3 / 5
3.ステータスUP! 暴れる自転車
しおりを挟む
「さぁ! 成、こちらへおいで。成の能力について説明してあげよう」
(ばあちゃんは凄いけど、俺は魔力もないし……って話かな?)
「はい、俺の魔力や能力が低いって事ですよね?」
しかし、じいちゃんは優しく笑う。
「案ずるな、成よ。確かにお前の能力はまだ低い。しかし、わしと稽古をすれば必ず強くなる。それと、その魔石はな、実は澪の魔力や力が込められており、それを封印しておる。それを解放する時も来たようじゃ」
「魔石に魔力の封印ですか?」
「そうじゃ。それを貸してくれるかの?」
じいちゃんがそう言うので、ペンダントを渡すと、じいちゃんは何やら唱え始めた。暫くすると、ペンダントから強い光が放たれ、その光は俺の身体を包み込んだ。
(わぁっ! え? え? どうなってるの? けど、これあったかい。何だか、ばあちゃんに包まれてるような気がする……)
『成、辿り着いたのね。きっとあなたは私と同じ運命を辿ると思ったわ。あなたに神のご加護を』
どこからか声が聞こえた。
(ばあちゃん? いや、ばあちゃんより若い声。けど、ばあちゃんなのかな?)
俺を包んでいた光が消えた。何故か涙も溢れてくる。
「お、俺、どうしたんだ?」
振り向くと、じいちゃんが優しい目をしている。
「成功した様じゃな。さて、ステータスを見てみようか。うん、MP300、強さ300強くなっておるな。ちゃんと澪の気が入った様じゃ。これは返そう。ちゃんとこれからも大切に持っておくのじゃぞ?」
そう言い、じいちゃんはペンダントを俺に渡した。
「ばあちゃんの? そういえばさっき声がしたんだ。でも、ばあちゃんよりかなり若い声だと思う」
俺はまだ、不思議な出来事に何だかふわふわしていた。
「その声は澪が地球に帰る時のものだろう。だから若くても不思議ではない。成、どうだろう? わしと共に修行し、この国を、この世界を救ってはくれまいか?」
「はい! 俺も早く地球の家族の元に帰りたいので、頑張ります! 魔王デルモを倒して、絶対に家族の元へ帰ります!」
じいちゃんは、何だかすまなそうな顔をしている。
「成、あのな。魔王デルモを倒さんでも地球には帰れるんじゃぞ?」
「え? 帰れるんですか?」
驚いた顔を見て、じいちゃんが教えてくれた。
「正確にはこの国の周りの脅威、デルモゴンは倒さなくてはならないのじゃ。国に結界を張ったままじゃ、この国から成を外へ出すには難しいのじゃ。直ぐに帰してやりたいのはやまやまじゃが、帰るために結界を解いてしまっては、この国にデルモゴンが入ってきてしまうからの」
(そうだったんだ。けど、魔王デルモは倒さなくても良いんだな。まぁ、脅威は倒さなきゃだし、修行はしっかりしないとだよね)
「俺、頑張ってこの国に来ようとしてる脅威デルモゴンを倒すよ! じいちゃん、修行よろしくお願いします!」
「勿論じゃ!」
*
次の日から修行が始まった。じいちゃんに連れられて、今は練習場に来ていた。他の剣士達と一緒に素振り練習をしている。修行は思っていたよりキツい。と、いうより慣れない剣に苦戦していた。じいちゃんが隣に来て、一緒に剣を握ってくれる。
「成、やはり剣は慣れないか?」
「うん、今まで触ったことないからやっぱり難しいや」
「そうか。成は弓が得意だと言っておったな? やはり、弓を極めた方が良いかのう」
「うん! 弓というよりは弓道だけど。あ! でも、剣も頑張るよ! せっかく教えてもらってるし」
「そうか、成は偉いな」
「そんなことないよ! 確かに弓を使ってみたいけど、やった事ない事をするのも楽しいよ」
すると、じいちゃんは何か考えた様な素振りを見せた後、何か唱えると弓が現れた。弓には龍の彫刻が掘られており、銀色に輝いていた。
「成、これを使ってみるか?」
「わー! すっげー、何これ? じいちゃんの? すっごく格好良いじゃん」
「気に入ったか? ではこれを与えよう。少し使いこなすまでには時間がかかるかもしれんが、きっと成ならできる」
「うん、ありがとう! じいちゃん、俺頑張るよ」
そうして渡された弓は思ったより重量もあり、持ち上げるのがやっとだった。
「ははっ。やはり重かったか。なに、ゆっくり慣れていけば良い。それと、その自転車とかいう乗り物だがな、面白いものもあるものじゃな」
じいちゃんが言うので、自転車の方を見てみるが、いつもの自転車と変わらない。至って普通の自転車だ。
(自転車が面白い!? 異世界に無いから、不思議なのかな?)
「自転車の何が面白いの?」
「成が剣の修行をしてる間に調べてたんじゃが、乗ってみるとこの自転車の意思を感じてな、飛べと念じると、羽が生えて飛べるし、このベル? みたいなものを鳴らすと、ビームが出る」
「へっ!? 自転車、そんな事になってるの!?」
「そうじゃが、元々こうじゃなかったのか」
「うん、乗って漕いでただ前に進む……確かに、漕ぐ速度によって速くなったりはするけど」
(俺の自転車、凄いことになってたんだな)
「そうなんじゃな。じゃあ、転生付与なのかのう? 召喚士も言っておったし、MPも1000あるそうだしのう」
「そうだよ! 俺の付与されるはずだった魔力持って行っちゃってるんだから」
(だから、俺は強くない)
「そうか。けど、物は考え様じゃぞ? こんな珍しくて凄い乗り物を手に入れたんじゃからな」
「そっか。そうだよね! 最強自転車持ってるなんて凄いよね!」
「そうじゃ! きっと成の最強武器になると思うぞ」
そんな話をしていて、じいちゃんに見守られながら自転車に跨ると、急に自転車が暴れ出し、羽根が生え、急上昇。
「うわっ! わーっ! た、助けてーっ」
「こ、こりゃいかん!」
じいちゃんが慌てて魔法で鎖を出し、自転車目掛けて放つ。しかし、自転車に届くと思った瞬間、バリアが出て弾かれた。
「わあっ!」
(何だよあれ。じいちゃんの魔法弾いちゃった)
落ちないように、自転車に必死にしがみつく。次第に自転車は大人しくなり、地上に着いた。じいちゃんが慌てて走ってくる。
「成! 大丈夫かっ!?」
「う、うん。ちょっとビックリしたけど。バリアまで出ちゃったし、これ凄いや。でも、俺の知ってる自転車じゃない、まるで生きているみたいだし、乗りこなす自信がないよ」
「これも練習が必要じゃな。それにしても、意思を持つ乗り物か。やはり面白い、まるで暴れ馬じゃのう」
自転車から降り、息を切らして座っていると自転車から声が聞こえた。
『思ったより意気地なしなんだな。もっと根性ある奴だと思ってたのに』
(へっ? 今、自転車から声がした!?)
不思議に思い、自転車を良く見てみるとハンドベルの上に黒い羽の生えた角がある小さな男の子が座っていた。
(なんか居る。今の声って、もしかしてあの子かな?)
「じいちゃん、自転車のハンドベルの上に何かいる。あれって何?」
「ハンドベルの上じゃと? あ! こらっ! サクル、何しとるんじゃ!」
じいちゃんが小さな男の子に話かけると、慌てて自転車から飛び降りた。じいちゃんが、飛び降りたサクルという男の子の首根っこを掴む。
「やべっ! 大魔導師様、ごめんなさい~!」
(何か可愛いな、ジタバタしてる。まぁ、口は悪いけど)
「じいちゃん、この子もしかして自転車の精とかなんかな?」
「否、此奴はサクルというんじゃが、アゼルの使い魔じゃ。さて、サクル? どうしてここに来たんじゃ? アゼル達は何処じゃ?」
(使い魔っ! 何か格好良いな、流石異世界だ! ファンタジーだっ!)
