エイトゲヘナ~出会って秒で食べられました、けど今は凄く幸せです~

中谷 獏天

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105 魔女狩りと精霊の物語。

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 この世界には魔法が有るのに、傷や病気を治す魔法を使える者が居なくて。
 そうした魔法が使える私は、転移した近くに有った村で喜ばれた。

 そして王都に行くべきだと言われ、王都へ。

「凄い」

 亜人も人も着飾っていて、華やかで綺麗な場所。

『アンタ、観光かい』
「あ、はい、出来ればお城も見たいんですが」

『なら、真っ直ぐ行けば着くよ』
「そうなんですね、ありがとうございます」

 怪しまれるかも知れないけれど、歓迎されると思っていた。
 亜人も人も一緒に生きられる魔法の世界。

 だから不思議に思わなかった。

『何故、治療魔法が無いのか』
《何故他の者が使えないのか、考えた事は》

「えっ」
『捕らえよ』
《最下層のジュデッカへ投獄せよ》

「いやっ!誰か助けて!!」
《ふふふ、助けてあげる》
『ウンディーネ様』
《よせ、下がるんだ》

 そうして私は精霊に助けて貰い、他の国へと逃がして貰った。



「どう、でしょう」
《おぉ、腰の痛みも、動きもすっかり良くなった》

「良かった」
《いや本当に助かりました》
『どうだろうか、コレからこの国で、その力を貸してはくれないだろうか』

 私が以前に行った国は多分、変な宗教や何かのせいでおかしかったのだと思う。
 ココの人は誰もが歓迎してくれて、国の偉い人も受け入れてくれた。

「でも」
『アレは魔女狩り、異端者狩りだ。君は何も気にしなくて良い、必ず僕が君を守る、どうか協力してくれないか』

「はい」

 それから私は何人も何人も治し。
 貴族にまでなれた。

 それに。

『もし良ければ、婚約してくれないだろうか』

「でも、まだ私達、何も知らないままですし」
『では、先ずは一緒に出掛けて頂けますか』

「はい」

 私の様な外見は珍しいのに、とても優しくしてくれて。
 本当に幸せだった。

『結婚してくれるね』

「はい」

 結婚式の準備の最中だった。
 以前に腰を治した大臣の方の息子さんが、屋敷に押し掛けて来て。

《父に何をしたんですか!!》

「私は、ただ、腰を治療魔法で」
《治療魔法の正規の資格をお持ちですか》

「えっ?」
《良くも》
『何事だ!』

「彼が、資格がどうのと」
『あぁ、君は気にしなくて良いんだ、君は星の子なのだから』

「星の子?」
《では何故!父は黒点病で亡くなったのですか!!》

「黒点病?」
『乱心したらしい、直ぐに方を付けるよ』

「えっ」

 目の前で人が斬り殺された。
 初めてあんなに大量の血を見て、気を失いそうになった。

 けれど私は、ただガタガタと震えるしか無かった。
 そして結婚式当日、私は夫となる筈の人と共に、捕らえられた。



《アナタは数多の病を広げ、国家転覆に加担した》
「私、何も」
『はぁ、失敗したのか、コレだけしたのに』

「アナタ、何を言って」

『この女が全て、計画した事です』
「知らない!私はただ、傷を、治しただけで」
《追って沙汰は伝えます、牢へ》

「いやっ!誰か助けて!!」

 誰も助けてはくれなかった。
 そして私は牢へ入れられ、拷問され、隙を見て逃げ出した。

 幸いにも最初に助けて貰った村の近くに幽閉されていて、私は自分で自分を治し、なんとか辿り着いた。
 けれど。

『おまえ!』
《かあさーん!》

『ばあちゃんをかえせ!!』
《アイツがきたよ!かあさん!!》

「な、なんで」

 私は子供達に石を投げられ、直ぐに村を出た。
 けれど、誰かにあっと言う間に追い付かれ。

『良くも、ウチの母さんを殺してくれたな』
《あの人を返して!!》

「なんで、何が、起こってるの」

『お前が母さんの腰を治した後、黒点病になったんだ』
《ウチの人もよ、もう、あっと言う間に痩せて》

『もう、村は全滅だ』
《もう、私達だけに、なってしまった》

 私が逃げた先は、墓場でした。
 新しいお墓が、何個も何個も有った。

