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第2章 ゆるゆる逃避行は蚊帳の外?
第035話 閑話 ナージャ、元アドン男爵、レンリート伯爵視点
しおりを挟むナージャ視点
私は子供が大好きです。母がレンリート伯爵家の侍女をしていた関係から幼い頃からビアンカお嬢様のお世話をさせて頂きました。しかしここ数年、ビアンカお嬢様は貴族の子女としての自覚を持ち初め大人びてきてしまわれました。――非常に残念です。
ビアンカお嬢様が学院を卒業なされたらお暇を頂きましょうか。母の顔を潰しそうですね。何か考えないと。
ビアンカお嬢様の帰郷中グランツ様(レンリート伯爵)からの依頼でヴェルンと共にシャルロッテ様を迎えに行く事になってしまいました。
成る程、アイリス様の護衛ですか。年齢以外は可愛らしいですね。しかし私は本物の幼い子供が好きなのですよ? アイリス様を見て改めて年齢は重要な要素であると思いました。シャルロッテ様には熱弁しましたが全く受け入れて貰えませんでしたが。
だからと言って特段冷たくする理由もありません。護衛として適切に対応しましょう。
アイリス様、女装していらっしゃるのでお嬢様とお呼びしますが周りに世話を焼かれてるその様はビアンカお嬢様の幼女時代を思い出されます。
いけません。子供っぽい仕草に惑わされそうです。それにしても良く寝る子ですねこの子は。
コレット様方とお別れする時は知らずに泣いておられましたし、少なくとも悪い子では無さそうです。
ミリアーナ様はお嬢様がお好きなようです。が、どうやら私やシャルロッテ様まで対象になっているようです。私にその気はありませんが。
何でしょう、何となく私の子供好きと近しいモノを感じます。いえ、流石に私も子供に対してそんな欲情は持ち合わせていませんし勘違いですね。
確かにあの美容魔法は危険です。シャルロッテ様なんて31歳だったのにザイガスの街に着く頃にはまるで20代前半にまで見える程若返って見えます。
しかしどうやらアイリスお嬢様はシャルロッテ様が苦手なようです。シャルロッテ様はどうなのでしょう。試しに寝てる間にシャルロッテ様の膝に寝かせてみましたが何の疑問も持たずに懐いてしまいました。
大丈夫でしょうか、幼子並みに警戒心がありません。流石に心配になります。私も美容魔法の恩もありますし気に掛けるようにしましょう。
シャルロッテ様は懐かれたのが嬉しいのでしょうか、お嬢様には寛容です。しかしやはりシャルロッテ様のあの胸は反則です。ミリアーナ様も大概ですがアレは無いでしょう。一回り違う年齢のアドバンテージもアイリスお嬢様の美容魔法で薄れてしまい再認識させられました。
くっ、最近ではビアンカ様まで私より大きくなってしまわれて。シャルロッテ様のあの胸があれば孤児院で子供達を抱き締め放題になる(妄想です)と言うのに。
お嬢様の美容魔法で大きくならないでしょうか? 一考の余地がありますね。何とか頼んでみましょう。その為にも点数稼ぎをしておかないと。
アイリスお嬢様は大人、アイリスお嬢様は大人、アイリスお嬢様は大人、……くっ、見た目も行動も愛らし過ぎます! 何なんですかあの子は!? 惑わされてしまいそうです!!
元アドン男爵視点
私の名はルシオス、元はルシオス・オル・アドンと言う忌まわしき名を与えられていた。マトルア伯爵のクソ野郎は本当に俗物だ。悪しき貴族を煮詰めて出来た汚物そのものだ。
やりたい放題の杜撰な領地運営に忠言していたら迷宮と言う最悪の土地を領主として押し付けられてしまった。それまでは従士長として支えて何とか領地をやり繰りして来たが、私がいなくなって彼処の領民達がどう扱われるのかが気掛かりだ。
しかし今はそれどころではない。充分な領地領民が居れば迷宮であろうと冒険者、傭兵、領軍をまとめて対応出来ると言うのに。二つの寒村と迷宮だけ切り取って押し付けられても何も出来る訳が無いだろうがっ!!
マトルアの奴に家族を人質に取られてしまって逃げる事すら出来なくなってしまっている。こう言う事には無駄にやる気を出しやがって。
私がやれる事と言えば僅かな村人と共に迷宮で魔物を狩って迷宮の暴走を少しでも抑える事くらいだ。だがそんな素人の少数では碌に成果はあげられる筈もない。
結局迷宮は暴走し、スタンピードによって大きな被害を出してしまった。私に出来たのは事前に村人を逃がす事くらいだった。
その後被害が出た隣接する領地の領主達から賠償を迫られる事に、その中にこのクソ領地を押し付けたマトルアの奴まで居たのは流石に呆然とならざるを得なかった。
テメーがこれまで迷宮を野放しにしてた張本人だろうが! 人をこき下ろして来やがって!! その上私の家族を、親戚を、奴隷に堕としやがったんだ!! あのクズはっ!!!
