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第6章 びくびくお城の招待と新たな仲間?
第034話 幕間 レンリート家と第三王女エミリアーナ・フォーシュレーグ
しおりを挟む「ランドリッピ公爵に凄い睨まれたけど、俺に睨まれても仕方がないと思うんだよな」
「あの方の派閥のマトルア伯爵領を奪ったのだし、ライハルト子爵領とも揉めてやり込めたでしょう?」
「それ、俺がやった訳じゃないよなエウレカ?」
「シャルロッテは貴方の配下じゃない」
フォシュレーグ王国の王都、レンリート伯爵邸で俺は妻のエウレカと今回の顛末を話していた。俺は今回のアデール王国との戦争の功績で伯爵から辺境伯に昇爵させられてしまったのだ。
今までは俺のレンリート伯爵領とマトルア伯爵領とでアデール王国側のブラン侯爵領に対抗すると言う事になっていた。しかしマトルア伯爵のアホがアデール王国に侵略され領地を削られた上に、自分から手放した元アドン男爵領をシャルロッテが再開発したと聞いて奪い返そうとしたのだ。
戦時下に敵国に侵略を受けながら内乱を起こしたとしてマトルア伯爵は子爵に降爵、領地も取り上げになった。
問題は空き領地となった元マトルア伯爵領だ。
ランドリッピ公爵が元々自派閥の領地だった為に自派閥の人間を送り込もうと躍起になっていたのだが、国王陛下も宰相閣下もヤラかした者の派閥に任せては罰にならないと首を縦に振らなかった。
「ランドリッピ公爵も権力欲が強すぎるんだよなあ」
「貴方が精霊王国寄りなのも睨まれる理由じゃないかしら」
エウレカの言うのも分かる。ランドリッピ公爵はガッツリ教王国商業王国寄りだからな。
「本来上層部はある程度バランスを取って政を行って欲しいんだけどな」
「ふふっ、そうですね。公爵が教国商国寄りだからと言って陛下や宰相が精霊王国を贔屓にする事も出来ませんから」
そんな事になれば公爵とルードルシア教王国ラージヒルド商業王国が敵になる。下手しなくても内乱、最悪周辺諸国を巻き込んで戦争、蹂躙されて国が滅びかねない。
しかし陛下や宰相は敵国であるアデール王国がリアースレイ精霊王国に取り入って国力を増していっているのも感じていた為、精霊王国を無下にもしたくなかった。
そんな中、国王と宰相はアデール王国経由とは言え精霊王国の情報を得て、高品質な商品を交易した俺のレンリート伯爵に目を付けた。切っ掛けさえあれば更に権力を持たせランドリッピ公爵に対抗させようとしていたのだろう。
「まあ全てシャルロッテの受け売りだけど」
「兎に角、貴方は辺境伯に叙せられるのですから早急に軍を編成して備えないといけませんよ?」
そう、辺境伯になって一番の問題は今までマルトア伯爵領とそれぞれ対応していたブラン侯爵領に対して全て自領で何とかしないといけないと言う事だ。その分持てる軍事力は桁違いになるのだが。
反乱を考え国から一部国軍を受け入れなければならないが、軍事力だけなら公爵並みとなるから公爵に睨まれるのも仕方がない。
そして更なる問題がある。元マルトア伯爵領でアデール王国に削られた領地を取り返す王命を正式に受けたのだ。それ自体は良い。問題なのは事を成した時の報奨だ。
「元マルトア伯爵領をその方の息子に与え第3王女エミリアーナとの婚姻を認める」
長男のレシュレートは既に結婚して子供もいる。王女との婚姻はあり得ない。となれば次男のラウレスとなるがそうなると長男の立場がなくなる。
いずれレンリート辺境伯領を継ぐ事になるだろうがそれまで普通に考えてもまだ10年以上あるだろう。その間長男のレシュレートは俺の補佐に甘んじて弟は伯爵家当主? それも王女を娶って棚ぼたで?
長年厳しい領主教育を受けて来て今更それは萎えるわぁ。俺なら気持ちを消化出来ずに荒れる自信があるぞ?
それと王女の方も問題だ。御自身の騎士隊を自ら結成したりそれで魔物を討伐しに行ったり行動力がとんでもないお方なのだ。
禁句ではあるがアデール王国の愚王に並んでフォーシュレーグ王国の突撃姫として周辺諸国に名を轟かせている。――勿論悪い意味でだ。
実際馬車でレンリート辺境伯領まで来たが、当初は馬を乗り継いで行こうとしたくらいだ。何とかお止めしたがラウレスが振り回される未来しか想像出来ん。
一足先にレンリート伯爵領に帰っていたシャルロッテに話しを付けようとしたがレシュレートが王女の存在に目を見開いて驚愕していた。
しかし挨拶もそこそこに俺を引き剥がし、焦った様にシャルロッテが軍を動かしたと伝えて来た。
「ああ、それについては知っている」
アデール王国に削られたマルトア元伯爵領を取り返す為だろう。王命とは言え相変わらず素早い事だな。後は次男ラウレスを合流させて取り返せばラウレスの功績になって伯爵位を得て姫様と婚姻と言う算段だろう。
「良かった、父上は知っておられたんですね。アデール王国への逆侵攻を」
「……っ、何いいいいいいーーーーっっ!!?」
部下が勝手に他国に戦争を仕掛けている件。
話しを聞くとマルトア元伯爵領じゃねえ。先の戦争で俺が削り取ったブラン侯爵領から北上してマルトア元伯爵領を包囲はするが本命は別にある。
アデール王国を西に侵攻してメメントリア王国と接する処まで領地を延ばすつもりらしい。
マジモンの逆侵攻、下手しなくてもアデール王国との全面戦争になるじゃねえか!!
