ペニスマン

終焉の愛終(しゅうえんのあいうぉあ)

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9.恐怖の課外授業1

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 学校の課外授業で大宮区内にある博物館にやってきた真弓含む2ーDクラスは、正面の古臭い建物を見てガッカリしていた。

「ま、まゆみん、ここお化け屋敷の間違いじゃないよね……」
「い、いや、確かに大宮立博物館のはずだ。調べによると、近日退館予定の」
「じゃああたし達、これから潰れる博物館見に来たってこと~?」
「その通り」
「有式、帰っていいか」
「ダメに決まってるよ、赤塚。さぁ、ぐずぐずしてないで僕たち同じ班なんだから中入ろうか」
「まゆみん、腕つなごっ♪」
「嫌だ」
「えなんで~」

 外から見た建物は壁や天井が所々ひび割れ剥がれ落ちていたが、扉をくぐって館内に入ってみると、想像よりも小奇麗であった。
 シンプルなホワイトデザインの壁、古き良き木目のある床、装飾品はどれも落ち着いていて、見る者を安心させる場所だ。
 
「意外と綺麗だね、まゆみん」
「うん。なんか想像と違うっていうか」
「近日中に潰れる感じはしないな」
「そう、赤塚。とてももうすぐ潰れる場所には思えないんだよ」

 教師から配られた入館チケットを受付に渡すため、真弓たちは入口ホールの手前にいる女性に声を掛ける。

「課外授業にやってきた学生様ですね? チケットを預かりますよ」
「ありがとうございます。あの、聞いていいですか? この博物館のこと」
「勿論、いいですよ。我が館のことなら、できる限りのことはお答えします」

 チケットを渡すがてら、笑顔で対応してくれる女性に真弓は質問する。
 受付の女性は、三十代後半ぐらいの年齢に見える、折り目正しく制服を着こなした美人だ。
 
「実はこの博物館のことを事前に調べたんですが、どうして近日退館するんですか? 僕たち、ここに入ってみて、とてもそんな、失礼になってしまうかもしれませんが、潰れるようには見えないんです」
「あぁ、そのことですか。お気を使ってくれましてありがとうございます。一応私はこの館を運営している代表の妻なのですが、元々運営していた夫の祖父が先日亡くなってしまったので、節目がいいということで、近日退館することに決定したんです」
「なるほど……そういう事情があったんですね。納得しました」
「いえ、このほかにも、気になったことがあればぜひ遠慮せず質問してくださいね。では、僅かばかりの時間、この館をお楽しみくださいませ」

 受付の女性に礼を言った後、真弓たちは受付を去っていく。
 その様子を眺めている者がいた。
 まだ十歳にも満たしていないだろう、あどけない少年は静かに真弓たちを見つめている。
 真弓は歩いている途中で後ろを振り向く。

「どうしたの、まゆみん」
「……ううん、何でもない」

 真弓が振り返った時には、すでに少年の姿はなくなっていた。
 ──今、誰かに見られていたような。気のせいか。
 真弓は確かに感じた視線にクエスチョンマークを頭に浮かべながら、館内絵画ゾーンエリアに足を踏み入れる。
 絵画ゾーンは、日本歴史絵画や、海外の美術的絵画が壁にかけられていて、多種多様な文化を取り入れているようだった。

「まゆみーん、これ綺麗な女の人の絵だねー」
「綺麗だね、これは海外の絵か」
「こっちはお侍さんの絵だよ~」
「日本の絵」
「うわー猫ちゃんもいる~」
「動物の絵」
「花の絵だ~」
「植物の絵」
「おーこっちは……」
「ちょっと、古屋敷あんまり動き回らないで、恥ずかしいから!」
「太陽と月の絵だ~」
「はぁ、聞いてない……」

 子供のようなはしゃぎようで、次々と目移りして動き回る古屋敷に、真弓はため息をつく。
 赤塚が「大変だな、保護者みたいで」と真弓と同じ班のくせして他人事を言ってくる。
 真弓の後ろの位置にある女性の肖像画を、視界の端で捉えながら、古屋敷を本気で注意しようとした瞬間──絵の女性の目が、左に動く。

「あれ、今、絵の女性が……、いや、気のせいだよなうん。気のせいだよははは」

 じっくりとその絵を観察しても、目は真っすぐと正面を見つめており、その奥深い色の瞳は動かない。
 真弓は常識で塗り固めた頭の中で、あり得ないことを常識で上塗りして、不安をかき消す。
 
