職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

チャビューヘ

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【第12章】襲撃前夜

エピソード.55

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 高瀬の剣が、美咲に向かって振り下ろされる。

 その瞬間。

 拓海の視界が、変わった。

 世界が、スローモーションになる。

 剣の軌道が、光の線として見える。

 速度、角度、回転、全てが数値化されていく。

 スキル「傾向分析」が、暴走していた。

 いや、違う。

 これは、暴走ではない。

 極限まで、研ぎ澄まされているのだ。

 剣の軌道だけじゃない。

 空気の流れ。

 高瀬の筋肉の動き。

 部屋に漂う魔力の粒子。

 全てが、拓海の目に映った。

 そして。

 拓海の意識が、何かに触れた。

 それは――魔力そのもの。

『これは……魔力の流れが……見える!』

 拓海の脳内で、理解が閃いた。

 リリアが言っていた。

 「あなたには、魔法の才能もあるわ」

 その意味が、今ようやく分かった。

 俺の分析能力は。

 情報を読み取るだけじゃない。

 魔力そのものを、解析できる。

 そして――制御できる。

-----

 拓海が叫んだ。

「やめろおおおおッ!」

 その瞬間。

 拓海の手が、本能的に前に突き出された。

 意識せずに。

 ただ、守りたい一心で。

 すると。

 空間に漂う魔力が、拓海の意志に反応した。

 無数の魔力粒子が、集まってくる。

 拓海と美咲の間に。

 光が、集束する。

 それは、障壁を形成した。

 透明な、しかし強固な壁。

 高瀬の剣が、それに当たる。

 キィィィンッ!

 金属音が響いた。

 剣が、弾かれる。

 そして。

 集束した魔力が、爆発した。

 眩い光。

 衝撃波が、部屋中に広がる。

「うわあああっ!」

 高瀬が吹き飛ばされる。

 過激派たちも、壁に叩きつけられた。

 美咲が、その場に倒れ込む。

 リリアが駆け寄って、彼女を抱き起こした。

「美咲!」

「だ、大丈夫……」

 美咲が震えながら答える。

 リリアが拓海を見た。

 拓海は、その場に立ち尽くしていた。

 手のひらから、青白い魔力が溢れている。

 拓海自身が、信じられないという表情だ。

「俺が……魔力を……操作した……?」

 リリアが微笑んだ。

「拓海!」

 彼女が駆け寄る。

「あなた、魔力制御に覚醒したのね!」

「魔力……制御……」

 拓海が自分の手を見つめる。

 青白い光が、まだ消えていない。

 リリアが説明した。

「あなたの分析能力が、極限まで高まったのよ」

「情報を読み取るだけじゃなく」

「魔力そのものを、解析して制御できるようになった」

 拓海が理解する。

 そうか。

 俺のスキルは、進化したのか。

 情報分析から、魔力分析へ。

 そして、魔力制御へ。

 拓海が手を握りしめた。

 魔力が、まだ手のひらに残っている。

 温かい。

 でも、不安定だ。

 まだコントロールしきれていない。

 これは、戦闘向きの魔法使いとは程遠い。

 しかし。

 新たな力を得たことは、確かだった。

-----

 高瀬が、壁に背をもたれたまま立ち上がった。

 顔には、驚愕の表情。

「な……何だ……今の……」

 過激派たちも、呆然としている。

 誰も、動けない。

 拓海が一歩前に出た。

 その目には、強い意志が宿っている。

「高瀬」

 静かな声。

 しかし、そこには力がこもっていた。

「もう、やめろ」

「これ以上、誰も傷つけるな」

 高瀬が歯を食いしばる。

「ふざけるな……」

 彼が剣を拾おうとする。

 しかし、手が震えて掴めない。

 恐怖。

 高瀬は、恐れていた。

 拓海の、あの光を。

 あの力を。

「くそ……くそおおっ!」

 高瀬が叫んだ。

 その時。

 扉が開いた。

 魔王軍の警備兵たちが、なだれ込んでくる。

「動くな!」

 兵士たちが高瀬たちを取り囲む。

 ゼノスも、姿を現した。

「何事だ」

 彼が冷たく問う。

 拓海が答えた。

「高瀬剛が、襲撃を」

「美咲を人質に取りました」

 ゼノスの目が、鋭く光る。

「……そうか」

 彼が高瀬たちを見下ろした。

「全員、拘束しろ」

 兵士たちが、高瀬たちに鎖をかける。

 高瀬は、もう抵抗しなかった。

 ただ、拓海を睨みつけている。

 その目には、憎悪だけが残っていた。

 拓海は、その視線を受け止めた。

 胸が痛む。

 かつての仲間が、こんな姿になってしまった。

 それが、悲しかった。

 高瀬たちが、連行されていく。

 部屋に、静寂が戻った。

 拓海が、美咲のもとに駆け寄る。

「美咲、大丈夫か」

「うん……ありがとう、拓海くん」

 美咲が涙を流しながら微笑む。

「拓海くんが、守ってくれた」

 拓海が、美咲の手を握った。

「もう、大丈夫だ」

 リリアが二人を見守っている。

 その目は、優しかった。

 そして、誇らしげだった。

 拓海は、新たな力に目覚めた。

 まだ不完全。

 まだ不安定。

 しかし、それは確かな一歩だった。

 運命が、また大きく動き始めた。
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