8 / 23
8 パトリックの弟、パスカル。
しおりを挟む
『君が、パトリックか』
俺に王家から招待状が来た時は、コレにも記憶が有るのか、記憶が戻ったのかと警戒したが。
どうやら無さそうだ。
『ソレは俺の弟ですよ、殿下』
《どうも、パスカルと申します、宜しくお願い致します》
『あぁ、すまない』
『いえ、では、どうぞ』
弟とは1才違い、しかも弟の方が体の成長が良い。
良く間違われるんだ。
《お兄様、食べて良い?》
『あぁ、だが溢すなよ、汚く食べたら直ぐに菓子無しで下げさせるからな』
《はぃ》
『兄弟が居るからこそ、君はヴィクトリアに頼られる程の存在なんだろうか』
『いえとんでもない、武官の家に生まれた文官気質、それと俺の趣味のタロットカードに興味を引かれただけでしょう』
『タロットカードか』
『当たる時と外れる時の差が激しいので、あくまでも趣味です、見方や考え方を変える為の作業とも言えますね』
『当たる時は当たるのか』
『知り合えば知り合う程、特に』
『なら、ヴィクトリアとは』
『単なる友人です、常に互いの侍女を同席させていますし、中庭でお会いするだけ。しかも俺は父から王宮の大変さを良く言い聞かせられていますから、想像も入れつつ、ご相談に乗っているに過ぎません』
『どんな事を、話し合っているんだろうか』
『男性とは、女性とはどの様な生き物なのか、若しくは遊学について。それと悪夢、相当大物が死神として出るそうで、未だに名を聞けていないんですが。検討はついてらっしゃいますか?』
『あぁ』
『彼女は優しいので詳しく仰ってないでしょうけけれど、どうやら臭いまで分かるそうですよ、酒臭いだとか血の臭いだとか。相当に夢とは思えない程の精密さらしく、最近はかなり頻度が減ったそうですが、相変わらず寝起きは最悪だそうで』
お前が実際に殺したからな、俺も最初の頃は本当に悪夢だと思った。
そして、その次からは本当に悪夢として見る様になった。
アレは、あまりに悲惨で理不尽で、不条理だ。
『もし、君が、死神に取り憑かれる者に好意を寄せられたら』
『まぁ無理でしょうね、あんなにも理不尽で不条理で悲惨な出来事を引き起こされるのかと思うと、俺はとてもじゃないけど近寄りたいとすら思いませんね。どう足掻いても結局は死にそうですし、裏切られて喜ぶ趣味は無いですから』
『君は、本当に相手を知らないのか』
『それ、どう証明すれば良いんでしょうね、俺は知らないのだと。王族に圧力を掛けられたら、きっと侍女も悪夢と同じ様に、偽証するでしょうしね』
王妃候補から落ちた者の親友が侍女となり、来訪者ユノの味方となる道筋は、ココでも大いに有り得る事。
殺そうが潰そうが、他の令嬢の友が侍女となり敵となる。
来訪者が来なければと思ったが、アレは必ず現れる。
皇帝の前に、コレが皇帝となって1年後、子無し離縁が成立する期間間際に。
《そんなに怖い夢なの?》
『あぁ、お前も知ると見るかも知れない、だから知るな。菓子の感想を述べろ、殿下が持って来て下さった品だ』
《ありがとうございます、コレはサクサクで美味しいです、コレはナッツの良い香りで》
『おい、ナッツだと、吐き出せ!』
『セバス!医師を呼べ!』
他国の来訪者によって齎されたとされる毒には、独特の風味が有る。
それこそがナッツの香り、だからこそ王族は手を出さない、そもそも使わない。
パスカルは急いで吐き出させたんで、何とかなったが。
この事件は、そもそもかなり先で起こる筈。
しかも事を起こした犯人は。
『おい、どうなっている、侍従』
「誠に、申し訳御座いません」
『すまない、僕の失態だ』
コレが居る以上、前世の事を知られるのは面倒だ。
どうにか。
『コレでは、暫くヴィクトリア嬢には会えないでしょう、殿下。俺が事情を伝えますから、侍従に当たり障りの無い文を書かせてはどうでしょうか、ウチから伝えますから』
『セバス、頼んだ』
「はい」
『俺も書く、用意してくれ』
《畏まりました》
