声劇台本集

独身貴族

文字の大きさ
上 下
6 / 11

ロゼッタとジュリエット【GL台本】

しおりを挟む
改変ロミオとジュリエット。切なめギャグです。思い出しながら書いたので、原作に忠実ではないかも。パロディです。

ロゼッタ  自虐キャラ
ジュリエット ただの天使
マキ ロゼッタの悪友
シスター 耳が遠め。マキと兼ね役可能



*ここから台本*

マキ「ねーねー、ちょお聞いてよー。こないださー、まぢウケたんですけどー」
ロ「えーなになにー? 気になるんだけどー」
マキ「それがさー、もー、ちょーやばくてえー……あ、ちょっと、あれ、ジュリエットぢゃない?」
ロ「え、どこどこっ? あ、ほんとだ」
マキ「あのちょーうざーいキャピュレット家の箱入り娘だよ! あー、クッソむかつくわー」
ロ「そーそー。あの顔が小さいくせにおっきい目といい、育ちの良さそうな艶々の髪といい、飾り気がないのに凛として見えるあの佇まいといい……」
マキ「あー、やめて。まぢやめて。あー、あー、聞こえなーい! もー、せっかく見ないようにしてるのに、気にしちゃうぢゃん! なにあの美少女! 可愛すぎてむっかつくんですけどー!」
ロ「なんであんなのがキャピュレット家にいるのか、全然わかんないんですけどー」
マキ「それなー! よし、腹いせにちょっといじってやろ。おーい、そこにいるの、あのハゲんとこの大事な大事なお人形さんのジュリエットちゃんでしょー?ねー、聞いてんなら返事くらいしろっての! ちょっと、そこの美少女! 天使! こっち向きなさいよ!」
ジュリエット「なに……」
マキ「あ、こっち見たー! あんた、自分のこと天使だと思ってんだ、自意識かじょーぢゃん! ちょーウケるー!」
ロ「仕方ないって、実際天使なんだし」
マキ「どこ行くのー? またあのハゲおやじの言いつけで、旦那探しに行くんでしょー? この間求婚者フッたってほんと? どんだけ理想高いんだって話ー」
ロ「そうそう……ってか、マキ、もう行こ? 向こうにキャピュレットのこわーいお母様がこっちを睨んでるし」
マキ「まぢ? ヤバ! でも手だしできないもんねー。だって、あたしのパパは……」
ロ「いいから、もう行こ!」


ロ「(小声で)ジュリエット、ジュリエット! 」
ジュ「ロゼッタ……」
ロ「あ、気づいてくれた! さっきはごめんね? あの、ほんと、悪気はないから!」
ジュ「うん、わかってるよ。大丈夫」
ロ「(近づいてきて)いつも、嫌な思いさせてごめんね? あいつらと仲良くしてないと、パパとママがね、ちょーうざいの! あたしとしては、あんな腐った奴らとじゃなくて、ジュリエットと一緒にいたいんだけど……ごめん。ほんと、ごめん……」
ジュ「ううん。気にしないで。あなたのことも、お家のことも、ちゃんとわかってるから」
ロ「ああ、もう、どうしよう。ジュリエット、まぢ天使……」
ジュ「私は天使じゃないわ。キャピュレット家のジュリエットよ」
ロ「ジュリエットという名前の天使ちゃん」
ジュ「もう、いい加減にして」
ロ「ごめんなひゃい……」
ジュ「ふふふ、冗談、怒ってないわ」
ロ「わーん、ジュリエット、大好きー。愛してるー」
ジュ「ありがとう」
ロ「もー、何でジュリエット、そんなに天使なのー。結婚してー」
ジュ「ダメ、ロゼッタ。あなたは18だけど、私はまだ10歳よ。犯罪になっちゃう」
ロ「そ、そうよね。それはあかんわ……」
ジュ「私がもう少し大きくなるまで待っててくれる?」
ロ「うん、待つ! ずっと待つ! 絶対待つ! だから、絶対どこにも行かないでえー」
ジュ「ふふ。……でも、大人になっても、私たち結婚はできないんだけどね……」
ロ「パパとママが仲悪いから?」
ジュ「それもあるけれど、あなたも私も、女の子だから」
ロ「そんなの、カンケーないじゃん! 好きだから、結婚したい! 一緒にいたい! そんでいーじゃん! あたしはジュリエットが女の子じゃなくても、天使でも悪魔でも妖怪でも死神でも、絶対絶対、結婚するから!」
ジュ「うん、ありがとう、ロゼッタ。私もおんなじ気持ちよ」


