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僕は魔王でした。

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 リリーの攻撃を全てかわし、自我が戻る一瞬を狙っているが全然戻る気配がない。
 でもちょっとまてよ。
 足に少し力を入れると超スピードで走れ、拳を前にかざしただけでけ空気団が発生する。
 ってことは声も同じ要領で少し力を加えて大きな超えてをだしたらどうなる。
 これは試すしかないよな。

 リリーの攻撃をかわしつつ、お腹な力を加えて「リリー」と僕は叫んだ。
「リリーの体が一瞬怯み、意識を取り戻したようにみえた」
 僕はリリーに目を合わせイケメンフェイスを発動させた。
 
 リリーは目がくるくるしだして、その場に倒れた。
 やはりイケメンフェイスがどういう能力なのかはいまだによくわからないが洗脳を解く力はあるようだ。

 リリーを王室に残し急いで王様がいるところに向かった。
 
 一瞬で王様がいた場所に着くとゲートだと思われる物が目にうつった。
 例えるとするなら雲がフワフワと集まっている状態だ。
 多分この中に飛び込めば魔王城にたどり着くのだろう。
 でもなんかちょっと気持ち悪いので飛び込む気にはなれないが、いくしかないよな。
 僕は勢いよくゲートに飛び込んだ。

「な・・・なんだと」
 言葉を失いかけそうなほどなく魔王城と思われる城を壊滅状態だった。
 僕は魔王城に辿り着く為の1本の道の上にいた。
 魔王城は僕が想像していた通りで、東京ドーム何個分かはわからないほど大きな建物に違いない。
 なぜならそこには残害が落ちていたのだ。
 よくみたら残害だけではなく、人間と魔物の死体が残害のように、あちこちに散らばっていた。
 まさに地獄絵図とはこの毎をいうのだろう。
 それでも人間のほうが優先らしく、魔族の数に対して人間は倍以上存在した。
 魔王城から赤い閃光が放たれた。
 僕はあまりの眩しさに目をつむってしまった。

「魔王様」
 僕の下から声がきこえたが、まだ目を開くことができない状態だ
「魔王様」
 ゆっくり目を開いて確認すると、頭には角が生えお尻には尻尾がある魔物が深々と頭を下げていた。
「あの顔をあげて下さい?」
「は」
 といい顔を素早くあげたら、目から涙がこぼれていた。
「あのどうしたの?」
「魔王様が無事で私ベリアルは嬉しいのでございます」
「あーそれは苦労をかけたね。じゃなくてこの前も魔王様っていってたけど、誰が魔王なの?」
「なにをおっしゃいますか。魔王様は魔王様ですよ」
 いやいや、質問に対して答えがでていないんだけど。
「もう1度きくけど魔王様って誰?」
 僕の表情が少し真剣になったのを察したのか、ベリアルという魔物も「あなたが魔王様です」と答えてくれた。
 僕が魔王だって。
 だけどこの対応と、僕がはじめてこの夢だと思っていた場所にきたときも、何回も魔王様といわれていた。
 これはもう受け入れるしかないのか。
 僕が魔王だということに。

「ベリアルこの前受けた傷は大丈夫なの?」
「は!心配いりません。あの程度の傷などたいしたことありません」
 剣で思いっきり腹切られてたけどね。
「あーそういえばベリアルに傷を付けた人はどうなったの?」
「魔王様がいなくなったから戦う気が失せたといってどこかに消えてしまいました」

 突然雷鳴が轟くようなものすごい音が魔王城から鳴り響いた。
 ベリアルと僕は思わず目を向けると、魔王城から火柱が上がっていた。

「魔王様みての通り、今魔王城は壊滅状態です。失礼を承知でどうか私達を救って下さいませんか」
 ベリアルは頭を深々と下げ、後にも先にもこれしかないといった感じだった。
「ベリアルさん」
「ベリアルで結構でございます」
 なんか人と違って魔物は怖いから、つい敬語を使ってしまった。
「ベリアル当然。自分の城を守らない魔王がどこにいるんだよ」
「有り難きお言葉です」

「魔王様さっそくですが、残っている魔族は私を含め上級3体、中級1体だけです。あとは寄せ集めの下級魔族100体ほどです。人間の数はよくわかりませんが、私達の数のおそらく倍以上はいると思われます」
「そうですか。魔王軍は戦いをやめるよういって下さい」
「なんでですか?」
「それぞれ無駄の血を流し過ぎました。これから先は僕・・・魔王って普段自分のことをなんて呼んでるの?」
「我とかですね」
 僕は1度咳払いをして仕切りなおした。
「これから先は我自ら戦闘に赴くからだ」
「魔王様、有り難き幸せです」
 ベリアルは立ち上がり、テレパシーなのかわからないが直接脳に言葉がきこえてきた。
「今戦っている全ての魔物よ。戦いを終え、一旦ひけ。今から魔王様がおおせられる」
 その言葉を聞いた壊滅状態の魔物は奮起していた。
 足に力を込めて瞬間的に激しい戦闘が行われている魔王城に移動した。

 人間と魔物が戦っているど真ん中に立ち、近くで人間の死体や魔族の死体をみたら吐きそうになったがなんとか堪えた。
「両者剣を引け!」

「魔王様どういうことですか?」
「そうだそうだ」
「人間側から仕掛けてきたんだ。今さら引けるか」

「魔族は根絶やしにする」
「人間と魔族の因縁に終止符をうつんだ」

 人間と魔族は各々不安な声を漏らしていた。
 この先のことをなにも考えていなかったので僕はただ呆然と戦場のど真ん中に立っていた。
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