コレで、セバスに見せた後、紙を燃やせば済むだろう。
『良いですかね侍従の方、この綴りで合ってるかどうか』
パトリック様が書いた綴りに間違いは無かった。
けれど、犯人は皇妃の侍女だと知っているか、と。
「いえ」
『あぁ、やっぱりな、すまない。どうにも書くのに不慣れでな』
彼は、知っている。
犯人も動機も何もかも。
面と向かい対話した事は無かった、お互いにヴィクトリア様の侍女クララを通じてのみ。
接触を避けていた彼がこうして直接関わって来たのだから、私は改めて彼と対話しなければならない。
私の前世では、こんな事は起きていないのだから。
「コチラで宜しかったでしょうか」
『あぁ、すまないが頼んだ、パトリック』
『いえ、まだウチを狙った事なのかどうか分かりませんから』
「ですが改めて謝罪に伺わせて下さい、容体も確認させて頂きたいので」
『懲りずに菓子で頼む、アレが1番に好きなのは東の。いや、後日、ウチから侍女に伝えさせますが』
「はい」
『ではもう行って下さい、ご両親が心配してらっしゃるかと』
『あぁ、すまない、後は任せてくれ』
『はい、では』
そして翌日、パトリック様からの手紙を持参した侍女が登城し、私達は菓子店で待ち合わせる事に。
「偶然ですね、パトリック様」
『おう、だな。甘い物は好きか』
「そこまでは、寧ろ酸味や柑橘類が好みなので」
『ならコレだな、食って損は無いぞ』
「では、同席させて頂いても」
『おう』
窓を正面にし座る彼が私に促した席は、窓の無い壁を背にした角。
彼は、前世のまま、常に警戒を怠らない方だった。
飾り気の無い言葉遣いに、奔放な政策、けれども慎重さは誰よりも持っていた。
「確かに、私の口に合いますね」
『だろう、占いで出たんでココへ来たんだ』
「成程」
『コッチは問題無い、気遣いは無用だ』
「アナタは既に、ココの全てを理解してらっしゃっるのですね」
『どうだろうな』
前世では鬼才と呼ばれていたパトリック様が、どうしてココでは役職に就かれなかったのか。
今なら分かります、こうした事を何回も経験していらっしゃるからこそ、疲れてしまわれた。
諦めてしまったのだろう、と。
「最初は、憤りを感じておりました、何故居ないのかと。ですが今は理解しました、あんな経験は、1度で十分ですから」
『そうか。でな、新しいカードの組み合わせを思い付いたんだ、意見を聞かせてくれないか』
「是非」
少し変わった絵柄のタロットカードを、テーブルへと並べ。
そして手渡された説明書に添えられた小さな紙には、本来の解釈とは違う単語が並んでいた。
『俺の解釈としてはこう、この組み合わせが正解だと思うんだが、お前の感覚としてはどうだ。違和感や、そもそも全く知らなさ過ぎて感想が無い、か』
彼が揃えたのは女帝、節制、そして戦車。
「全く知らない組み合わせですが、驚きと同時に疑問が浮かぶ気がしますね。どうして、この様な組み合わせなのだろう、と」
『簡単だ、この図柄を知っているからこそだろうな』
彼が引き抜いたのは、女教皇のカード。
そしてどう仕込んだのか、カードを持つ彼の手には小さな紙、そこにはヴィクトリアの文字が。
「コレの為、ですか」
『こう配置する為だと思う、邪魔だったんだろうな』
愚者のカードの上に新たに添えられていたのは、恋人。
そして愚者の説明には、パトリック、と。
「一体」
『コレだろうな』
彼が新たに抜き出したのは、運命の輪。
つまり、現皇妃も前世の記憶を持ち、侍女を使いパトリックを排除しようとしている。
全ては、殿下とヴィクトリア嬢を結婚させる為。
「私には、こう解釈するのは、難しいかと」
『あぁ、俺もこの役割をした事が有るんでな、その時の事かも知れん』
彼が山札から選び出したのは、死神。
「それは、この絵柄が関連するのでしょうか」
『あぁ』
私が抜き出したカードは、世界。
彼は良かれと思い、現皇妃を以前に殺害した事が有る、と。
「多少は馴染みが良いとは思いますが」
