いじめ

夜碧ひな

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Another Last

いじめ

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『続いてのニュースです。
数年前、全国各地で起こった連続殺人事件。今日、時効を迎えたということです。』

報道番組から流れてくるニュース。
この連続殺人事件は私がやったと言っても過言ではない。
20年ほど前、私の娘は高校の卒業式で自殺した。


「私は、、クラスメイトにいじめられた!!!
誰も救ってくれない。誰も助けてくれない!!!
だから、今日!!お前たちの門出を最悪の日にしてやる!!!!!」


そう言って娘は壇上でナイフを自分の腹に刺した。
父親の私からしたら、ただの絶句だった。
何が起こっているのだろうか。何かの演劇でもしているのだろうか。
私はただ、目の前に起こっている事実を見続けることしか出来なかった。






『私はずっと思ってた。
みんな私のことが嫌いでも、私がみんなを好きならそれで良いって。
でも、そう思ってても私に迫ってくるのは見返りの欲望だけで。
誰も寄り添わない、誰も助けてくれない。
その事実だけが私を襲ってきた。
誰も恨みたくない。誰も傷付けたくない。
そう思う度に、どんどん恨みが膨らんでいく。
いつしか、みんなには殺意が芽生えてた。
今日、優眞くんに死んでもいいって言ってもらった。
だから、卒業式の日に死のうと思う。
そしてその後、私は、、
あんたら全員を殺す。
だけど、もし次会うことがあったらお互いがお互いを認め合えるような仲間になれたらいいね。
もっと、色んな経験したかった。
もっと、色んな話したかった。
色んなもの食べたかった。
沢山遊びたかった。
恋愛もしてみたかった。
彼氏とか欲しかった。
頼れる仲間が欲しかった。
親しい友達が欲しかった。
もっと、自分を愛したかった。
もっと、笑いたかった。
もっと、生きてみたかった。
もっともっと、生きたかったなぁ。』






これが、娘が最後に書いた日記だった。
遺品整理をしたのは娘が亡くなってから実に2,3年後のことだった。
この日記を見つけて以来、私は毎晩涙が出るようになった。
私は自分を恨んだ。
ここまで娘が苦しんでいたなんて知らなかった。
なぜ気づけなかったのだろう。なぜ何もしてやれなかったのだろう。
自分で自分の命を奪わせてしまった。
妻は娘の死のショックで倒れ、10年前に亡くなった。
私はひとり、この広々とした家に一人暮らしだ。
この何にもならない気持ちを、生涯負って生きていく。

私はリビングに日記を置き、仏壇の前に腰を下ろした。
ロウソクを付けようと奥にあったマッチを取ろうとした時、見知らぬ封筒が置かれていることに気がついた。
宛名は私。贈り主は、娘だった。
遺品整理の時にはこんな封筒は見えなかった。
中身を見ると、どうやら手紙のようだった。
私はゆっくりと大切に手紙を開いた。


「お父さん。
お久しぶりです。
こんな手紙を書いていいのか、少し心配です。
私はお父さんよりも、お母さんよりも先に死んでしまいました。親不孝して、ごめんなさい。
でも、辛かったの。生きてることが、辛かった。
心配かけたくないって、お父さんたちの前では平気な顔してたけど、命を投げるようなことになるのなら意味ないよね。ごめんなさい。
家族みんなに迷惑かけて、本当にごめんなさい。
でも、私はこっちでも元気にやってます。
あ、!お母さんと会ったの!
変わらない笑顔で、とっても温かかった。
2人とも元気です。
家を守ってくれて、私を大切にしてくれてありがとう。弟くんにもたまには帰るように伝えておくから、仲良くね。
私、お父さんの娘で本当に良かったと思ってる。
ごめんなさいも沢山思ってるけど、その倍くらいありがとうって思ってる。
お母さんと結婚してくれてありがとう。
私を育ててくれてありがとう。
私のお父さんでいてくれて、ありがとう。」


