。
こんなに毎日楽しいのに。
それに恋愛ってめんどくさそう。
みんな恋愛すると、浮かれたり、落ち込んだり、泣いたり。
いつもは穏やかで優しい子でも、感情の振り幅がとっても大きくなる。
そこまでして?
そこまでして、恋愛したいのなんで?
他にも楽しいこと、いっぱいあるのに。
落ち込んだり、泣いたりは、するけど。
チケット取れなかった日とか、解散するって発表されたりしたら、泣くけど。
でもそんな日は別の趣味に没頭すれば、乗り越えられる。
友達はみんな、キラリは現実を直視してないって言う。
でも、そんなこと言ったって、恋愛してる暇なんかない。
三次元でイケメンに出会うことなんかない。
違うな。二次元以上のイケメンなんていない。それに二次元のイケメンは私を裏切らない。
「楠ノ宮さん、横峯はどっかおかしいんですかねー?」
「それを私に聞かれてもねえ」
楠ノ宮さんはフリーだ。
いつから、とかは聞かないようにしてる。
ただ、私と同じ気配がしてる。
恋愛に興味がない気配。
たぶん私も楠ノ宮さんも、衣食住に困らなくて、病気もせずに生きていけるなら、結婚なんてしない。
旦那はいらなくても、こどもは欲しいけど、そこはまあ、一人では育てられないし。こどもが欲しいから無理やり結婚、とはいかない。
それは楠ノ宮さんときっと同じ。
だから私と楠ノ宮さんは波長が合う。
だから楠ノ宮さんみたいな男性がいたらいいなと思う。そしたら結婚するのにって。
似た者同士だから。
そんな楠ノ宮さんが、佐倉さんと一緒にいると、ちょっと変になる。
いつもより優しかったり、
いつもより冷たかったり。
佐倉さんは、たぶん楠ノ宮さんのことが好き。
でも楠ノ宮さんの頑なな態度に戸惑ってるっていうか、やんわり拒否されてびびってる。
まあ、社内恋愛で、告白してふられたら、次の日からつらいだろうし。
でも佐倉さん。
そんな弱気な態度じゃ、だめです。
余所見して、他の女の子との間をふらふらふらふらしてたら、楠ノ宮さんは落とせませんよ。
だって私たちの日常には今まで恋愛のれの字もなかった。
そこに割り込もうってんだから、二次元のような歯の浮く決め台詞とか、イケメンアイドルに負けない面白さがないと。
とにかく横峯は次の休みを楽しみに、今日も頑張る。
スマホ画面では、ムサシ様のキラキラはっぴースマイルが輝いていた。
二次元に!
嗚呼、ムサシ様かっこいい。尊い。
帰りの電車で思わずスマホを抱きしめそうになる。
ゲーム最高!
和装男子最高!
日本に産まれて良かった!
今日は仕事がめちゃくちゃハードで、お昼ご飯も食べられなかった。合間のお菓子で気持ちをつないだ。だからテンションが微妙におかしい。おかげで涙腺も弱ってるみたいだ。
ムサシ様が囁く。
キラリ、今日もお疲れ様
頑張ってるおまえは、誰よりかっこいいよ
惚れ直した
やばい。
鼻血でる。
さすがにそれは二十代女子として終わってしまう。ティッシュ、いやハンカチで鼻をおさえて誤魔化そう。泣くのは自室に帰ってからだ。
二次元最高。
これを越える三次元なんて絶対いない。
私はもう一生この平面の世界で生きていく。
そう思っていた。
いや、ムサシ様一筋と誓っていた。
それなのに!
ごめんなさい、ムサシ様。
私、恋をしてしまいました。
落ちました。
なにこの超絶イケメンのアイドルくんは!
歌って踊れる声優さんで、しかもお笑いが大好きらしく、トークも抜群。
イケメンで話も面白いって最高!
