目指せ、婚約破棄!〜庭師モブ子は推しの悪役令嬢のためハーブで援護します〜

森 湖春

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四章

93 悪役令嬢の告白③

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 ローズマリーの言葉に、ペリーウィンクルは目を見開き、唇を尖らせ、『何を言ってるんだこいつ』という顔をした。

 そもそも、ペリーウィンクルは今の段階で、ローズマリーに対し嫌悪のかけらも抱いていない。
 ローズマリーに好きな人がいて、それが公爵家にいた料理人で、身分違いの恋かと思いきや、その料理人がまさかの宰相の息子だった、という情報だけで頭がいっぱいいっぱいなのである。ローズマリーが好きか嫌いかまで、頭が回るはずがない。

 混乱しながらなんとか出たのは、ローズマリーがなぜペリーウィンクルの境遇について知っているのか、という問いだった。

「え……は……いや、知って……?」

「ええ。あなたのご両親のことをわたくしは知っているわ。公爵家の庭師として雇う際に、調べたの。勝手に、ごめんなさいね」

「はぁ。調べるのはまぁ、構わないのですが……それで、あの……どうして私がお嬢様を嫌うって話になるんです?」

「嫌いにならないの? だってわたくしも、あなたのご両親と変わらないでしょう?」

 ペリーウィンクルと目を合わせるのもつらいのか、目を逸らしながら「あなたを不幸にしたご両親と同じなのよ」とローズマリーは呟いた。
 華奢きゃしゃな肩をシュンと落とすと、もともと小さなローズマリーはますます小さく見える。
 そんなつもりはないのに、ペリーウィンクルがいじめているみたいだった。

 おそらくローズマリーは、自身をペリーウィンクルの父と重ねているのだろう。
 婚約者のいる身でありながら、屋敷の使用人と恋に落ちるなんて、と。

 でも、ペリーウィンクルからしてみれば、ローズマリーは父と違う。
 だって少なくとも彼女は──、

(婚約破棄しようとしている)

 婚約者がいる身でありながら、望まない結婚から逃げた父。
 婚約者がいる身でありながら、望まない結婚を回避しようとしているローズマリー。
 似ているようだが、全然違う。そこには、大きな差があるのだ。

 ペリーウィンクルはこれみよがしに深い深いため息を吐いた。
 ローズマリーの体がビクリと跳ねる。

「あのですね。両親がアレなのでお嬢様は気にされているのかもしれませんけど。少なくともお嬢様は、父と違って婚約破棄しようとしているじゃないですか。それって、大きな違いなんですよ? 少なくとも、私にとっては。つまり、何が言いたいのかと言いますと、私はお嬢様のこと、ずっと好きなままですよってことです」

 ずっと好きなまま。
 そう言った瞬間、ローズマリーが飛びついてきた。

 倒れそうになる体をなんとか踏ん張って、彼女を受け止める。
 出会ったあの日を思い出す体勢に、ペリーウィンクルがプッと吹き出した。

「ふふ。なんだか、出会ったあの日を思い出しますね」

「そうね」

 まろい頬をグリグリとペリーウィンクルの胸に擦り付けながら、ローズマリーは「ありがとう」と言った。

「でも、お嬢様。宰相の家へお嫁に行ったら、まったりスローライフなんてできなくなりますけど、それで良いんですか?」

「そうね。それだけは、少し心残りではあるけれど。でも、春の国を今のまま維持させて、わたくしの我儘も通すためには、これしか道がないの。チャービル様が家に戻る条件が、わたくしとの結婚だから」

 ソレルはローズマリーとの婚約を破棄してリコリスと結ばれる。
 そしてローズマリーは、宰相家に戻ったチャービルと結ばれる。

 ソレルを傀儡かいらいにしようとしている者たちは驚くだろう。
 まさかローズマリーが行方不明になっていた宰相の息子とタッグを組んで、ソレルを補佐するつもりだなんて。

(きっと、誰も思いつかない)

 とんでもないラストである。

(でも、これはこれで面白い……かも?)

 とはいえ、ローズマリーが幸せならそれが一番だ。
 すっかり落ち着いたらしいローズマリーが、クフクフとおかしな声で笑う。「あなた、意外に胸が大きいのね?」なんて言う不届きな口を塞ぐため、ペリーウィンクルは問答無用で彼女のかわいらしい顔を押しのけた。
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