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【第14章】帰還の選択
エピソード.65
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翌日、魔王軍の資料室。
拓海が大きなテーブルに、分厚い資料の束を広げていた。
扉が開き、高瀬、相沢、佐藤、山田の四名が入ってくる。
高瀬が拓海を見る。
「呼び出したって聞いたが」
拓海が資料を指す。
「座れ。攻略情報を説明する」
四人がテーブルを囲む。
拓海が最初の資料を開く。そこには、巨大なダンジョンの詳細な地図が描かれていた。
「竜王の巣。魔王軍管轄下で最難関のダンジョンだ」
相沢が地図を見て息を呑む。
「こんなに……大きいの」
「地下十二層構造。各層に強力なモンスターと複雑な罠がある」
拓海が別の資料を開く。
「これがモンスター配置図。階層ごとに出現する敵の種類、攻撃パターン、弱点を全て記載してある」
佐藤が資料を手に取る。
「すげえ……こんなに詳しく」
拓海が次々と資料を説明していく。
「罠の位置と回避方法。宝箱の場所と中身。安全な休憩ポイント。推奨ルート」
山田が呟く。
「全部……お前が調べたのか」
拓海が頷く。
「ああ。過去三ヶ月、俺はこのダンジョンを何度も分析した」
高瀬が資料を見つめる。
「これ……全部お前が?」
「情報分析官の仕事だからな」
拓海が最後の資料を開く。最終層のボス、巨大なドラゴンの詳細なスケッチが描かれていた。
「最終ボス。竜王ヴァルドラグ。火と雷の複合属性を持つ古代竜だ」
相沢が青ざめる。
「こんなの……倒せるの」
拓海が攻略法を説明する。
「弱点は氷属性。相沢、お前の氷魔法が鍵になる」
拓海が指で地図をなぞる。
「まず佐藤が回復に専念。山田は敵の動きを読んで高瀬に伝える。相沢は距離を保ちながら氷魔法で攻撃」
高瀬が尋ねる。
「俺は」
「お前は前衛。勇者スキルの機動力を活かして、敵の注意を引きつけろ。ただし無理はするな」
拓海が全員を見る。
「この通りにやれば、お前たちなら勝てる」
高瀬が資料を見つめる。そこには、拓海の几帳面な字で細かく注意事項が書き込まれていた。
「拓海……」
拓海が資料を高瀬に渡す。
「全部持っていけ。暗記する必要はない。迷ったら、これを見ろ」
高瀬が資料を受け取る。その重みが、拓海の思いの重さのように感じられた。
「ありがとう」
拓海が立ち上がる。
「じゃあ、次は装備の準備だ。武器庫に案内する」
-----
魔王軍の武器庫は、本部の地下にある。
広大な空間に、無数の武器と防具が整然と並んでいた。
武器庫管理官が拓海たちを出迎える。
「蒼井幹部。お待ちしておりました」
拓海が頷く。
「竜王の巣攻略用の装備一式を」
「すでに準備してあります」
管理官が棚から装備を取り出していく。
高瀬には、魔力強化された聖剣。相沢には、魔力増幅の杖。佐藤には、回復力を高める聖職者の聖印。山田には、索敵範囲を広げる魔眼の護符。
そして全員に、高級な防具と回復アイテムの詰まった鞄。
相沢が防具を手に取る。
「これ……高そう」
管理官が答える。
「竜鱗製です。高い防御力と魔法耐性を持ちます」
山田が鞄の中身を確認する。
「回復薬が二十本……解毒剤、魔力回復薬、それに転移の巻物まで」
拓海が説明する。
「転移の巻物は緊急脱出用だ。どうしても無理だと判断したら、迷わず使え」
高瀬が聖剣を手に取る。刀身に魔力が流れ、淡い光を放つ。
「いい剣だな」
拓海が言う。
「お前の勇者スキルと相性がいいはずだ」
ゼノスが武器庫に入ってくる。
「準備は整ったか」
拓海が報告する。
「はい。これで攻略に必要なものは全て揃いました」
ゼノスが高瀬たちに告げる。
「明後日の朝、出発だ。それまでは居住区で休め。体調を整えておけ」
高瀬たちが敬礼する。
「了解しました」
四人が武器庫を出ていく。
拓海が残って装備の最終チェックをしていると、ゼノスが声をかけてきた。
「蒼井」
「はい」
「お前は、高瀬が戻ってくることを望んでいるのか」
拓海が手を止める。
「どういう意味ですか」
「攻略に成功すれば、あれは元の世界に帰る。お前とは二度と会わない」
拓海が答える。
「それが、最善です」
ゼノスが拓海の肩に手を置く。
「だが、お前の目は違うことを言っている」
拓海が黙る。
ゼノスが続ける。
「まあいい。お前の判断を信じよう」
ゼノスが去っていく。
拓海は一人、武器庫に残された。
高瀬が使う聖剣を見つめる。
本当に、これでいいのか。
答えは、まだ見つからなかった。
-----
その夜、魔王軍本部の中庭。
高瀬が一人で星空を見上げていた。
足音が近づいてくる。
「高瀬」
振り返ると、田中が立っていた。
「田中か」
田中が高瀬の隣に立つ。
「明後日、出発なんだってな」
「ああ」
しばらく、二人は黙って星を見ていた。
田中が口を開く。
「無事に帰れよ」
高瀬が頷く。
「ああ。お前も……元気でな」
田中が笑う。
「俺は拓海と一緒に、ここで頑張るよ」
高瀬が田中を見る。
「お前、拓海を選んだんだな」
「ああ。あいつは、俺たちを見捨てなかった。だから、俺もあいつを信じる」
高瀬が空を見上げる。
「そうか」
田中が尋ねる。
「高瀬、お前……本当に帰っていいのか」
「どういう意味だ」
「お前、まだ何か引っかかってるだろ」
高瀬が黙る。
田中が続ける。
「拓海に謝った。仲間とも決意を固めた。でも、完全には吹っ切れてない」
高瀬が拳を握る。
「分かるか」
「ああ。長い付き合いだからな」
高瀬が呟く。
「俺は……拓海を襲った。美咲さんを人質に取った。許されることじゃない」
「拓海は許したぞ」
「でも、俺が俺を許せない」
田中が高瀬の肩を叩く。
「だったら、帰って証明しろ。お前がちゃんとやり直せるって」
高瀬が田中を見る。
「やり直す……」
「ああ。元の世界で、まともに生きろ。家族を大切にしろ。それが、お前にできる償いだ」
高瀬がゆっくりと頷く。
「そうだな……そうするよ」
二人が握手を交わす。
「じゃあな、田中」
「ああ。またいつか」
田中が本部に戻っていく。
高瀬は再び星空を見上げた。
長い友情の、一つの区切り。
そして、新しい道への一歩。
明後日、俺は故郷に帰る。
そこで、やり直す。
拓海が言った通り、誰も恨まずに生きる。
高瀬が深呼吸する。
夜風が頬を撫でていった。
拓海が大きなテーブルに、分厚い資料の束を広げていた。
扉が開き、高瀬、相沢、佐藤、山田の四名が入ってくる。
高瀬が拓海を見る。
「呼び出したって聞いたが」
拓海が資料を指す。
「座れ。攻略情報を説明する」
四人がテーブルを囲む。
拓海が最初の資料を開く。そこには、巨大なダンジョンの詳細な地図が描かれていた。
「竜王の巣。魔王軍管轄下で最難関のダンジョンだ」
相沢が地図を見て息を呑む。
「こんなに……大きいの」
「地下十二層構造。各層に強力なモンスターと複雑な罠がある」
拓海が別の資料を開く。
「これがモンスター配置図。階層ごとに出現する敵の種類、攻撃パターン、弱点を全て記載してある」
佐藤が資料を手に取る。
「すげえ……こんなに詳しく」
拓海が次々と資料を説明していく。
「罠の位置と回避方法。宝箱の場所と中身。安全な休憩ポイント。推奨ルート」
山田が呟く。
「全部……お前が調べたのか」
拓海が頷く。
「ああ。過去三ヶ月、俺はこのダンジョンを何度も分析した」
高瀬が資料を見つめる。
「これ……全部お前が?」
「情報分析官の仕事だからな」
拓海が最後の資料を開く。最終層のボス、巨大なドラゴンの詳細なスケッチが描かれていた。
「最終ボス。竜王ヴァルドラグ。火と雷の複合属性を持つ古代竜だ」
相沢が青ざめる。
「こんなの……倒せるの」
拓海が攻略法を説明する。
「弱点は氷属性。相沢、お前の氷魔法が鍵になる」
拓海が指で地図をなぞる。
「まず佐藤が回復に専念。山田は敵の動きを読んで高瀬に伝える。相沢は距離を保ちながら氷魔法で攻撃」
高瀬が尋ねる。
「俺は」
「お前は前衛。勇者スキルの機動力を活かして、敵の注意を引きつけろ。ただし無理はするな」
拓海が全員を見る。
「この通りにやれば、お前たちなら勝てる」
高瀬が資料を見つめる。そこには、拓海の几帳面な字で細かく注意事項が書き込まれていた。
「拓海……」
拓海が資料を高瀬に渡す。
「全部持っていけ。暗記する必要はない。迷ったら、これを見ろ」
高瀬が資料を受け取る。その重みが、拓海の思いの重さのように感じられた。
「ありがとう」
拓海が立ち上がる。
「じゃあ、次は装備の準備だ。武器庫に案内する」
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魔王軍の武器庫は、本部の地下にある。
広大な空間に、無数の武器と防具が整然と並んでいた。
武器庫管理官が拓海たちを出迎える。
「蒼井幹部。お待ちしておりました」
拓海が頷く。
「竜王の巣攻略用の装備一式を」
「すでに準備してあります」
管理官が棚から装備を取り出していく。
高瀬には、魔力強化された聖剣。相沢には、魔力増幅の杖。佐藤には、回復力を高める聖職者の聖印。山田には、索敵範囲を広げる魔眼の護符。
そして全員に、高級な防具と回復アイテムの詰まった鞄。
相沢が防具を手に取る。
「これ……高そう」
管理官が答える。
「竜鱗製です。高い防御力と魔法耐性を持ちます」
山田が鞄の中身を確認する。
「回復薬が二十本……解毒剤、魔力回復薬、それに転移の巻物まで」
拓海が説明する。
「転移の巻物は緊急脱出用だ。どうしても無理だと判断したら、迷わず使え」
高瀬が聖剣を手に取る。刀身に魔力が流れ、淡い光を放つ。
「いい剣だな」
拓海が言う。
「お前の勇者スキルと相性がいいはずだ」
ゼノスが武器庫に入ってくる。
「準備は整ったか」
拓海が報告する。
「はい。これで攻略に必要なものは全て揃いました」
ゼノスが高瀬たちに告げる。
「明後日の朝、出発だ。それまでは居住区で休め。体調を整えておけ」
高瀬たちが敬礼する。
「了解しました」
四人が武器庫を出ていく。
拓海が残って装備の最終チェックをしていると、ゼノスが声をかけてきた。
「蒼井」
「はい」
「お前は、高瀬が戻ってくることを望んでいるのか」
拓海が手を止める。
「どういう意味ですか」
「攻略に成功すれば、あれは元の世界に帰る。お前とは二度と会わない」
拓海が答える。
「それが、最善です」
ゼノスが拓海の肩に手を置く。
「だが、お前の目は違うことを言っている」
拓海が黙る。
ゼノスが続ける。
「まあいい。お前の判断を信じよう」
ゼノスが去っていく。
拓海は一人、武器庫に残された。
高瀬が使う聖剣を見つめる。
本当に、これでいいのか。
答えは、まだ見つからなかった。
-----
その夜、魔王軍本部の中庭。
高瀬が一人で星空を見上げていた。
足音が近づいてくる。
「高瀬」
振り返ると、田中が立っていた。
「田中か」
田中が高瀬の隣に立つ。
「明後日、出発なんだってな」
「ああ」
しばらく、二人は黙って星を見ていた。
田中が口を開く。
「無事に帰れよ」
高瀬が頷く。
「ああ。お前も……元気でな」
田中が笑う。
「俺は拓海と一緒に、ここで頑張るよ」
高瀬が田中を見る。
「お前、拓海を選んだんだな」
「ああ。あいつは、俺たちを見捨てなかった。だから、俺もあいつを信じる」
高瀬が空を見上げる。
「そうか」
田中が尋ねる。
「高瀬、お前……本当に帰っていいのか」
「どういう意味だ」
「お前、まだ何か引っかかってるだろ」
高瀬が黙る。
田中が続ける。
「拓海に謝った。仲間とも決意を固めた。でも、完全には吹っ切れてない」
高瀬が拳を握る。
「分かるか」
「ああ。長い付き合いだからな」
高瀬が呟く。
「俺は……拓海を襲った。美咲さんを人質に取った。許されることじゃない」
「拓海は許したぞ」
「でも、俺が俺を許せない」
田中が高瀬の肩を叩く。
「だったら、帰って証明しろ。お前がちゃんとやり直せるって」
高瀬が田中を見る。
「やり直す……」
「ああ。元の世界で、まともに生きろ。家族を大切にしろ。それが、お前にできる償いだ」
高瀬がゆっくりと頷く。
「そうだな……そうするよ」
二人が握手を交わす。
「じゃあな、田中」
「ああ。またいつか」
田中が本部に戻っていく。
高瀬は再び星空を見上げた。
長い友情の、一つの区切り。
そして、新しい道への一歩。
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