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第4章 ふらふら日常生活は波瀾万丈?
第022話 孤児院で
しおりを挟む途中ナージャさんと商工ギルド運営の孤児院に行った。治癒院の裏手にあるこの孤児院からは何時も笑い声が聞こえて来て印象的だったんだよな。ライハルト子爵領の孤児院て人目に付かないように息を殺して生活していて、子供も笑う元気すら無いのが普通だったからな。
ここでは15歳以下の子供達が200人程暮らしていて10歳以上になると商工ギルドに登録して、色々な手伝いをしながら適正に合わせて成人後職に就くそうだ。
食べ物も充分にあるようなのでお菓子を持って行ったけどお菓子そっちのけで揉みくちゃにされた。
「アイリスちゃんはあたしたちとアソぶのーー!!」
「アイリスは男なんだから俺達と遊ぶに決まってるだろーーっ!!」
「やあああーーーーっ!!」「うあぁあああーーーん!!」
…………地獄だ。
小さな子供達はしがみついて泣き叫ぶし力のある子供達は加減知らずに引っ張り出そうとする。更に服は脱がされるし、くすぐられるしのやりたい放題だ。
孤児だから俺の父性に惹かれるのも無理は無いんだけどね。そう思うと無碍にも出来ないな。ただひたすら耐えるだけだ。
『…………』
腕が千切れるかと思う程だったけど無様に泣き出す訳にもいかないと、何とか耐えていたら結局力の強い子供に引かれて庭で剣の相手をする事になった。
ナージャさんの方が強いのにとは思うけど事前に秘密にするよう言われた。何か深い意味があるのだろう。
(子供相手に戦うなんてとんでもないです。私は子供を愛でたいのです!)
「12歳? 1こ上か? お前背ぇ小っちゃいなぁ。ちゃんとメシ食ってんのか?」
ぐふぅっ!? 子供に小っちゃい言われたよ!?? 誰も俺の嘘年齢に疑いもしないし節穴しかいないのか??
――此処の子供達は今まで見て来た孤児院と違ってちゃんと食べてるからか俺より体格が良いのが結構いる。でもだからってオジサンを子供扱いして欲しくは無いんだよ?
「まあ良い、俺は此処で1番強いんだ。相手してやるから掛かって来な」
そう言って生意気そうな子供が木の棒を渡して来た。うーん、……頼んでないんだけど。
しかし大人として孤児院に来て子供達の相手をしない訳にもいかないか。仕方がない。軽く相手してやらないとな。……って気ぃ抜いて負けたら恥だな。
渡された木の棒を握り込む。握りと鍔の部分に重しが付けられて真剣に近いバランスになる工夫かされてるな。
気を取り直して構えるけど相手の子供は待ちの姿勢だ。んん~、俺の方から来いってか。仕方ないから軽く面打ちすると力一杯弾き上げられた。
「うらっ!」
そのまま踏み込んで上段から振り下ろして来る。ちょっと大振りなので難なく躱して軽く腕を打ち据えてから首筋に棒を突きつけた。
「うおっ!?」
「うわー、すごーい」「アイリスちゃんつよーい!」
「くっ、もう一回だ!!」
「待った次は俺だぞ!」「僕もやりたい」
俺の技量も上がってるのか余裕があるな。――まあ子供相手だけど。
何とか怪我をさせない様に、でも余り考えたくないけどこの子達の中には将来傭兵のような戦いに身を置くのもいるだろう。戦いを舐めないように力を見せておく必要もあるよな。
『丁度良い、相手の棒を弾くのではなく逸らしてみるのじゃ』
「んっ」コクリ
何の意味があるのか知らないけど子供相手だし余裕はあるからリリィの言う通りにやってみる。
初めはしなる木の棒だったから上手く逸らせず弾いてしまったりしたけど、慣れていくと徐々に思い通りに逸らせるようになってきた。
『うむ、丸太を撫で斬りつけた成果が出て来たの。剣の間合いを分かって扱いも柔らかくなってきたのじゃ』
うん?
『間合いを読み違えたり強く斬りつけたら手首を痛めるからの、自然と間合いの取り方と剣の扱いも上手くなるのじゃ』
なるほど?
『何で疑問系なのじゃ!?』
だって子供相手だしミリアーナやナージャさん達相手に出来る気がしないんだもん。
『くっ、それでもお主の技量は伸びておるんじゃからな!自覚せい!!』
怒られた!?いや褒めてるのか??
