悪役令嬢に婚約破棄をして貰えました! 

中谷 獏天

文字の大きさ
15 / 40
第1章

13 警戒のベルが鳴る。

しおりを挟む
 ココまで、大事になるとは思わなかった。
 たった1週間で、プレゼントがココまで悪化するなんて、マジで想像して無かった。

 手紙に絵姿だけ、なんてのはまだマシで。
 大量の刺繍入りハンカチの中には、刺繍に髪の毛が使われている物も有った。

 そして異物混入されたお菓子、お茶。
 季節外れの手編みのマフラーにも、毛。

 本人が演奏したと思しき音楽が録音されたレコード、高級品なのに差出人は不明。

 人形。
 藁人形。

 押し花に針が刺さっただけのカード。
 兎の死体。

 1番笑ったのは、白紙の手紙。

 ただ何かした様な皺が有ったのと、残り香からして、精液だと。
 試しに先生方が炙り出しをした所。

 愛してる、の文字が浮かび上がって来たらしい。

「その先生に何か、労いの何かをしたいんだけど?」
《あぁ、そしたら花が良いよ、香りが殆ど無いヤツね》

 そうして園芸部へ行き事情を話し、先生へと花を渡したのが、逆にマズかった。
 先生が標的になったらしく、先生の大嫌いな百合の花が部屋に届けられそうになり、お礼が禁止される事に。

「ふえぇ」
《あ、聞けた》
『可愛い鳴き声だね』

 そう、そしてコッチも。
 もう本当、全然、上手くいかない。

 男同士の練習が、全然、ダメ。

 それもコレも、気掛かりが有るから、なのは分かるんだけど。
 気になるものは気になるし。

 それこそローズの事、全然会わないのは良いんだけど、全く噂話すらも耳に入らないから逆に気になる。
 何だかんだ、ケントとかが噂とかも防いでくれてるっぽいんだけど。

 逆に怖い。
 怖い位に噂を聞かないって言うか、マジで相変わらず周りが静かなのが更に怖い。

 あぁ、こんなに悩むからダメなのかもとは思うんだけど。

「ふぇぇ」
『大丈夫だよイーライ』
《焦ったら余計に良くならないよ、ゆっくり、焦らずに》

「ふぇぇ」



 私が、一体どれだけ、酷い事をしてきたのか。
 それこそ傍から聞いて初めて、理解した。

「それで、どうなさったの?」
『まだ反抗的な顔をなさるから、また打ってあげたわ。そう、何度も何度も、それからやっと懇願したからご褒美をね。少しだけよ、頬にキスだけ』
『さぞお喜びになったでしょう』

『そうなの、けどまだまだ、よね』
「頬を打たれてこそ、よね?」
『しかも何度も打たれて我慢して、よね?』

《ぁあ、つい聞き入ってしまいましたわ。私はまだまだ、それこそ失敗してしまいましたので》

『そうお気になさったらダメよ、その程度で諦めるなんて、愛していたら。よね』
「たった1度、しかも同じ相手なら破棄した事自体が破棄されますもの」
『そこも知ってらっしゃるでしょう。ですからもし、本当に愛してくれているなら当然、再びプロポーズしてくれる筈ですもの』

 手を出さなかっただけで、私はこの方達と同じ事を。
 いえ、それ以上の事をしていた。

 褒めもせず、褒美も与えず、ただただ痛め付けてしまった。

「そうそう、次はちゃんと叩いて怒らせてから」
『泣きながら縋って謝れば大丈夫』
『しおらしく、弱った姿を見せ、そしてまた気丈に振る舞えばイチコロよ』

 好かれていれば、有効かも知れない。
 けれど私は、最初から。

《私、やっぱりまだ、弱った姿を見せるのがどうにも恥ずかしくって》

『そうですわよね、それこそ私達普通の貴族とは違いますものね』
「大丈夫、彼にだけ見せれば良いんですから」
『そうそう、泣き付いて、甘えれば大丈夫』

 イーライが私を好きなら。
 けれど。

《ありがとうございます、お姉様方、頑張ってみますわ》

『応援してますわ』
『愛は多種多様、けれども私達が求める愛は1つ』
「愛が有れば耐えられる筈。なんですから、耐えられない子は手放して、次へ向かいましょう」

《はい》

 この方達がイーライを狙っている事は知っている、けれども単に牽制するだけでは、逆に私がスパイスにされてしまう。
 仮にも私のモノだとしていた時、私が目立つ事をしなければ、こんなにもイーライへ注目が集まる事は無かった筈。