『もっと加えるなら、コレだな』
吊られた男。
意味は、私。
「逆に解釈が難しくなったんですが」
彼が無言で抜き出したのは、悪魔のカード。
嫉妬。
『こうするつもりが、こう、だろうな』
塔のカードを抜き出すと、彼は逆さまに。
私が殿下を煽る為に仕掛けた出来事が、失敗に終わった、と。
「難しいですね、あまりに意味が膨大ですから」
『あぁ、だろうな、俺も組み合わせを何通りも試していてコレだからな』
彼は、今まで何度も挑んでくれていた。
なのに私は、どうして殿下のお側に居ないのか、などと
「すみません」
『知らないんだ仕方が無い、俺も最初はそうだった、それに恋の事なんかもっと分からない』
「私もです、この解釈に続くだろう先を、知りたいのですが」
『全て、ココへと繋がる』
塔。
崩壊、又は変革。
国は、崩壊してしまっていた。
「すみません、予想はしていましたが」
『気付かずこのカードが指し示されていたなら、それも仕方無いだろう。それに俺も何度か投げ出した、あまりにも分からなくてな』
恋人のカード。
私は嘗て、ヴィクトリア様を慕っていたらしい。
けれど、今の私には。
「このカードを持っている限り、私には無理かと」
私が差したのは、運命の輪。
前世を覚えている限り、私は彼女を抱けないだろう。
今でも鮮明に思い出せる。
あの血の臭い、感触、冷たくなっていく細く瘦せた体を知ってしまっている。
『だろうな、俺もだ』
「最悪は、お相手はパトリック様かと」
『気が合うな、俺はお前にと思っていたんだがな』
「パスカル様はどうでしょう」
『あぁ、確かに良いかも知れないな。すまん、今までずっと独りだったんで、相談するなんて事が頭に無かったんだ』
「心中、お察し、申し上げられれば良いのですが」
『良いさ、その程度で、全てを知る必要は無い』
彼の粘り強さ、誠実さ、真面目さ。
最悪は彼に、と思っていたのですが。
私も、もう少し相談し合うべきかも知れませんね。
俺に王家から招待状が来た時は、コレにも記憶が有るのか、記憶が戻ったのかと警戒したが。
どうやら無さそうだ。
『ソレは俺の弟ですよ、殿下』
《どうも、パスカルと申します、宜しくお願い致します》
『あぁ、すまない』
『いえ、では、どうぞ』
弟とは1才違い、しかも弟の方が体の成長が良い。
良く間違われるんだ。
《お兄様、食べて良い?》
『あぁ、だが溢すなよ、汚く食べたら直ぐに菓子無しで下げさせるからな』
《はぃ》
『兄弟が居るからこそ、君はヴィクトリアに頼られる程の存在なんだろうか』
『いえとんでもない、武官の家に生まれた文官気質、それと俺の趣味のタロットカードに興味を引かれただけでしょう』
『タロットカードか』
『当たる時と外れる時の差が激しいので、あくまでも趣味です、見方や考え方を変える為の作業とも言えますね』
『当たる時は当たるのか』
『知り合えば知り合う程、特に』
『なら、ヴィクトリアとは』
『単なる友人です、常に互いの侍女を同席させていますし、中庭でお会いするだけ。しかも俺は父から王宮の大変さを良く言い聞かせられていますから、想像も入れつつ、ご相談に乗っているに過ぎません』
『どんな事を、話し合っているんだろうか』
『男性とは、女性とはどの様な生き物なのか、若しくは遊学について。それと悪夢、相当大物が死神として出るそうで、未だに名を聞けていないんですが。検討はついてらっしゃいますか?』
『あぁ』
『彼女は優しいので詳しく仰ってないでしょうけけれど、どうやら臭いまで分かるそうですよ、酒臭いだとか血の臭いだとか。相当に夢とは思えない程の精密さらしく、最近はかなり頻度が減ったそうですが、相変わらず寝起きは最悪だそうで』
お前が実際に殺したからな、俺も最初の頃は本当に悪夢だと思った。
そして、その次からは本当に悪夢として見る様になった。
アレは、あまりに悲惨で理不尽で、不条理だ。
『もし、君が、死神に取り憑かれる者に好意を寄せられたら』
