conspiracy intrigue plot 〜こんすぺらしーんとりっくぱぁー、って何ですか?〜

中谷 獏天

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 私達は怯えていました。

「えっ、えっ?」
《お待ちしておりました、来訪者様》

「来訪者?あ、言葉が、何で」
《ご説明させて頂きます、その前にお部屋を案内させては下さいませんでしょうか》

「あ、はい、お願いします」
《はい、では先ずコチラが……》

 そして私達の怯えは、現実となった。
 懸念通り、感染症を罹患した。

「ごめんなさい、本当にごめんなさい」

 彼は本当に申し訳無さそうに、謝罪してくれた。
 そして兵達の看病を率先して行った、とも。

《助かりました》
「いえ、本当にごめんなさい、無症状でも何か病気を持っているかも知れない。そう知っていたのに、分かっていたのに、本当にごめんなさい」

《いえ、幸いにも死人は出ては居りませんし》
「死なないだけで、今回は運良く、偶々後遺症が残らなかっただけかも知れません。本当に、ごめんなさい」

 衛生観念はクリア。
 後は倫理観、道徳観念に死生観。

 私達とは似て非なる世界の者。
 もしかすれば拒絶し、害悪となるかも知れない存在。



「実は、僕もそう思っていたんです」 

 ココの死生観は、僕も考えていた事だった。
 絶対に自死はダメ、殺される為に害する事もダメ。

 なら、苦しい者はどうしろって言うんだろうって。

 ずっと答えが出なかった、分からなかった。
 来世が有るなら来世に期待すれば良い、なのに、どうして死んじゃダメなのか。

 それは優しくないから。
 自分が悲しいから、困るから。

 本当に愛しているなら、時には手放す事も大事だと説く癖に、手放さず苦しめる。

 矛盾でいっぱいの向こう。
 けどココは単純で簡単だ。

 苦しみを長引かせる事を悪とし、時には尊厳を守る為に魔獣に食べて貰う。

 鈍感な分からず屋が酷い世界だとか言いそうだけど、なら苦しんでみたら良い。
 酷く不自由で辛い人生を、自分で歩んでみたら良い。

《酷だとは思われませんか》
「生かされる方の身になれば、そうは思わないですよ」



 死生観クリア。
 後は道徳観念をクリアし、知識を活かすのみ。

 出来るなら、活かして欲しい。
 彼には得られるだけの地位が与えられ、出来るなら、幸せになって欲しい。

《失礼します》
「あ、あの、少し考えてみたんですけど……」

 齎された事への対価に、彼は案を出した。
 道徳観念クリア。

 後は、この案が良策か愚策か。



《行ってらっしゃいませ》
「うん、はい、行ってきます」

 本当に、ただの思い付きだった。
 お客さんの要望に沿った品種改良を行う、花屋。

 一応、ココにも花屋は有るんだけれど。
 種類が豊富な分、既存の花だけで十分だからか、変わった花が全然無くて。

 品種改良を行う程に花が好きか、そうした者に知り合いが居る場合だけ、内々に改良し譲渡するだけ。

 青い薔薇が見たくて、僕が個人的に王宮の庭師に頼んだ時、もっと他の者にも興味を示されたいって聞いて。
 それで思い付いたのが、品種改良の花屋。

 いずれは品種改良された花だけを置く花屋を、出来るならアチコチに置ければって相談したら。
 あっと言う間に、そうした事を学べる状態になって、折角だからと旅行する事になって。

《ほれ、もう少し陽に当たる様にせんか》
「はいはい、ごめんね、つい物思いにふけっちゃって」

《全く、花の事をなんも知らん、手入れも知らん分際で。コレから更に大変じゃぞ、広めるにも努力が必要じゃし》
「うん、ありがとう、ドリアード」

 とってもお世話になった姫様に、要らないかも知れないけれどお土産を買った。
 親切に、優しくしてくれた人だから、いっぱい恩返しがしたいんだ。



《お帰りなさいませ》
「あ、はい、ただいま帰りました」

《お疲れでしょう、今日はゆっくり》
「あの、ご迷惑かも知れないんですけど、お土産が有るんです」

《あ、ありがとうございます》
「その、それがちょっと量が多くて、出来るなら欲しい物だけを受け取って貰えると助かるんですが」

《そんなに、ですか》
「すみません、好みを聞く事もしなくて。勝手に選んだので、気に入らない物も有ると思うので、はい」

《少し、お見せいただいても宜しいですか?》
「あ、お時間、大丈夫ですか?」

《はい、勿論》
「あの、1番自信が有るのが、コレなんですけど……」

 硝子と銀細工で出来た、花の髪飾り。
 宝石箱、香り袋、他国の民族衣装。

 綺麗な飴細工に、ハーブの詰まったガラス瓶、花びらの入った紅茶。

 1つ1つ、何処で買ったか、何故選んだのかを教えて下さった。
 どれも、私に似合うから、と。

《こんなに、ありがとうございます》
「あ、無理しないで下さいね、好みも有るでしょうし。実は、まだ有るんですけど」

《見せて下さい、是非》

 いつか、お相手が出来てしまうかも知れない。
 そう思いながら送り出しました。

 諸外国を見回らずして、婚姻を成すべきでは無い。
 だからこそ、決して思いを告げる事は無かった、付いて行く事も我慢した。

 彼の幸せの為、選択肢は狭めてはならい。

 コレは単なる恩返しかも知れない。
 けれど、私には十分。

「あの、本当に1つだけでも気に入って貰えればと思って」
《もし、全て欲しかったら》

「勿論、凄く嬉しいですけど」
《ありがとうございます、大切にします》

「あの、本当に」
《アナタのお嫁さんになる方は、きっと幸せになれます、私が保証します》

 泣かないつもりだったのに。
 こんなに、恋心とは制御が効かないだなんて、悔しい。

《何じゃ全く、両思いじゃったとはの》
「僕は、アナタがお嫁さんだったら幸せだろうなと、思ってます」



 地獄巡りもそこそこに、国に帰る事に。
 なんせ、本来は憤怒の国で過ごす筈が。

 来訪者がわんさかと。

 「あの、他の者は」

《あぁ、ココでは無いけれど、もう既に国を出ているよ。折角だから旅行を兼ねてね》

「あぁ、もうそこまで」
《男性だからね、妊娠の可能性が無い分、踏み込む事に躊躇いが少ない》

「あぁ」
《実は、そこも要望が来ていてね、君を取られる事が怖いんだそうだよ》

「そんな事を」
《他に何か考えが有るのかも知れないけれど、それだけ君に価値を感じ、自己の価値に怯えているんだろうね》

 だからと言って、善き来訪者と会わせない様に頼み込むとは。
 どんだけだ。

「すみません、ありがとうございます」
《いえいえ、いつでも、またおいでね》

「はい」



 彼女は、敢えて考えない様にしているんだろう。
 もし、逆の立場なら。

 そう考えれば、答えは直ぐに出る筈。
 けれども、敢えてしない。

 答えを出せば、更なる選択が待っている。
 どちらを選ぶか、どちらも選ばないか。

 気付いてしまったら、知ってしまったら選ばずにはいられない。
 善き心根の者は特に。

《心配なら、話し掛けても良いと思うけれどね》

『何も不幸を望むばかりでは無い、不必要な接触を控えているに過ぎない』

《優しい精霊様だね》
『悪魔とは違うだけだ』

 精霊には人種の様な複雑さが有る。
 僕ら以上に、複雑で繊細な存在。
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