マキ「もしもし? あたしあたしー。ねー聞いてよ! ロゼッタがさ、なんか最近コソコソしてると思ったら、あのクソむかつく家のジュリエットと仲良ししてんだって! まぢで! それで向こうのババアもそれに気づいてさ、ジュリエットの婚約を急ぐらしいって話! ヤバくね? 相手は従兄で30超えてるらしいぢゃん。年齢的に犯罪だよなー!ぎゃははは!」


ロ「(走ってきて)ジュリエッター!!」
ジュ「どうしたの、ロゼッタ。きゃ!」
ロ「(抱きついて)従兄のあの男と結婚するってほんと!?はあ、はあ」
ジュ「落ち着いて、ロゼッタ。一回深呼吸しよ? ほら、吸って、吐いて?」
ロ「(被せて)うん、ずー、はー、ずー、はー。うう……」
ジュ「落ち着いた?」
ロ「うん(鼻声)」
ジュ「……結婚じゃなくて、婚約。するの」
ロ「あだじがいるのに?」
ジュ「……ママが決めたんだもん。いやって言えないわ」
ロ「酷くね? ねえ、酷くね?! だって、好きでもない相手なんでしょ? 顔すら知らないっていってたよね!? そんな相手と、なんで結婚しなきゃならないの! 意味わかんない!うえっ……(半泣き)」
ジュ「……ねえ、どうしてあなたはロゼッタなの?」
ロ「ズビ……それは、あたしがモンタギュー家に生まれたから……」
ジュ「そ。あなたにはあなたの家、私には私の家がある。あなたはモンタギューのロゼッタである限り、ロゼッタとして生きていかなきゃいけない。私も一緒。だから、受け入れて」
ロ「むり。やだ。だったら、あたし、モンタギューやめる。ロゼッタもやめる。悪魔でもいい、お化けでもいい、ジュリエットと一緒にいられるなら、なんでもする!」
ジュ「私のためを思うなら、そのままでいて、ロゼッタ。あなたは素晴らしい家に生まれたのよ。資産もある、地位もある、立派なお家よ。簡単に捨てちゃダメ。親同士の仲の悪さなんて、ちっぽけなことじゃない。私たちは、今まで通りこうやって、ずっと仲良しでいればいいんだから。そのうち、あなたが立派に家を継いだら、この喧嘩を終わらせればいいんだわ」
ロ「そう、だね。それまで、待っててくれる?」
ジュ「ええ、いつまでも待つわ。あなたが、立派になって、私を迎えに来てくれるまで」
ロ「なにそれ、嬉しすぎて死ねる……。やばい、ダメ、そんなこと言っちゃダメ。泣いちゃう……」
ジュ「もう泣いてるじゃない。ほら、ティッシュ……」


ジュ「(独り言)そう、私たちには、世界という障害がある。簡単には乗り越えられない、高い壁。家という小さな世界。そこに、ちっぽけな私たちは、囚われ続けなければならない。
それが時々、窮屈になるの。まるで鳥籠の中で飼われているみたいだわ。空はこんなに広くて自由なのに、私はここから出られない。キャピュレットという籠から、抜け出すことが、できないの。誰かの吐いた同じ空気を吸って、同じ思想に染め上げられて、飼いならされて、自由に恋もできずに死んで行くの。それならいっそ、天使になって、純白な翼で、あの広い空を飛んでみたい。それで、街の中にあなたを見つけたら、ずっと、ずっと、どこまでも、ついていって守ってあげたい。あなたが寂しくないように、潰れてしまわないように、導いてあげたい。
……なんてね。私もわかってる。お互いに居場所があって、お互いに役目があって。この場所に生まれついた以上、ロゼッタとして、ジュリエットとして収まっていなきゃいけないってこと。……でも、ちょっとぐらい、夢を見ても、許してくれないかしら」


