目指せ、婚約破棄!〜庭師モブ子は推しの悪役令嬢のためハーブで援護します〜

森 湖春

文字の大きさ
118 / 122
終章

118 幕はおりる。②

しおりを挟む
「わ、わたしは悪くないもんっ。ぜんぶぜんぶ、スヴェートが言ったからやっただけで……! ほっ、本当はやりたくなかったんですよ⁉︎ 媚薬を飲ませるのも、ローズマリー様の箱庭から花を盗むのも……やりたくなんてなかった。だけど、スヴェートがやらないとダメだって言うから、だからわたしは……!」

 ざわり。
 リコリスの言葉に、妖精たちが反応する。
 大講堂にいた全ての妖精たちの目が、爛々らんらんと光った。

 植物を愛する妖精にとって、植物を盗むという行為は罪である。
 ましてや、中央の国で人が育てた植物を盗むなど、大罪だ。

 スルスの学生ならば校則により退学が決まっている。
 だが、卒業式を終え、卒業パーティーへ移行した今、校則にのっとる必要はあるのだろうか。

(遠足はおうちに帰るまで、だっけ? じゃあまだセーフって可能性もなくはない……)

 妖精たちが、動き出す。

 答えはノーだったようだ。
 妖精たちは各々近くにあったナイフやフォークといった武器らしきものを携え、大群となってリコリスを取り囲む。

 かわいいのか怖いのか分からない光景だ。
 もっとも、取り囲まれている本人は悲鳴を上げているので、恐怖を感じているようだが。

「いやぁっ! わたしは悪くない、悪くないんだってば! ソレル様、助けて。優しいあなたなら、わたしを助けてくれますよね⁈」

 助けてと叫びながら、リコリスがソレルへ手を伸ばす。
 その体はすでに無数の妖精が取り囲んでいて、今にも飲み込まれそうだ。

 そんなリコリスに、ソレルは冷たい視線を向けるだけ。
 手をはたき落とさないだけマシだと思え、と言わんばかりである。

「愚かな女だ。スヴェートが必死になって彼女の関与を黙したというのに……これでは水の泡ではないか」

 ヴィアベルの言葉に、ペリーウィンクルは理解した。
 一連の事件にリコリスが関与していたのは間違いないのに、どうして彼女は野放しになっているのか。
 それは、スヴェートが全ての罪を一人で被ったからに他ならない。

(そこまでする何かが、ヒロインにあったのかしら……?)

 ペリーウィンクルにはわからない。
 スヴェートは懸命に黙っていたのに、いなくなったことにも気づかないで。
 愚かにも自己弁護のために口を滑らせて墓穴を掘って。
 自分勝手で、自分本位で、わがままで……良いところなんてちっとも見つからない。
 そういえば毒草茶をプレゼントしてくれたっけと思い出して、ペリーウィンクルは鼻にシワを寄せた。

 妖精魔法で黙らされ、縛られるリコリス。
 イモムシみたいに床へ転がされた彼女を、妖精の大群が運んでいく。
 その様は、エサを巣に持ち帰るアリのよう。

 リコリスが連行され、場に静寂が訪れる。
 誰もが、この場がどうおさまるのかと固唾かたずを飲んで見守った。

「ローズマリー」

 おまえは見放さないよな?
 口にはしないが、その目は雄弁に語る。

 だが、ローズマリーはソレルに応えない。
 顔の感情を削ぎ落とし、口元だけは微笑みを浮かべて、彼女は優雅に礼をする。
 そうして彼女は、大講堂を後にした。

 茶番の幕が下りる。
 ペリーウィンクルは、閉じていく扉の向こうで、ローズマリーが軽やかな足取りで駆け出していくのを見届けてから、ヴィアベルとともに席を立った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない

紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。 完結済み。全19話。 毎日00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

❲完結❳乙女ゲームの世界に憑依しました! ~死ぬ運命の悪女はゲーム開始前から逆ハールートに突入しました~

四つ葉菫
恋愛
橘花蓮は、乙女ゲーム『煌めきのレイマリート学園物語』の悪役令嬢カレン・ドロノアに憑依してしまった。カレン・ドロノアは他のライバル令嬢を操って、ヒロインを貶める悪役中の悪役!    「婚約者のイリアスから殺されないように頑張ってるだけなのに、なんでみんな、次々と告白してくるのよ!?」   これはそんな頭を抱えるカレンの学園物語。   おまけに他のライバル令嬢から命を狙われる始末ときた。 ヒロインはどこいった!?  私、無事、学園を卒業できるの?!    恋愛と命の危険にハラハラドキドキするカレンをお楽しみください。   乙女ゲームの世界がもとなので、恋愛が軸になってます。ストーリー性より恋愛重視です! バトル一部あります。ついでに魔法も最後にちょっと出てきます。 裏の副題は「当て馬(♂)にも愛を!!」です。 2023年2月11日バレンタイン特別企画番外編アップしました。   2024年3月21日番外編アップしました。              *************** この小説はハーレム系です。 ゲームの世界に入り込んだように楽しく読んでもらえたら幸いです。 お好きな攻略対象者を見つけてください(^^)        *****************

前世では地味なOLだった私が、異世界転生したので今度こそ恋愛して結婚して見せます

ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。 異世界の伯爵令嬢として生まれたフィオーレ・アメリア。美しい容姿と温かな家族に恵まれ、何不自由なく過ごしていた。しかし、十歳のある日——彼女は突然、前世の記憶を取り戻す。 「私……交通事故で亡くなったはず……。」 前世では地味な容姿と控えめな性格のため、人付き合いを苦手とし、恋愛を経験することなく人生を終えた。しかし、今世では違う。ここでは幸せな人生を歩むために、彼女は決意する。 幼い頃から勉学に励み、運動にも力を入れるフィオーレ。社交界デビューを目指し、誰からも称賛される女性へと成長していく。そして迎えた初めての舞踏会——。 煌めく広間の中、彼女は一人の男に視線を奪われる。 漆黒の短髪、深いネイビーの瞳。凛とした立ち姿と鋭い眼差し——騎士団長、レオナード・ヴェルシウス。 その瞬間、世界が静止したように思えた。 彼の瞳もまた、フィオーレを捉えて離さない。 まるで、お互いが何かに気付いたかのように——。 これは運命なのか、それとも偶然か。 孤独な前世とは違い、今度こそ本当の愛を掴むことができるのか。 騎士団長との恋、社交界での人間関係、そして自ら切り開く未来——フィオーレの物語が、今始まる。

処理中です...