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エピローグ
7月の終わりが近いその日は、松本さんと外山さんの結婚式だった。
「おめでとう」
ウエディングドレスに身を包んだ松本さんは招待客からの祝福の言葉に笑顔で答えていた。
その光景はとても幸せそうだ。
「僕たちももうすぐだね」
幸せそうな2人の様子に、社長が声をかけてきた。
「そうですね、もうすぐですね」
私は社長に返事をした。
社長と愛しあった週末を終えた週明け、私は婚約をしたことを周りに報告した。
その相手が社長であることも何もかも全て、周りに打ち明けた。
当然のことながら、周りはものすごく驚いていた。
中には財産目当てで婚約をしたんだ、なんて言うひどい人もいた。
だけど、そう言う時は松本さんと森田さんがかばってくれた。
「やっぱり、おつきあいをしている人がいるんだなって思いましたよ」
森田さんはそう言って私に笑いかけた。
「チョコレートが恋人だなんて、発言が痛過ぎるにも程がありますもの」
…ごもっとも過ぎるその意見に言い返せなかったのは、言うまでもない話である。
日が経つに連れて、彼女たちの尽力も手伝って、周りは私と社長の婚約話を受け入れてくれたうえに“おめでとう”と声をかけられるようになった。
次の週末、社長と一緒に実家に帰って両親にあいさつをした。
私の相手が勤務先の社長だと言うことを知った時、両親と兄はものすごく驚いていた。
だけど、驚いたのはほんの一瞬のことだった。
「でかしたぞ、心愛!」
父は大喜びだった。
「まるでドラマか映画のような出来事だわ…!」
母は感激していた。
「こんな形でチョコレート好きが生かされるとは…」
兄は感心していた。
家族は社長、そして私たちの婚約を受け入れてくれたのだった。
「てっきり、君のお父さんに1発くらいは殴られるかなって思ってたんだけどね」
帰りの車の中で社長は笑いながらそんなことを言った。
「殴られるって、どうしてですか?」
その意味がよくわからなくて聞き返したら、
「ドラマとか小説とかでよく見かけるから、もしかして…なんて思ってたんだ。
殴られる覚悟をしてたよ」
社長は答えた。
「詩文さんが殴られたら嫌です」
私が首を横に振りながら言い返したら、
「だから殴られなくてよかったなって思って。
もしくは、“君にお父さんと呼ばれる筋合いはない”なんて言う発言も期待していたんだけどな」
社長はアハハと笑いながら答えた。
「詩文さん、ドラマと小説の見過ぎです…」
私が呆れたと言うように呟いたら、
「そう言うのにちょっとばかり憧れていたんだ」
社長が言い返した。
松本さんと外山さんの結婚式が終わると、私たちは手を繋いで家に向かって歩いていた。
これからはもう隠れなくていい。
堂々と手を繋いで歩くことができるんだ。
そんなことを思っていたら、
「いい結婚式だったね」
社長が声をかけてきた。
それに対して、
「2人共、幸せでしたね」
私は返事をした。
「僕たちももうすぐか」
「もうすぐですね」
チラリと、私は社長に視線を向けた。
「どうかした?」
首を傾げて聞いてきた社長に、
「腕を組んでもいいんですか?」
私は聞き返した。
「どうぞ」
社長が返事をしたのを確認すると、自分の手を彼の腕に絡ませた。
手を繋ぐのはいいけれど、こうして腕を組んでみると密着していると言う感じだ。
「距離が近いね」
そう言った社長に、
「ダメですか?」
私は聞いた。
「ううん、とってもいいよ。
腕が大きな胸に当たってるし」
「なっ…!?」
その発言に腕を離そうとしたら、
「ごめんごめん」
社長が慌てて謝ってきた。
「変なことを言わないでくださいよ…」
「でも事実だから…って、待って待って」
離れようとしたら、彼はその距離をつめてきた。
「もう何も言わないから、ね?」
「仕方ないですね」
簡単に社長のことを許してしまったけれども、仕方がないことである。
何故なら、社長のことが好きだから。
「詩文さん」
社長の名前を呼んだら、
「心愛?」
それに答えるように、彼も私の名前を呼んだ。
「好きです」
そう言った私に、
「僕も好きだよ」
