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四章
田辺千春
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田辺千春はあの日も一緒にいた結衣子の唯一の親友であった。小学校に入学したばかりの頃、周りはグループを作っていると言うのに結衣子は入れないでいた。元々人見知りでおどおどするタイプの結衣子は一人でいた方が気を使うこともなく良かったのだろう。だからあえて自分からグループに入ろうとしなかった。と大人になった今は思う。三つ目のグループができた頃転校生がやって来た。
田辺千春だった。結衣子と同じで内気で人見知りの彼女もどのグループにも入ろうとはしなかった。そんな時体育で二人一組でリレーをするためグループを組むことになった。足だけは早かった結衣子はクラス中から組もうと誘われたがどの誘いも断った。結衣子が真っ先に向かったのは千春のところだった。なんだか自分に性格が似ている気がしてどうしても組みたかった。最初はお互いよそよそしくしていたが、慣れてくるとそんなこともなくなり一緒に登下校をすることはもちろん、お手洗いまでも一緒だった。結衣子の通っていた中学校は田舎なのでクラスは一クラスしかない。男子八人。女子十人。合計十八人だった。小学校、中学校高とクラス替えすることもなくずっと同じクラスだった。高校はそれぞれの理由で別々の高校に進学する事になった。千春は公立。結衣子は私立だ。卒業式ではこの世の終わりだと言うくらい泣いた。座っている時も、字を書いている時も千春に手のくせは出ていた。
くせというかは分からないないけれど、左手の上に右手を置く。それが彼女にとっては無意識にしていることだろう。結衣子がいうと気づかなかったと言ったくらいだから。
今千春は長野県の地元で結婚し暮らしている。農協で働く旦那。と二人の子供のママでもあった。女の子二人。憧れるけれど自分には先のことと捉えてしまう。
もういい歳なんだから。
と母に言われるがある程度貯金が貯まるまでは東京で働きたい。それが結衣子に願望だった。千春の子供の名前はなんだっただろう。今度帰省したときにでも聞いてみよう。そう思った。
昼食を取り終えた三人は仕事に戻る。結衣子は午後に世田谷にある夫人の家にタンブラーとガラス製の皿、ブラウスを届けることになっていた。
結衣子が帰宅できたのは午後八時を回ってからだった。アパートの近くにあるスーパーにより値引きシールの貼られているハンバーグ弁当と近くにあったサラダを手にとった。会計をすませると足早にスーパーを後にした。
アパートの前に着くと階段を上る少々古いため所々に錆が目立つ。
家に着くと風呂に湯を張る。疲れているため少しベッドに横になったがすぐに起き上がり風呂にはいる。電子レンジで弁当を温める。スマートフォンにメールが来ていたことを思い出しバッグから取り出した。メールを開いて見ると千春からだった。
「メール見たら電話くださーい。何時でもいいよ!」
と書かれていた時刻は九時半を回っている迷惑ではないか。
そういえば千春からメールをもらったのは一ヶ月ぶりだろうか。それにしても電話してほしいなんて。
とりあえず電話帳から千春に名前を探す。本人がいいと言ってくれたんだから電話をかけてみようと思い。降らすに入っていたお茶を飲み千春を呼び出す。なんだか胸がドキドキした。直接話しをするのはいつぶりだろうか。
「もしもし。結衣子?」
昔から変わらない優しい声だ。
「もしもし。千春?ごめんね。夜分遅くに。仕事がなかなか終わらなくて。」
「全然大丈夫だよ。むしろこっちから電話してって言ったのに。忙しいのになんだか申し訳ない。」
「大丈夫。それよりどうかした?電話してなんて珍しいじゃない?」
冗談交じりに言う。
「そうそう。そうだった。結衣子たまにはさ有給とってこっちに帰ってこない?」
「えー?どうしたの?急に。何かあった?」
「いやね。何かあったてことじゃないよ。ただ結衣子有給休暇消化しろ。って上司に言われてるってこの前話してたでしょ。だからさ三日間くらいもらってこっちにバカンスにでも来れれば楽しいのになーって。まあバカンスって程じゃないか。それに近いうちに旦那出張行くしさ。」
千春はゆっくりと言った。
「あー。そうねー。仕事が落ち着けばいいんだけど。明日課長に相談してみる。そしたら千春の家泊めてね!…なんちゃて」
明るく返す。正直言って今の時期は有給休暇を取るには難しいだろう。イベントが沢山あってとても手が回らない。今日も飾り付けを作ったり、チラシを作ったりで残業をして来たのだから。ただ、行けないと決めつけるのは勿体無い。課長に聞いてみるだけならいいかと思った。
「もちろん‼︎泊りに来てよね。きょうちゃんもふうちゃんも喜ぶわ。」
きょうちゃん、ふうちゃん。子供の名前だ。それもニックネーム。名前を聞きたいけどなんだか恥ずかしかった。そこで結衣子は
「本当子供ちゃん達にも会いたいよ。きょうちゃん、ふうちゃん可愛いねー。名前も。」
あえて自分からニックネームで呼んでみた。
「ありがとう。杏子に風夏。喜ぶよ。」
そうそう。杏子ちゃんに風夏ちゃんだったことを思い出した。
「また詳しくわかったら連絡するね。」
「わかった。わざわざありがとね。帰ってこられたらきてよー。楽しみに待ってるから。」
そう言うとお互いは電話を切った。
結衣子は長野県。自分の生まれ育った村を思い出した。