 なのに私は。

《ローズ》
《お兄様》

《具合はどうだい》
《はい、滞り無く》

《そう、じゃあね》
《あの、イーライは》

《大丈夫、僕らが守ってるから》

《すみません、ありがとうございます、どうか宜しくお願い致します》
《うん、勿論》

 私が集めた情報は全て、厩のウォルターへ手紙に認め渡す事になっている。
 コレだけが、今の私とイーライを僅かに繋ぐ糸。

 蜘蛛の糸より細く、脆く、いつ途切れてもおかしくはない糸。



《あの方、最近お見掛けしないわね?》
「あぁ、ピジョンブラッド、アナタ何か知ってらっしゃるでしょう?」

『内緒ですよ?』
「勿論よ」
《えぇ、信頼して下さいな、私達の仲じゃない》

『実はですね……』

 ローズのお友達って、凄く楽しいのよね。
 私がちょっとバカなフリをしていると、凄く優しくしてくれて、そのお陰で結構誰でも私を舐めてるからペラペラ喋ってくれる。

 だから私もお返しにベラベラペラペラ喋ると、凄く喜んでくれる。

「あらあら、まぁ」
《でも、もしあの子がそうなら、よね》

「そうね、確かにワクワクしてしまうかも知れないわね」

《けど、もし間違いなら、よ》
『その噂も有るんですよねぇ』

「あら」

《そう言えば、何か足りないって仰ってたわよね》
『そうなんですよぉ、実はウチの部活でお茶が足りなくなってしまって』
「そうだったの、でしたら言って下されば良かったのに」

《取り敢えずは、そうね、後で届けさせましょうね》
『ありがとうございます、気配り頂けて助かります、どうにも私って言い出すのが苦手で』
「良いのよ、人には得手不得手が有るんですもの」

《そうよ、いつでも、遠慮なさらないで》
「そうそう、遠慮無く仰って」
『ありがとうございます』

「それで」
『ぁあ、違うかもって噂の方ですよね』
《そうそう》

 今までは主に男子から注目され、しかも平民も貴族からも尊敬の的になっていたイーライ様が、まさか変態性癖のマゾなのか。
 それとも、男色家なのか。

 それとも本気でローズ嬢がクズなのか、と。

「まぁ」
《けど、仮にも高貴な方でしょう?》
『ですけど同じ人間ですし、生まれが全てなら、廃嫡される王族の方が存在しないのでは?』

《まぁ、確かに、そうかも知れないけれど》
『まぁ、私は素晴らしい方だと思ってるので、それこそ単なる噂だと思ってますけどね』
「仲が宜しいと評判ですものね」

『仲良くして下さってる事に甘えさせて頂いてるだけですよ』
《そんなご謙遜なさらないで》
「私達とも是非、今後とも仲良くしてね」

『はい、勿論ですよ、是非是非。では』
「えぇ、またね」

 《ふふふ、本当に面白い鳩ね》

 聞こえてますよ、私のアダ名。
 えぇ勿論知ってますよ、伝書鳩の鳩子。

 家の名前もバードですし、それこそ名前がルビー、ピジョンブラッドとも呼ばれてるって。

 やっと成り上がったばかりの商家の平凡な子に、宝石の名前なんて烏滸がましいな、とは思いますけど。
 まぁ、私が付けたり名乗ったりはしてないんで、適当に言ってろって感じなんですよね。

 全ては面白いかどうか、利益になるかどうか、ですから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...