14 / 15
「第十三話」同類
しおりを挟む
自分たちがさっきまで乗っていた機体は、爆炎の中に消えていった。
爆風、風切り音、破片。『八咫』で空が飛べるとはいえ、それでも一気に心臓が暴れまくる。──いいや落ち着け、まずは状況を確認せねば。
《周囲に敵『天使』の反応有り。数は凡そ十機、装備には銃器の類を搭載していると思われます》
銃器搭載型の『天使』の情報は前々から軍部に共有されていた。その恐ろしさは蟷螂型の『天使』と混ざって数機いるだけでも通常部隊では手を焼き、そして今回はそれが纏めて十機以上やってきている。
「ッ、『八咫』!!」
《守護衛星分離、電磁結界を展開します》
間一髪、装甲の一部が電磁結界を展開する。
放たれる弾丸一発一発は武装した輸送機を紙ペラのように粉砕できる狂気の代物だ。あんなモノを直接ぶち込まれようものなら、『八咫』を着込んでいる俺はともかくあの子達はミンチになってしまう。守らなければ。
「『八咫』、あいつらも落ちてるはずだ、助けながらどうにか『天使』を」
「──その必要はありません────」
迅ッ──閃。
稲光のような横薙ぎの閃光が迸るとともに、眼前にて銃口を向けていた銃器搭載型の『天使』共が大破する。吹き荒れる爆炎をも切り裂き、その奥にいたのは。
「威吹!!」
「射撃戦は玲子二等兵の独壇場です。勇一等兵殿は、私と出雲と一緒に援護を!」
リズミカルに弾けるような音が、吹き行く風の中であってもはっきりと聞こえる。そこには巨大な銃を持った……いいや、片腕そのものが巨大な銃器として変形している玲子が、残る七機の『天使』と激しい銃撃戦を繰り広げていた。
「多勢に無勢だ。『八咫』! 装甲の一部を玲子に!」
《承知しました。脚部付近の装甲の一部を、守護衛星として起動します》
足元から離れていく守護衛星四機。それは激しい打ち合いを繰り広げる玲子の前に現れ、電磁結界を即座に展開する。……さて、俺自身も早くも加勢を────速度を上げた『八咫』の真横を、赤い残像が追い抜かしていく。
「出雲!? おい、一人で突っ込むんじゃ……」
「イヤッホォォオオオオオィ殲滅だぁアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
馬鹿なのかという俺の不安は、すぐに実力行使に寄って払拭される。弾丸が横行する両者の間に突っ込んでいった出雲は、なんと有り得ないほど起用で細かな空中機動によってそれを躱し続け……『天使』のうち一機に拳を叩きつけた。
「死、ねぇ!!!」
ドォン! 『天使』が木っ端微塵に吹き飛ぶ! 後続の数機を巻き添えに『天使』共は大破していき、気づけば残る一機が空に逃げ出したではないか!
「逃がすか! 玲子、援護しろ!」
「はい!」
『八咫』に内蔵された光の剣の柄を握りしめ、背を向ける卑怯者を猛追する。逃がすものか、貴様らのせいで……あの輸送機に乗っていた名も知らぬ同胞は、空に散ったのだぞ!
弾、弾ッ! 放たれる弾丸が『天使』の機体に直撃し、その加速が失速へと転じる。
捉える。間合い、振り下ろす怒りッ!!
「くたばれぇいッ!!!」
両──断。
脳天から股関節に当たる部分までを、焼き切る。……すかさず後方に下がった次の瞬間、『天使』は無様にその鋼鉄の身体を爆発四散させた。
「……」
「お見事です! 勇さん!」
「すげぇつえー! 帰ったら組手しよーぜー!」
帰ったら。……うん、いい響きだ。まだ脈は収まらないけれど、ああとてもいい。
少し遅れて、威吹が俺の前に飛んできた。
「お見事です、勇一等兵殿。……輸送機は大破。現在戦闘中の小笠原までは、そう遠くはありませんが……いかが致しましょうか」
「無論、このまま戦線に参戦する。お前ら全員まだ戦えるな?」
「はい。ここにいる『神風』シリーズ全機、まだ戦闘続行可能です」
「よし、なら早く行こう。あそこだけは、落とされるわけには行かないからな」
「「「了解!」」」
全員の返事とともに、『神風隊』は俺を先頭に小笠原へと猛進する。
(……なにが、軍人)
結局、”戦力”として見てしまっているではないか。
爆風、風切り音、破片。『八咫』で空が飛べるとはいえ、それでも一気に心臓が暴れまくる。──いいや落ち着け、まずは状況を確認せねば。
《周囲に敵『天使』の反応有り。数は凡そ十機、装備には銃器の類を搭載していると思われます》
銃器搭載型の『天使』の情報は前々から軍部に共有されていた。その恐ろしさは蟷螂型の『天使』と混ざって数機いるだけでも通常部隊では手を焼き、そして今回はそれが纏めて十機以上やってきている。
「ッ、『八咫』!!」
《守護衛星分離、電磁結界を展開します》
間一髪、装甲の一部が電磁結界を展開する。
放たれる弾丸一発一発は武装した輸送機を紙ペラのように粉砕できる狂気の代物だ。あんなモノを直接ぶち込まれようものなら、『八咫』を着込んでいる俺はともかくあの子達はミンチになってしまう。守らなければ。
「『八咫』、あいつらも落ちてるはずだ、助けながらどうにか『天使』を」
「──その必要はありません────」
迅ッ──閃。
稲光のような横薙ぎの閃光が迸るとともに、眼前にて銃口を向けていた銃器搭載型の『天使』共が大破する。吹き荒れる爆炎をも切り裂き、その奥にいたのは。
「威吹!!」
「射撃戦は玲子二等兵の独壇場です。勇一等兵殿は、私と出雲と一緒に援護を!」
リズミカルに弾けるような音が、吹き行く風の中であってもはっきりと聞こえる。そこには巨大な銃を持った……いいや、片腕そのものが巨大な銃器として変形している玲子が、残る七機の『天使』と激しい銃撃戦を繰り広げていた。
「多勢に無勢だ。『八咫』! 装甲の一部を玲子に!」
《承知しました。脚部付近の装甲の一部を、守護衛星として起動します》
足元から離れていく守護衛星四機。それは激しい打ち合いを繰り広げる玲子の前に現れ、電磁結界を即座に展開する。……さて、俺自身も早くも加勢を────速度を上げた『八咫』の真横を、赤い残像が追い抜かしていく。
「出雲!? おい、一人で突っ込むんじゃ……」
「イヤッホォォオオオオオィ殲滅だぁアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
馬鹿なのかという俺の不安は、すぐに実力行使に寄って払拭される。弾丸が横行する両者の間に突っ込んでいった出雲は、なんと有り得ないほど起用で細かな空中機動によってそれを躱し続け……『天使』のうち一機に拳を叩きつけた。
「死、ねぇ!!!」
ドォン! 『天使』が木っ端微塵に吹き飛ぶ! 後続の数機を巻き添えに『天使』共は大破していき、気づけば残る一機が空に逃げ出したではないか!
「逃がすか! 玲子、援護しろ!」
「はい!」
『八咫』に内蔵された光の剣の柄を握りしめ、背を向ける卑怯者を猛追する。逃がすものか、貴様らのせいで……あの輸送機に乗っていた名も知らぬ同胞は、空に散ったのだぞ!
弾、弾ッ! 放たれる弾丸が『天使』の機体に直撃し、その加速が失速へと転じる。
捉える。間合い、振り下ろす怒りッ!!