はあ、溜め息しか出ない。
次の週末は彼のために東京遠征する。ライブがある。チケットが当選した時は本当に昇天してしまうんじゃないかと思った。隣の席の楠ノ宮さんが、本気で引いた顔をしていた。笑える。
「休み、ちゃんと取れたの?」
「はい!」
「宿も?」
「たぶん仲間たちとカラオケでオールするんで」
「元気だね。楽しんできてね」
楠ノ宮さんは私の趣味を馬鹿にしたりしない。
それに楠ノ宮さん自身は二次元が好きでも、アイドル少年が好きでもないのに、私の話を聞いてくれる。
ありがたやー。
まさか社会人になって、仕事の合間に趣味の話ができるなんて、思ってなかった。
大好きなのに、大好きだけど、あんまり公言しないほうがいいんだろうなって思ってた。
でも、たまたま楠ノ宮さんにスマホ画面を見られてしまって、二次元好きがバレた。
入社二ヶ月目のことだ。
私もまだまだ学生気分で、つめが甘かった。
終わったと思った。
本気で終わったと。
でも楠ノ宮さんは、何それ?とナチュラルに聞いてくれた。
本当に、ただの好奇心だけの、疑問符。
私が恐る恐る説明すると、自分の知らない世界の話に、ふむふむと相槌を打ちながら聞いてくれた。
それは今も変わらない。
楠ノ宮さんが私のようにムサシ様大好きになることはなかったけど、イベントやライブがあって、こんなことが楽しかったと話すと、面白そうに聞いてくれる。
趣味の話ができる相手が職場に、それも近しい場所にいるのは、とっても嬉しい。
そんな楠ノ宮さんは、旅行や読書が好き。
私とは正反対。
でも私は楠ノ宮さんの話を聞くのも好きだ。
「私、結婚するなら、楠ノ宮さんみたいな人がいいですー」
前に告白したことがある。
酔っぱらってた。
楠ノ宮さんは笑って、ありがと、って言ってくれた。
べつに女性が好きなわけじゃない。
でも男性とお付き合いしたいとも思わない。
だって次の休みはライブだ。
翌日はそのままカラオケオールして、聖地巡礼して最終の新幹線で帰ってくる。
その次の休みは大学時代の友達とご飯。
平日の夜にも職場の同期や、昔からの友達と約束がある。
その後はまたイベント参加。
その次の週くらいから仕事が忙しいので、アフターに予定は入れたくない。
そんな感じで、私はそこそこ忙しい。
恋愛してる暇なんかない。
恋愛なんて、どこでするの?
こんなに忙しいのに。
こんなに毎日楽しいのに。
それに恋愛ってめんどくさそう。
みんな恋愛すると、浮かれたり、落ち込んだり、泣いたり。
いつもは穏やかで優しい子でも、感情の振り幅がとっても大きくなる。
そこまでして?
そこまでして、恋愛したいのなんで?
他にも楽しいこと、いっぱいあるのに。
落ち込んだり、泣いたりは、するけど。
チケット取れなかった日とか、解散するって発表されたりしたら、泣くけど。
でもそんな日は別の趣味に没頭すれば、乗り越えられる。
友達はみんな、キラリは現実を直視してないって言う。
でも、そんなこと言ったって、恋愛してる暇なんかない。
三次元でイケメンに出会うことなんかない。
違うな。二次元以上のイケメンなんていない。それに二次元のイケメンは私を裏切らない。
「楠ノ宮さん、横峯はどっかおかしいんですかねー?」
「それを私に聞かれてもねえ」
楠ノ宮さんはフリーだ。
いつから、とかは聞かないようにしてる。
ただ、私と同じ気配がしてる。
恋愛に興味がない気配。
たぶん私も楠ノ宮さんも、衣食住に困らなくて、病気もせずに生きていけるなら、結婚なんてしない。
旦那はいらなくても、こどもは欲しいけど、そこはまあ、一人では育てられないし。こどもが欲しいから無理やり結婚、とはいかない。
それは楠ノ宮さんときっと同じ。
だから私と楠ノ宮さんは波長が合う。
だから楠ノ宮さんみたいな男性がいたらいいなと思う。そしたら結婚するのにって。
似た者同士だから。
そんな楠ノ宮さんが、佐倉さんと一緒にいると、ちょっと変になる。
いつもより優しかったり、
いつもより冷たかったり。
佐倉さんは、たぶん楠ノ宮さんのことが好き。
でも楠ノ宮さんの頑なな態度に戸惑ってるっていうか、やんわり拒否されてびびってる。
まあ、社内恋愛で、告白してふられたら、次の日からつらいだろうし。
でも佐倉さん。
そんな弱気な態度じゃ、だめです。
余所見して、他の女の子との間をふらふらふらふらしてたら、楠ノ宮さんは落とせませんよ。
だって私たちの日常には今まで恋愛のれの字もなかった。
そこに割り込もうってんだから、二次元のような歯の浮く決め台詞とか、イケメンアイドルに負けない面白さがないと。
とにかく横峯は次の休みを楽しみに、今日も頑張る。
スマホ画面では、ムサシ様のキラキラはっぴースマイルが輝いていた。
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