17 / 18

第十七話,勇者祭り、その後

しおりを挟む
 ジーヴェルと一緒に、勇者祭りの会場へやって来た。全く変装してなかったので、目立つと思っていたが、どこを見ても人集りが凄い。それでいて、俺のコスプレをしている者も多数居て、仮面を着けているものも多く、そんなに目立たなそうだ。カイオスが持たせてくれた仮面を、俺とジーヴェルも着けてみる。

「ルカ様、人がいっぱいで凄いですね。ルカ様の格好をしている人もいっぱい」

 ジーヴェルは、嬉しそうにキョロキョロしている。

「そうだな。けど、これだけ人が居たら絶対バレないよな?」

「そうですね。けど、バレても良い気がしますが」

 そう言いながら、ジーヴェルはニヤニヤ楽しそうにしている。

「ジーヴェル、最近俺をからかって楽しんでないか?」

「そんなことありませんよ。ただ、せっかくに勇者ルカ様が居るのに、自慢したくなるじゃないですか。俺はただ、ルカ様が好きなだけですよ」

「ははっ。そうだな、ジーヴェルはずっとそうだったな。疑って悪かった」

「けど……正直なところ、照れてるルカ様をちょっとからかいたくなるのも事実です」

「やっぱり……こら、ジーヴェル!」

「わー! ルカ様が怒ったー」

 そう言いながら、ジーヴェルは楽しそうに逃げ回る。そんなジーヴェルを追いかけながら、俺は嬉しい気持ちで一杯だった。

「幸せだなぁ……」

「ルカ様!? どうしたんですか? 何だか目が潤んでるような気がしますが……」

「否、何、大したことじゃないよ。今までの事を思い出していただけなんだ。ありがとう。心配はいらないよ」

「そうですか。なら良いのですが……ルカ様、一人で抱え込んでしまうこともあるので、少し心配です」

 そういうジーヴェルの目は本当に、心配そうに俺を見ていた。

「大丈夫だよ。ありがとうな? ずっと側に居てくれて。本当、感謝してる」

 そう、数ヶ月前までは、こんなこと誰が想像できただろう。仲間に落ちこぼれと言われ続けて、挙げ句突き落とされて……人間不信になっても可笑しくなかった俺をジーヴェルや、カイオス、ギルドの皆、それにカティエル陛下まで救ってくれた。スローライフは送ってみたいけど、カティエル陛下の望んでいるこの国の平和を守るためなら、俺は喜んで使命を全うしようと心に誓った。

「そんな、当たり前ですよ! 俺もルカ様と一緒に居られて嬉しいです」

「ああ。本当、お前って奴は……」

「ん? 何か言いました?」

「否、何も。さぁっ! 祭り楽しむぞー!」

 俺は、このしんみりとした気持ちを悟られないように、はしゃぎまくった。そうしているうちに楽しい事だけ考えられるようになり、祭りも心から楽しめた。

「ルカ様、お土産いっぱいになりましたね。これはギルドの皆に?」

「そうだよ。皆にはいっぱいお世話になったからな。それにカイオスは、忙しくて祭りに行けてなかったらしいから、お土産だけでもって思って」

「きっと喜びますね」

 笑顔のジーヴェルと、いっぱいのお土産を持って、ギルドに帰った。ギルドの皆は温かく迎えてくれて、お土産も凄く喜んでくれた。食べ物も多かったので、受付けのミレーさんがまとめてくれて、料理長が手を加えて、立食パーティーみたいになった。

「何だかお土産が凄いことに。ミレーさん、料理長ありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ、色々なお料理をありがとう。イカやタコの姿焼きとか、小麦粉の野菜やお肉が入ったお焼きに、フルーツの飴……どれもお祭りでしか食べられないもの。嬉しいわ」

「そうだぞ。皆を見てみろ、少年に戻ったみたいにはしゃいでいる。それと名乗るのが遅れたが、俺の名前はイワカムだ。カイオスと同じ様に呼び捨てで構わない」

 そう言って、右手を差し出す。俺はそれに答え、右手を力強く握り返し、真っ直ぐに見つめた。

「イワカム、ありがとう! これからよろしく」

 イワカムは、満面の笑みでニカッと笑い、肩を組んできた。それを見たギルドの仲間たちが、集まってきて、俺を胴上げする。恥ずかしかったけど、すごく嬉しい。胴上げされながら、ふと、カイオスの事を思い出し周りを見渡す。しかし、カイオスの姿は無い。俺は近くに居たギルド員に聞く。

「カイオス知らない?」

「カイオス様は、ずっと下の事務所で誰かと話し込んでおられました。もう少しで来ると思いますよ」

「そうか。ありがと」

 しばらく食べながら待っていると、カイオスがやって来た。

「ルカ、待ったか? 悪かったな、一緒にいられなくて。楽しかったか?」

「祭りも、帰ってからも楽しかったです。皆さんのお陰ですね」

「そうか。なら、良かった。……ルカ、言い難いんだが、ルカに会いたいという人が来ててな」

 カイオスはかなり、言い難そうにしている。

(カイオス、何だか困った顔をしているな。誰だろう?)

「俺に会いに来たって、誰、ですか?」

「それが、なんだ」

「え!? ルナが? それで、今、ルナは?」

「ルカは会いたくないだろうと思って、一度帰ってもらった。かなりゴネてたがな。また、明日来ると言っていたが……」

「そう、ですか……ありがとうございます……」

「やっぱり、会いたくないか?」

「はい、あのイグニのパーティーメンバーには会いたくないです。また明日も来るというのでしたら、俺はもう、ジーヴェルと一緒に家に帰ります」

「そうか……なら、無理にとは言わないが……あ、これだけは伝えておく。ルナに聞いたが、パーティーは解散したそうだ。イグニは国外追放だと言っていた。ルナはDランクに降格、エマとラミアは冒険者を辞めたらしい」

(イグニが国外追放か。カティエル陛下、処刑はしないでくれたんだな。俺が自分を責めないように。それにしても、解散……か。ルナもBからDランクに降格したんだな)

 俺は少し考えてから、カイオスに伝えた。

「そうなんですね……俺、また、陛下に会いに行きます。ルナの事はそれから考えます」

 そう言うと、カイオスは少しホッとした顔をした。

「そうすると良い。陛下には俺から伝えようか?」

「大丈夫です。用がある時は、少し待つ事になっても良いんだったら、直接来ても構わないと言っていただいているので」

 そう言うと、カイオスはかなり驚いた顔をしたが、直ぐに優しい表情に戻った。

「流石ルカだな。陛下との仲もそこまで良いとは。じゃあ、心配いらないな」

「ああ。大丈夫だ。カイオス、いつも気にかけてくれてありがとう。それで、一つお願いがあるんだけど」

「礼には及ばないよ。それで、頼みごととは何だ? 遠慮なく何でも言ってくれ」

「その、ルナに連絡先聞いておいてくれないか? それで、会う時はこっちから連絡するから待っていてくれと」

「分かった。必ず伝えるな!」

 そうして俺は次の日、早速王宮へ向かうことにした————。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...