エイトゲヘナ~出会って秒で食べられました、けど今は凄く幸せです~

中谷 獏天

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142 農家の子。9

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《うん》

 騙す気も利用する気も、本当に無かったんです。

『アセクシャルやノンセクシャルは分かりますか』

《うん》
『アナタを見ても恋愛感情も性的欲求も湧かないんです、私は家族が欲しいけど、そうした事に興味が無い』

《家族だけ?》
『ごめんなさい、友人かいきなり家族か、なんです』

《すまんが、ちょっと良いか》
『はいレンズさん、どうぞ』

《あのストーカーのせいじゃ》
『気付いたのはストーカーの件が有ってからですが、はい、男が怖いとか嫌とかは無いんです』

 向こうで東京に出たのは、相談に行った事も含めての事だった。
 田舎では、ちょっとの事で誤解が広まったり、専門家だからと言っても詳しい人が居るとは限らない。

《誰かに、相談は》
『ココではまだ、でも変わらないと思います』

 ネットでも病院でも相談した。
 そして、まだ決めるのは早いと言われた、だから良く考えた。

 ココでは香水屋さんも、それこそ道すがらの誰かも想定して、色々と改めて良く考えた。

 でも付き合うってなると面倒だな、としか思えない。
 友人か家族、それだけで良い。

《俺が知る限りでは、色々と種類が有ったと思うんだが》
『性的に興味を持たれる事は、身の危険が無ければどうでも良いですし、恋愛感情を持たれる事は歓迎していますが。ベタベタして欲しいだとか、そうした要求を強制されなければ、大丈夫です』

《敢えて、一般的な質問をするが、求められたら応じるべきだって圧力が有ると思うんだが》
『同じ熱量を持てと言われたら無理なので、そこですかね。多少の触れ合いなら好きですが、自分と同じ様にしろと要求されると、もうダメですね』

《そのダメ、とは》
『面倒だなぁ、家に帰るか仕事がしたい、ですね』

《経験は》
『はい、した上での結果です、そのせいで死んだのかも知れませんね』

 世に言う出会い系でした。
 ですがしっかり知り合って、お付き合いして、してみましたが。

 いざ結婚となると、尻込み。
 結婚が目の前に無いなら、なんて無駄な時間を過ごしたんだろう、としか思えませんでした。

 躊躇いや戸惑い、その理屈や理由は分かっているのに、もう前後の時間が全て無益だとしか思えなかった。

《それは、ある意味、合理的なだけだと思うんだが》
『私もそう思ったんですけど、じゃあ別れましょう、となった時に冷たいだとかもう少し考えさせてくれだとかゴネられて。更に、無になっちゃったんですよね』

 好かれるのは嬉しいけど、素敵な恋愛には憧れもしたけど。
 実際は、面倒だとしか思えない。

 それこそ、自分はサイコパスかも知れない、とも思いました。
 懇願されても、後悔を示されても、もうどうでも良かったので。

《それでも良い、家族になりたい》

『アナタが思うより、大変かも知れません。しかも、謝罪も改善も無理です』
《それでも良い》

『では、お試しで』
《うん》



 客の中に居たには居たが、殆どは相談。
 結局は妥協して苦労しながら付き合いを続けるか、それこそ説明をして、フラれるか。

「来るんですね」
《他と違う、けどそれは自分だけの問題なのか、どうしたら良いのかってな》

「それで、妖精さんは」
《頑張ってるよ、と言うか、離れるより家族になる方が良いらしい》

「成程、ですがいずれ、無理がくるのでは」
《だと思って数日様子を見てたんだが、どうやら平気らしい。まぁ、精霊さんが分かってて、敢えてそう手を回してくれたのかも知れないな》

「出ませんね」
《まぁ、聞いてるだろ》

 妙さんは謝って来たが、俺としては全く気付かなかった事に驚いた。
 だが良く考えてみれば、年の割にはしっかりしていた事は勿論。

 そもそも、サイコパスやソシオパスと謂った単語を理解している時点で、気配は有った筈なんだが。
 本当に、予想外だった。

「あ、生きる悪しき見本として、例の方は厳重に保管されているそうですが」
《おう、しっかり危険を示す特殊バッチを付けて、相談員として働いてる》

「後で行ってみようかと思うんですが」
《凄いぞ、サイコババァって恐れられてるからな》

 あまりのサイコな答えに熱を出すモノが多いが、外部からの人気が特に有るらしい。

「想像を絶する、共感性の無さ」
《精霊種には考えられないからこそ、学習に来るらしい》

「体当たり免疫獲得法」
《まぁ、逆に安定してるからこそ、出来るんだろうな》

「あぁ、後は、ココでも誰かに一応は相談して頂くべきかと」
《それも約束した、不意にいつか心変わりをしても良い様に、念の為な》

 まぁ、無いだろうけどな。
 改めて話し合ったが、トラウマと言うより生来。

 珍しいが、居ないワケじゃない。
 ある意味で合理的なだけだ。

「すみません、もう少し親しくなってから」
《いや、いずれ会ってただろうし。遅かれ早かれだろ、それに得るモノも多かったんだし、気にするな。向こうだって気にしてるんだ、キリがない》