使い魔という言葉にワクワクして、じいちゃんとサクルのやり取りを見ていた。
しかし、じいちゃんの問いにビクついたサクルは、更に小さくなりながら、もごもごと申し訳なさそうに話し始めた。
「アゼル達が話してるのを聞いたんだ。異世界人が自転車とかいう、面白くて強い乗り物に乗ってきたって。だから見たくなって……それと、異世界人ってどんなのかも気になって……」
「サクルが自転車を動かしたのか?」
「ち、違うよっ! 俺、ちょっ、ちょっと、自転車に触ったりして遊んでたんだ。そしたら乗ってきたから、ちょっと驚かして遊んでやろうと、自転車蹴ったら急に飛んじゃって……」
(って事は、こいつが蹴ったから急上昇しちゃったって訳か)
「サクルーっ! やっぱりお主の仕業じゃないかっ!」
じいちゃんの大きな声が響き渡る。
「ごめんなさいーっ! で、でもっ! 空飛べるし、この異世界から来た人の乗り物だし、格好良いところも見れるって思ったんだもんっ! こんな事に成るって思わなかったんだもんっ!」
(あー、だからか)
「だから、俺に意気地なしとか言ったんだ?」
「成、それは本当か?」
俺がサクルに問いかけると、じいちゃんはまた怒り出し、サクルを目の前に正座させた。サクルはさっきまでの威勢は何処にいったかというくらいに、小さくなり、今にも泣き出しそうになっていた。
(あ。ちょっと可哀想かも)
「うん、自転車から『思ったより意気地なしなんだな。もっと根性ある奴だと思ってたのに』って聞こえて、ベルの上のサクルに気が付いたんだ。あ、でも、怒ってないからサクルを許してあげて?」
じいちゃんは、ため息を吐いてサクルを睨みつけた後、俺に視線を移した。
「成はそれで良いのか? なるほど、澪に似て優しい子じゃの。サクル、今回は成に免じて許すが、もうこんな事するんじゃないぞ。冗談では済まないこともあるのじゃ。何かあってからでは遅い!」
「ごめんなさい……」
「わしだけじゃなくて、ちゃんと成にも謝るんじゃ」
「成、ごめんなさい。もうしないよ、悪かった」
「良いよ、もうしないなら」
サクルが反省したところで、向こうから中世ローマの戦士みたいな格好をして、剣を持った男性が走ってきた――――
(ばあちゃんは凄いけど、俺は魔力もないし……って話かな?)
「はい、俺の魔力や能力が低いって事ですよね?」
しかし、じいちゃんは優しく笑う。
「案ずるな、成よ。確かにお前の能力はまだ低い。しかし、わしと稽古をすれば必ず強くなる。それと、その魔石はな、実は澪の魔力や力が込められており、それを封印しておる。それを解放する時も来たようじゃ」
「魔石に魔力の封印ですか?」
「そうじゃ。それを貸してくれるかの?」
じいちゃんがそう言うので、ペンダントを渡すと、じいちゃんは何やら唱え始めた。暫くすると、ペンダントから強い光が放たれ、その光は俺の身体を包み込んだ。
(わぁっ! え? え? どうなってるの? けど、これあったかい。何だか、ばあちゃんに包まれてるような気がする……)
『成、辿り着いたのね。きっとあなたは私と同じ運命を辿ると思ったわ。あなたに神のご加護を』
どこからか声が聞こえた。
(ばあちゃん? いや、ばあちゃんより若い声。けど、ばあちゃんなのかな?)