ホッとしたレシュレートが俺の反応を見て顔を青くする。多分俺もそんな顔をしてるんだろう。
「何か叫び声が聞こえたわね」
私の騎士隊が剣に手を置き警戒する中エウレカが「これはグランツの声ですね。何か報告を受けたのでしょう」と言うので警戒を解かせた。
「漸く着いたわね。全く、馬に乗って来れたらもっと早く着いたのに」
「疲弊した馬を乗り換えて行かなければなりませんし、防衛と言う面でも現実的ではありませんよ姫様」
「分かってるわよそんな事、お父様にも宰相にも苦い顔されたわ」
「「「…………」」」
「そうそう、そんな顔よ貴女達。くふふふふ」
私が中位下位貴族の令嬢達から厳選して作った白銀騎士隊は、剣に魔法の腕を見込んだ猛者達だけど皆んな王女の私に対する忠誠心は高い。
まあ私物をどんどん売っ払ったりお父様やお兄様達におねだり(強請)したりして高い給与を払ってるし、色んなお家の事情から守ってあげてるからね。
まあ当初は王位を狙っていると皇太子と揉めそうになったりもしたけど。
続くこの第3王女の数々の奇行に陛下や宰相が頭を抱える姿を見て王位が脅かされる事は無いと判断した。が、皇太子も政務をこなす様になって同じ様に王女の奇行に頭を抱える事になり、結局この第3王女と揉めるのは避けられなかった。
私は魔法の素養があった様で、鍛えたらそれが中々面白くて魔物で実践したくなったのよね。
それで剣も鍛えて女性の騎士隊を結成、初めはお遊びと思われていた様だけど軍の鍛練に混ざったりして実力を付けさせてから実際に魔物狩りに行く様にもなって周りも見る目を変えてきた。
まあ見る目を変えたって言うより目を見開いて驚いていたと言うのが正しいんだけど。お父様達にはかなり叱られたけど懲りずに何度も繰り返して、迷宮にまで行く様になったら諦めたのか何も言わなくなったわ。
他にも私は興味が惹かれる物は何でも試した。ポーション作りや鍛治、時には乗り心地を良く出来ないかと馬車をバラして改造してみたり。
クッションになる物を色々試して板バネを着けたり車輪の回転を良くする為にベアリングを着けたりしてみたわ。
今では多くの馬車に使われているらしくて売り上げの一部が私に入って来てるのよね。他にも回復魔法を自分なりに解析して他の娘達にも教えたら、何とか数人が使える様になってポーション作りをさせて稼いだりもしている。
魔物の討伐でもお金を貰えるし良い事だと思うんだけど王族貴族は卑しい事だと私の騎士隊の面々を蔑んで来る。王女である私には言えないからって卑怯なのよね。
そう言う輩は大嫌いだから出向いてやって正面から叩き潰してあげたけど。
そしてここ数年の興味はリアースレイ精霊王国へと移って行ったの。
当然よね。彼処の馬車を見たけど私が改造した物より遥かに優れていたんだもの。板バネもそうだけどベアリング!
何とかバラして見たけど金属のボールベアリングとか言うのになっていて私にはどうしても作り方が想像出来なかった。私のは青銅の円柱を挟んで回す様にしていたのだけど、耐久性では全く敵わない。
他にもお酒や化粧品に使われているガラス容器の透明度や複雑で美麗な意匠、理解の追い付かない物ばかりで興味が尽きないわ。
何処にあるかも分からない国だけどいつか行ってみたいと思っていたのよね。
でも先ずは取り引きのあるレンリート伯爵領にと思っていたら今回の話しが舞い込んで来たの。
王女として何時までも結婚から逃げ回る訳にも行かないとは考えていたし、レンリート伯爵領と隣領なら適当に言いくるめれば何時でも遊びに行けるでしょ?
レンリート伯爵領に着いたら伯爵の次男と言うのが挨拶に来たから適当に流して精霊王国の商品が並ぶデパートとか言う処に行く事にした。
「姫様酷いですよ」
「一応旦那様になるお方ですよね?」
「だって私が戦争に行ける訳じゃないでしょう? お父様に止められてしまったし」
「当然でしょう。陛下も宰相閣下も頭を抱えていらっしゃいましたよ?」
「あの人達何時も頭を抱えているのよね」
「「「誰の所為ですか!?」」」
戦争に行きたがる姫と言うのがおかしいのだが、騎士隊の面々は既にその手の奇行には慣れてしまっている。
しかし王女の余りの対応に、結婚する為にマルトア元伯爵領を取り返す戦争に参加しなければならなくなったラウレスには同情せずにはいられなかった。
「デパートはアデール王国から精霊王国が撤退した為、今後商品が品薄になる恐れがあるかも知れませんね」
「でも1、2年は大丈夫だそうですよ?」
「希少品以外はなるべく自領自国で賄って商業王国の商品でも仕入れているらしいです」
「王都では精霊王国の商品が希少ですもの。どの様な物があるか見てみたいわね」
「姫様、ご自分から商店を見に行く等はしたないですわよ?」
「なら貴女はお留守番ね?」
「いっ、行かないとは言っておりませんわ!」
「ふふっ、まあお酒とか化粧品とか以外にも珍しい物があったら見たいけど、1段落したらアドンの迷宮にでも行きたいわね」
「治安がまだ良くないかも知れませんよ?」
「だったら騎士隊としては余計に行かないとイケないわね!」
ワクワクした顔をする王女に騎士隊の面々はデパートに対してか迷宮に対してなのか分からないけど先が思いやられる思いがしていた。
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