許せない許せない、あのゴミクズがっ! ~~必ず殺してやる!!!
…………そう思っていても何も出来ずに溜まり続ける怨念を燻らせている時に、私はシャルロッテ・フローディア様と出会ったのだ。
月の女神を思わせる銀髪に青い瞳、色白の肌に整い過ぎた顔立ちが一見冷たそうに見えるが内に秘めた慈愛は隠し切れない。
奴隷に堕とされた家族達は皆シャルロッテ様によって救われたのだ。そしてレンリート伯爵領に共に保護させて頂く事になった。
更に爵位を返上してアドン男爵領をレンリート伯爵領に統合させて貰う橋渡しをして頂いた。元々はマトルアの領地だ、奴は反発するかも知れんが知った事か、寧ろざまぁみろだ!
いやしかしそれで揉めたらシャルロッテ様にも迷惑が掛かるか? と思っていたが全て想定内のようだった。
流石は私の白銀の月の女神様だ、これからも貴女に永久の忠誠を。
レンリート・ウル・グランツ伯爵視点
俺が20歳くらいの頃、隣国アデールから商工ギルド、精霊神社の噂が流れて来た。神聖教会はルードルシア教王国に、商業、冒険者ギルドはラージヒルド商業王国に総本山があって大陸各国から利益を掠め取っている。
超大国と言っていい両国との関係を考えると傍若無人な言動をされても何も言えなかった。商業ギルド冒険者ギルドと揉めれば塩等の生活必需品が止められてしまう。神聖教会はもっとタチが悪い、揉めれば邪教徒認定されて国内外に圧力を掛けさせ下手をすれば集中砲火の戦争だ。
だから先ずは隣国との交流と言う事で隣国の商工ギルドと細々と関係を作っていったのだ。徐々に広げて領内に競争原理を持たせる為に。
「だがシャルロッテの一言で一刀両断されてしまったんだよな」
まだ11、2歳くらいだったか? 物凄い冷めた目で言われたな。
「は? 領内より国全体で考えて下さい」
今でも思い出すと背筋が冷たくなるがその言葉で全面的に商工ギルド傭兵ギルド、精霊神社を引き入れる事にしたんだ。
どうなるかと思っていたが隣国アデール王国を含め既に幾つもの国に商工ギルドも精霊神社も入り込んでいた為、そう言うノウハウがあったようだ。まあ交渉は全てシャルロッテがやってたが。
「その後の俺の対応が間違いだったんだよな」
それらの功績の受け取りを拒否したシャルロッテの代わりに父親の方を重役に就けてやったら増長して不正を働くようになるなんてな。
それを見つけたのもシャルロッテだが罰は必要だった。父親の方は寒村の管理に回したがシャルロッテには多大な迷惑を掛けてしまった。
しかしその後も何かと大きな貢献をしてくれている。どうにか爵位を受け取って貰えんと本当に俺の立場がない。
「それにアドン元男爵領の迷宮にライハルト子爵領か」
迷宮の方はシャルロッテの手からほぼ離れたと言って良いがアドン、いや今はただのルシオスか、奴も有能なんだがな。シャルロッテに傾倒し過ぎる。アレでは既に信仰レベルだろ。
それが無ければ従士にでも引き上げるのに。シャルロッテの奴め、いったい何をすればああなるのか。
しかしライハルト子爵領はどこまで切り崩して行くつもりなのか、考えたら恐ろしくなって来たな。
聖女の件も頭が痛い。大巫女並の能力って何だよ。それも精霊神社の外でも使えるって……。
精霊神社の巫女は精霊神社の中では隔絶した能力を発揮するのだが、神社の外ではその能力を発揮出来ないらしい。だから神聖教会の連中も誘拐して言う事を聞かそうとはしないそうだ。
まあ本来、誘拐等しないのが当たり前の事なのだがな。
巫女とは精霊神社以外では役立たずになるのに、此奴は何処でも回復魔法を使い放題らしい。俺の爵位で守り切れるか?
実際に会ったら美しい少女にしか見えないな。艶のある桃色の髪と瞳に輝くような白い肌、森で会ったらお伽話に出て来る妖精かと思ってしまいそうな程だ。
確かに聖女と言われるだけはある。しかし、此奴は何であのシャルロッテに懐いてんだ? 俺ですらちょっと怖いのに。
うわ、膝枕で寝出したよ。て言うか貴族の前で心臓太過ぎないか? そしてシャルロッテ、お前も何で困った子扱いで頭を撫でてんだよ。
シャルロッテより歳上なんだよな? これ35歳なんだろ? 14歳の娘のビアンカより幼そうな見た目と行動が異常過ぎてタチの悪い化け物に見えてきたぞ?
――マジかよ、コレをウチに取り込まないとイケないの? 嘘だろ? 取り敢えずビアンカに押し付けよう。
そして帰って来たらシャルロッテにでも押し付けよう。俺には無理だ。
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