手紙を読み終わる頃には、紙が涙で濡れていた。
不思議なこの事実は、ただひたすらに幸せで溢れていた。またもう一度会いたい。確かにそうなのだが、そう思う心よりも、もし次娘に会うことができたのなら絶対に幸せにしてやろうという覚悟の方が大きかった。
窓から入ってくる西日が少し強い。
私はロウソクに火を付け、お線香をあげ、手紙を封筒に戻し、仏壇に向かって手を合わせた。


------------------------------------------------------------


『数年に渡って実行されていた連続殺人。
警察によりますと、犯人は同一人物である可能性が高いとみて捜査を続けていましたが、本日より時効となってしまったということです。』
都会の大きなモニターからそんな言葉が流れてくる。
みんなは知らないだろう。犯人なんて。
でも俺にはわかる。犯人は、
きっと姉ちゃんだ。
姉ちゃんはいじめられてた。その復習心でクラスメイトを順々に殺していく。実家にそんな姉ちゃんの日記が書かれてた。当時俺は怖くなって見て見ぬふりをしてたけど、まさか本当になるなんて。
俺は弟でありながら何も出来なかった。何も気づかなかった。
情けないのほかの言葉が見当たらない。
俺はモニターの下に集まる人を避けながら職場に向かった。

「高橋さん最近見ないわよね。。」
「確かに!」
「殺されたとかも言われてるけど....」
「恨まれるような人じゃないし、、」

会社に戻ればそんな話が後を絶たない。
ここ数ヶ月、代表取締役の高橋優眞が会社に姿を見せない。それどころか、音信不通。行方不明。お先真っ暗とはこのことだ。
俺は姉ちゃんの日記に書かれた高橋優眞が気になってこの会社に入社した。何故姉ちゃんの自殺を進めるようなことを言ったのか。応答次第じゃ殺す勢いだった。
でも思ってた人とは違って、礼儀正しく全ての経由を説明してくれて、どういう状況だったかも隠さず伝えてくれた。
俺が姉ちゃんの弟だと言うことを知ると、全員が見ている前で土下座した。いい大人がそんな滑稽な真似をするな。そう思って顔を上げてくれと言っても彼の耳には届かない。そのまま30分ほど土下座したままだった。
いつからか、彼への殺意は収まっていた。
そんな高橋さんはどこに。

いつもお昼になると決まって1人で屋上に行く。
広く、景色もいい。なのに割と穴場だった。
弁当の袋を開けると茶封筒が入っていた。
そのまま中身を見ると手紙が入っていた。

『優汰。お久しぶりです。
元気でやってるかな??
会社はどうですか??
あんたは心優しい素敵な子で、よく助けてもらいました。どっちが上かわかんないくらいだったね。
あなたには、とても辛いことをしてしまったと本当に反省しています。ごめんなさい。
多感な時期に、余計な経験を積ませてしまいました。
私がいなくなってから、どう過ごしていますか?
きっと優汰のことだから根本は変わらず素敵なままだろうけど、苦しいこと増やしてしまったかな。
私はもう戻れません。だから、せめて私の分まで生きてほしいと思います。
お父さんお母さんから貰った命、大切にしてね。私が言えたことじゃないけど。。
謝って済む問題じゃないけど、本当にごめん。
そして、私の弟でいてくれてありがとう。
たまには実家帰ってお父さんの相手してあげてね。
幸せになるんだぞぉー!!!!               佐々木 愛唯』

俺は途中まで広げた弁当を元に戻した。
どういう原理でこの手紙が届いたのかはわからない。
そんなものどうだっていい。
ただこの手紙は姉ちゃんが書いたものだというのは確実だった。
贈り主の元に、高橋さんもいるのかな。
「高橋さん、姉ちゃん割と寂しがり屋だから、よろしくお願いします。
姉ちゃん、ぜってー幸せになるから。
だから姉ちゃんも、幸せってもんを知ってくれ。」
どこからか温かい午後の風が吹いてくる。
その風に乗せられて桜の花びらが舞っている。
茶封筒に手紙を戻し、街を見渡す。
いつもは人の声や車の音などでうるさいのに、今日はすごく静かに感じた。
もう昼休みはとっくに過ぎてるのに、この風をずっと感じていたい。そう思いながら俺はフェンスに足をかけた。
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