ロ「ねえ、シスター」
シスター「……」
ロ「ちょっと、シスター」
シスター「……」
ロ「シスターってば!!」
シスター「ふあああ……」
ロ「この白髪ババア!」
シスター「誰だい、今悪口を言ったのは!バチが当たるよ!」
ロ「おもいっきし聞こえてんじゃんか!!」
シスター「ああ、なんかネズミが騒がしいと思ったら、悪ガキのロゼッタかい。あたしになんの用だい」
ロ「そ、その、前に話したことあったじゃん、あたし、す、好きな子がいるってさ。その子と、その、結婚したいんだけど、えっと、その子っていうのが、キャピュレットのとこのお嬢さんなんだよねー。それで、どうにかして、一緒になりたいんだけど、いい方法ってないかな!?」
シスター「はあ?」
ロ「だから、えっと、あたしはジュリエットと……」
シスター「なんだって? ジュリオ?」
ロ「(耳元で)だ、か、ら、あたしは、愛しのジュリエットと、結婚したいんだけど、どうすればいい!?」
シスター「はあ、ああ、そうさねえ、ほんなら、お前さんに、いい薬があるんだよ」
ロ「く、薬って、ヤバイやつ?」
シスター「イッヒッヒ……」
ロ「ヤバイやつやん! 絶対、これ! 色も変だし!おもいっきし‘毒’って書いてあるし!」
シスター「毒という名の……毒だよ」
ロ「ただの毒じゃん! これを、どうするの?!」
シスター「飲むんだよ」
ロ「え、無理。ごめんなさい」
シスター「飲めば、お前さんは仮死状態になる。あたしは棺桶を用意し、葬儀をあげる。全て済んだ後、お前さんはこっそり棺桶を抜け出し、ジュリ……ナンタラに会いに行く。そのまま街を出て、めでたしめでたし」
ロ「ジュリエットだよ! 覚えて!!」
シスター「あたしゃさっき何を食べたか思い出すので精一杯なんだよ」
ロ「そーですか。はあ、わかったよ。なんか、ヤバそうだけど、シスターの言う通りやってみる。一番良さそうな方法だし……。でも、これ、飲んで本当に大丈夫?」
シスター「大丈夫だよ、あたしが身をもって実験したからねえ。ちゃんと三途の川が見えたよ」
ロ「見えちゃったらダメでしょー!!」


ジュ「(走ってる)はあ……はあ……」

ジュ「(駆け寄って)ロゼッタ! まあ、なんてこと! ロゼッタ!! あたしを置いて、行っちゃうなんて……。変な気を起こさないか心配だったけれど、まさか、自ら命を絶つなんて! ロゼッタは元気だけが取り柄だから、それだけはないと思っていたのに!! 」

ジュ「ああ、これ、この瓶……これを飲んで、死んじゃったのね。ご丁寧に毒って書いてあるわ。……ひどい。一滴も残ってない。きっと、ロゼッタのことだから、喉が渇いて死にそうだったから、よくラベルも読まずに飲んで、本当に死んじゃったんだわ。そうよ。だって、あの人が自殺するなんて考えられないもの!」

ジュ「……綺麗。本当に綺麗な死に顔だわ。私のこと、天使って言ってたけれど、あなたの方がよっぽど天使よ。まっすぐで、正直で、誠実で、いつも私のことを一番に考えてくれた。ねえ、嘘だと言って。いつもみたいに私を驚かせて笑ってよ!お願い!」

ジュ「何故かしら、こんなところに都合よく短剣があるわ。まるで、あなたもこの人の後を追いなさいと言わんばかりに……そうね。そうしましょう。あなたのいないこの世界に、私も必要ないのだから」

ジュ「ああ、私は天に召されるのね。そして、本当の本当に天使になるのね。……よかった。そうしたら、ずっとロゼッタの隣にいてあげられる……うっ(倒れる)」

ロ「(起きる)うーん、ジュリエット……。どこ? ジュリエット……あたしの可愛い天使……」

ロ「うう、なんか重い……漬物石に下敷きにされてるみたいだ……って、これ、もしかして……ああ! ジュリエット! あたしの天使ちゃんじゃん! どうしたの、泣いてるの? 大丈夫、あたしは元気だから! 泣かないで!ほら、ほら、ほら! ピンピンしてるでしょ! ……ジュリエット? ねえ、ジュリエット、起きてよ。……あ」

ロ「(胸のナイフに気づく)な、なんで、ジュリエット、死んじゃったの? あたしが、毒で死んだと思って、追いかけていったの? どうしよう、悲しいのに嬉しい。ああ、ああ、あたしがもっと早くに目が覚めていれば! 可愛いジュリエットは死ぬことがなかったのに!」

ロ「うわああああああん! ジュリエットが……ジュリエットが……ほんとに天使になっちゃったよ~……。どうしよう。あたしのせいだあたしのせいだあたしのせいだ。……よし、死のう。こんな世界、ジュリエットもいないこんな人生、いらない、あたしはいらない! この、汚れの知らない、綺麗で純白な小さな胸を貫いたこの剣で、あたしも死んで、可愛い可愛い可愛そうな天使のところに行くんだ!」

ロ「うっ……これで、あたしもジュリエットのところへ行ける。やっと、一緒にいられるのね。そう、どうせ、愛なんて、叶わないのよ……」

END
しおりを挟む

処理中です...