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「あれ?また寝ちまったな」
佐々木の声で我に返った。車外をきょろきょろ見回して現在地を確認している。
「まだ少し時間かかるから、寝てていいぞ」
「いや、すっきりしたよ」
大きく伸びをしながら欠伸をしている。
「佐々木は彼女とか作らないのかよ?」
「何だよ突然。そんなこと言うなら紹介くらいしろよ」
「いや、何となくだよ」
「俺がその気になれば彼女なんていつでもできるぜ」
助手席で『考える人』のようなイケメンポーズを決めている。
「そうだな、お前ならいつでも彼女できる」
「なんだよ、突っ込めよ。せっかくポーズまで決めてるのに」
「お前は昔から結構人気あったんだぞ」
「そうなのかっ?それならいっぱい彼女作れたかも知れねえじゃなねえか?何で今さら
言うんだよ」
泣き真似をしている。こいつは昔から男女問わず人気があった。本人が知らないはずがないが、その度にはぐらかされる。
「彼女作らないのか?」
「うーん、当分いいや。俺はこのままでいい」
「そうか……」
それ以上何も言えなかった。
「思い出したのか?」
「えっ?」
寝ぼけ眼をこすりながら訊いてきた。
「中学時代……、てか遥ちゃんのこと」
「まあな……」
「遥ちゃんには申し訳ないことをした」
佐々木は遥の両親を救えなかったことをずっと気に病んでいた。
当時、佐々木は冬の海に飛び込んで人命救助をしたとして消防から表彰されることになっていたが、彼は強固にそれを拒否した。
「佐々木……」
「痛てててて」
私の言葉に被せるように佐々木が声を上げた。
「どうしたんだよ」
「腹が痛いんだよ……」
「はあ?大丈夫かよ?」
「食い過ぎだ。大根サラダを大量に食べたせいかな?ご飯四杯食ったのが原因か?いや
ビールを八杯にチューハイ三杯を飲んで……」
「全部だよ。胃薬飲むか?」
「いや、いい」
「もうすぐサービスエリアに入るから、もう一度トイレに行ってこい」
「悪いな」
サービスエリアに入ったところで、佐々木はもう一度トイレに向かう。私も眠気覚ましのために車外に出ると自販機で缶コーヒーを二本買ってベンチに腰掛けた。
「何度も寄らせて悪いな」
佐々木が隣りに座る。
「いいよ、運転に休憩は必須だからな。腹は大丈夫か?」
「だいぶ良くなったよ。おっ、悪いな」
私が手渡したコーヒーを、佐々木は嬉しそうに受け取った。
「うはー、酒を飲んだ後のコーヒーは旨いなぁ」
佐々木は真夏に仕事を終わらせた後のビールを飲んだ時のような反応をした。
私もちびちびとコーヒーを口にしていると携帯が鳴った。
遥からの着信だ。
待たせ過ぎて怒っているかも知れない。
マンションに着くまでにはまだ時間がかかるから、先に帰るように伝えておけば良かった。気遣いが足りない自分に辟易する。
「もしもし?遅くなって悪い」
「いいよ、何時くらいになりそう?」
電話口の遥の声に、何故か懐かしさを感じる。
「あと一時間くらいはかかると思う。佐々木を送ってから帰るから」
「佐々木……君?」
「そう……。そうだ、佐々木と久しぶりに話をするか?少し酔っぱらってるけど、中学
時代と全然変わってないぞ」
「え?でも……」
遥にとって佐々木は命の恩人だ。遥の返事を待たずに佐々木に携帯電話を渡す。
「何だ?誰?」
訝しそうな顔をする佐々木に「遥だよ、月野遥」と言って携帯電話を渡した。佐々木は驚いた顔をして携帯を見つめた。こいつにとって、遥と会話をすることは気持ちのいいものではないだろう。しかし、佐々木自身がトラウマから解放されて少しでも身軽になるには、当の本人である遥と話をするのが一番良いと考えた。
「ほら、話せよ」
小声で指示すると、佐々木は携帯を耳に当てた。
「……もしもし、佐々木です」
佐々木の声で我に返った。車外をきょろきょろ見回して現在地を確認している。
「まだ少し時間かかるから、寝てていいぞ」
「いや、すっきりしたよ」
大きく伸びをしながら欠伸をしている。
「佐々木は彼女とか作らないのかよ?」
「何だよ突然。そんなこと言うなら紹介くらいしろよ」
「いや、何となくだよ」
「俺がその気になれば彼女なんていつでもできるぜ」
助手席で『考える人』のようなイケメンポーズを決めている。
「そうだな、お前ならいつでも彼女できる」
「なんだよ、突っ込めよ。せっかくポーズまで決めてるのに」
「お前は昔から結構人気あったんだぞ」
「そうなのかっ?それならいっぱい彼女作れたかも知れねえじゃなねえか?何で今さら
言うんだよ」
泣き真似をしている。こいつは昔から男女問わず人気があった。本人が知らないはずがないが、その度にはぐらかされる。
「彼女作らないのか?」
「うーん、当分いいや。俺はこのままでいい」
「そうか……」
それ以上何も言えなかった。
「思い出したのか?」
「えっ?」
寝ぼけ眼をこすりながら訊いてきた。
「中学時代……、てか遥ちゃんのこと」
「まあな……」
「遥ちゃんには申し訳ないことをした」
佐々木は遥の両親を救えなかったことをずっと気に病んでいた。
当時、佐々木は冬の海に飛び込んで人命救助をしたとして消防から表彰されることになっていたが、彼は強固にそれを拒否した。
「佐々木……」
「痛てててて」
私の言葉に被せるように佐々木が声を上げた。
「どうしたんだよ」
「腹が痛いんだよ……」
「はあ?大丈夫かよ?」
「食い過ぎだ。大根サラダを大量に食べたせいかな?ご飯四杯食ったのが原因か?いや
ビールを八杯にチューハイ三杯を飲んで……」
「全部だよ。胃薬飲むか?」
「いや、いい」
「もうすぐサービスエリアに入るから、もう一度トイレに行ってこい」
「悪いな」
サービスエリアに入ったところで、佐々木はもう一度トイレに向かう。私も眠気覚ましのために車外に出ると自販機で缶コーヒーを二本買ってベンチに腰掛けた。
「何度も寄らせて悪いな」
佐々木が隣りに座る。
「いいよ、運転に休憩は必須だからな。腹は大丈夫か?」
「だいぶ良くなったよ。おっ、悪いな」
私が手渡したコーヒーを、佐々木は嬉しそうに受け取った。
「うはー、酒を飲んだ後のコーヒーは旨いなぁ」
佐々木は真夏に仕事を終わらせた後のビールを飲んだ時のような反応をした。
私もちびちびとコーヒーを口にしていると携帯が鳴った。
遥からの着信だ。
待たせ過ぎて怒っているかも知れない。
マンションに着くまでにはまだ時間がかかるから、先に帰るように伝えておけば良かった。気遣いが足りない自分に辟易する。
「もしもし?遅くなって悪い」
「いいよ、何時くらいになりそう?」
電話口の遥の声に、何故か懐かしさを感じる。
「あと一時間くらいはかかると思う。佐々木を送ってから帰るから」
「佐々木……君?」
「そう……。そうだ、佐々木と久しぶりに話をするか?少し酔っぱらってるけど、中学
時代と全然変わってないぞ」
「え?でも……」
遥にとって佐々木は命の恩人だ。遥の返事を待たずに佐々木に携帯電話を渡す。
「何だ?誰?」
訝しそうな顔をする佐々木に「遥だよ、月野遥」と言って携帯電話を渡した。佐々木は驚いた顔をして携帯を見つめた。こいつにとって、遥と会話をすることは気持ちのいいものではないだろう。しかし、佐々木自身がトラウマから解放されて少しでも身軽になるには、当の本人である遥と話をするのが一番良いと考えた。
「ほら、話せよ」
小声で指示すると、佐々木は携帯を耳に当てた。
「……もしもし、佐々木です」
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