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暗い過去 5
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学校を背にしながら、全速でペダルを漕ぐ。
これは一つの岐路だ。
漠然と、ただ漠然と感じた。
ここで会えないと一生後悔する。
これは大げさでも何でもない。
自分が大人になってこの瞬間を思い返した時、大人の俺は何を思うだろう。
意味のなかったことだ。
すぐに他の娘を好きになってるぞ。
単なる青春の一コマだ。
病院に行っても月野さんはいなかった、やっぱ無駄だった。
月野さんに会うことができて、彼女と結婚した今も幸せにしてる。
上手い応えが思い浮かばない。
当然だ。この後彼女に会えたかどうかで応えは変わってくるし、大人になった姿が想像できない自分が大人になった時の思考を理解できる訳がない。
もしかしたら、思い出すことすらないかも知れない。
でも……、一つだけ分かっている事があった。
今の自分、つまり中学2年の俺は月野遥に会いに行かなければならない、ということだ。
背後から大きなクラクションが繰り返し響いたかと思うと、隣りに真っ赤な車が横付けしてきた。その車の窓が開くと、運転手が怒鳴った。
「あんた達、乗りなさい」
山田先生だ。
「えっ、でも……」
「グズグズしない!早くっ」
「自転車どうしよう……」
真鍋が呟くと、先生は
「そんなもん乗り捨てとけ。後で取りに来ればいい」
ワイルドに吠えた先生の言葉に甘えると、すぐに車に乗った。
やっぱ車は早い。それでも、もっと早く到着することをひたすら願った。
「病院が見えてきた」
佐々木が声を上げた。
「本田君」
それまで無言だった先生がミラー越しに俺を見た。
「はい?」
「今日のこと、後悔しちゃダメよ」
「はあ……」
滑り込むように駐車場に入ると、全速力で病院に入った。
大きく肩を動かして息をする三人の登場に、ある人は物珍しそうに、またある人はあからさまに顔をしかめながらこちらの様子を伺ってくるが、そんなことを気にしている余裕はなかった。
「病室はどこだ?」
佐々木の質問に首を横に振る。
月野さんはICUに入っていて、その後どこの病室に移動したかは分からない。
真鍋さんに顔を向けて、無言で佐々木と同じ質問を投げかけてみたが、彼女の反応も俺と同じものだった。
総合受付と表示されている事務員さんのもとへ駆け寄ると、「月野遥さんはどこの病室ですか?」と訊ねた。
口をポカンと開けている事務員さんに急いでいる旨を伝えて急かすと、固まった身体を機敏に動かしてパソコンで調べ始めた。
キーボードとマウスを使う時のカチカチという無機質な音に理不尽な苛立ちを覚えながらも、それを必死に抑える。
事務員さんの「んー」という独り言が静かに響く中、「分かりそうですか?」と口を開こうとしたところで、彼女のパソコンを操作する手が止まる。
「もう転院されてますね」
パソコンの画面を見ながらはっきりとした口調で言った。
これは一つの岐路だ。
漠然と、ただ漠然と感じた。
ここで会えないと一生後悔する。
これは大げさでも何でもない。
自分が大人になってこの瞬間を思い返した時、大人の俺は何を思うだろう。
意味のなかったことだ。
すぐに他の娘を好きになってるぞ。
単なる青春の一コマだ。
病院に行っても月野さんはいなかった、やっぱ無駄だった。
月野さんに会うことができて、彼女と結婚した今も幸せにしてる。
上手い応えが思い浮かばない。
当然だ。この後彼女に会えたかどうかで応えは変わってくるし、大人になった姿が想像できない自分が大人になった時の思考を理解できる訳がない。
もしかしたら、思い出すことすらないかも知れない。
でも……、一つだけ分かっている事があった。
今の自分、つまり中学2年の俺は月野遥に会いに行かなければならない、ということだ。
背後から大きなクラクションが繰り返し響いたかと思うと、隣りに真っ赤な車が横付けしてきた。その車の窓が開くと、運転手が怒鳴った。
「あんた達、乗りなさい」
山田先生だ。
「えっ、でも……」
「グズグズしない!早くっ」
「自転車どうしよう……」
真鍋が呟くと、先生は
「そんなもん乗り捨てとけ。後で取りに来ればいい」
ワイルドに吠えた先生の言葉に甘えると、すぐに車に乗った。
やっぱ車は早い。それでも、もっと早く到着することをひたすら願った。
「病院が見えてきた」
佐々木が声を上げた。
「本田君」
それまで無言だった先生がミラー越しに俺を見た。
「はい?」
「今日のこと、後悔しちゃダメよ」
「はあ……」
滑り込むように駐車場に入ると、全速力で病院に入った。
大きく肩を動かして息をする三人の登場に、ある人は物珍しそうに、またある人はあからさまに顔をしかめながらこちらの様子を伺ってくるが、そんなことを気にしている余裕はなかった。
「病室はどこだ?」
佐々木の質問に首を横に振る。
月野さんはICUに入っていて、その後どこの病室に移動したかは分からない。
真鍋さんに顔を向けて、無言で佐々木と同じ質問を投げかけてみたが、彼女の反応も俺と同じものだった。
総合受付と表示されている事務員さんのもとへ駆け寄ると、「月野遥さんはどこの病室ですか?」と訊ねた。
口をポカンと開けている事務員さんに急いでいる旨を伝えて急かすと、固まった身体を機敏に動かしてパソコンで調べ始めた。
キーボードとマウスを使う時のカチカチという無機質な音に理不尽な苛立ちを覚えながらも、それを必死に抑える。
事務員さんの「んー」という独り言が静かに響く中、「分かりそうですか?」と口を開こうとしたところで、彼女のパソコンを操作する手が止まる。
「もう転院されてますね」
パソコンの画面を見ながらはっきりとした口調で言った。
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