俺を包んでいた光が消えた。何故か涙も溢れてくる。
「お、俺、どうしたんだ?」
振り向くと、じいちゃんが優しい目をしている。
「成功した様じゃな。さて、ステータスを見てみようか。うん、MP300、強さ300強くなっておるな。ちゃんと澪の気が入った様じゃ。これは返そう。ちゃんとこれからも大切に持っておくのじゃぞ?」
そう言い、じいちゃんはペンダントを俺に渡した。
「ばあちゃんの? そういえばさっき声がしたんだ。でも、ばあちゃんよりかなり若い声だと思う」
俺はまだ、不思議な出来事に何だかふわふわしていた。
「その声は澪が地球に帰る時のものだろう。だから若くても不思議ではない。成、どうだろう? わしと共に修行し、この国を、この世界を救ってはくれまいか?」
「はい! 俺も早く地球の家族の元に帰りたいので、頑張ります! 魔王デルモを倒して、絶対に家族の元へ帰ります!」
じいちゃんは、何だかすまなそうな顔をしている。
「成、あのな。魔王デルモを倒さんでも地球には帰れるんじゃぞ?」
「え? 帰れるんですか?」
驚いた顔を見て、じいちゃんが教えてくれた。
「正確にはこの国の周りの脅威、デルモゴンは倒さなくてはならないのじゃ。国に結界を張ったままじゃ、この国から成を外へ出すには難しいのじゃ。直ぐに帰してやりたいのはやまやまじゃが、帰るために結界を解いてしまっては、この国にデルモゴンが入ってきてしまうからの」
(そうだったんだ。けど、魔王デルモは倒さなくても良いんだな。まぁ、脅威は倒さなきゃだし、修行はしっかりしないとだよね)
「俺、頑張ってこの国に来ようとしてる脅威デルモゴンを倒すよ! じいちゃん、修行よろしくお願いします!」
「勿論じゃ!」
*
次の日から修行が始まった。じいちゃんに連れられて、今は練習場に来ていた。他の剣士達と一緒に素振り練習をしている。修行は思っていたよりキツい。と、いうより慣れない剣に苦戦していた。じいちゃんが隣に来て、一緒に剣を握ってくれる。
「成、やはり剣は慣れないか?」
「うん、今まで触ったことないからやっぱり難しいや」
「そうか。成は弓が得意だと言っておったな? やはり、弓を極めた方が良いかのう」
「うん! 弓というよりは弓道だけど。あ! でも、剣も頑張るよ! せっかく教えてもらってるし」
「そうか、成は偉いな」
「そんなことないよ! 確かに弓を使ってみたいけど、やった事ない事をするのも楽しいよ」
すると、じいちゃんは何か考えた様な素振りを見せた後、何か唱えると弓が現れた。弓には龍の彫刻が掘られており、銀色に輝いていた。
「成、これを使ってみるか?」
「わー! すっげー、何これ? じいちゃんの? すっごく格好良いじゃん」
「気に入ったか? ではこれを与えよう。少し使いこなすまでには時間がかかるかもしれんが、きっと成ならできる」
「うん、ありがとう! じいちゃん、俺頑張るよ」
そうして渡された弓は思ったより重量もあり、持ち上げるのがやっとだった。
「ははっ。やはり重かったか。なに、ゆっくり慣れていけば良い。それと、その自転車とかいう乗り物だがな、面白いものもあるものじゃな」
じいちゃんが言うので、自転車の方を見てみるが、いつもの自転車と変わらない。至って普通の自転車だ。
(自転車が面白い!? 異世界に無いから、不思議なのかな?)
「自転車の何が面白いの?」
「成が剣の修行をしてる間に調べてたんじゃが、乗ってみるとこの自転車の意思を感じてな、飛べと念じると、羽が生えて飛べるし、このベル? みたいなものを鳴らすと、ビームが出る」
「へっ!? 自転車、そんな事になってるの!?」
「そうじゃが、元々こうじゃなかったのか」
「うん、乗って漕いでただ前に進む……確かに、漕ぐ速度によって速くなったりはするけど」
(俺の自転車、凄いことになってたんだな)
「そうなんじゃな。じゃあ、転生付与なのかのう? 召喚士も言っておったし、MPも1000あるそうだしのう」
「そうだよ! 俺の付与されるはずだった魔力持って行っちゃってるんだから」
(だから、俺は強くない)
「そうか。けど、物は考え様じゃぞ? こんな珍しくて凄い乗り物を手に入れたんじゃからな」
「そっか。そうだよね! 最強自転車持ってるなんて凄いよね!」
「そうじゃ! きっと成の最強武器になると思うぞ」
そんな話をしていて、じいちゃんに見守られながら自転車に跨ると、急に自転車が暴れ出し、羽根が生え、急上昇。
「うわっ! わーっ! た、助けてーっ」
「こ、こりゃいかん!」
じいちゃんが慌てて魔法で鎖を出し、自転車目掛けて放つ。しかし、自転車に届くと思った瞬間、バリアが出て弾かれた。
「わあっ!」
(何だよあれ。じいちゃんの魔法弾いちゃった)
落ちないように、自転車に必死にしがみつく。次第に自転車は大人しくなり、地上に着いた。じいちゃんが慌てて走ってくる。
「成! 大丈夫かっ!?」
「う、うん。ちょっとビックリしたけど。バリアまで出ちゃったし、これ凄いや。でも、俺の知ってる自転車じゃない、まるで生きているみたいだし、乗りこなす自信がないよ」
「これも練習が必要じゃな。それにしても、意思を持つ乗り物か。やはり面白い、まるで暴れ馬じゃのう」
自転車から降り、息を切らして座っていると自転車から声が聞こえた。
『思ったより意気地なしなんだな。もっと根性ある奴だと思ってたのに』
(へっ? 今、自転車から声がした!?)