「まゆみーん、早く次行こうよー!」
「今行くから、そんな館内で大声出すなっ」

 真弓たちが次に向かったのは、日本人形や武士の鎧、日本刀、洋風の騎士の甲冑など、和洋折衷の模型のコーナーである。

「この博物館を建てた人は、日本のことも、海外のことも好きな人だったんだね。飾られている物の多用さを見ればそのことがわかる」
「有式は興味ないのか、こういう日本刀とか」
「うーん、カッコいいとは感じるけど、大はしゃぎする歳でもないしね。古屋敷は例外だけど」
「大人ぶっといて、本当は古屋敷と一緒にはしゃぎたいんじゃないか?」
「そんなわけ……そりゃあ、子供の時みたいに、分かりやすくはしゃぎまわれたら、楽しんだろうけどさ。そういう赤塚のほうは……言うまでもないか」
「当然。おれが興味あるのは、超常現象とアメコミだけだ」
「そうだよ、──な、赤塚?」

 日本刀を眺めながら赤塚と会話していた真弓は、赤塚に視線を戻し、なぜか赤塚がその場から消えていることに気づく。まるでさっきまで会話していたのが嘘みたいに、一瞬の間に姿を消した赤塚。
 
「赤塚? 赤塚! どこにいったんだあいつ」

 トイレでも言ったのだろうか。
 それとも、何か真弓のことを脅かすつもりでふざけて隠れたのだろうか。
 しばらく辺りを見回し、探してみるが、一向に赤塚は姿を現さない。

「古屋敷! 赤塚がいなくなった!」
「まゆみん、館内で大声出したらダメなんだよ」
「どの口が……いや、そんなことはどうでもいい。赤塚がどっかにいってしまったんだ。さっきまでは話してたんだけど」

 流石に異常事態だと判断した真弓は、かなり前に進んでいた古屋敷を呼び戻し、赤塚がいないことを伝える。
 
「あかつん、トイレ?」
「僕もトイレだって最初は考えた。でも、トイレにしては流石に長すぎる」
「あかつん、大きい方なんだよ。下痢で」
「下品だな古屋敷。赤塚が何も報告せずに、勝手にトイレ行くかな」
「じゃあ違うかもね、あかつんはそんな人じゃないもん。違うんだとしたら、あかつんは何処へ行ってしまったの?」
「何処へって……そんなの、館内のどこかか、外のどっちかしか。とにかく、探しに行こう」

 館内を一通り探し回って、分かったことが二つある。
 一つ、赤塚はどこにもいなかったこと。
 二つ、赤塚以外にも、真弓と古屋敷の他の班がいなくなっていた。
 つまり、真弓と古屋敷以外、皆揃って姿を消していたのだ。
 受付の女性も、教師も。

「どういうことだ、みんないなくなってる」
「まだだよまゆみん、みんな何かがあって、館外にいるかもしれないよ」
「そうだな、入口に向かおう」

 この博物館を出入りするには、真弓たちが最初に入って来た入口のみしかない。
 真弓たちは閉まっている入口の扉を開こうとして、しかし、鍵がかかっていて外に出れなかった。

「何で鍵が。おい、誰か! 誰かいないのか! 鍵を開けてくれ!」
「出れないってことは、あたし達……この館内に閉じ込められた?」
「こ、怖いこと言うなよ、閉じ込められたとか」
「ホラー映画ではよくある展開だよ、扉が開かなくなって外にでれなくなるの。まゆみん、ホラー映画普段みないの~?」
「……人並みには」
「なにそれ、もしかしてまゆみん、ホラー苦手~? 怖いの苦手なんだ~♪」
「馬鹿にするな、ホラー映画くらい……一人じゃなければ見られる……」
「やっぱり怖いんじゃん、ぷぷぷ、まゆみんの弱点発見~♪」
「笑ってる場合じゃないよ古屋敷、閉じ込められたなら、僕たちどうやって外に出ればいいんだ……?」
「確かにー」

 外に出られなくなった真弓たちは、館内脱出手段を考え、やがて思いついた案は、この博物館の管理人室に鍵を取りにいくことだった。

「大抵管理人の部屋がどこかにあるはず。そこを探しあてれば、鍵がある(希望的観測)」
「まゆみん、天才! ようーし、管理人室を探しにいこ!」
「古屋敷、腕を繋いでくれないか……?」
「やっぱビビってるんじゃーん、いいよまゆみん、あたしの腕を貸してあげる♪」

 真弓は、馬鹿にされる古屋敷に屈し、腕を繋ぐと少し安心感を得た。

 
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