 良かれと思い、引き合わせただけ、だろう。
 それに実際、ネネもヒナも得るモノが有ったワケだし、おあいこだろうに。

「では、あの、どう接すれば良いんでしょう。恋愛話だとかは」
《そこな、ある意味で恋愛サイコパスでは有るが。客観的で合理的な意見だけで構わないかどうか、だな》

「あぁ、それも含めての、ショックを受けたって事ですか」
《だな、自分がサイコパスかどうか心配した時期も有ったらしい》

「成程、一部に共感性が薄いだけ」
《恋愛や性的な事にのみ、だが、今だけかも知れない。模索中は模索中らしいからな》

「嫌悪では無いんですね」
《面倒、悪く言えば良くやるな、らしい》

「あぁ」
《悪く言えばだからな、それだって今だけかも知れない、変化するヤツは変化する》

「でも、変化しない人も居る」
《気になるなら妖精の相談に乗ってやれば良いんじゃないか、それに妙さんも、面倒な事に巻き込んで申し訳無いと思ってるらしいぞ》

「別に、私は何も」
《まぁ、会ってみてだ》

「ですね」



 珍しく一緒に出掛ける理由が出来たのは嬉しい。
 ネネを知れる事も、その知り合いと関われる事も。

《ネネが心配していたんだけれど、大丈夫そうだね》

『あー、慣れないと、やっぱり心配になりますよねぇ』
《そうだね、君の知り合いも見学させて貰ったよ》

『見学、になりますか』
《悪しき見世物、けれど君は害を成す存在じゃない、アレは害を成す存在》

『でも、私も』
《他とは少し違う程度で、害は無い、無知だった妖精が悪いんだよ》

『ですけど、やっぱり、外見からは分からない事で』
《好意を抱くにはリスクが有る、それは誰だって同じ事、内情を外部に示しだしたらキリが無い。それこそ妖精も、どの様な好意かをハッキリと示すべきだった、無知は言い訳に過ぎないよ》

『そう、思う様にします』
《是非、そうした方が良いよ》

『ありがとうございます、もう本当に、皆さんにはお世話になりっぱなしで』
《敢えて言わせて貰うけれど、君達には家や家族と言う拠り所が無い。だからこそ、それらを準備するのはコチラ側に居る好意を持つ者としては、当たり前。愛が有るなら、用意するのは当たり前だと思うけれど、ね》

『ですよね、でももう今は、分かってくれてますから』
《みたいだね》

 彼女の妖精はネネと何かを話している、と言うより。
 お説教か、若しくは何かを教えているのか、妖精が一方的に頷いている。

『面倒見が良いですよね、こうなれたのは、助けてくれたのはネネさんだと思います。あのままだったら、私は流されて、お互いに後悔していたかも知れない』

《どうだろね、ココには精霊も悪魔も居るから、寧ろネネがお節介をしたのかも知れない》
『それは無いです、あのままだったら、もっと困ってた筈ですから』

《そう言ってあげてくれると助かるよ、ネネもネネで気にしていたからね》

 人も人種も、とても器用で不器用。
 人種から魔獣となった僕には、良く分かる。

『はい、そうします』



 好きを押し付けてたし、我儘な事をしてた。
 だから凄く心配されてる。

「我慢する位なら離れた方が良いです、分かってますね」

《うん、はい》
「なら、我慢して無いんですね?」

《うん、嫌なんだな、じゃあ止めるで終わる》

「成程」

《何で納得したか、分かんないんだけど》
「無垢である事が良い方向に向かったのだなと」

《俺、無垢なのかな、単に愚かなだけじゃないかな》

 あのままだったら、ずっと無意識に無自覚に嫌な思いをさせてた。
 今は違うと思うけど、不安になる。

「あの悪しき見本は見学しましたか」
《うん、凄かった。でも、知らないからって、同じ事をしてたかも知れない》

「ですが痛みや嫌悪は分かるかと、私にも魔獣が居ますし、妖精も居ましたから」
《妖精は、何で今は居ないんだ?》

「もしかすると、妙さんと同じだったのかも知れません。若しくはもどかしさが面倒だったのか、家族として外に安全な場所を作る為か。帝国領に私の知り合いの妖精が居ます、アナタの相談に少しは乗ってくれるかも知れません、人種として暮らす為に私に魔法を授けてくれましたから」

《居るんだ、そんな妖精》
「少し珍しいらしいですが、居ないワケでも無いそうです」

《良いヤツ?》
「ですね、すっかり人種に馴染んで、最初は気付かなかった程ですから」

《そっか、俺もこのまま人種になるんだしな、何か教えて貰う》

「良いんですか、ご家族とは」
《だって、家族が増えるんだし、新しい家族になるだけだよ?》

「なら大切にして下さい、自分も、タエさんも」
《うん、ありがとう》

 人種って怖いのも居るけど。
 ネネもタエも良い人種だし、今はもう知識も有るし。

「嫉妬は、大丈夫ですかね」

《んー、タエは大丈夫だけど、あの魔獣はちょっとしてるかも》
「行きましょうか、嫉妬は流石に面倒です」

《うん、大変だね、頑張って》
「はい」

 知らなくても良いと思ってたけど、知ってる方が良い。
 安心出来るし、喜ばせられるから。

 だから知識は、やっぱり有った方が良い。
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