「くたばれぇいッ!!!」
両──断。
脳天から股関節に当たる部分までを、焼き切る。……すかさず後方に下がった次の瞬間、『天使』は無様にその鋼鉄の身体を爆発四散させた。
「……」
「お見事です! 勇さん!」
「すげぇつえー! 帰ったら組手しよーぜー!」
帰ったら。……うん、いい響きだ。まだ脈は収まらないけれど、ああとてもいい。
少し遅れて、威吹が俺の前に飛んできた。
「お見事です、勇一等兵殿。……輸送機は大破。現在戦闘中の小笠原までは、そう遠くはありませんが……いかが致しましょうか」
「無論、このまま戦線に参戦する。お前ら全員まだ戦えるな?」
「はい。ここにいる『神風』シリーズ全機、まだ戦闘続行可能です」
「よし、なら早く行こう。あそこだけは、落とされるわけには行かないからな」
「「「了解!」」」
全員の返事とともに、『神風隊』は俺を先頭に小笠原へと猛進する。
(……なにが、軍人)
結局、”戦力”として見てしまっているではないか。
0
あなたにおすすめの小説
電子の帝国
Flight_kj
歴史・時代
少しだけ電子技術が早く技術が進歩した帝国はどのように戦うか
明治期の工業化が少し早く進展したおかげで、日本の電子技術や精密機械工業は順調に進歩した。世界規模の戦争に巻き込まれた日本は、そんな技術をもとにしてどんな戦いを繰り広げるのか? わずかに早くレーダーやコンピューターなどの電子機器が登場することにより、戦場の様相は大きく変わってゆく。
超空の艦隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
九六式陸上攻撃機が制式採用されたことで、日本陸海軍は国力の劣勢を挽回するために”空中艦隊”の建設を開始。言ってしまえば、重爆、軽爆、襲撃、重戦、軽戦の5機種を生産して、それを海軍の艦隊のように運用することである。陸海軍は協力して、ついに空中艦隊を建設し太平洋に大空へ飛び立っていく…
小日本帝国
ypaaaaaaa
歴史・時代
日露戦争で判定勝ちを得た日本は韓国などを併合することなく独立させ経済的な植民地とした。これは直接的な併合を主張した大日本主義の対局であるから小日本主義と呼称された。
大日本帝国ならぬ小日本帝国はこうして経済を盤石としてさらなる高みを目指していく…
戦線拡大が甚だしいですが、何卒!
幻影の艦隊
竹本田重朗
歴史・時代
「ワレ幻影艦隊ナリ。コレヨリ貴軍ヒイテハ大日本帝国ヲタスケン」
ミッドウェー海戦より史実の道を踏み外す。第一機動艦隊が空襲を受けるところで謎の艦隊が出現した。彼らは発光信号を送ってくると直ちに行動を開始する。それは日本が歩むだろう破滅と没落の道を栄光へ修正する神の見えざる手だ。必要な時に現れては助けてくれるが戦いが終わるとフッと消えていく。幻たちは陸軍から内地まで至る所に浸透して修正を開始した。
※何度おなじ話を書くんだと思われますがご容赦ください
※案の定、色々とツッコミどころ多いですが御愛嬌
離反艦隊 奮戦す
みにみ
歴史・時代
1944年 トラック諸島空襲において無謀な囮作戦を命じられた
パターソン提督率いる第四打撃群は突如米国に反旗を翻し
空母1隻、戦艦2隻を含む艦隊は日本側へと寝返る
彼が目指したのはただの寝返りか、それとも栄えある大義か
怒り狂うハルゼーが差し向ける掃討部隊との激闘 ご覧あれ
黎明の珊瑚海
みにみ
歴史・時代
MO作戦、米豪遮断作戦によって発生した珊瑚海海戦
この戦いにより双方空母一隻喪失、一隻中破で相打ちとなったが作戦失敗により
日本海軍の戦略的敗北となる
大本営は残る正規空母4隻、軽空母2隻を擁して第二次MO作戦を決行することを決定
だが対抗する米海軍も無線傍受で作戦の情報を得て…
ミッドウェーに代わる太平洋戦争の天王山 第二次珊瑚海海戦いざ開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる