カミカゼ

キリン

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「第十三話」同類

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 自分たちがさっきまで乗っていた機体は、爆炎の中に消えていった。
 爆風、風切り音、破片。『八咫』で空が飛べるとはいえ、それでも一気に心臓が暴れまくる。──いいや落ち着け、まずは状況を確認せねば。

 《周囲に敵『天使』の反応有り。数は凡そ十機、装備には銃器の類を搭載していると思われます》
 
 銃器搭載型の『天使』の情報は前々から軍部に共有されていた。その恐ろしさは蟷螂型の『天使』と混ざって数機いるだけでも通常部隊では手を焼き、そして今回はそれが纏めて十機以上やってきている。

 「ッ、『八咫』!!」
 《守護衛星分離、電磁結界を展開します》

 間一髪、装甲の一部が電磁結界を展開する。
 放たれる弾丸一発一発は武装した輸送機を紙ペラのように粉砕できる狂気の代物だ。あんなモノを直接ぶち込まれようものなら、『八咫』を着込んでいる俺はともかくあの子達はミンチになってしまう。守らなければ。

 「『八咫』、あいつらも落ちてるはずだ、助けながらどうにか『天使』を」
 「──その必要はありません────」

 迅ッ──閃。
 稲光のような横薙ぎの閃光が迸るとともに、眼前にて銃口を向けていた銃器搭載型の『天使』共が大破する。吹き荒れる爆炎をも切り裂き、その奥にいたのは。

 「威吹!!」
 「射撃戦は玲子二等兵の独壇場です。勇一等兵殿は、私と出雲と一緒に援護を!」

 リズミカルに弾けるような音が、吹き行く風の中であってもはっきりと聞こえる。そこには巨大な銃を持った……いいや、片腕そのものが巨大な銃器として変形している玲子が、残る七機の『天使』と激しい銃撃戦を繰り広げていた。

 「多勢に無勢だ。『八咫』! 装甲の一部を玲子に!」
 《承知しました。脚部付近の装甲の一部を、守護衛星として起動します》

 足元から離れていく守護衛星四機。それは激しい打ち合いを繰り広げる玲子の前に現れ、電磁結界を即座に展開する。……さて、俺自身も早くも加勢を────速度を上げた『八咫』の真横を、赤い残像が追い抜かしていく。

 「出雲!? おい、一人で突っ込むんじゃ……」
 「イヤッホォォオオオオオィ殲滅だぁアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 馬鹿なのかという俺の不安は、すぐに実力行使に寄って払拭される。弾丸が横行する両者の間に突っ込んでいった出雲は、なんと有り得ないほど起用で細かな空中機動によってそれを躱し続け……『天使』のうち一機に拳を叩きつけた。
 
 「死、ねぇ!!!」

 ドォン! 『天使』が木っ端微塵に吹き飛ぶ! 後続の数機を巻き添えに『天使』共は大破していき、気づけば残る一機が空に逃げ出したではないか! 

 「逃がすか! 玲子、援護しろ!」
 「はい!」

 『八咫』に内蔵された光の剣の柄を握りしめ、背を向ける卑怯者を猛追する。逃がすものか、貴様らのせいで……あの輸送機に乗っていた名も知らぬ同胞は、空に散ったのだぞ!
 弾、弾ッ! 放たれる弾丸が『天使』の機体に直撃し、その加速が失速へと転じる。

 捉える。間合い、振り下ろす怒りッ!!

 「くたばれぇいッ!!!」

 両──断。
 脳天から股関節に当たる部分までを、焼き切る。……すかさず後方に下がった次の瞬間、『天使』は無様にその鋼鉄の身体を爆発四散させた。

 「……」
 「お見事です! 勇さん!」
 「すげぇつえー! 帰ったら組手しよーぜー!」

 帰ったら。……うん、いい響きだ。まだ脈は収まらないけれど、ああとてもいい。
 少し遅れて、威吹が俺の前に飛んできた。

 「お見事です、勇一等兵殿。……輸送機は大破。現在戦闘中の小笠原までは、そう遠くはありませんが……いかが致しましょうか」
 「無論、このまま戦線に参戦する。お前ら全員まだ戦えるな?」
 「はい。ここにいる『神風』シリーズ全機、まだ戦闘続行可能です」
 「よし、なら早く行こう。あそこだけは、落とされるわけには行かないからな」
 「「「了解!」」」

 全員の返事とともに、『神風隊』は俺を先頭に小笠原へと猛進する。

 (……なにが、軍人)

 結局、”戦力”として見てしまっているではないか。
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