『まぁ無理でしょうね、あんなにも理不尽で不条理で悲惨な出来事を引き起こされるのかと思うと、俺はとてもじゃないけど近寄りたいとすら思いませんね。どう足掻いても結局は死にそうですし、裏切られて喜ぶ趣味は無いですから』
『君は、本当に相手を知らないのか』
『それ、どう証明すれば良いんでしょうね、俺は知らないのだと。王族に圧力を掛けられたら、きっと侍女も悪夢と同じ様に、偽証するでしょうしね』
王妃候補から落ちた者の親友が侍女となり、来訪者ユノの味方となる道筋は、ココでも大いに有り得る事。
殺そうが潰そうが、他の令嬢の友が侍女となり敵となる。
来訪者が来なければと思ったが、アレは必ず現れる。
皇帝の前に、コレが皇帝となって1年後、子無し離縁が成立する期間間際に。
《そんなに怖い夢なの?》
『あぁ、お前も知ると見るかも知れない、だから知るな。菓子の感想を述べろ、殿下が持って来て下さった品だ』
《ありがとうございます、コレはサクサクで美味しいです、コレはナッツの良い香りで》
『おい、ナッツだと、吐き出せ!』
『セバス!医師を呼べ!』
他国の来訪者によって齎されたとされる毒には、独特の風味が有る。
それこそがナッツの香り、だからこそ王族は手を出さない、そもそも使わない。
パスカルは急いで吐き出させたんで、何とかなったが。
この事件は、そもそもかなり先で起こる筈。
しかも事を起こした犯人は。
『おい、どうなっている、侍従』
「誠に、申し訳御座いません」
『すまない、僕の失態だ』
コレが居る以上、前世の事を知られるのは面倒だ。
どうにか。
『コレでは、暫くヴィクトリア嬢には会えないでしょう、殿下。俺が事情を伝えますから、侍従に当たり障りの無い文を書かせてはどうでしょうか、ウチから伝えますから』
『セバス、頼んだ』
「はい」
『俺も書く、用意してくれ』
《畏まりました》
コレで、セバスに見せた後、紙を燃やせば済むだろう。
『良いですかね侍従の方、この綴りで合ってるかどうか』
パトリック様が書いた綴りに間違いは無かった。
けれど、犯人は皇妃の侍女だと知っているか、と。
「いえ」
『あぁ、やっぱりな、すまない。どうにも書くのに不慣れでな』
彼は、知っている。
犯人も動機も何もかも。
面と向かい対話した事は無かった、お互いにヴィクトリア様の侍女クララを通じてのみ。
接触を避けていた彼がこうして直接関わって来たのだから、私は改めて彼と対話しなければならない。
私の前世では、こんな事は起きていないのだから。
「コチラで宜しかったでしょうか」
『あぁ、すまないが頼んだ、パトリック』
『いえ、まだウチを狙った事なのかどうか分かりませんから』
「ですが改めて謝罪に伺わせて下さい、容体も確認させて頂きたいので」
『懲りずに菓子で頼む、アレが1番に好きなのは東の。いや、後日、ウチから侍女に伝えさせますが』
「はい」
『ではもう行って下さい、ご両親が心配してらっしゃるかと』
『あぁ、すまない、後は任せてくれ』
『はい、では』
そして翌日、パトリック様からの手紙を持参した侍女が登城し、私達は菓子店で待ち合わせる事に。
「偶然ですね、パトリック様」
『おう、だな。甘い物は好きか』
「そこまでは、寧ろ酸味や柑橘類が好みなので」
『ならコレだな、食って損は無いぞ』
「では、同席させて頂いても」
『おう』
窓を正面にし座る彼が私に促した席は、窓の無い壁を背にした角。
彼は、前世のまま、常に警戒を怠らない方だった。
飾り気の無い言葉遣いに、奔放な政策、けれども慎重さは誰よりも持っていた。
「確かに、私の口に合いますね」
『だろう、占いで出たんでココへ来たんだ』
「成程」
『コッチは問題無い、気遣いは無用だ』
「アナタは既に、ココの全てを理解してらっしゃっるのですね」
『どうだろうな』
前世では鬼才と呼ばれていたパトリック様が、どうしてココでは役職に就かれなかったのか。
今なら分かります、こうした事を何回も経験していらっしゃるからこそ、疲れてしまわれた。
