入れ替わった彼女

チャロコロ

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里帰り 1

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 目が覚めると10時を過ぎていた。
 今日は誰とも会う予定がない。
 普段は仕事ばかりで休日が恋しいが、休みに予定がないと退屈な気分になる。
 ラーメンを食べながら茫然とテレビを見ているが、やはり物足りない気持ちになる。
 普段ならこのままゆっくり過ごしても何とも思わないのだが、一昨日の出来事もあり落ち着かない。
 たまには実家にも顔を出すか。
 時計を見ると午後零時を回ったころだった。片道で二時間近くかかるが、ドライブがてら行ってみることにしよう。
 久しぶりに来た地元は全く変わっていなかった。
 実家に着いて車を降りると、冷たい空気に入り込んでしまい思わず首をすくめる。ところどころ見かける木々の葉は赤や黄色、茶色に変色して季節の移り変わりを知らせてくれる。
 大きく息を吸い込むと新鮮な空気が体内に入り、地元に帰ってきたことを実感させる。 
 どこにでもある二階建ての和風作りの家に目を向けると、玄関横の小さなインターホンを押した。母親には前もって行くことを伝えていたので、すぐに応対してくれた。
 鍵を解錠して迎え入れてくれた55歳の小さな母親の笑顔は、残酷な時の経過を知らしめて私を複雑な気持ちにさせた。
 だが、久しぶりの訪問に喜んでいる様子の母親は見た目は老けても変わらず元気だった。
 そんな母親の姿に安心しながら家にあがった。
 実の母親と接するのもしばらく帰っていないと照れくさい。
 「元気してるの?」
 「まあな、母さんはどうだ?」
 「元気にしてるわよ。伊吹が社会人になったと思うと、年取った気分だけど」
 母親の後ろに続いて居間から隣の和室に移ると、和室の北側にある仏壇の前で座った。 
 仏壇に飾られている父親の写真を見ながら手を合わせる。
 父親は私が高校生の時に肺癌にかかっていることが分かった。
 その時は手術で治ったが、私が大学四年に上がった頃、体調に異変を感じた父親が病院に行くと既に癌が別の箇所に転移して末期と診断された。
 父親も最初に癌の告知を受けた時に覚悟を決めていたのか、医者から既に手遅れと言われた時にも冷静な態度で頷いていたのを覚えている。
 父親は抗がん剤を使うのを拒否していた。
 病院で治療を受けるよりも自宅療養を望んでた。
 どうせ死ぬことが分かっているのなら、治療は受けずに出来るだけ家族と一緒に暮らしたい。父親はそう思っていたのだろう。
 そんな気持ちがいたいほど理解できた私は、父親に延命治療を勧めることをしなかった。
 今まで身を粉にしながら働き続け、私をこの年まで育ててくれた父親に、最後くらいは自由な生き方をして欲しかった。
 「お前が大学を卒業するまで生きることが出来てよかった」 
 私が大学を卒業して実家を出る時に、父親が口にした言葉を忘れることができない。父親は最後まで母と私のことを心配してくれていた。
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