勇者パーティを追放されてしまったおっさん冒険者37歳……実はパーティメンバーにヤバいほど慕われていた

秋月静流

文字の大きさ
48 / 398

おっさん、慟哭する

しおりを挟む

「な、何だ爆発したぞ!?」
「見ろ、燃えてる!」

 突然の事態にざわめく声が聴こえるよりも先――
 俺はBARのマスターに飲み代の金貨を放り投げると急ぎ店の外に出る。
 お客様お釣りが、との声は聞かなかった事にする。
 今は何が起きたのか一刻でも早く直接確認しなくては。
 石造りの頑丈な建物はこういった時不便だ。
 外からある程度隔離されている為、状況把握に手間が掛かる。
 重い樫の扉に手を掛け、勢い良く解き放つ。
 都市中央部に近いギルド――その外は混乱の坩堝にあった。
 道行く通行人は皆足を止め、夜空を焦がす炎を見上げている。
 あっちの方向は……嘘だろ。
 酷い焦燥に駆られながら駆けだそうとするも、棒立ちになっている人々が邪魔で思うように前に進めない。
 闇夜に輝く紅蓮の焔。
 それは俺がギルドへと情報収集に行く為、不満を告げる三人に待機を命じていた春の仔馬亭のある方面から立ち昇っていた。
 ここからでは視えないが嫌な予感がする。
 こういった時の勘が外れないのが俺の良いところであり困ったところだ。
 しかし混雑する道を行くのでは埒が明かない。
 ならば――違う道を行くのみだ。

「こんなこともあろうかと」

 酔い覚ましの為、収納スキルによって取り出した解毒ポーション(アルコールも立派な毒だ)をぶっかけると、俺は風の基本魔術を足元に集約させ発動。
 突風と自身の力を累乗させ一気に屋根に飛び移る。
 視えた!
 ここから程遠くない場所にある春の仔馬亭――確かにそこが炎上している。
 宿自体が燃えているのは分かるが詳しい状態までは読み取れない。
 あいつらは無事か!?
 余程の事が無ければおそらくは大丈夫だろうが……確定は出来ない。
 例えS級ランク冒険者だろうが、油断している所を攻められれば不覚を取る。
 そう――人は簡単に死ぬのだ。
 取り返しが付かないからこそ――命は大事なのに。
 くそ、このまま屋根伝いに向かうか。
 情報が無い以上、こうなったら少しでも早くあいつらの下に向かうのみ。
 高速移動魔術を併用させて走り始める俺だったが――ホンの数歩も行かぬ瞬間、身に纏う風の障壁ごと何かに叩き付けられ屋根に潰れ伏す。
 慌てて頭を上げた先には黒ずくめの男達が数人いた。
 ご丁寧にも覆面を被り、身元のバレぬ黒装束姿という如何にも悪役な奴等だ。
 そいつらの手がこちらに向けられているのを見るに、何かしらの魔術かスキルが使われたに違いない。
 移動用に風の障壁を身に纏っていて本当に良かった。
 障壁でダメージを軽減出来ていなければ行動に支障をきたすところだった。
 何にせよ無警告で人を攻撃する以上、覚悟は出来てるんだろうな?
 瞬時に戦闘思考へと切り替えた俺は無慈悲に告げ抜剣、スキルを解き放つ。

「魔現刃(マギウスブレード)――【凍嵐】!」

 発動させたのは烈風に水の温度低下を強化させ複合したものだ。
 吹き荒ぶ風に混じった吹雪は実際の体感温度を恐ろしいまで引き下げる。
 つまりこの魔現刃の効果は外傷こそないものの、瞬く間に身体機能を凍結させ行動不能へ陥り――速やかに無力化する事が出来る。
 こういう複数に囲まれた、尚且つ街中で殺しが御法度な際には重宝する。
 以前雪国を旅した時に実体験して得た知識が役に立った。
 その場に蹲り痙攣する黒装束の男達。
 懸命に足掻く手が覆面に掛かり、一人の男の顔が露わになる。
 露出した素顔を見た俺は驚愕する。
 そいつは現在行方不明――失踪した筈の冒険者だった。
 何かを誰何するより早く、男たちは光の粒子と共に消えていく。
 この消え方……間違いない。
 俺は先程感じた違和感の正体に気付き戦慄を覚える。
 ならばこそ早く行かなくては――
 魔術式を再起動、全力疾走に移る。
 やがて見えてくる春の仔馬亭。
 業火に燃える宿の裏広場で対峙する一人の陰とあいつらの姿。
 すでに戦闘が始まっていたのか、倒れ伏しているリアとフィー。
 火事による被害はなく、緩やかに隆起する胸を見るにまだ命はある。
 二人を護る為か、懸命に魔法剣を振るうシアだったが――
 無情にもその刃は敵に届かず、流麗な受けから繋がれ紡がれる、惚れ惚れするほど神速の一太刀で斬り伏せられる。
 信じられない顔をしたままその場に崩れ落ちるシア。
 彼女にとっても未知の経験――
 いや、正確には俺以外で味わったことがない筈の経験だろう。
 魔力を具現化した刃に対抗出来るのは――同じく魔力を具現化した刃のみ。
 そんな芸当が出来る存在を俺は自分以外では一人しか知らない。

「やめろおおおおおおおおおおおおおお!!」

 なので俺は全力でその場に割り込む――
 何故ならシアが倒れた今、その人に対抗出来るのは俺だけだから。
 乱入した俺目掛け振るわれる凶刃。
 発動させた魔現刃に重苦しい圧力が掛かる。
 この重圧、この技量――
 もはや間違えようはない。
 受け太刀からの返す刃で切り上げるも、あっさりと後方へ躱される。
 そりゃあそうだ。
 この剣技は今あなたが披露したもの――
 あなたから伝授されたものなのだから。
 距離を取りこちらの動向を静かに見定め観察してくるその人に、俺は溢れる激情を抑えながら問い掛ける。

「何を……
 いったい何をやってるんだ、師匠ぉ!」
「誰かと思えばガリウスか……久しいな」

 俺の心からの慟哭に、我が師ファノメネルは微笑みながら答えるのだった。
 


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

処理中です...