エイトゲヘナ~出会って秒で食べられました、けど今は凄く幸せです~

中谷 獏天

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187 勉強と石選び。

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『まだダメです』

《ダメか》
『はい、レンズも消化器官を育てるべきです』

 レンズには好きな事が少ないです。
 私も少ないですが、今は増やそうとしています。

 普通を知る為に、中庸の為に。
 それに、消化器官を育てるにも、色々と知るべきだとエルネストが言っていました。

 それはレンズもです。

「あの、宜しいでしょうか」
《おう》
『はい、どうぞ』

「僕としては、お勉強して頂くのはどうかと。コチラです」

 アズールが差し出した冊子には、公認立ち会い人制度、と書かれていました。

『コレは何でしょうか』
「向こうで言う民生委員、だそうで、問題が起きた場合の仲介役です」
《あー、そう言えば監督所でも言われたな、取ってみたらどうだって》

『取って下さい』

《一応、何でか聞いても良いか》
『お勉強が趣味になるかも知れません』

《まぁ、確かにな》
『何で気が進みませんか』

《あんまり愚かなのと関わるのは、な》
『加害者は愚かかも知れませんが、被害者はそうとは限りません』

《まぁ、確かに。けど、あんまり、活躍させる気は無いんだが》
『資格は無いより有った方が良いと思います』

《結構、圧が強いな、何でだ》
『余計な事を考えないお手伝いです。考えないは難しい事です、でも夢中になると、その時は忘れます』

《そっか、ありがとな》
『受けますか』

《おう、受けてみる》
『頑張って下さい』

《おう》

 レンズは最近、匂いを嗅いでくれません。
 多分、悲しくなるからだと思います。

 ですので、まだ、私は何が有ったのか聞きません。



「はい、何か」
《ソチラで所持している宝石について、出来れば交渉させて貰いたい、妹に身に着けさせたいんだ》

 俺は勉強も程々に、先ずはヒナの印章を使い、例の宝石を所持する家に来たワケだが。
 さ、信用してくれるかどうか。

「あぁ、成程。分かりました、どうぞ、お上がり下さい」

 試験の内容は、俺にとっては勉強するまででも無かった。
 それと、正直、コッチの方がずっと気になってたんだ。

 ヒナの宝石。
 赤いムーンストーンなんて、絶対にヒナ用だろ。

《急にすまない、まだコッチには不慣れなんだ》
「でしょうね、コチラは新造の印章、しかも私が初めて見た印章ですから」

 かなり、悪魔に詳しいのか。

《そうか、あまり知られて無いんだな》
「いえ、新しい方がお生まれになった事は、地獄ゲヘナの者は全て承知しておりますよ」

《だが、宝石が継がれていないんだ》
「きっと、以前の方は無頓着だったか、若しくは敢えてなのでしょうね」

《悪魔は、分身しか居ないらしいな》
「はい、ですが、記憶を継承なさらない方も居られる」

《ラウム男爵だけ、だろう》
「72柱の方だけなら、そうですね」

《そうか、確かに、本当に詳しいな》
「私の後見人はXezbethゼズベス、嘘と伝説・創話・物語・虚構の悪魔、72柱には列席しておりませんから」

《すまん、不勉強で》
「いえ、向こうの東の国で知る者は、そう多くは無いと聞いておりますから」

《天使名は、無いんだな》
「はい、中にはMemunehメムネと呼ばれる、天使であり悪魔である者も居りますし。ココでは、悪魔、その括りにより存在は幾ばくか変更されております」