不思議に思い、自転車を良く見てみるとハンドベルの上に黒い羽の生えた角がある小さな男の子が座っていた。
(なんか居る。今の声って、もしかしてあの子かな?)
「じいちゃん、自転車のハンドベルの上に何かいる。あれって何?」
「ハンドベルの上じゃと? あ! こらっ! サクル、何しとるんじゃ!」
じいちゃんが小さな男の子に話かけると、慌てて自転車から飛び降りた。じいちゃんが、飛び降りたサクルという男の子の首根っこを掴む。
「やべっ! 大魔導師様、ごめんなさい~!」
(何か可愛いな、ジタバタしてる。まぁ、口は悪いけど)
「じいちゃん、この子もしかして自転車の精とかなんかな?」
「否、此奴はサクルというんじゃが、アゼルの使い魔じゃ。さて、サクル? どうしてここに来たんじゃ? アゼル達は何処じゃ?」
(使い魔っ! 何か格好良いな、流石異世界だ! ファンタジーだっ!)
使い魔という言葉にワクワクして、じいちゃんとサクルのやり取りを見ていた。
しかし、じいちゃんの問いにビクついたサクルは、更に小さくなりながら、もごもごと申し訳なさそうに話し始めた。
「アゼル達が話してるのを聞いたんだ。異世界人が自転車とかいう、面白くて強い乗り物に乗ってきたって。だから見たくなって……それと、異世界人ってどんなのかも気になって……」
「サクルが自転車を動かしたのか?」
「ち、違うよっ! 俺、ちょっ、ちょっと、自転車に触ったりして遊んでたんだ。そしたら乗ってきたから、ちょっと驚かして遊んでやろうと、自転車蹴ったら急に飛んじゃって……」
(って事は、こいつが蹴ったから急上昇しちゃったって訳か)
「サクルーっ! やっぱりお主の仕業じゃないかっ!」
じいちゃんの大きな声が響き渡る。
「ごめんなさいーっ! で、でもっ! 空飛べるし、この異世界から来た人の乗り物だし、格好良いところも見れるって思ったんだもんっ! こんな事に成るって思わなかったんだもんっ!」
(あー、だからか)
「だから、俺に意気地なしとか言ったんだ?」
「成、それは本当か?」
俺がサクルに問いかけると、じいちゃんはまた怒り出し、サクルを目の前に正座させた。サクルはさっきまでの威勢は何処にいったかというくらいに、小さくなり、今にも泣き出しそうになっていた。
(あ。ちょっと可哀想かも)
「うん、自転車から『思ったより意気地なしなんだな。もっと根性ある奴だと思ってたのに』って聞こえて、ベルの上のサクルに気が付いたんだ。あ、でも、怒ってないからサクルを許してあげて?」
じいちゃんは、ため息を吐いてサクルを睨みつけた後、俺に視線を移した。
「成はそれで良いのか? なるほど、澪に似て優しい子じゃの。サクル、今回は成に免じて許すが、もうこんな事するんじゃないぞ。冗談では済まないこともあるのじゃ。何かあってからでは遅い!」
「ごめんなさい……」
「わしだけじゃなくて、ちゃんと成にも謝るんじゃ」
「成、ごめんなさい。もうしないよ、悪かった」
「良いよ、もうしないなら」
サクルが反省したところで、向こうから中世ローマの戦士みたいな格好をして、剣を持った男性が走ってきた――――
1
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
修学旅行のはずが突然異世界に!?
中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。
しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。
修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!?
乗客たちはどこへ行ったのか?
主人公は森の中で一人の精霊と出会う。
主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる