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三章
54 ヤンデレ担当尽くし系令嬢②
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親友だからと告白してくれた彼女に、トゥルシーは報いなければならないと思った。
今、リコリスが動くことは危険だ。
なぜなら、今もっともローズマリーと仲が悪いのは、リコリスだから。
でも、トゥルシーなら?
リコリスが見張られている間に、花泥棒が現れたら?
だけど、そんな大それたことができる?
悩んだのは、一瞬だった。
トゥルシーは、決めた。リコリスの代わりに、花泥棒をすると。
彼女がシナモンに疑われていることを、トゥルシーは知っていた。
『リコリス。あなたが動くと疑われてしまうわ。だって今、最もローズマリー様に不満を抱いているのはあなただもの。だから……私が代わりにやってあげる』
今まさに箱庭へ赴いて花を切ろうとしていたリコリスを引き留め、彼女からハサミを奪う。
錆び付いたハサミがやけに重たく感じて怯みそうになったが、トゥルシーは唇を噛んで耐えた。
そんなトゥルシーに、リコリスは「やっぱりダメよ」と悲しく笑う。
『親友にこんなこと、させられないわ。もしも見つかったら、あなたが退学処分になってしまうもの』
『大丈夫。絶対に見つからないようにするから』
『でも……』
『こんなことであなたの気持ちが落ち着くのなら、願ってもないことだわ。だから、ね? 私にやらせて』
『トゥルシー……大好きよ』
『ええ、私も大好きよ』
トゥルシーが花泥棒を代わることで、リコリスは疑われなくなるし、ローズマリーは苦い思いをする。
これは、素晴らしい案に思えた。
なにより、覚えるのが得意なトゥルシーの頭には、この学校のあらゆる地図が入っている。
巡回が強化されたとしても、関係ない。回り道はいくらだってあるのだから。
寮から箱庭への道のりは、途方もなく遠く感じた。
いつもならば数分で行ける距離を、探り探り歩いていく。
ようやくローズマリーの箱庭へ着いた時、トゥルシーの息は上がっていた。
ローズマリーの箱庭は、性悪女が造ったとは思えない可憐な雰囲気だった。
大輪の白バラと薄紫色のミニバラが咲き誇り、月明かりに照らされたアルケミラ・モリスの黄緑色の花が、バラの魅力をさらに引き立てる。
他の花々もしっかりと手が行き届いていて、文句のつけようもない。
「さすが、春の国第一王子の婚約者というところでしょうか」
ウッドフェンスのハニーサックルがやや殺風景なのは、リコリスが切ったからだろう。
「あれくらい切れば、リコリスの疑いは晴れるはず」
よし、と気合いを入れて、トゥルシーは箱庭へ足を踏み入れた。
リコリスに頼まれたのは、バラの株元にあるアルケミラ・モリス。
小さな星形の花が、ふんわりと群れて咲いている。黄緑色のカスミソウのようにも見えるが、さらに繊細でソフトな印象を受けた。
リコリス曰く、ローズマリーはソレルが好む白バラと自らが好むミニバラを大事にしているらしい。
バラではなくバラを引き立てる花を切ってと言ってくるあたり、リコリスは非情になりきれていないとトゥルシーは思う。
「そんな子だから、好きになったのだけれど」
アルケミラ・モリスの花を茎ごと掴み、トゥルシーはハサミを向ける。
バッサリと切るつもりでハサミの刃を広げた、その時だった。
「トゥルシー嬢」
すぐ後ろから声がして、トゥルシーは慌てて体を翻す。
持っていたハサミを隠すように胸に抱き、彼女は声の主と対峙した。
今、リコリスが動くことは危険だ。
なぜなら、今もっともローズマリーと仲が悪いのは、リコリスだから。
でも、トゥルシーなら?
リコリスが見張られている間に、花泥棒が現れたら?
だけど、そんな大それたことができる?
悩んだのは、一瞬だった。
トゥルシーは、決めた。リコリスの代わりに、花泥棒をすると。
彼女がシナモンに疑われていることを、トゥルシーは知っていた。
『リコリス。あなたが動くと疑われてしまうわ。だって今、最もローズマリー様に不満を抱いているのはあなただもの。だから……私が代わりにやってあげる』
今まさに箱庭へ赴いて花を切ろうとしていたリコリスを引き留め、彼女からハサミを奪う。
錆び付いたハサミがやけに重たく感じて怯みそうになったが、トゥルシーは唇を噛んで耐えた。
そんなトゥルシーに、リコリスは「やっぱりダメよ」と悲しく笑う。
『親友にこんなこと、させられないわ。もしも見つかったら、あなたが退学処分になってしまうもの』
『大丈夫。絶対に見つからないようにするから』
『でも……』
『こんなことであなたの気持ちが落ち着くのなら、願ってもないことだわ。だから、ね? 私にやらせて』
『トゥルシー……大好きよ』
『ええ、私も大好きよ』
トゥルシーが花泥棒を代わることで、リコリスは疑われなくなるし、ローズマリーは苦い思いをする。
これは、素晴らしい案に思えた。
なにより、覚えるのが得意なトゥルシーの頭には、この学校のあらゆる地図が入っている。
巡回が強化されたとしても、関係ない。回り道はいくらだってあるのだから。
寮から箱庭への道のりは、途方もなく遠く感じた。
いつもならば数分で行ける距離を、探り探り歩いていく。
ようやくローズマリーの箱庭へ着いた時、トゥルシーの息は上がっていた。
ローズマリーの箱庭は、性悪女が造ったとは思えない可憐な雰囲気だった。
大輪の白バラと薄紫色のミニバラが咲き誇り、月明かりに照らされたアルケミラ・モリスの黄緑色の花が、バラの魅力をさらに引き立てる。
他の花々もしっかりと手が行き届いていて、文句のつけようもない。
「さすが、春の国第一王子の婚約者というところでしょうか」
ウッドフェンスのハニーサックルがやや殺風景なのは、リコリスが切ったからだろう。
「あれくらい切れば、リコリスの疑いは晴れるはず」
よし、と気合いを入れて、トゥルシーは箱庭へ足を踏み入れた。
リコリスに頼まれたのは、バラの株元にあるアルケミラ・モリス。
小さな星形の花が、ふんわりと群れて咲いている。黄緑色のカスミソウのようにも見えるが、さらに繊細でソフトな印象を受けた。
リコリス曰く、ローズマリーはソレルが好む白バラと自らが好むミニバラを大事にしているらしい。
バラではなくバラを引き立てる花を切ってと言ってくるあたり、リコリスは非情になりきれていないとトゥルシーは思う。
「そんな子だから、好きになったのだけれど」
アルケミラ・モリスの花を茎ごと掴み、トゥルシーはハサミを向ける。
バッサリと切るつもりでハサミの刃を広げた、その時だった。
「トゥルシー嬢」
すぐ後ろから声がして、トゥルシーは慌てて体を翻す。
持っていたハサミを隠すように胸に抱き、彼女は声の主と対峙した。
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