《良い意味で、か》
「はい」

《すまん、脱線した》
「赤いムーンストーンですね、宝石屋から連絡が有りお待ちしておりましたが、知恵熱を出されていたとか」

《あぁ、やっとな》
「おめでとうございます、受け入れ、認められたのですね」

《それは誰に、何に、なんだろうな》

「私の後見人は、世界、そう申しておりますね」

《世界》
「はい、神は敢えて、永遠にお隠れになられている。その前提を元にし、であるならば、この世界が認め受け入れたのだろう。と仰っておりました」

《世界、か。宝石屋から連絡が有ったとは知らなかったんだが》
「その殆どを、私が管理しておりますから」

《名を上げさせない為に》
「そして諍いを起こさせない為に」

《誰の案なんだろうか》
「来訪者様です、宝石が大好きだからこそ、向こうの様に争いの種にしない為。そう伺っております」

《後見人、ゼズベスによってか》
「はい、どちらに致しましょうか、黒く光るモノか白く光るモノ」

《そこが悩み所なんだよな、先ずは見せて貰えるか?》
「はい、少々お待ちください」

《あぁ》

 初老の、人の良さそうな男。

 ヒト種に見えるが。
 だからと言って、実際は人種かどうかは分からないんだよな。

 と言うか、美味い紅茶だな。

 それに菓子も。
 甘い品だけじゃない、招く事に相当慣れてる。

 だが、譲って貰おうとするのは、そう居ないだろうに。
 いや、寧ろ多いのか。

「はい、お待たせしました。どうぞ、コチラです」

 6カラットは有るだろう、楕円で丸みを帯びたカボションカット。
 この色合いと発色、真っ直ぐに強く輝く光のライン。

 いくらムーンストーンでも、コレはもう、絶対に高いだろう。

《本当に、凄いな》
「いえ、コレは組み合わせから生み出された品、誰かを思い生み出された事には叶わないかと」

《いや、まぁ、止めておく。この、端に有る石は何なんだろうか》
「向こうのレッドムーンストーン、と呼ばれる存在です」

《あぁ、有るのか。けど随分と違うな》
「はい、ココまでの透明度、均一さや鮮やかさはそう無いかと」

 差し出された肌色のベルベットのトレイには、提案した以上の品が並んでいた。

 雲の様な白色に、真っ赤な光の筋。
 それと明る過ぎない、深紅に近い濃い赤に白い光の筋、それから黒い筋の品に。

 黒に近い濃い赤に、真っ赤な筋。

《はぁ、マジで悩むな》
「宝石の言葉や意味とは、結局は印象でしかありません。アナタが送りたいお相手に、どちらが合うか、かと」

 ヒナに合う石。
 ヒナの印象。

《よし、決めた》
「ではお持ちになって下さい、以降はアナタが所有者となります、どうぞ」

《何の対価も無しにか》
「相応しい方にお譲りすべきだ、とお伺いしておりますので、はい」

《だが、証明書だとかは》
「コチラで処理しておきますが、ご一緒にご確認をなさいますか」

《疑ってるワケじゃないんだが、すまん、念の為に同行させて欲しい》
「はい、では、参りましょう」



 レンズさんが向こうで言う民生委員、公認の立ち合い人になるらしい、と。

「それで、何故、私なのでしょうか」
『シイラはレンズと気が合うと聞きました』

 まさかの呼び捨て。

 それに一体、誰に。
 いえ、それより目的です。

「それで一体、私に、何をお求めで」
『レンズは直ぐに試験を受けてしまうと思います、なので見守りをお願いしたいです、また知恵熱が出たら困ります』

「成程」

 ガン見されている。

『変装してもダメでしょうか』

 無表情ですけど。
 多分、コレは、懇願されている。

「変装、ですか」
『どんな姿でも構いません、ダンダリオンやシトリーも協力してくれます』

 レヴィアは。
 遠くで微笑むだけで、良く分からない。

 多分、結局は自分で決めろ、と言われるだけ。

「分かりました」
『ありがとうございます』

 あぁ、ちょっと口角が上がってる。
 そんなに心配なんですね。

「容姿を、少しお借りしても構いませんでしょうか」

『何故でしょうか』
「理想が、そう無いんです」

 今と違うなら、もう何でも良い。
 そればかりで、しかもまさか、叶うだなんて。

『分かりました、他に何を混ぜますか』

 あぁ、混ぜる、が基本なんですかね。

「玉響さんとか、どうでしょうか」
『良いと思います』

 即答。

「では、そこから更に、変更しようかと」
『後はダンダリオンやシトリーが何とかしてくれます、サレオス、お借りします』

『良いよ』
『ありがとうございます』

「いえ」

『シイラは不思議です、ネネさんと似ているのに少し違います』
「あの立派な方と、何処が似ているんでしょうか」

 まさかの長考。
 良いですね、思い付きで言ってくれているんですね。

『傷や問題に、ネネさんより慣れているんだと思います』
『そうだね』
「そうなんですかね」

『そうだよ』
『謙虚で控え目です、ネネさんもです』
「あぁ、私のは後ろ暗いからですよ、全く違うかと」

『だから顔を隠していますか』
「それも、ですね、顔に自信が無いんです」

『私にも見せられませんか』

「いえ、どうぞ」

『普通だと思います』
「ありがとうございます」

 あぁ、話が途切れてしまう。
 周りに子供は居なかったし、そもそもコミュ障。

 一体、どうすれば。

『ふふふ、緊張しているんだねシイラ』
『何故緊張しますか』

「言葉は、とても難しい道具なので。慣れない私には、誤解や問題が無い様に言うのが、とても難しい。ですかね」

『レンズは、シイラは直ぐに言葉が出ると言っていました』
『つまり、遠慮しているんだよ。子供に不慣れ、しかも関わりにも不慣れだからね』

『私と同じです、私も遠慮すべきでしょうか』
「いえ遠慮は不要です、何でも言ってくれて構いませんよ」

『妙さんはウ〇コに、私の抱える問題に不慣れなので、あまり言わない様にしています。ウ〇コは合図です、悲しかったり、辛い事に耐えられない時はウ〇コと言います』

 合図まで有るとは。
 と言うか、美幼女のウ〇コ発言って、ちょっと脳がバグりますねコレ。

「私も使って宜しいでしょうか」
『はい、ご自由にお使い下さい』

「お2人で考えたのでしょうか」

『はい』
「ありがとうございます、レンズさんもヒナちゃんも親切で、とても優秀ですね」

『ありがとうございます』

 この、僅かに姿勢を正したのは。
 多分、自慢げ、なんですかね。

「いえいえ、私こそありがとうございます、頼んでくれてありがとうございます」

『ハグをどうぞ』
「あぁ、ありがとうございます」

 美幼女、強い。
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