44 / 122
二章
44 黄色いウサギの夢①
しおりを挟む
その晩のことである。
ペリーウィンクルは、夢を見た。
黄色いうさぎがペリーウィンクルを訪ねてくる、おかしな夢だ。
──コン、コココンッ。
独特なノックの音に目を覚ましたペリーウィンクルは、ローズマリーが訪ねてきたのだと思って確認もせずにドアを開けた。
「お嬢様、何かありましたか──ってあれ? ウサギ?」
ウサギは、蜂蜜色のくりくりとした目でペリーウィンクルを見上げていた。
かわいらしいウサギだ。黄色の体毛に、胡桃色のチョッキを合わせている。
「夜分遅くに申し訳ございません。見ての通り、わたしはウサギでございます」
しかも、ウサギなのに言葉を話すらしい。
ペリーウィンクルは「お伽噺みたいだなぁ」とぼんやり思った。
(ウサギの恩返し? ウサギなんて助けたっけ?)
箱庭でネコに襲われそうになっていたモグラを助けたことはあったけど、とペリーウィンクルが寝ぼけた頭で考えていると、ウサギはモフモフの前脚をそろえて、お祈りをするようなしぐさをしてきた。
「ペリーウィンクル様に、お願いがあるのです」
黄色のウサギが、モフモフのおててを合わせてお願いとは。
かわいいもの好きなペリーウィンクルからしてみれば、垂涎ものである。
「おねがい?」
ウサギの愛らしさにニヘラとしまりのない顔で見下ろしてくるペリーウィンクルに、ウサギは「そうです、そうです、そうなのです!」と力強く頷く。
頷くたびに長い耳がゆらゆらと揺れて、ペリーウィンクルは触りたくて仕方がない。
思わず伸ばしかけた手を、ウサギがガシリと掴んだ。
「どうか、あの特別な栄養剤を分けていただけないでしょうか!」
モフモフのおててが、ペリーウィンクルの手を握っている。
(も、もふぅぅぅ!)
ふわふわの毛とぷにぷにの肉球のマリアージュである。
たまらず、ペリーウィンクルは言葉を失った。
このままでは鼻血を出してしまいそうで、耐えるために顔を背ける。
「……特別な栄養剤って、なんでしょう?」
「昼間に箱庭で使っていらっしゃったではありませんか。あれがあれば、わたしの大事な花を悲しませずに済むのです。ですからどうか、どうか分けていただけませんか?」
「ああ、昼間の……」
「ええ、そうです。思い出して頂けて良かった!」
キャッキャとはしゃぐウサギはかわいい。
かわいい、が。
ちょっとだけ冷静になったペリーウィンクルは思う。
(なぁんか……スヴェートに似てない?)
スヴェートは、コイバナにおけるサポート役の妖精だ。
つまり、ヒロインが契約したひだまりの妖精。
黄色の果実にウサギ耳が生えたような頭をしていて、まさにペリーウィンクルの目の前にいるウサギをデフォルメしたような姿なのである。
「……」
黙って観察しているペリーウィンクルに、はしゃいでいたウサギがはたと我に返る。
それからおててをふっくらとした頰に当てながら、「このようにはしゃいでお恥ずかしい……」と長い耳を垂れさせた。
(ぐぬぅぅ! かわいすぎやしませんか! ねぇ⁉︎)
誰に聞かせるでもなく、ペリーウィンクルは胸中で叫んだ。
ペリーウィンクルは、夢を見た。
黄色いうさぎがペリーウィンクルを訪ねてくる、おかしな夢だ。
──コン、コココンッ。
独特なノックの音に目を覚ましたペリーウィンクルは、ローズマリーが訪ねてきたのだと思って確認もせずにドアを開けた。
「お嬢様、何かありましたか──ってあれ? ウサギ?」
ウサギは、蜂蜜色のくりくりとした目でペリーウィンクルを見上げていた。
かわいらしいウサギだ。黄色の体毛に、胡桃色のチョッキを合わせている。
「夜分遅くに申し訳ございません。見ての通り、わたしはウサギでございます」
しかも、ウサギなのに言葉を話すらしい。
ペリーウィンクルは「お伽噺みたいだなぁ」とぼんやり思った。
(ウサギの恩返し? ウサギなんて助けたっけ?)