彼は微笑んで返事をしてくれた。
「だから、何があってもよそ見をしないでくださいね?」
「僕は心愛しか見えないよ。
君も何があってもよそ見をしないでね?」
「…もし、よそ見をしちゃった場合は何をされるんですか?」
期待をしているって言う訳じゃないけれど、何となく気になったから聞いてみた。
「んーっ、チョコレート禁止令とか?」
フフッと笑いながら言った彼に、私の頬がピクリと引きつったのを感じた。
「えっ、そうなんですか…?」
とてもジョーダンには聞こえないその発言に、ただ恐怖を感じるばかりである。
「それが嫌なら、お仕置きを一晩中かな?」
「何ですか、それ…」
もっと質の悪いものが出てきちゃったよ…。
「だから、よそ見をしないでねって」
「そ、そうですよね」
そうだ、私がよそ見をしなければいいだけの話である。
「うん、いい子」
彼はそう言って私の頭をなでてくれた。
私の頭をなでている大きな手と華奢なその指が好き。
「心愛」
私の名前を呼ぶテナーのその声と私を見つめるその目も好き。
意地悪だけど、優しいところも好き。
ウェーブのかかった黒い髪も、白玉のようにキレイで柔らかそうなその肌も好き。
私も何だかんだで社長のことを言えないなと思った。
社長の好きなところをあげればあげるほど、本当にキリがない。
「家に帰ったら、結婚のことについていろいろと話そうか?」
そう言った彼に、
「はい」
私は返事をした。
「私の意見もちゃんと考えてくれるんですよね?」
「尊重するよ」
チョコレートと同じくらい…いや、チョコレート以上に彼のことが好きだ。
出会って恋をして躰を重ねて、再会したところが就職先の会社で、相手が社長だったと言うことに驚いた。
でも彼は私が好きで、私も彼が好きだから、お互いの思いを受け入れた。
恋をする楽しさや幸せはもちろんのこと、苦しみや悩みも知った。
この先もいろいろなことで悩むことや苦しむことはあるかも知れないけれど、彼と一緒ならば乗り越えれると思う。
「心愛」
「はい」
「愛してる」
「詩文さん、私もです」
そんなことを2人で言いあって、微笑みあった。
☆★END☆★
「おめでとう」
ウエディングドレスに身を包んだ松本さんは招待客からの祝福の言葉に笑顔で答えていた。
その光景はとても幸せそうだ。
「僕たちももうすぐだね」
幸せそうな2人の様子に、社長が声をかけてきた。
「そうですね、もうすぐですね」
私は社長に返事をした。
社長と愛しあった週末を終えた週明け、私は婚約をしたことを周りに報告した。
その相手が社長であることも何もかも全て、周りに打ち明けた。
当然のことながら、周りはものすごく驚いていた。
中には財産目当てで婚約をしたんだ、なんて言うひどい人もいた。
だけど、そう言う時は松本さんと森田さんがかばってくれた。
「やっぱり、おつきあいをしている人がいるんだなって思いましたよ」
森田さんはそう言って私に笑いかけた。
「チョコレートが恋人だなんて、発言が痛過ぎるにも程がありますもの」
…ごもっとも過ぎるその意見に言い返せなかったのは、言うまでもない話である。
日が経つに連れて、彼女たちの尽力も手伝って、周りは私と社長の婚約話を受け入れてくれたうえに“おめでとう”と声をかけられるようになった。
次の週末、社長と一緒に実家に帰って両親にあいさつをした。
私の相手が勤務先の社長だと言うことを知った時、両親と兄はものすごく驚いていた。
だけど、驚いたのはほんの一瞬のことだった。
「でかしたぞ、心愛!」
父は大喜びだった。
「まるでドラマか映画のような出来事だわ…!」
母は感激していた。
「こんな形でチョコレート好きが生かされるとは…」
兄は感心していた。
家族は社長、そして私たちの婚約を受け入れてくれたのだった。
「てっきり、君のお父さんに1発くらいは殴られるかなって思ってたんだけどね」
帰りの車の中で社長は笑いながらそんなことを言った。
「殴られるって、どうしてですか?」
その意味がよくわからなくて聞き返したら、
「ドラマとか小説とかでよく見かけるから、もしかして…なんて思ってたんだ。
殴られる覚悟をしてたよ」
社長は答えた。
「詩文さんが殴られたら嫌です」
