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第2章「辺境への旅立ち」
アルトハイム公爵邸に戻ったのは、日が傾き始めた頃だった。
石造りの大きな館。私が育った場所。
でも、もう帰る場所ではない。
玄関で出迎えたのは、使用人たちの冷たい視線だった。
「お嬢様」
オスカーが低い声で呼んだ。
彼の表情に、わずかな緊張が浮かんでいた。
「父上は?」
私は静かに尋ねた。
「書斎におられます。ですが……」
オスカーが言葉を濁した。
その時、階段の上から声が降ってきた。
「恥知らず!」
継母だった。
アデライーデ・フォン・アルトハイム。
父の後妻で、私より15歳年上。
美しい顔立ちだが、今は怒りで歪んでいた。
「よくもこの家に戻ってこられたものね」
彼女は階段を下りてきた。
絹のドレスが揺れる。
「王太子殿下から婚約破棄されるなど、前代未聞よ」
継母の声は甲高い。
使用人たちが息を殺して様子を見守っていた。
「アルトハイム家の名に、泥を塗った」
私は黙って立っていた。
反論しても無駄だと、2回のループで学んでいる。
「父上にお会いしたいのですが」
私は静かに言った。
「会う必要などないわ。お前はもう、この家の恥だもの」
継母が鼻で笑った。
その時、書斎のドアが開いた。
父が姿を現した。
ハルトフガング・フォン・アルトハイム。アルトハイム公爵。
白髪混じりの髪、疲れた目。
「エリナ」
父の声は低く、感情が読み取れない。
「はい、父上」
私は一礼した。
「好きにしなさい」
それだけ言って、父は書斎に戻った。
ドアが閉まる音が、やけに大きく響いた。
1周目も、2周目も、父は同じ反応だった。
無関心。
娘が婚約破棄されても、何の感情も示さない。
継母が満足そうに笑った。
「聞いたでしょう。お前に居場所はないのよ」
私は何も答えなかった。
踵を返し、自室に向かった。
部屋に入ると、一人の若い女性が待っていた。
「お嬢様!」
栗色の髪を三つ編みにした、明るい顔立ちの娘。
マリア・シュトラール。私の侍女。
「マリア」
私は微笑んだ。
「大丈夫でしたか、卒業式」
彼女の声には心配が滲んでいた。
「ええ、予定通りよ」
私はベッドに腰を下ろした。
マリアが急いで紅茶を淹れてくれる。
温かいカップを受け取りながら、私は言った。
「荷造りを始めて」
「荷造り……ですか?」
「私たち、この家を出るの」
マリアの目が見開かれた。
「どちらへ?」
「辺境よ。新しい土地を買うの」
私の言葉に、マリアは一瞬戸惑った。
でもすぐに、明るく笑った。
「わかりました! お嬢様についていきます」
翌朝、私はフェルゼン伯爵邸を訪れた。
オスカーが手配した馬車で、王都の東区へ。
かつては立派だったであろう屋敷も、今は荒れていた。
庭の手入れがされておらず、雑草が伸び放題。
門番もいない。
玄関のドアを叩くと、やつれた中年男性が出てきた。
「フェルゼン伯爵でいらっしゃいますか」
私は丁寧に尋ねた。
「……そうだが」
男性の声は沈んでいた。
フェルゼン伯爵。かつては豊かな領地を持っていたが、経営失敗で破産。
今は債権者に追われる日々。
「お話があります。内密に」
私の言葉に、伯爵は警戒の色を見せた。
でもやがて、諦めたように頷いた。
応接室は埃っぽかった。
使用人もほとんど解雇したのだろう。
私たちは向かい合って座った。
「単刀直入に申し上げます」
私は伯爵を真っ直ぐ見た。
「あなたの領地を買いたいのです」
伯爵の目が見開かれた。
「領地を……?」
「はい。フェルゼン伯領です」
伯爵は困惑した表情を浮かべた。
「あんな荒れ地を買うなど、正気ですか」
「正気です」
私は微笑んだ。
「価格は、金貨100枚でいかがでしょう」
伯爵の顔が強張った。
「100枚……? そんな安値では」
「現在の市場価値を考えれば、妥当な額です」
私は静かに言葉を続けた。
前世の記憶が蘇る。
企業再建で何度も経験した、債務超過企業との交渉。
相手の弱みを突きつつ、希望も残す。
「伯爵、あなたの借金総額は金貨80枚」
伯爵の顔が青ざめた。
「なぜそれを」
「調べました。債権者は3名。すべて王都の商人」
私は淡々と事実を述べた。
「100枚で売れば、借金を完済しても20枚残ります」
伯爵の手が震えた。
「それで、新しい人生を始められる」
私は優しく微笑んだ。
「でも、他の買い手を待つなら、それも自由です」
沈黙が流れた。
時計の秒針の音だけが響く。
やがて伯爵は、深く息を吐いた。
「……わかりました」
彼の声は震えていた。
「100枚で、お譲りします」
契約書の作成には、オスカーが同行した。
王都の公証人役場で、正式な手続きを進める。
金貨100枚を支払い、領地の所有権が私に移った。
フェルゼン伯爵は深々と頭を下げた。
「ありがとうございます」
涙を堪えているのがわかった。
「新しい人生、頑張ってください」
私は彼に微笑みかけた。
伯爵は何度も頷き、役場を去っていった。
「お嬢様」
オスカーが静かに言った。
「優しい交渉でしたね」
「彼も被害者だもの」
私は書類を見つめた。
前領主の失政で荒廃した土地。
でも、可能性は残っている。
公爵邸に戻り、私は本格的な準備に取りかかった。
自室の机に、羊皮紙を広げる。
まずは資金計画。
父から相続した財産、金貨300枚。
フェルゼン伯領購入に100枚使用。
残り200枚。
この200枚で、領地の再建を成し遂げる。
ペンを走らせながら、前世の知識を総動員する。
人件費、種子代、農具、建材、生活必需品。
優先順位をつけ、削れるものは削る。
最低限必要なのは——
人材育成費:金貨30枚。
農業改革費:金貨50枚。
生活支援費:金貨20枚。
運転資金:金貨50枚。
予備費:金貨50枚。
合計200枚で、ギリギリ足りる。
次に、人材の選定。
オスカーとマリアは確定。
あとは、最低限の使用人。
料理人、御者、雑務係。
信頼できる者だけを選ぶ。
1周目の失敗は、人選を誤ったこと。
2周目の失敗は、人材に投資しすぎたこと。
今回は、バランスを取る。
オスカーを呼び、相談する。
「使用人は5名で十分です」
私は言った。
「5名……少なくありませんか」
「最初は少数精鋭で。現地で増やしていくわ」
オスカーは考え込んだ後、頷いた。
「承知しました」
物資のリストも作成した。
食料、衣類、医薬品、農具、種子。
現地調達できるものは現地で。
王都から持っていくのは、最低限のみ。
馬車2台分に収まるように計算する。
マリアが部屋に入ってきた。
「お嬢様、荷造りが終わりました」
「ありがとう、マリア」
私は立ち上がった。
窓の外を見る。
王都の夕焼けが美しかった。
でも、もうこの景色を見ることもない。
「明日、出発するわ」
私は振り返った。
「はい!」
マリアの声は明るい。
不安よりも、期待が勝っている様子だった。
出発の朝は、静かだった。
継母は姿を見せず、父も書斎から出てこなかった。
玄関には、オスカーとマリア、そして選ばれた3名の使用人。
荷物を積んだ馬車が2台、待機していた。
「では、参りましょう」
私は馬車に乗り込んだ。
マリアが隣に座る。
オスカーは別の馬車に乗り、使用人たちを監督する。
御者が手綱を握った。
「出発!」
馬車がゆっくりと動き出した。
王都の門を抜けた。
石畳の道が、土の道に変わる。
窓の外には、麦畑が広がっていた。
黄金色に輝く穂。
農民たちが収穫作業をしている。
「綺麗ですね」
マリアが呟いた。
「ええ」
私は頷いた。
馬車は東へ進む。
王都が遠ざかっていく。
振り返ると、城の尖塔がまだ見えた。
でも、私の心に未練はなかった。
ここから始まる。
私の、本当の人生が。
3時間の旅路。
宿場町で休憩を取りながら、馬車は進んだ。
「お嬢様、怖くありませんか」
「何が?」
「辺境に行くこと。誰も知らない土地に」
私はマリアを見た。
彼女の目には、不安が滲んでいた。
「怖くないと言えば嘘になるわ」
私は正直に答えた。
「でも、ワクワクもしてる」
「ワクワク……ですか?」
「新しいことを始められるんだもの」
私は微笑んだ。
マリアも、少しずつ笑顔を取り戻した。
馬車は、フェルゼン伯領の境界に到着した。
看板が立っていた。
「フェルゼン伯領」
文字は褪せて、読みにくい。
道は荒れ、轍の跡が深い。
馬車がガタガタと揺れた。
「お嬢様、あれが……」
マリアが窓の外を指差した。
遠くに、建物が見えた。
領主館だろう。
でも、屋根の一部が崩れている。
周囲の畑は、雑草に覆われていた。
想像以上の荒廃。
一瞬、胸に不安が走った。
でも——
前世の記憶が蘇る。
倒産寸前の企業を、何度も立て直した日々。
絶望的な状況から、希望を生み出した経験。
私は深く息を吸った。
「大丈夫」
自分に言い聞かせるように呟いた。
「必ず、立て直してみせる」
馬車は、荒れた領主館に向かって進んでいった。
石造りの大きな館。私が育った場所。
でも、もう帰る場所ではない。
玄関で出迎えたのは、使用人たちの冷たい視線だった。
「お嬢様」
オスカーが低い声で呼んだ。
彼の表情に、わずかな緊張が浮かんでいた。
「父上は?」
私は静かに尋ねた。
「書斎におられます。ですが……」
オスカーが言葉を濁した。
その時、階段の上から声が降ってきた。
「恥知らず!」
継母だった。
アデライーデ・フォン・アルトハイム。
父の後妻で、私より15歳年上。
美しい顔立ちだが、今は怒りで歪んでいた。
「よくもこの家に戻ってこられたものね」
彼女は階段を下りてきた。
絹のドレスが揺れる。
「王太子殿下から婚約破棄されるなど、前代未聞よ」
継母の声は甲高い。
使用人たちが息を殺して様子を見守っていた。
「アルトハイム家の名に、泥を塗った」
私は黙って立っていた。
反論しても無駄だと、2回のループで学んでいる。
「父上にお会いしたいのですが」
私は静かに言った。
「会う必要などないわ。お前はもう、この家の恥だもの」
継母が鼻で笑った。
その時、書斎のドアが開いた。
父が姿を現した。
ハルトフガング・フォン・アルトハイム。アルトハイム公爵。
白髪混じりの髪、疲れた目。
「エリナ」
父の声は低く、感情が読み取れない。
「はい、父上」
私は一礼した。
「好きにしなさい」
それだけ言って、父は書斎に戻った。
ドアが閉まる音が、やけに大きく響いた。
1周目も、2周目も、父は同じ反応だった。
無関心。
娘が婚約破棄されても、何の感情も示さない。
継母が満足そうに笑った。
「聞いたでしょう。お前に居場所はないのよ」
私は何も答えなかった。
踵を返し、自室に向かった。
部屋に入ると、一人の若い女性が待っていた。
「お嬢様!」
栗色の髪を三つ編みにした、明るい顔立ちの娘。
マリア・シュトラール。私の侍女。
「マリア」
私は微笑んだ。
「大丈夫でしたか、卒業式」
彼女の声には心配が滲んでいた。
「ええ、予定通りよ」
私はベッドに腰を下ろした。
マリアが急いで紅茶を淹れてくれる。
温かいカップを受け取りながら、私は言った。
「荷造りを始めて」
「荷造り……ですか?」
「私たち、この家を出るの」
マリアの目が見開かれた。
「どちらへ?」
「辺境よ。新しい土地を買うの」
私の言葉に、マリアは一瞬戸惑った。
でもすぐに、明るく笑った。
「わかりました! お嬢様についていきます」
翌朝、私はフェルゼン伯爵邸を訪れた。
オスカーが手配した馬車で、王都の東区へ。
かつては立派だったであろう屋敷も、今は荒れていた。
庭の手入れがされておらず、雑草が伸び放題。
門番もいない。
玄関のドアを叩くと、やつれた中年男性が出てきた。
「フェルゼン伯爵でいらっしゃいますか」
私は丁寧に尋ねた。
「……そうだが」
男性の声は沈んでいた。
フェルゼン伯爵。かつては豊かな領地を持っていたが、経営失敗で破産。
今は債権者に追われる日々。
「お話があります。内密に」
私の言葉に、伯爵は警戒の色を見せた。
でもやがて、諦めたように頷いた。
応接室は埃っぽかった。
使用人もほとんど解雇したのだろう。
私たちは向かい合って座った。
「単刀直入に申し上げます」
私は伯爵を真っ直ぐ見た。
「あなたの領地を買いたいのです」
伯爵の目が見開かれた。
「領地を……?」
「はい。フェルゼン伯領です」
伯爵は困惑した表情を浮かべた。
「あんな荒れ地を買うなど、正気ですか」
「正気です」
私は微笑んだ。
「価格は、金貨100枚でいかがでしょう」
伯爵の顔が強張った。
「100枚……? そんな安値では」
「現在の市場価値を考えれば、妥当な額です」
私は静かに言葉を続けた。
前世の記憶が蘇る。
企業再建で何度も経験した、債務超過企業との交渉。
相手の弱みを突きつつ、希望も残す。
「伯爵、あなたの借金総額は金貨80枚」
伯爵の顔が青ざめた。
「なぜそれを」
「調べました。債権者は3名。すべて王都の商人」
私は淡々と事実を述べた。
「100枚で売れば、借金を完済しても20枚残ります」
伯爵の手が震えた。
「それで、新しい人生を始められる」
私は優しく微笑んだ。
「でも、他の買い手を待つなら、それも自由です」
沈黙が流れた。
時計の秒針の音だけが響く。
やがて伯爵は、深く息を吐いた。
「……わかりました」
彼の声は震えていた。
「100枚で、お譲りします」
契約書の作成には、オスカーが同行した。
王都の公証人役場で、正式な手続きを進める。
金貨100枚を支払い、領地の所有権が私に移った。
フェルゼン伯爵は深々と頭を下げた。
「ありがとうございます」
涙を堪えているのがわかった。
「新しい人生、頑張ってください」
私は彼に微笑みかけた。
伯爵は何度も頷き、役場を去っていった。
「お嬢様」
オスカーが静かに言った。
「優しい交渉でしたね」
「彼も被害者だもの」
私は書類を見つめた。
前領主の失政で荒廃した土地。
でも、可能性は残っている。
公爵邸に戻り、私は本格的な準備に取りかかった。
自室の机に、羊皮紙を広げる。
まずは資金計画。
父から相続した財産、金貨300枚。
フェルゼン伯領購入に100枚使用。
残り200枚。
この200枚で、領地の再建を成し遂げる。
ペンを走らせながら、前世の知識を総動員する。
人件費、種子代、農具、建材、生活必需品。
優先順位をつけ、削れるものは削る。
最低限必要なのは——
人材育成費:金貨30枚。
農業改革費:金貨50枚。
生活支援費:金貨20枚。
運転資金:金貨50枚。
予備費:金貨50枚。
合計200枚で、ギリギリ足りる。
次に、人材の選定。
オスカーとマリアは確定。
あとは、最低限の使用人。
料理人、御者、雑務係。
信頼できる者だけを選ぶ。
1周目の失敗は、人選を誤ったこと。
2周目の失敗は、人材に投資しすぎたこと。
今回は、バランスを取る。
オスカーを呼び、相談する。
「使用人は5名で十分です」
私は言った。
「5名……少なくありませんか」
「最初は少数精鋭で。現地で増やしていくわ」
オスカーは考え込んだ後、頷いた。
「承知しました」
物資のリストも作成した。
食料、衣類、医薬品、農具、種子。
現地調達できるものは現地で。
王都から持っていくのは、最低限のみ。
馬車2台分に収まるように計算する。
マリアが部屋に入ってきた。
「お嬢様、荷造りが終わりました」
「ありがとう、マリア」
私は立ち上がった。
窓の外を見る。
王都の夕焼けが美しかった。
でも、もうこの景色を見ることもない。
「明日、出発するわ」
私は振り返った。
「はい!」
マリアの声は明るい。
不安よりも、期待が勝っている様子だった。
出発の朝は、静かだった。
継母は姿を見せず、父も書斎から出てこなかった。
玄関には、オスカーとマリア、そして選ばれた3名の使用人。
荷物を積んだ馬車が2台、待機していた。
「では、参りましょう」
私は馬車に乗り込んだ。
マリアが隣に座る。
オスカーは別の馬車に乗り、使用人たちを監督する。
御者が手綱を握った。
「出発!」
馬車がゆっくりと動き出した。
王都の門を抜けた。
石畳の道が、土の道に変わる。
窓の外には、麦畑が広がっていた。
黄金色に輝く穂。
農民たちが収穫作業をしている。
「綺麗ですね」
マリアが呟いた。
「ええ」
私は頷いた。
馬車は東へ進む。
王都が遠ざかっていく。
振り返ると、城の尖塔がまだ見えた。
でも、私の心に未練はなかった。
ここから始まる。
私の、本当の人生が。
3時間の旅路。
宿場町で休憩を取りながら、馬車は進んだ。
「お嬢様、怖くありませんか」
「何が?」
「辺境に行くこと。誰も知らない土地に」
私はマリアを見た。
彼女の目には、不安が滲んでいた。
「怖くないと言えば嘘になるわ」
私は正直に答えた。
「でも、ワクワクもしてる」
「ワクワク……ですか?」
「新しいことを始められるんだもの」
私は微笑んだ。
マリアも、少しずつ笑顔を取り戻した。
馬車は、フェルゼン伯領の境界に到着した。
看板が立っていた。
「フェルゼン伯領」
文字は褪せて、読みにくい。
道は荒れ、轍の跡が深い。
馬車がガタガタと揺れた。
「お嬢様、あれが……」
マリアが窓の外を指差した。
遠くに、建物が見えた。
領主館だろう。
でも、屋根の一部が崩れている。
周囲の畑は、雑草に覆われていた。
想像以上の荒廃。
一瞬、胸に不安が走った。
でも——
前世の記憶が蘇る。
倒産寸前の企業を、何度も立て直した日々。
絶望的な状況から、希望を生み出した経験。
私は深く息を吸った。
「大丈夫」
自分に言い聞かせるように呟いた。
「必ず、立て直してみせる」
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