職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第14章】帰還の選択

エピソード.62

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 翌朝、魔王軍本部の大法廷は、昨日とは違う緊張感に包まれていた。

 高瀬たち四名が、再び鎖に繋がれて立っている。相沢の目は腫れ、佐藤と山田は憔悴しきった表情だ。高瀬だけが、どこか遠くを見つめていた。

 観客席には転移者たちが集まっている。田中が固唾を呑んで見守り、中村が拳を握りしめている。橋本たちも不安そうな顔で拓海を見つめていた。

 ゼノスが壇上に立つ。

「蒼井拓海、貴官が判決を下す」

 拓海が壇上に上がる。高瀬と目が合った。

 高瀬の目には、狂気は消えていた。ただ、深い疲労と諦めが浮かんでいる。

 拓海が口を開く。

「高瀬剛」

 その声は静かだったが、法廷全体に響いた。

「お前は壊れていた」

 高瀬の肩が僅かに震える。

「追い詰められて、正常な判断ができなくなっていた。木村の死が、お前の心を蝕んだ」

 拓海が一歩前に出る。

「だから、お前には二つの選択肢を与える」

 会場がざわめく。ゼノスが目を細め、幹部たちが身を乗り出す。

 拓海が続ける。

「一つ目。収監されて、ここで更生する道」

 高瀬が顔を上げる。

「二つ目……」

 拓海が深呼吸する。

「ダンジョンを攻略して、元の世界に帰る道だ」

 静寂。

 一瞬、誰もが言葉を失った。

 そして、爆発的なざわめきが広がる。

「帰る?」「そんなことが?」「ありえない」

 観客席の転移者たちが立ち上がる。橋本が目を見開き、田中が驚愕の表情を浮かべる。

 ゼノスが手を挙げて静寂を求める。

「蒼井、説明したまえ」

 拓海が頷く。

「高瀬は、ここにいても苦しむだけです。仲間を失った記憶、拓海を襲った罪悪感、全てが彼を追い詰め続ける」

 高瀬が拓海を見つめる。その目に、僅かな光が宿る。

「だから、元の世界に帰してください。そこで、やり直させてください」

 会場が再びざわめく。

 セレスティアが冷ややかに言う。

「甘いわね。敵に逃走の機会を与えるなど」

 拓海が答える。

「逃走ではありません。正規のダンジョン攻略による帰還です。魔王軍の規則に則った、正当な方法です」

 バルトスが腕を組む。

「最終ダンジョン『竜王の巣』の攻略か。確かに、それをクリアすれば帰還条件を満たす」

 拓海が頷く。

「はい。建前も完璧です。高瀬たちがダンジョンを攻略すれば、誰も文句は言えません」

 ゼノスが考え込む。しばらくの沈黙の後、彼が口を開いた。

「高瀬剛。お前はどうする?」

 高瀬が震える声で尋ねる。

「拓海……なぜ、そこまでしてくれる?」

 拓海が答える。

「お前を許したわけじゃない」

 高瀬の表情が曇る。

「でも……お前がこの世界で壊れていくのを、見たくない」

 高瀬の目から涙が溢れた。

「拓海……」

 拓海が背を向ける。

「答えは明日までに決めろ。収監か、帰還か。お前が選べ」

 ゼノスが告げる。

「では、判決は明日まで保留とする。高瀬剛、よく考えるがいい」

 高瀬たちが護衛に連れられて退廷する。

 拓海が壇上を降りると、美咲とリリアが待っていた。

 美咲が不安そうに尋ねる。

「本当に、いいの?」

 拓海が答える。

「分からない。でも、これしかないと思った」

 リリアが拓海の肩に手を置く。

「あなたらしい決断ね」

 拓海が窓の外を見る。

 遠くに見える空が、どこか寂しげだった。

-----

 その夜、拓海は一人でオフィスに残っていた。

 机の上には、『竜王の巣』の攻略資料が広げられている。詳細なマップ、モンスターの配置、罠の位置、推奨ルート。全て、拓海が過去数ヶ月かけて分析したものだ。

 美咲が温かいお茶を持って入ってくる。

「拓海くん、休まないと」

 拓海が資料から目を離さずに答える。

「もう少しだけ。高瀬たちが安全に攻略できるように、最終確認してる」

 美咲が隣に座る。

「高瀬くん、帰ることを選ぶかな」

 拓海が頷く。

「おそらく。あいつは、ここにいる理由を失った」

 美咲が尋ねる。

「拓海くんは……後悔してない?」

 拓海が手を止める。

「後悔?」

「その権限、私たちが使えたかもしれない。いつか、故郷に帰りたいとき」

 拓海が微笑む。

「大丈夫。俺は、ここに居場所を見つけたから」

 美咲が安心したように頷く。

「そっか」

 リリアが扉から顔を出す。

「お二人さん、そろそろ休んだらどう?明日も忙しいわよ」

 拓海が資料を閉じる。

「そうだな。じゃあ、今日はこれで」

 三人が部屋を出ようとしたとき、窓の外で星が一つ流れた。

 拓海がそれを見つめる。

 高瀬。お前は、どんな答えを出すんだろうな。

 そして、その答えが、俺たちの未来にどう影響するんだろう。

 答えは、まだ見えない。

 ただ、明日が来ることだけは確かだった。
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