なんだか食事が喉を通らなくなったので弁当に蓋をしサラダにラップをし冷蔵庫に入れる。
千春と電話してからいろいろなことが蘇ってきてしまった。
ベッドに潜り込む。
あの日の記憶も鮮明に蘇ってくる。
笛や太鼓のお囃子。
お父さん…。
田辺千春だった。結衣子と同じで内気で人見知りの彼女もどのグループにも入ろうとはしなかった。そんな時体育で二人一組でリレーをするためグループを組むことになった。足だけは早かった結衣子はクラス中から組もうと誘われたがどの誘いも断った。結衣子が真っ先に向かったのは千春のところだった。なんだか自分に性格が似ている気がしてどうしても組みたかった。最初はお互いよそよそしくしていたが、慣れてくるとそんなこともなくなり一緒に登下校をすることはもちろん、お手洗いまでも一緒だった。結衣子の通っていた中学校は田舎なのでクラスは一クラスしかない。男子八人。女子十人。合計十八人だった。小学校、中学校高とクラス替えすることもなくずっと同じクラスだった。高校はそれぞれの理由で別々の高校に進学する事になった。千春は公立。結衣子は私立だ。卒業式ではこの世の終わりだと言うくらい泣いた。座っている時も、字を書いている時も千春に手のくせは出ていた。
くせというかは分からないないけれど、左手の上に右手を置く。それが彼女にとっては無意識にしていることだろう。結衣子がいうと気づかなかったと言ったくらいだから。
今千春は長野県の地元で結婚し暮らしている。農協で働く旦那。と二人の子供のママでもあった。女の子二人。憧れるけれど自分には先のことと捉えてしまう。
もういい歳なんだから。
と母に言われるがある程度貯金が貯まるまでは東京で働きたい。それが結衣子に願望だった。千春の子供の名前はなんだっただろう。今度帰省したときにでも聞いてみよう。そう思った。
昼食を取り終えた三人は仕事に戻る。結衣子は午後に世田谷にある夫人の家にタンブラーとガラス製の皿、ブラウスを届けることになっていた。
結衣子が帰宅できたのは午後八時を回ってからだった。アパートの近くにあるスーパーにより値引きシールの貼られているハンバーグ弁当と近くにあったサラダを手にとった。会計をすませると足早にスーパーを後にした。
アパートの前に着くと階段を上る少々古いため所々に錆が目立つ。
家に着くと風呂に湯を張る。疲れているため少しベッドに横になったがすぐに起き上がり風呂にはいる。電子レンジで弁当を温める。スマートフォンにメールが来ていたことを思い出しバッグから取り出した。メールを開いて見ると千春からだった。
「メール見たら電話くださーい。何時でもいいよ!」
と書かれていた時刻は九時半を回っている迷惑ではないか。
そういえば千春からメールをもらったのは一ヶ月ぶりだろうか。それにしても電話してほしいなんて。
とりあえず電話帳から千春に名前を探す。本人がいいと言ってくれたんだから電話をかけてみようと思い。降らすに入っていたお茶を飲み千春を呼び出す。なんだか胸がドキドキした。直接話しをするのはいつぶりだろうか。
「もしもし。結衣子?」
昔から変わらない優しい声だ。
「もしもし。千春?ごめんね。夜分遅くに。仕事がなかなか終わらなくて。」
「全然大丈夫だよ。むしろこっちから電話してって言ったのに。忙しいのになんだか申し訳ない。」
「大丈夫。それよりどうかした?電話してなんて珍しいじゃない?」
冗談交じりに言う。
「そうそう。そうだった。結衣子たまにはさ有給とってこっちに帰ってこない?」
「えー?どうしたの?急に。何かあった?」
「いやね。何かあったてことじゃないよ。ただ結衣子有給休暇消化しろ。って上司に言われてるってこの前話してたでしょ。だからさ三日間くらいもらってこっちにバカンスにでも来れれば楽しいのになーって。まあバカンスって程じゃないか。それに近いうちに旦那出張行くしさ。」
千春はゆっくりと言った。
「あー。そうねー。仕事が落ち着けばいいんだけど。明日課長に相談してみる。そしたら千春の家泊めてね!…なんちゃて」
明るく返す。正直言って今の時期は有給休暇を取るには難しいだろう。イベントが沢山あってとても手が回らない。今日も飾り付けを作ったり、チラシを作ったりで残業をして来たのだから。ただ、行けないと決めつけるのは勿体無い。課長に聞いてみるだけならいいかと思った。
「もちろん‼︎泊りに来てよね。きょうちゃんもふうちゃんも喜ぶわ。」
きょうちゃん、ふうちゃん。子供の名前だ。それもニックネーム。名前を聞きたいけどなんだか恥ずかしかった。そこで結衣子は
「本当子供ちゃん達にも会いたいよ。きょうちゃん、ふうちゃん可愛いねー。名前も。」
あえて自分からニックネームで呼んでみた。
「ありがとう。杏子に風夏。喜ぶよ。」
そうそう。杏子ちゃんに風夏ちゃんだったことを思い出した。
「また詳しくわかったら連絡するね。」
「わかった。わざわざありがとね。帰ってこられたらきてよー。楽しみに待ってるから。」
そう言うとお互いは電話を切った。
結衣子は長野県。自分の生まれ育った村を思い出した。
なんだか食事が喉を通らなくなったので弁当に蓋をしサラダにラップをし冷蔵庫に入れる。
千春と電話してからいろいろなことが蘇ってきてしまった。
ベッドに潜り込む。
あの日の記憶も鮮明に蘇ってくる。
笛や太鼓のお囃子。
お父さん…。
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