リグレットの炎怨

キリン

文字の大きさ
25 / 31

「炎」第二十一話

しおりを挟む
「見えた!出口だ!」

後ろから迫ってくる追ってに対し、拾った野球ボールを投げながら、ブレイバは目の前の大きな門を指差した。

あそこを出れば外に出ることができる、リグレットは背負った機械剣の重さを感じながら、ちょっとだけ緊張していた。
でもなんだか、少し、何かが足りない気がした。

少し頭を捻る。

「‥‥あっ!」
「おっとっ‥‥おいリグレット!?」

急に立ち止まったリグレットにブレイバは困惑したが、リグレットは真っ青な顔で言った。

「ホープがこの城にいること忘れてた!やばい、戻らないと!」
「おいちょま

ブレイバの声も虚しく、リグレットは180度回転、迫りくる追手に真正面から突っ込んでいった。

たじろぐ兵士たち、リグレットはにやりと笑って背中の機械剣に手を賭けた。
その瞬間、ブレイバの背中に恐ろしい程の悪寒が走った。

あの剣で、あの子が人を殺める、血みどろの姿が目に浮かんだからだ。

「~~~~~~!」

声を出そうとしたブレイバだったが、偶然にも剣を持った彼と目が合った。
その目は、あまりにも澄んでいて、とても人を殺す前の者の目ではなかった。

ブレイバには、それが「大丈夫」と言っているようにさえ見えた。

「よいしょぉぉぉぉぉっ!」

低くしゃがみ込んだリグレット、片足を軸にし、自分がすっぽり入るほどの切り込みを地面に入れた。

「ごめんなさい、囮お願いします!」

「はぁ!?」

ブレイバの声が届くより前に、底が抜けた床が落ち、リグレットはその穴に吸い込まれていった。

足場が無くなった途端、兵士たちは互いに顔を見合わせ、穴の中を覗き込み。

「あいつだ!あいつを先に捕まえるんだぁ!」

穴を飛び越え剣を抜き、標的をブレイバ一人に絞ったのである。
勿論ブレイバは逃げる、たくさんの兵士がブレイバを追いかける。

「リグレット…‥‥」

囮にされたことは別に怒ってはいない、ただ、一人になった彼が心配だった。
でも、恥ずかしながらブレイバの心の中は、もっと別の物で満たされていた。

「好きな女の子守るために一人で、か、かっこいいことするじゃないか!」

自然と笑みがこぼれてしまう自分がとても憎く、当たり前のように手を差し伸べることのできるあの子が、とてもかっこいいと思った。

出口を抜けると、一人の兵士が不意打ちをするべく剣を振るってきた。

「遅いな、だが筋がいい、思い切って弓兵にでもなればどうだ?」

剣を持つ手首を掴み、その隙に鳩尾を殴る。
気を失った兵士の手から剣が落ち、ブレイバはそれを手に取った。

「おのれ、この反逆者めがぁ!」

追いかけてきた兵士たちの先頭にいた槍兵の槍が、ブレイバの横腹を狙った。

「槍なのに力んでいるな、君は逆にこの剣を使え」

奪った剣で矛先を逸らす、すかさずガラ空きの胴に跳び蹴りを一発。
まるでドミノ倒しのように後ろの兵士たちが倒れて行き、土埃が宙を舞う。

咳払いをしながら、ブレイバは片目を閉じて言った。

「剣はもう握りたくなかったんだがな、だが生憎、私は今、久しぶりに武人の気分なんだ、さぁ、誰からでも掛かって来い!」

剣を構えるブレイバ、起き上がり襲い掛かってくる兵士を次々に蹴散らしていく。
その実力差は、誰が見ても歴然だった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

処理中です...