目指せ、婚約破棄!〜庭師モブ子は推しの悪役令嬢のためハーブで援護します〜

森 湖春

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四章

100 閑話②

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 ペリーウィンクルがキッチンに行ってみると、中は大惨事だった。
 今ここでマッチを擦ったら、ドカンと粉塵爆発が起こるに違いない。

「なにをやっているんですか」

 ペリーウィンクルがローズマリーに近づくと、彼女は「きゃっ」と悲鳴をあげてしゃがみ込んだ。
 台の上にあった麺棒が転がって、ローズマリーの頭上へ落ちそうになる。
 ペリーウィンクルはとっさに手を伸ばし、麺棒をキャッチした。

「危ないじゃないですか」

「ごめんなさい……!」

 土下座をして以来、ローズマリーはペリーウィンクルに嫌われまいとしているような言動を繰り返している。ビクビク、オドオド。彼女らしくないったらない。反射的にに謝ってしまうのも、それゆえだろう。

「怒っているわけではないのですが……あの、本当に、何をしていたんです?」

「クッキーを、焼こうと思って」

「食べたいなら私が焼きますから、言ってください」

「違うの……わたくしはあなたにプレゼントしたくて」

 ペリーウィンクルはこのやりとりに既視感を覚えた。
 一体いつの出来事と重ねているのだろうと思い返して、幼い頃の自分だったと思い至る。

 どうして彼女はこんなに必死なのだろう。
 そんなにペリーウィンクルが大事なのだろうか。

(いや、大事なんだろうなぁ)

 今のローズマリーは、あの時のペリーウィンクルと同じだ。
 ヴィアベルが祖父の前から去ろうとしていたあの時同じ。
 彼女はペリーウィンクルが離れていくことを恐れている。
 そう思ったら、不思議と気持ちが楽になった。

「は、はは……」

 突然笑い出したペリーウィンクルに、ローズマリーが困惑の表情を浮かべる。

「ねぇ、ローズマリーお嬢様」

「はい」

 神妙な顔をして返事をするローズマリーが、おかしくてたまらない。
 たぶんペリーウィンクルは、おかしくなっているのだ。寝不足でハイになっている自覚はあった。

「ふふ。はい、だって。お嬢様らしくないこと、やめてくださいよ。調子狂うじゃないですか」

「でも……」

「私、前世からローズマリーが推しなんです。今のあなたよりずっとずっと性格が悪い時から、大好きだったんですよ? だから、今更ちょっと突き放されたくらいで嫌いになれるわけ、ないんです」

 ローズマリーの顔が、グシャリと歪む。
 らしくもなく顔を歪めて子どものように大声を出して泣き出した彼女を、ペリーウィンクルは腹を抱えてゲラゲラ笑った。
 そんなペリーウィンクルにローズマリーは「ひどい」と言いながらもっと泣いたが、最終的には一緒になってゲラゲラ笑っていたから、たぶんそれで良かったのだ。
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