私が首を横に振りながら言い返したら、
「だから殴られなくてよかったなって思って。
もしくは、“君にお父さんと呼ばれる筋合いはない”なんて言う発言も期待していたんだけどな」
社長はアハハと笑いながら答えた。
「詩文さん、ドラマと小説の見過ぎです…」
私が呆れたと言うように呟いたら、
「そう言うのにちょっとばかり憧れていたんだ」
社長が言い返した。
松本さんと外山さんの結婚式が終わると、私たちは手を繋いで家に向かって歩いていた。
これからはもう隠れなくていい。
堂々と手を繋いで歩くことができるんだ。
そんなことを思っていたら、
「いい結婚式だったね」
社長が声をかけてきた。
それに対して、
「2人共、幸せでしたね」
私は返事をした。
「僕たちももうすぐか」
「もうすぐですね」
チラリと、私は社長に視線を向けた。
「どうかした?」
首を傾げて聞いてきた社長に、
「腕を組んでもいいんですか?」
私は聞き返した。
「どうぞ」
社長が返事をしたのを確認すると、自分の手を彼の腕に絡ませた。
手を繋ぐのはいいけれど、こうして腕を組んでみると密着していると言う感じだ。
「距離が近いね」
そう言った社長に、
「ダメですか?」
私は聞いた。
「ううん、とってもいいよ。
腕が大きな胸に当たってるし」
「なっ…!?」
その発言に腕を離そうとしたら、
「ごめんごめん」
社長が慌てて謝ってきた。
「変なことを言わないでくださいよ…」
「でも事実だから…って、待って待って」
離れようとしたら、彼はその距離をつめてきた。
「もう何も言わないから、ね?」
「仕方ないですね」
簡単に社長のことを許してしまったけれども、仕方がないことである。
何故なら、社長のことが好きだから。
「詩文さん」
社長の名前を呼んだら、
「心愛?」
それに答えるように、彼も私の名前を呼んだ。
「好きです」
そう言った私に、
「僕も好きだよ」
彼は微笑んで返事をしてくれた。
「だから、何があってもよそ見をしないでくださいね?」
「僕は心愛しか見えないよ。
君も何があってもよそ見をしないでね?」
「…もし、よそ見をしちゃった場合は何をされるんですか?」
期待をしているって言う訳じゃないけれど、何となく気になったから聞いてみた。
「んーっ、チョコレート禁止令とか?」
フフッと笑いながら言った彼に、私の頬がピクリと引きつったのを感じた。
「えっ、そうなんですか…?」
とてもジョーダンには聞こえないその発言に、ただ恐怖を感じるばかりである。
「それが嫌なら、お仕置きを一晩中かな?」
「何ですか、それ…」
もっと質の悪いものが出てきちゃったよ…。
「だから、よそ見をしないでねって」
「そ、そうですよね」
そうだ、私がよそ見をしなければいいだけの話である。
「うん、いい子」
彼はそう言って私の頭をなでてくれた。
私の頭をなでている大きな手と華奢なその指が好き。
「心愛」
私の名前を呼ぶテナーのその声と私を見つめるその目も好き。
意地悪だけど、優しいところも好き。
ウェーブのかかった黒い髪も、白玉のようにキレイで柔らかそうなその肌も好き。
私も何だかんだで社長のことを言えないなと思った。
社長の好きなところをあげればあげるほど、本当にキリがない。
「家に帰ったら、結婚のことについていろいろと話そうか?」
そう言った彼に、
「はい」
私は返事をした。
「私の意見もちゃんと考えてくれるんですよね?」
「尊重するよ」
チョコレートと同じくらい…いや、チョコレート以上に彼のことが好きだ。
出会って恋をして躰を重ねて、再会したところが就職先の会社で、相手が社長だったと言うことに驚いた。
でも彼は私が好きで、私も彼が好きだから、お互いの思いを受け入れた。
恋をする楽しさや幸せはもちろんのこと、苦しみや悩みも知った。
この先もいろいろなことで悩むことや苦しむことはあるかも知れないけれど、彼と一緒ならば乗り越えれると思う。
「心愛」
「はい」
「愛してる」
「詩文さん、私もです」
そんなことを2人で言いあって、微笑みあった。
☆★END☆★
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