『知らんのじゃ!!』ぷいっ
リリィがプンプンしてるのに困惑しながら何人もの相手をさせられた。子供相手だけど何とか上手く手加減出来たかな。
ちょっと一息、……と思ったら今度は女の子達に引っ張られてお人形遊びや絵本読みに付き合わされた。何とも甘ったるい空間だ、けど孤児院の子供達がそんな優しい世界にいると言うのは俺の気持ちも暖かくなるな。
それから何とかナージャさんの側に避難していると、特に小さな3・4歳くらいの子供達集まって抱き付いて来た。孤児院の院長も近くにいるからか年上の子供達もちょっかいを出さなくなった。――此処が安全地帯か。
ナージャさんを見ると3歳くらいの女の子を膝に乗せて満面の笑みを浮かべていた。
「アイリスちゃんは大人気ですね」
望んで無いけどな。まあこうやって抱き付いて来るだけならちょっと嬉しいかな? 小さい頃の妹を思い出す。それに俺に子供がいたらこんな気持ちになるのかね。
「へえ、アイリスちゃん妹いるの? 可愛い?」
孤児院でも年長の娘が一緒に幼児をあやしながら話しかけて来た。
「んっ、ねぇねは世界一可愛い」
「ねぇね?」
「んっ、ねぇね」
「妹をねぇねって呼んでるの?」
「んっ? ん、アネモネでねぇね」コクリ
? 何か皆んなヒソヒソしてるな。
うん? 確かに妹の方が背が高いけど何か? ふふっ、そうだよ、俺だけ愛称で呼んでって言われたんだよな。仲が良い証拠だろ、早く会いたいな。
「それってさ、逆に妹扱いされてるんじゃない?」ヒソヒソ
「「「だよねー」」」ヒソヒソ
『会ったばかりの子供達が気付くのに何故本人は気付かんのか……』
「ナージャさん、今日は特にご機嫌ですね」
「院長さん、アイリスちゃんといると子供達も仲良くしてくれる様なのです!」
「ふふっ、そうですか」
「ええ、剣の相手をすればヤンチャな子供達は寄って来るでしょうけど、私は子供達に甘えられたいのであって剣を向けられたい訳ではないですから」
『コレが深い意味か……、此奴もいい加減業が深いのじゃ』
「おやおや、アイリスちゃんも寝てしまった様ですね」
「ああ、疲れたのでしょう。ふふっ、この子は凄く寝つきが良いんですよ」
幼い子供達と一緒に寝てるアイリスを愛おしそうに頭を撫でるナージャ。もうナージャにはアイリスが完全に子供に見えている様だった。
『まあ無理もないのじゃ。この様ではの』
「アイリスちゃん、起きて下さい」
「んん~……」
何時の間に寝てたのか、目が覚めたら孤児院じゃなく商工ギルドに来ていた、びっくりだな。
『3歳児に起こさないように気を使われておったのじゃ』
ふーん、良い子達だなぁ。
『……うぬぅ、お主がそれで良いなら良いのじゃが……』
?? 何かおかしな事があったか? うーん、……分からん。ナージャさんに抱っこされたまま起こされたから降りて膝枕にしてまた眠りにつく。
「あっいや、アイリスちゃん起きたのですよね? って寝ないで下さい?」
むう、起こされた。何だ?
「アイリスちゃん良く寝てましたね。子供達に挨拶出来なかったけど、また一緒に来れば良いですよね? 子供達も楽しみにしてますよ?」
「んう? ん」コクリ
『さりげなく次回の約束を取り付けおったのじゃ』
剣の相手は疲れるんだよなあ。けど子供達の事を盾に取られては拒否出来ないじゃないか。親がいない子供達だからな、俺の父性に惹かれたと言う所もあるんだろうしな。
『お主は何時も通りじゃなぁ』ジト目
商工ギルドではギルド長のダールトン様からぬいぐるみのオーダーメイドをする事になった。ぬいぐるみのオーダーメイドって何だろ?
眠気に襲われうつらうつらとしながらナージャさんや職員の人達に適当に答えていくと何とか終わった様だった。
「いえお代は結構ですよ」
「私がプレゼントしたいのです」
「ふむ、しかし輸送費を抜いても一介の侍女に払えるような物ではないのですがね」
「……幾らでしょう?」
「………」ボソボソ
「くっ、……」ボソボソ
「それでは値引きをして、更に三分の一を私が、もう三分の一をギルドが出しましょう」
「ぬぬぬ、無念ですがこの品質では仕方ないですね。アイリスちゃんの為ですし、……受け入れましょう」
俺の為?
『此奴も大概じゃの』
「ありがとうございます。私達もアイリス様の為になる事が出来て光栄です」
終わったかー、でもこの後パーティーに出なきゃイケないんだよなー。はぁー、家帰って寝たいわー。
『今まで寝とったじゃろ』
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