箱庭でネコに襲われそうになっていたモグラを助けたことはあったけど、とペリーウィンクルが寝ぼけた頭で考えていると、ウサギはモフモフの前脚をそろえて、お祈りをするようなしぐさをしてきた。
「ペリーウィンクル様に、お願いがあるのです」
黄色のウサギが、モフモフのおててを合わせてお願いとは。
かわいいもの好きなペリーウィンクルからしてみれば、垂涎ものである。
「おねがい?」
ウサギの愛らしさにニヘラとしまりのない顔で見下ろしてくるペリーウィンクルに、ウサギは「そうです、そうです、そうなのです!」と力強く頷く。
頷くたびに長い耳がゆらゆらと揺れて、ペリーウィンクルは触りたくて仕方がない。
思わず伸ばしかけた手を、ウサギがガシリと掴んだ。
「どうか、あの特別な栄養剤を分けていただけないでしょうか!」
モフモフのおててが、ペリーウィンクルの手を握っている。
(も、もふぅぅぅ!)
ふわふわの毛とぷにぷにの肉球のマリアージュである。
たまらず、ペリーウィンクルは言葉を失った。
このままでは鼻血を出してしまいそうで、耐えるために顔を背ける。
「……特別な栄養剤って、なんでしょう?」
「昼間に箱庭で使っていらっしゃったではありませんか。あれがあれば、わたしの大事な花を悲しませずに済むのです。ですからどうか、どうか分けていただけませんか?」
「ああ、昼間の……」
「ええ、そうです。思い出して頂けて良かった!」
キャッキャとはしゃぐウサギはかわいい。
かわいい、が。
ちょっとだけ冷静になったペリーウィンクルは思う。
(なぁんか……スヴェートに似てない?)
スヴェートは、コイバナにおけるサポート役の妖精だ。
つまり、ヒロインが契約したひだまりの妖精。
黄色の果実にウサギ耳が生えたような頭をしていて、まさにペリーウィンクルの目の前にいるウサギをデフォルメしたような姿なのである。
「……」
黙って観察しているペリーウィンクルに、はしゃいでいたウサギがはたと我に返る。
それからおててをふっくらとした頰に当てながら、「このようにはしゃいでお恥ずかしい……」と長い耳を垂れさせた。
(ぐぬぅぅ! かわいすぎやしませんか! ねぇ⁉︎)
誰に聞かせるでもなく、ペリーウィンクルは胸中で叫んだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。
髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は…
悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。
そしてこの髪の奥のお顔は…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴットハンドで世界を変えますよ?
**********************
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
転生侍女シリーズ第二弾です。
短編全4話で、投稿予約済みです。
よろしくお願いします。
転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
困りました。縦ロールにさよならしたら、逆ハーになりそうです。
新 星緒
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢アニエス(悪質ストーカー)に転生したと気づいたけれど、心配ないよね。だってフラグ折りまくってハピエンが定番だもの。
趣味の悪い縦ロールはやめて性格改善して、ストーカーしなければ楽勝楽勝!
……って、あれ?
楽勝ではあるけれど、なんだか思っていたのとは違うような。
想定外の逆ハーレムを解消するため、イケメンモブの大公令息リュシアンと協力関係を結んでみた。だけどリュシアンは、「惚れた」と言ったり「からかっただけ」と言ったり、意地悪ばかり。嫌なヤツ!
でも実はリュシアンは訳ありらしく……
(第18回恋愛大賞で奨励賞をいただきました。応援してくださった皆様、ありがとうございました!)
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
悪役令嬢の取り巻き令嬢(モブ)だけど実は影で暗躍してたなんて意外でしょ?
無味無臭(不定期更新)
恋愛
無能な悪役令嬢に変わってシナリオ通り進めていたがある日悪役令嬢にハブられたルル。
「いいんですか?その態度」
【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。
絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。
今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。
オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、
婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。
※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。
※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。
※途中からダブルヒロインになります。
イラストはMasquer様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる