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始まりのプローロ
M09. 村長宅
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ローグの家は裏門を入ってすぐの場所にあった。家の前に着くとジュゼィが扉を叩く。
「ローグくん、いるかい?」
中でドタドタと音がする。ほどなくして家の扉が開いた。
「ジュゼィさん!思ったより早かったですね。
やはり何か問題がありましたか………おや?」
「村長さん、ロディーナ戻りました」
「おぉ!ロディーナくん!…ボロボロじゃないか!大丈夫なのかい?!
ホロウノートの叫び声がしたと報告があって心配していたんだよ…。急遽ジュゼィさんに助けに向かって貰ったんだが…大変な思いをさせてしまったようだね…。」
「いえ、ありがとうございます!おかげで助かりました」
「まぁ、私は間に合わなかったんだがね…」
「ん?それはどういう…?」
その時、ローグが爽志に気付いた。
「えっと、君は―」
「ローグくん、良かったら中に入っても?彼の紹介もしたいんだ」
ローグの言葉を遮るようにジュゼィが言った。
「…あぁ、そうですね!申し訳ない!では、どうぞ中に」
中へと入ると、ローグの部屋は本や書類などが辺りに散らかっていた。まるで竜巻が通過した跡のようだ。
「面目ない…。ホロウノートの報告を聞いてから村の文献に対抗策の記述が無いかと探し回っていたんだ。今片付けるのでちょっとお待ちいただきたい」
ローグは手際よく片付けていく。先ほどの惨状が嘘のように整理された。
「お待たせした。では、こちらへ」
ローグは奥のテーブルに案内してくれた。4人はそのまま椅子に腰かける。
「さて、休む間もなくすまないね。…では、早速報告をお願い出来るだろうか」
「はい、問題ありません」
「ありがとう。だが、まずその前に彼の紹介をして貰っても構わないかな?」
「はい、この方は―」
「村長さん初めまして!俺は爽志。音方 爽志って言います。職業は高校生。
この村へは道具店に用事があって立ち寄りました」
ロディーナの紹介を待たず、何故か爽志の方が自己紹介をし始めた。きちんと挨拶をしなければという気持ちで先走ったらしい。
「あ、あぁ、ご丁寧にありがとう、ソーシくん。では、なぜ君は私の家に来たんだ?」
ローグは多少面食らったが、爽志な真っ直ぐな眼差しをみると、少し警戒を解いた。
「村長さん、それは私からご説明させてください」
ロディーナがそう言うと、ローグは頷いてその先の言葉を待った。
「順を追って説明しますね。まず、私は村長からのご依頼を受けて朝早くに村を出ました―――」
ロディーナは泉のことや裏山の崖のこと、ホロウノートのことや祭壇のこと。泉での出来事。そして、爽志のこと。体験した一通りのことをローグに報告した。
ローグはその間、驚いたり、考え込んだりと、頷いたりと、真剣に聞き入っていた。そして、全ての報告を聞き終えたローグは口を開いた。
「では、洞窟にあった祭壇にロディーナ君が祈りを捧げたところ、ソーシくんがどこからともなく現れてホロウノートを消滅させ、リトルホロウをも退治したというわけだね?」
「はい、その通りです」
「ソーシくんも間違いないかい?」
「はい、そうですね。間違いない…と思います」
「なるほど…。しかし、ホロウノートが発現した上に、リトルホロウまで現れるとは…危うく大惨事になるところだ。
…泉の件は頭が痛いが、少しの間使えなくなるだけならば村の皆も理解してくれることだろう」
「…すみません!」
「いやいや、君のせいじゃない。全ては音災が原因なのだから」
「そう言えば、ホロウノートが発現した裏山の祭壇に気になる文字が書いてあったんですが、村長さんは《異世界のムジカ》という言葉にお心当たりはありませんか…?」
「…異世界のムジカ…だって?」
「もしかして、何かご存じなんですか?」
「ご存じも何も、ついさっき私が村の文献を調べていたという話はしただろう?
その中に確か《異世界のムジカ》という言葉を見た気がするんだ」
「え?!」
一同は驚き、ローグの次の言葉を待った。
「えーと、どれだったかな…。あーっと、これだこれだ」
ローグは資料の山の中からひと際古い文献を引っ張り出した。いたるところが破れて痛んでいる。
「これは、私のおじいさんがこの村を開拓する時に帝都から持ち込んだ書物なんだが…」
表紙にはうっすら《帝都伝承覚書》と書かれている。
「ところどころ文字が薄くなっていて読みづらいのだが、ここを見てみてくれ」
ローグが書物のある部分を示した。そこには古めかしい文字で途切れ途切れにこう書いてある。
《異世界のムジカ混迷せ…世界……現る。ムジカ瞬く……世界…音……調律……。……………あるべき………へと還らん》
「異世界のムジカ…世界…音…調律…これって…。あの祭壇に書いてあった文と似ています!」
「やはりそうか…。詳しいことはその祭壇を調査してみないとわからないが、同じ事柄について書かれていると考えた方が自然だろう」
ローグは少し考えてから
「これから話すことは我々にとって、特にソーシくんには突拍子もない話になるが、聞いてくれ」
「…わかりました」
ソーシは頷いた。自分の置かれた立場がわかるかもしれない。ローグの話を一言一句聞き逃すまいと、真剣に耳を傾ける。
ローグは重々しく語りだした。
「ローグくん、いるかい?」
中でドタドタと音がする。ほどなくして家の扉が開いた。
「ジュゼィさん!思ったより早かったですね。
やはり何か問題がありましたか………おや?」
「村長さん、ロディーナ戻りました」
「おぉ!ロディーナくん!…ボロボロじゃないか!大丈夫なのかい?!
ホロウノートの叫び声がしたと報告があって心配していたんだよ…。急遽ジュゼィさんに助けに向かって貰ったんだが…大変な思いをさせてしまったようだね…。」
「いえ、ありがとうございます!おかげで助かりました」
「まぁ、私は間に合わなかったんだがね…」
「ん?それはどういう…?」
その時、ローグが爽志に気付いた。
「えっと、君は―」
「ローグくん、良かったら中に入っても?彼の紹介もしたいんだ」
ローグの言葉を遮るようにジュゼィが言った。
「…あぁ、そうですね!申し訳ない!では、どうぞ中に」
中へと入ると、ローグの部屋は本や書類などが辺りに散らかっていた。まるで竜巻が通過した跡のようだ。
「面目ない…。ホロウノートの報告を聞いてから村の文献に対抗策の記述が無いかと探し回っていたんだ。今片付けるのでちょっとお待ちいただきたい」
ローグは手際よく片付けていく。先ほどの惨状が嘘のように整理された。
「お待たせした。では、こちらへ」
ローグは奥のテーブルに案内してくれた。4人はそのまま椅子に腰かける。
「さて、休む間もなくすまないね。…では、早速報告をお願い出来るだろうか」
「はい、問題ありません」
「ありがとう。だが、まずその前に彼の紹介をして貰っても構わないかな?」
「はい、この方は―」
「村長さん初めまして!俺は爽志。音方 爽志って言います。職業は高校生。
この村へは道具店に用事があって立ち寄りました」
ロディーナの紹介を待たず、何故か爽志の方が自己紹介をし始めた。きちんと挨拶をしなければという気持ちで先走ったらしい。
「あ、あぁ、ご丁寧にありがとう、ソーシくん。では、なぜ君は私の家に来たんだ?」
ローグは多少面食らったが、爽志な真っ直ぐな眼差しをみると、少し警戒を解いた。
「村長さん、それは私からご説明させてください」
ロディーナがそう言うと、ローグは頷いてその先の言葉を待った。
「順を追って説明しますね。まず、私は村長からのご依頼を受けて朝早くに村を出ました―――」
ロディーナは泉のことや裏山の崖のこと、ホロウノートのことや祭壇のこと。泉での出来事。そして、爽志のこと。体験した一通りのことをローグに報告した。
ローグはその間、驚いたり、考え込んだりと、頷いたりと、真剣に聞き入っていた。そして、全ての報告を聞き終えたローグは口を開いた。
「では、洞窟にあった祭壇にロディーナ君が祈りを捧げたところ、ソーシくんがどこからともなく現れてホロウノートを消滅させ、リトルホロウをも退治したというわけだね?」
「はい、その通りです」
「ソーシくんも間違いないかい?」
「はい、そうですね。間違いない…と思います」
「なるほど…。しかし、ホロウノートが発現した上に、リトルホロウまで現れるとは…危うく大惨事になるところだ。
…泉の件は頭が痛いが、少しの間使えなくなるだけならば村の皆も理解してくれることだろう」
「…すみません!」
「いやいや、君のせいじゃない。全ては音災が原因なのだから」
「そう言えば、ホロウノートが発現した裏山の祭壇に気になる文字が書いてあったんですが、村長さんは《異世界のムジカ》という言葉にお心当たりはありませんか…?」
「…異世界のムジカ…だって?」
「もしかして、何かご存じなんですか?」
「ご存じも何も、ついさっき私が村の文献を調べていたという話はしただろう?
その中に確か《異世界のムジカ》という言葉を見た気がするんだ」
「え?!」
一同は驚き、ローグの次の言葉を待った。
「えーと、どれだったかな…。あーっと、これだこれだ」
ローグは資料の山の中からひと際古い文献を引っ張り出した。いたるところが破れて痛んでいる。
「これは、私のおじいさんがこの村を開拓する時に帝都から持ち込んだ書物なんだが…」
表紙にはうっすら《帝都伝承覚書》と書かれている。
「ところどころ文字が薄くなっていて読みづらいのだが、ここを見てみてくれ」
ローグが書物のある部分を示した。そこには古めかしい文字で途切れ途切れにこう書いてある。
《異世界のムジカ混迷せ…世界……現る。ムジカ瞬く……世界…音……調律……。……………あるべき………へと還らん》
「異世界のムジカ…世界…音…調律…これって…。あの祭壇に書いてあった文と似ています!」
「やはりそうか…。詳しいことはその祭壇を調査してみないとわからないが、同じ事柄について書かれていると考えた方が自然だろう」
ローグは少し考えてから
「これから話すことは我々にとって、特にソーシくんには突拍子もない話になるが、聞いてくれ」
「…わかりました」
ソーシは頷いた。自分の置かれた立場がわかるかもしれない。ローグの話を一言一句聞き逃すまいと、真剣に耳を傾ける。
ローグは重々しく語りだした。
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