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ライバル 五
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夕方の日差しが柔らかい、午後3時であった。世間一般では、この時間帯は、例えば社会人の場合、眠気が襲い、仕事に身が入らない時間帯であるかもしれない。しかし、優の心拍数は、そんなことは気にしていられないほど、上がっていた。優は、探していた占い師の所に、たどり着いたのである。
そして、優はそこの玄関の呼び鈴を鳴らした。この占い師なら、史香のことを何か知っているかもしれない―。優は、期待を大きく持ちながら、中の部屋からの返事を待った。また優は、上がり過ぎた心拍数を少し下げようと、懸命になってもいた。
「はい、どうぞ、お入り。」
中から、優を呼ぶ声が聞こえた。
「失礼します、はじめまして。私、大野優という者です。…あっ!」
優は、思わず声を出した。
「おやあんたかい。あたしも覚えてるよ。久しぶりだねえ。その節は、どうもありがとう。」
なんとそこには、以前、史香とのデートの時に荷物運びを手伝った、あのおばあさんが、座っていたのである。
「ああ、いえいえ。…すみません、ちょっとびっくりしてしまって。ここで、働かれていたんですね。」
優は、史香の日記を読んだ直後だったので、はっきりと、このおばあさんとの一件を、思い出していた。
「そうだねえ。意外だったかい?」
「いえ、そういうわけではありませんが…。ということは、以前僕たちが運んだ荷物って、」
「占いに使う道具だよ。」
優が言い終わるか言い終わらないかのうちに、おばあさんは、そう答えた。
「…そうですか。それで今日は、」
「女の子のことだね。」
どうやらこの占い師のおばあさんは、せっかちなところがあるらしい。
「はい、その通りです。でも、どうして分かったんですか?」
「前にあんたの連れだった女の子がここに来た時も、同じような反応してたよ。」
おばあさんは、優の質問には直接答えずに、そう言った。
「あ、じゃあやっぱり史香…、いや、新川史香という女性は、ここに来たんですね?」
「ああ、来たね。あんたたちには前に世話になったから、特別に教えてあげるよ。本当は、客がこの店に来たかどうかは、教えないことにしてるんだけどね。」
「そうですか。ありがとうございます!」
「これで1人分の借りは返したよ。じゃあ、今から2人分の借り、返すからね。というわけで今から、タダであんたのこと、見てあげるよ。」
「いえ、すみません。申し訳ないのですが、僕は占いはそんなに…。それより今史香は、どこにいるんですか?」
「あんた、さっき、別の女の子に告白されたね?」
「えっ、どうしてそれを…。」
「自分で言うのも何だけど、あたしゃそこそこ腕のきく、占い師なんだ。だから、大抵のことは分かるよ。その子は、前にここに来たお嬢さんの友達で、あんたとも音楽仲間だね。」
「はい、その通りです。」
その後しばらくの間、優は占い師に、過去を言い当てられた。そして優は、このおばあさんは、確かに腕の立つ人だと、認めざるを得なかった。
「いろいろ見て頂き、ありがとうございました。ところで、史香…新川史香の件についても、お伺いしたいんですが…。」
「さあ、これで借りは返したよ。後は、客の個人情報だから、答えられないね。
でも、1つだけ言えることがあるとしたら、あんた、その子のことが好きなんだよねえ?だったらその子のこと、信じてあげたらどうだい?」
「そうですか、分かりました。今日は、ありがとうございました!」
そう言って、優は占い師の部屋を出た。気づけば、時刻は午後4時になっており、優は、あっと言う間の1時間だったな、そう思った。
そして、優はそこの玄関の呼び鈴を鳴らした。この占い師なら、史香のことを何か知っているかもしれない―。優は、期待を大きく持ちながら、中の部屋からの返事を待った。また優は、上がり過ぎた心拍数を少し下げようと、懸命になってもいた。
「はい、どうぞ、お入り。」
中から、優を呼ぶ声が聞こえた。
「失礼します、はじめまして。私、大野優という者です。…あっ!」
優は、思わず声を出した。
「おやあんたかい。あたしも覚えてるよ。久しぶりだねえ。その節は、どうもありがとう。」
なんとそこには、以前、史香とのデートの時に荷物運びを手伝った、あのおばあさんが、座っていたのである。
「ああ、いえいえ。…すみません、ちょっとびっくりしてしまって。ここで、働かれていたんですね。」
優は、史香の日記を読んだ直後だったので、はっきりと、このおばあさんとの一件を、思い出していた。
「そうだねえ。意外だったかい?」
「いえ、そういうわけではありませんが…。ということは、以前僕たちが運んだ荷物って、」
「占いに使う道具だよ。」
優が言い終わるか言い終わらないかのうちに、おばあさんは、そう答えた。
「…そうですか。それで今日は、」
「女の子のことだね。」
どうやらこの占い師のおばあさんは、せっかちなところがあるらしい。
「はい、その通りです。でも、どうして分かったんですか?」
「前にあんたの連れだった女の子がここに来た時も、同じような反応してたよ。」
おばあさんは、優の質問には直接答えずに、そう言った。
「あ、じゃあやっぱり史香…、いや、新川史香という女性は、ここに来たんですね?」
「ああ、来たね。あんたたちには前に世話になったから、特別に教えてあげるよ。本当は、客がこの店に来たかどうかは、教えないことにしてるんだけどね。」
「そうですか。ありがとうございます!」
「これで1人分の借りは返したよ。じゃあ、今から2人分の借り、返すからね。というわけで今から、タダであんたのこと、見てあげるよ。」
「いえ、すみません。申し訳ないのですが、僕は占いはそんなに…。それより今史香は、どこにいるんですか?」
「あんた、さっき、別の女の子に告白されたね?」
「えっ、どうしてそれを…。」
「自分で言うのも何だけど、あたしゃそこそこ腕のきく、占い師なんだ。だから、大抵のことは分かるよ。その子は、前にここに来たお嬢さんの友達で、あんたとも音楽仲間だね。」
「はい、その通りです。」
その後しばらくの間、優は占い師に、過去を言い当てられた。そして優は、このおばあさんは、確かに腕の立つ人だと、認めざるを得なかった。
「いろいろ見て頂き、ありがとうございました。ところで、史香…新川史香の件についても、お伺いしたいんですが…。」
「さあ、これで借りは返したよ。後は、客の個人情報だから、答えられないね。
でも、1つだけ言えることがあるとしたら、あんた、その子のことが好きなんだよねえ?だったらその子のこと、信じてあげたらどうだい?」
「そうですか、分かりました。今日は、ありがとうございました!」
そう言って、優は占い師の部屋を出た。気づけば、時刻は午後4時になっており、優は、あっと言う間の1時間だったな、そう思った。
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