諦めてしまったのだろう、と。
「最初は、憤りを感じておりました、何故居ないのかと。ですが今は理解しました、あんな経験は、1度で十分ですから」
『そうか。でな、新しいカードの組み合わせを思い付いたんだ、意見を聞かせてくれないか』
「是非」
少し変わった絵柄のタロットカードを、テーブルへと並べ。
そして手渡された説明書に添えられた小さな紙には、本来の解釈とは違う単語が並んでいた。
『俺の解釈としてはこう、この組み合わせが正解だと思うんだが、お前の感覚としてはどうだ。違和感や、そもそも全く知らなさ過ぎて感想が無い、か』
彼が揃えたのは女帝、節制、そして戦車。
「全く知らない組み合わせですが、驚きと同時に疑問が浮かぶ気がしますね。どうして、この様な組み合わせなのだろう、と」
『簡単だ、この図柄を知っているからこそだろうな』
彼が引き抜いたのは、女教皇のカード。
そしてどう仕込んだのか、カードを持つ彼の手には小さな紙、そこにはヴィクトリアの文字が。
「コレの為、ですか」
『こう配置する為だと思う、邪魔だったんだろうな』
愚者のカードの上に新たに添えられていたのは、恋人。
そして愚者の説明には、パトリック、と。
「一体」
『コレだろうな』
彼が新たに抜き出したのは、運命の輪。
つまり、現皇妃も前世の記憶を持ち、侍女を使いパトリックを排除しようとしている。
全ては、殿下とヴィクトリア嬢を結婚させる為。
「私には、こう解釈するのは、難しいかと」
『あぁ、俺もこの役割をした事が有るんでな、その時の事かも知れん』
彼が山札から選び出したのは、死神。
「それは、この絵柄が関連するのでしょうか」
『あぁ』
私が抜き出したカードは、世界。
彼は良かれと思い、現皇妃を以前に殺害した事が有る、と。
「多少は馴染みが良いとは思いますが」
『もっと加えるなら、コレだな』
吊られた男。
意味は、私。
「逆に解釈が難しくなったんですが」
彼が無言で抜き出したのは、悪魔のカード。
嫉妬。
『こうするつもりが、こう、だろうな』
塔のカードを抜き出すと、彼は逆さまに。
私が殿下を煽る為に仕掛けた出来事が、失敗に終わった、と。
「難しいですね、あまりに意味が膨大ですから」
『あぁ、だろうな、俺も組み合わせを何通りも試していてコレだからな』
彼は、今まで何度も挑んでくれていた。
なのに私は、どうして殿下のお側に居ないのか、などと
「すみません」
『知らないんだ仕方が無い、俺も最初はそうだった、それに恋の事なんかもっと分からない』
「私もです、この解釈に続くだろう先を、知りたいのですが」
『全て、ココへと繋がる』
塔。
崩壊、又は変革。
国は、崩壊してしまっていた。
「すみません、予想はしていましたが」
『気付かずこのカードが指し示されていたなら、それも仕方無いだろう。それに俺も何度か投げ出した、あまりにも分からなくてな』
恋人のカード。
私は嘗て、ヴィクトリア様を慕っていたらしい。
けれど、今の私には。
「このカードを持っている限り、私には無理かと」
私が差したのは、運命の輪。
前世を覚えている限り、私は彼女を抱けないだろう。
今でも鮮明に思い出せる。
あの血の臭い、感触、冷たくなっていく細く瘦せた体を知ってしまっている。
『だろうな、俺もだ』
「最悪は、お相手はパトリック様かと」
『気が合うな、俺はお前にと思っていたんだがな』
「パスカル様はどうでしょう」
『あぁ、確かに良いかも知れないな。すまん、今までずっと独りだったんで、相談するなんて事が頭に無かったんだ』
「心中、お察し、申し上げられれば良いのですが」
『良いさ、その程度で、全てを知る必要は無い』
彼の粘り強さ、誠実さ、真面目さ。
最悪は彼に、と思っていたのですが。
私も、もう少し相談し合うべきかも知れませんね。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる