職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第6章】ダンジョン改革始動

エピソード.26

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 ダンジョン主の集会から数日後。

 拓海と美咲は、アルガスのダンジョンを訪れていた。

 リリアも同行している。

「ようこそ」

 アルガスが入り口で迎えた。

「早速で悪いが、見てもらいたい場所がある」

 彼のダンジョンは「地底迷宮」と呼ばれる中級ダンジョンだ。

 リリアのダンジョンよりも規模が大きく、複雑な構造をしている。

「問題は、第四層だ」

 アルガスが案内しながら説明した。

「魔力が滞留して、うまく循環しない」

「生産効率が、標準の80%しかない」

 拓海はスキル「情報収集」を発動させながら、ダンジョン内を観察していた。

 第一層から第三層までは、比較的整備されている。

 しかし第四層に降りると、空気が重くなった。

「……ここですね」

 拓海が立ち止まった。

 通路の壁には、黒い染みのようなものが付着している。

 床も汚れていて、所々に魔物の死骸の痕跡がある。

「ああ」

 アルガスが頷いた。

「ここが最も問題のある場所だ」

「美咲、試してみて」

 拓海が合図した。

 美咲がスキル「クレンジング」を発動する。

 緑色の光が広がり、汚れが消えていく。

 数分後、通路の一部が綺麗になった。

「……すごい」

 アルガスが驚きの声を上げた。

「魔力の流れが、明らかに改善されてる」

「でも」

 拓海が指摘した。

「これは表面的な改善です」

「根本的な問題は、別にある」

「根本的な問題?」

「はい」

 拓海がスキル「傾向分析」の結果を説明し始めた。

「このダンジョン、換気システムが不十分です」

「第四層は地下深くにあるため、空気の流れが悪い」

「その結果、魔力が淀んでいる」

「なるほど……」

 アルガスが考え込んだ。

「どうすればいい?」

「換気口を増やす必要があります」

 拓海が図を描き始めた。

「ここ、ここ、ここに新しい通気路を作る」

「それで空気の流れを作れば、魔力循環が改善されます」

「工事が必要か……」

 アルガスが渋い顔をした。

「時間と魔力がかかるな」

「段階的に進めればいいんです」

 拓海が提案した。

「まず一箇所だけ試験的に作る」

「効果を確認してから、残りを進める」

「それなら……できる」

 アルガスが頷いた。

-----

 その日の午後、拓海は詳細なレポートを作成した。

 問題点、改善案、優先順位、予想される効果。

 全てをまとめた資料だ。

「これは……」

 アルガスがレポートを見て、感嘆の声を上げた。

「素晴らしい分析だ」

「こんなに詳細な資料、見たことがない」

「ありがとうございます」

 拓海が答えた。

「報酬は?」

 アルガスが尋ねた。

「魔石で50でどうでしょうか」

 拓海が提案した。

「それに、美咲の清掃作業が別途50」

「安いな」

 アルガスが笑った。

「この価値なら、200は払えるぞ」

「え……?」

「本当だ」

 アルガスは財布から魔石を取り出した。

「拓海に100、美咲に100」

「これが正当な報酬だ」

 拓海と美咲は驚いて顔を見合わせた。

「そんなに……」

「当然だ」

 アルガスが真剣に言った。

「お前たちの働きは、それだけの価値がある」

-----

 帰り道、三人は魔法の転移陣で移動していた。

「すごかったね」

 美咲が興奮気味に言った。

「報酬、100魔石だって」

「あなたたちの価値が、正当に評価されたのよ」

 リリアが微笑んだ。

「これから、もっと依頼が来るわ」

「他のダンジョン主たちも、あなたたちの噂を聞いてる」

「大丈夫でしょうか」

 拓海が心配そうに言った。

「俺たち、本業はリリアさんのダンジョンですよね」

「そっちが疎かになったら……」

「心配ないわ」

 リリアが安心させるように言った。

「私のダンジョンは、もう安定してる」

「マニュアルもあるし、ゴブリンたちも自立してる」

「あなたたちが週に2~3日、外部コンサルをしても問題ないわ」

「それに……」

 彼女は少し照れくさそうに続けた。

「あなたたちの評判が上がれば、私の評価も上がる」

「一石二鳥よ」

 拓海は納得して頷いた。

-----

 その夜、拓海は部屋で今日の出来事を記録していた。

 ノックの音が聞こえた。

「拓海くん?」

 美咲だ。

「入って」

 美咲が部屋に入ってきた。

 手には、今日もらった魔石を持っている。

「これ、どうしよう」

 彼女が困った顔をした。

「こんなにたくさん、初めてもらった」

「貯めておけばいい」

 拓海が答えた。

「いつか必要になる」

「うん……」

 美咲が椅子に座った。

「ねえ、拓海くん」

「ん?」

「私たち、すごいことになってるよね」

 美咲が笑った。

「一ヶ月前は、クラスで一番の役立たずだった」

「でも今は、ダンジョン主たちから頼られてる」

「ああ」

 拓海も笑った。

「信じられないよな」

「でも……」

 美咲の表情が少し曇った。

「クラスのみんなは、どうしてるんだろう」

「分からない」

 拓海が答えた。

「でも、気にする必要はない」

「彼らは彼らで、生きてるはずだ」

「そうだね」

 美咲が頷いた。

「私たちは、私たちの道を行けばいい」

「ああ」

-----

 翌日、さらに二つのダンジョンから依頼が届いた。

「見て」

 リリアが手紙を二人に見せた。

「セリナからと、ダンジョン主ミラから」

「セリナさん……」

 美咲が驚いた。

「あの、私たちを笑ってた人ですよね」

「ええ」

 リリアが苦笑した。

「でも、プライドを捨てて頼んできたのね」

「よっぽど困ってるのか……」

 拓海が呟いた。

「行きますか?」

「ええ」

 リリアが頷いた。

「でも、報酬はしっかりもらいましょう」

 こうして、拓海と美咲のコンサルティング業務は本格化していった。

 一週間で五つのダンジョンを訪問し、それぞれに改善案を提示する。

 どのダンジョン主も、二人の働きに満足し、高額の報酬を支払った。

-----

 一ヶ月後。

 拓海と美咲の手元には、合計1500魔石が貯まっていた。

「すごい額だね」

 美咲が呆然と魔石を見つめた。

「これだけあれば、何でも買えそう」

「でも、使い道がない」

 拓海が笑った。

「俺たち、ダンジョンに住んでるから」

「食事も部屋も、全部リリアさんが用意してくれる」

「そうだね」

 美咲も笑った。

「でも、貯めておけばいつか役に立つよね」

 その時、リリアの部屋から呼び出しがあった。

 二人が執務室に向かうと、リリアが真剣な顔で待っていた。

「どうしたんですか?」

 拓海が尋ねた。

「実は……」

 リリアが資料を見せた。

「魔王軍から、特別な依頼が来たの」

「特別な依頼?」

「ええ」

 リリアが説明を始めた。

「魔王軍の幹部が、直々にあなたたちに会いたいと」

 拓海と美咲は顔を見合わせた。

「幹部……?」

「ゼノスよ」

 リリアが名前を告げた。

「召喚を行った、あの幹部」

 拓海の背筋が凍った。

 ゼノス。

 自分たちを、この世界に連れてきた張本人。

「何の用でしょうか」

 拓海が警戒した声で尋ねた。

「分からない」

 リリアが首を振った。

「でも、断ることはできない」

「明日、魔王軍本部に行くことになるわ」

 拓海は拳を握りしめた。

 ついに、魔王軍の中枢と対峙する時が来た。
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