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作戦会議と心の距離
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ヴァルシュタイン公爵邸の一室。
重厚な書棚に囲まれたその空間は、外の喧騒とは別世界のように静かだった。
窓から差し込む夕暮れの光が、木製の机を照らしている。
クラリスは、その机の前に座っていた。
真剣な表情で机の上に広げられた書類に目を通し、端正な眉をわずかに寄せる。
「領地からの年貢の徴収額が、ここ数年で急激に増えているわね」
クラリスはページをめくりながら言った。
「王家の懐に流れている金がどれほどか、だいたい見えてきた」
その隣、レオンが椅子にもたれながら応じる。
紫の瞳は冷静にクラリスの横顔を見つめていた。
「国庫はほとんど空だ。それなのに王家の資産は増え続けている。明らかに不自然だ」
「王太子殿下はこのことを知っているのかしら?」
「知っているさ。だが、何もしない」
レオンの声は淡々としていた。
クラリスはふっと小さく笑った。
「何もしない……それが一番の罪ね」
「君は本当に厳しい」
「当然でしょう?」
クラリスは目を上げ、レオンと視線を交わした。
その瞳は揺るぎなく、まっすぐだった。
レオンはその瞳に見つめ返されながら、ふと微笑んだ。
「だからこそ、君と組むことにしたんだ」
「……お世辞は似合わないわよ、レオン様」
「本心だ」
クラリスは言葉を返さず、再び視線を書類に戻した。
だが、頬がわずかに紅潮しているのを、レオンは見逃さなかった。
「次はどこを探る?」
「南部領地の商人たちの動きが怪しいわ。王家と密かに取引している可能性がある」
クラリスは迷いなく言葉を続けた。
その姿に、レオンは内心、感心していた。
この令嬢はどこまでも強く、どこまでも冷静だ。
だが、その奥にある柔らかい部分を少しずつ見せ始めているのも感じていた。
「……一つ、気になっていることがある」
レオンがふと、視線を窓の外に向けた。
沈みかけた夕日が空を赤く染めている。
「何かしら?」
「王家の財政の流れには、もう一人関わっている気がする。今まで表に出てこなかった黒幕が」
クラリスは顔を上げた。
その瞳がわずかに鋭くなる。
「裏で動いている誰か……ですか」
「それを探るためには、もう少し情報が必要だ」
「……そのために私がいるのよ」
クラリスは微笑んだ。
レオンもまた、口元に薄い笑みを浮かべる。
二人の間には、最初の頃にはなかった空気が流れていた。
信頼と共鳴。
それだけではない、何か微かな感情が芽吹き始めている。
「クラリス」
レオンがふと、彼女の名を呼んだ。
クラリスは驚いたように目を見開く。
「なんですか?」
「君は……もっと、肩の力を抜いてもいい」
「……」
クラリスは答えなかった。
だが、ほんの少しだけ、瞳が揺れた。
「私は、この国のために動いているだけ」
「君自身のためには?」
「私自身のため?」
クラリスはレオンを見つめ返した。
その問いかけが、心の奥に小さな波紋を生んでいた。
「君が笑うところを、僕はもっと見たい」
レオンはそれだけを言い、立ち上がった。
窓の外には、夜が静かに広がり始めていた。
重厚な書棚に囲まれたその空間は、外の喧騒とは別世界のように静かだった。
窓から差し込む夕暮れの光が、木製の机を照らしている。
クラリスは、その机の前に座っていた。
真剣な表情で机の上に広げられた書類に目を通し、端正な眉をわずかに寄せる。
「領地からの年貢の徴収額が、ここ数年で急激に増えているわね」
クラリスはページをめくりながら言った。
「王家の懐に流れている金がどれほどか、だいたい見えてきた」
その隣、レオンが椅子にもたれながら応じる。
紫の瞳は冷静にクラリスの横顔を見つめていた。
「国庫はほとんど空だ。それなのに王家の資産は増え続けている。明らかに不自然だ」
「王太子殿下はこのことを知っているのかしら?」
「知っているさ。だが、何もしない」
レオンの声は淡々としていた。
クラリスはふっと小さく笑った。
「何もしない……それが一番の罪ね」
「君は本当に厳しい」
「当然でしょう?」
クラリスは目を上げ、レオンと視線を交わした。
その瞳は揺るぎなく、まっすぐだった。
レオンはその瞳に見つめ返されながら、ふと微笑んだ。
「だからこそ、君と組むことにしたんだ」
「……お世辞は似合わないわよ、レオン様」
「本心だ」
クラリスは言葉を返さず、再び視線を書類に戻した。
だが、頬がわずかに紅潮しているのを、レオンは見逃さなかった。
「次はどこを探る?」
「南部領地の商人たちの動きが怪しいわ。王家と密かに取引している可能性がある」
クラリスは迷いなく言葉を続けた。
その姿に、レオンは内心、感心していた。
この令嬢はどこまでも強く、どこまでも冷静だ。
だが、その奥にある柔らかい部分を少しずつ見せ始めているのも感じていた。
「……一つ、気になっていることがある」
レオンがふと、視線を窓の外に向けた。
沈みかけた夕日が空を赤く染めている。
「何かしら?」
「王家の財政の流れには、もう一人関わっている気がする。今まで表に出てこなかった黒幕が」
クラリスは顔を上げた。
その瞳がわずかに鋭くなる。
「裏で動いている誰か……ですか」
「それを探るためには、もう少し情報が必要だ」
「……そのために私がいるのよ」
クラリスは微笑んだ。
レオンもまた、口元に薄い笑みを浮かべる。
二人の間には、最初の頃にはなかった空気が流れていた。
信頼と共鳴。
それだけではない、何か微かな感情が芽吹き始めている。
「クラリス」
レオンがふと、彼女の名を呼んだ。
クラリスは驚いたように目を見開く。
「なんですか?」
「君は……もっと、肩の力を抜いてもいい」
「……」
クラリスは答えなかった。
だが、ほんの少しだけ、瞳が揺れた。
「私は、この国のために動いているだけ」
「君自身のためには?」
「私自身のため?」
クラリスはレオンを見つめ返した。
その問いかけが、心の奥に小さな波紋を生んでいた。
「君が笑うところを、僕はもっと見たい」
レオンはそれだけを言い、立ち上がった。
窓の外には、夜が静かに広がり始めていた。
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