「私、ただ、怪我を治しただけなのに」

 なのに、何で。

『どうかされましたか』
『あ、アナタ様は』
《どうか、彼女に罰を!!》

『そうですね』
「何かの誤解なんです!助けて下さい!!」

『では、彼女は私が頂きます。代わりに正規の治療師をココへ向かわせます、迎える準備をしてあげて下さい』

『ありがとうございます!!』
《ありがとうございます!!》

 私は綺麗な天使に助けて貰った。
 そして綺麗な洋館で、綺麗な服を着せて貰い、美味しい食べ物も頂いた。



「ご馳走様でした、本当にありがとうございました」

 やはり罪悪感は無い。

『アナタが隣国の者達を魔法で治療した者』

「あの、確かにケガは治しました、でも病気にさせてはいないんです」

 意図して、は。

『では、治療の魔法の原理はご存知ですか』

「原理、ですか」
『どう治したのですか』

「それは、ただ。腰のケガなら、腰に、治れ、と」
『ご存知でしょうか、黒点病、癌にはマッサージや温熱療法は禁忌とされている事を』

「えっ、でも」
『癌とは常に体内で生成されますが、健康な細胞体が排除してくれている。ですが一定数を超えると癌の症状が現れ、刺激によって更に増殖する』

「でも、それとコレと」
『実際に怪我が治る原理をご存知でしょうか、要は細胞増殖です、しかもアナタは全身の癌細胞まで増殖させた。アナタの治療魔法は曖昧なまま実行され、癌を発症させるに至らしめた』

「そんな」
『事実です、アナタは怪我を治すと同時に病へと推し進めた』

「そんなの、だって、私、知らなくて」
『確かにアナタは利用された、ですが慎重に経過を観察していれば気付けた筈。最初の国で話し合えば、知ろうとすれば、誰も苦しむ事はなかった』

「そんな、魔法に原理だなんて」
『何故、治療魔法が無いのか。何故人種が使えないのか、何故、考えなかったのですか』

 彼女の顔色はみるみるうちに白くなり、青くなると、今度は震え出した。

「ごめんなさい、本当にごめんなさい」
『謝っても死人は生き返らない、謝っても大切な者を失った者の悲しみは、罹患者の苦痛は癒えない。一体、何を治療した、と言うのですか』

 幾ら待とうと、償いについての言葉は出ない。
 あぁ、星屑か。

 私にはもう、その感慨しか無かった。

《もう、そんなに追い詰めて、可哀想じゃないシルフ》

『あぁ、ウンディーネ、欲しくなったか』
《そうなの、さ、行きましょうね》

 星屑と言えど、ウンディーネに引き渡してしまったのは、些か同情すべきだろうか。



「あ、あの」
《大勢を殺した分際で、良くそんなに綺麗で可愛い服を着ていられるわね?》

 あぁ、なんて可愛いのかしら。
 怯えた瞳を大きく開いて、肩を竦め黙ってしまった。

 本当に、可愛い。

「す、すみません」
《あら、今だけの事じゃないわよ?王侯貴族にチヤホヤされていた頃、アナタを助けてくれた村の人々は苦しんでいた、苦痛に苛まれ食べる事も眠る事も出来無かったの。本当に可哀想よね?》

「すみません、本当に」
《そう謝るだけで済んだ世界、平和な世界で生きていたのは分かるけれど、償いの概念は無いのかしら?》

「すみません、出来るだけの事を」
《いつ、するのかしら、どう償うのかしら?》

「出来る事は何でも、直ぐに」
《ココで下手な治療魔法以外、何が出来ると言うのかしら?》

 ふふふ、また黙ってしまって。
 本当に可愛い子。

「すみません」
《どんな気持ちで美味しい料理を食べていたのかしら、ねぇ、教えて?》

「それは、私、何も知らなくて」
《あら、知ろうとしたの?何故、治療魔法が無いのか考えて、知ろうとしたの?》

「いいえ」
《何故?》

 ふふふ、恥ずかしくて言えないのね。
 可愛い。

『ウンディーネ』
《あらシルフ、取り返しに来たの?》

『いや、何故知ろうとしなかったのか気になっただけだ』
《そう。で?》

 あぁ、気まずそうな所が本当に可愛いわ。
 ありがとう何処かの神様、この子でじっくり、楽しませて貰うわね。

「わ、私はただ」
《ただただ褒められて嬉しかった、人の役に立てて嬉しかった、ココに居て良いんだと思えた。後は、何かしらね?》
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