職業ガチャで外れ職引いたけど、ダンジョン主に拾われて成り上がります

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【第15章】機密書庫の真実

エピソード.67

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 高瀬が帰還して、一週間が過ぎた。

 転移者居住区は、いつもより静かだった。橋本たちが集まる食堂でも、会話はどこか上の空で、笑い声は少ない。田中と中村は訓練場で黙々と剣を振り、美咲はダンジョンの清掃業務に没頭している。

 拓海は最上階のオフィスで、書類の山に向き合っていた。

 机の上には、ダンジョンの運営報告書が積まれている。魔力結晶の生産量、モンスターの配置効率、罠の維持コスト。数字ばかりが並ぶ報告書を、拓海はスキル「情報収集」と「傾向分析」で次々と処理していく。

 五つの重要ダンジョンを改善してから、仕事の量は倍増した。

 それでも、拓海の手は止まらない。

 考えるな。手を動かせ。そうすれば、高瀬のことを思い出さずに済む。

 ノックの音が響いた。

「失礼します」

 副官が扉を開け、一枚の書類を差し出す。

「ゼノス様よりお呼びです。至急、執務室へ」

 拓海が書類を受け取る。内容を読んで、眉を寄せた。

「機密事項……?」

「詳細は存じ上げません。ただ、お急ぎくださいとのことです」

 拓海が立ち上がる。

 嫌な予感がした。

-----

 ゼノスの執務室は、魔王軍本部の最深部にあった。

 厚い扉の前で、拓海は一度深呼吸をする。ノックをして、中に入った。

「お呼びでしょうか」

 広い部屋の奥、巨大な机の向こうにゼノスが座っている。

 黒髪に紅い瞳。魔王軍総司令官の威圧感は、何度会っても慣れない。

「蒼井拓海。よく来た」

 ゼノスが手を挙げ、椅子を示す。

「座れ。少し話がある」

 拓海が椅子に腰を下ろす。

 机の上には、一枚の黒い鍵が置かれていた。

「君の功績を認め、新たな権限を付与する」

 ゼノスが鍵を拓海の前に滑らせる。

「機密書庫へのアクセス権だ」

 拓海の心臓が跳ねた。

「機密書庫……ですか」

「ああ。魔王軍の最深部にある。転移者召喚に関する資料、ダンジョン運営の極秘情報、そして……我々の長期計画が全て保管されている」

 ゼノスの目が、拓海を射抜く。

「君はもう幹部だ。知る権利がある。必要な情報があれば、自由に閲覧してかまわない」

 拓海が鍵を手に取る。

 冷たい金属の感触。

「ありがとうございます」

 言葉が、少しだけ震えた。

-----

 オフィスに戻った拓海は、すぐに美咲を呼んだ。

「拓海くん、どうしたの?」

 美咲が入ってくると、拓海は扉を閉め、鍵を見せる。

「機密書庫へのアクセス権をもらった」

 美咲の目が見開かれる。

「それって……」

「ああ。転移者召喚の真実が、そこにあるかもしれない」

 二人の間に、沈黙が落ちる。

 拓海は、ずっと疑問に思っていた。

 なぜ、魔王軍は転移者を召喚したのか。なぜ、帰還条件は五人だけなのか。なぜ、外れ職とされた自分たちが、ここまで重用されるのか。

 答えは、あの書庫にある。

「行くの?」

 美咲が、不安そうに尋ねる。

「ああ。でも……」

 拓海が美咲を見つめる。

「怖いんだ。真実を知るのが」

 美咲が、拓海の手を握った。

「私も怖い。でも、知らないままじゃ、もっと怖いよ」

 その手は、温かかった。

「ありがとう」

 拓海が微笑む。

「リリアにも伝えておく。明日、一人で行ってくる」

「一人で……?」

「ああ。もし、危険な情報だったら、巻き込みたくない」

 美咲が首を振る。

「拓海くんが危険なら、私も危険だよ。一緒に行こう」

「美咲……」

「リリアさんにも声をかける。三人で行こう」

 拓海が、ゆっくりと頷いた。

「分かった。明日、三人で行く」

-----

 翌日の早朝。

 拓海、美咲、リリアの三人は、魔王軍本部の地下へ向かった。

 階段を降りるたび、空気が冷たくなっていく。松明の明かりだけが、石造りの壁を照らしている。

「ここが……機密書庫?」

 美咲が、不安そうに周囲を見回す。

「ああ。地下五階。普通の職員は立ち入り禁止だ」

 拓海が鍵を取り出し、巨大な扉の前に立つ。

 扉には、複雑な魔法陣が刻まれていた。

 鍵を差し込むと、魔法陣が青白く発光する。

 重い音を立てて、扉がゆっくりと開いた。

「入るわよ」

 リリアが先頭に立ち、中へ進む。

 書庫の中は、想像以上に広かった。

 天井まで続く本棚。膨大な資料が、整然と並んでいる。埃っぽい空気と、古い紙の匂い。

「すごい……」

 美咲が、圧倒されたように呟く。

 拓海がスキル「情報収集」を発動する。

 視界に、無数の情報が流れ込んでくる。

 書棚の配置、資料の分類、そして……目的の場所。

「あった。こっちだ」

 拓海が奥へ進む。

 最深部の書棚。そこに、黒い表紙の分厚いファイルが並んでいた。

 タイトルが、金色の文字で記されている。

**「転移者召喚計画・極秘資料」**

 拓海の手が、震えた。

「これが……」

 ファイルを手に取り、ゆっくりとページを開く。

 そこに記された文章を読んだ瞬間、拓海の顔から血の気が引いた。

 美咲が、心配そうに覗き込む。

「拓海くん……?」

 拓海は、ただ黙って資料を読み続けた。

 一ページ、また一ページ。

 そして、全てを読み終えたとき。

 拓海の拳が、震えていた。

「嘘だろ……」

 リリアが、資料を覗き込む。

 そして、息を呑んだ。

「これは……」

 美咲も、ページを見る。

 三人とも、言葉を失った。

 そこに記されていたのは、転移者召喚の全ての真実。

 帰還条件の嘘。

 召喚の真の目的。

 そして、まだ誰も知らない、恐ろしい計画。

 拓海が、資料を握りしめる。

「俺たちは……利用されていたのか」

 その声は、怒りと悲しみに震えていた。
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