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エピローグ
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王都の外れ、小高い丘に広がる花畑。
風が吹き抜け、無数の花々が揺れている。
淡いピンク、白、紫、黄色。色とりどりの草花が風にそよぎ、丘一面を優しく染め上げていた。
クラリスは、その真ん中に立っていた。
レースに縁取られたサマードレスが風に揺れ、金の髪がやわらかな陽光にきらめいている。
その数歩後ろを、レオンは彼女を見つめながら歩いていた。
花畑を見渡しながら、クラリスがふっと息を吐く。
その横顔に、静かな微笑みが浮かんでいた。
「クラリス、君が好きだ」
唐突なその言葉に、クラリスは目を瞬かせた。
けれど、何も言わず、風の音に耳を澄ますように視線を戻す。
レオンは静かに近づき、彼女の隣に立つ。
足元で小さな白い花が二人の影に揺れていた。
「……ずっと、考えていた」
レオンの声は低く、けれどはっきりと届いた。
「この国の未来のこと。リナリアの遺志を継ぐこと。そして……自分の気持ちを、君にどう伝えるかも」
クラリスは答えなかった。
ただ、そっと視線だけで彼を促す。
「俺は、君と歩きたい。肩を並べて、国のことを考えるだけじゃなくて……君自身と残りの人生を共にしたい」
ただひたむきに、レオンが言葉を重ねる。
「君が笑うとき、なぜか安心する。怒るときも、つい口元が緩む。……それを恋と呼ぶなら、俺はとっくに恋に落ちていたんだと思う」
風が、二人の間をすり抜けた。
クラリスはゆっくりとレオンの方を見た。
「……それが告白なら、少し唐突すぎるわね」
冗談のような声色だったが、その目は真剣だった。
「そうだな。でも、伝えなきゃいけなかった」
レオンはそれだけ言って、ふっと微笑んだ。
どこまでも真っ直ぐで、どこか不器用なその笑み。
クラリスは視線を空へ向けた。
雲ひとつない空の下、花の香りと風の温度が、胸の奥に静かにしみ込んでいく。
「返事は?」
レオンが静かに問う。
けれど、クラリスは何も答えなかった。
ただ、風に揺れる花の中で、少しだけ微笑んだだけだった。
愛を受け取るかどうか。
その答えは――まだ、彼女の胸の中。
けれど、確かにそこには、ひとつの芽吹きがあった。
それはまるで、リナリアが遺した想いが風に乗って、そっと花を咲かせたかのようだった。
風が吹き抜け、無数の花々が揺れている。
淡いピンク、白、紫、黄色。色とりどりの草花が風にそよぎ、丘一面を優しく染め上げていた。
クラリスは、その真ん中に立っていた。
レースに縁取られたサマードレスが風に揺れ、金の髪がやわらかな陽光にきらめいている。
その数歩後ろを、レオンは彼女を見つめながら歩いていた。
花畑を見渡しながら、クラリスがふっと息を吐く。
その横顔に、静かな微笑みが浮かんでいた。
「クラリス、君が好きだ」
唐突なその言葉に、クラリスは目を瞬かせた。
けれど、何も言わず、風の音に耳を澄ますように視線を戻す。
レオンは静かに近づき、彼女の隣に立つ。
足元で小さな白い花が二人の影に揺れていた。
「……ずっと、考えていた」
レオンの声は低く、けれどはっきりと届いた。
「この国の未来のこと。リナリアの遺志を継ぐこと。そして……自分の気持ちを、君にどう伝えるかも」
クラリスは答えなかった。
ただ、そっと視線だけで彼を促す。
「俺は、君と歩きたい。肩を並べて、国のことを考えるだけじゃなくて……君自身と残りの人生を共にしたい」
ただひたむきに、レオンが言葉を重ねる。
「君が笑うとき、なぜか安心する。怒るときも、つい口元が緩む。……それを恋と呼ぶなら、俺はとっくに恋に落ちていたんだと思う」
風が、二人の間をすり抜けた。
クラリスはゆっくりとレオンの方を見た。
「……それが告白なら、少し唐突すぎるわね」
冗談のような声色だったが、その目は真剣だった。
「そうだな。でも、伝えなきゃいけなかった」
レオンはそれだけ言って、ふっと微笑んだ。
どこまでも真っ直ぐで、どこか不器用なその笑み。
クラリスは視線を空へ向けた。
雲ひとつない空の下、花の香りと風の温度が、胸の奥に静かにしみ込んでいく。
「返事は?」
レオンが静かに問う。
けれど、クラリスは何も答えなかった。
ただ、風に揺れる花の中で、少しだけ微笑んだだけだった。
愛を受け取るかどうか。
その答えは――まだ、彼女の胸の中。
けれど、確かにそこには、ひとつの芽吹きがあった。
それはまるで、リナリアが遺した想いが風に乗って、そっと花を咲かせたかのようだった。
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