ナミは何でもあり

チャロコロ

文字の大きさ
21 / 21

最終話

しおりを挟む
 「イタタタター」
 私と花子が頭を押さえてしゃがみ込んでいると、浅野君も上半身を起こし、周りを伺う。
 思わず隠れるが、私達の姿は見えていないようだ。
 浅野君は首を傾げると、気のせいか、という顔をして布団の中に戻る。
 ふう、と息を吐くと、花子に詰問する。
 「どうして浅野君に入れないのよ!」
 「私が知るはずないでしょ」
 首を回してみるが、問題はなさそうだ。
 「家に帰ったら首に湿布貼らないと」
 「霊魂だから首は大丈夫じゃない?」 
 花子は腕組みをしながら、目をつぶる。
 「あんた何寝てんのよ?」
 花子の態度に腹が立って頭頂部にチョップをかます。
 「痛っ!考えてたのよ。可能性としては浅野君に霊感が全くないから体内に入れなかった。あるい は、私達がここに来るまでに力を消費し過ぎて体内に入ることができなかった。そのどちらかじゃ ない?」
 「理由はどうでもいいのよっ!」
 「え……ごめん」
 「でも原因究明は必要なことよ」
 「どっちだよ!もう私帰って寝る!」
 「ちょ、ちょっと花子」
 花子がプリプリ怒りながら帰ろうとするのを引き留めようとする。花子は私の制止を振り切るように壁をすり抜けようとする。
 ドンッ!
 「うー、痛いよぉ」 
 勢いよく壁にぶつかったせいで後ろに倒れる。
 「ぷっ、は、花子ちゃん大丈夫?」
 「……今笑ったでしょ?」
 「クク、わ、笑ってないわ。花ちゃんのことが心配で心配で」
 「もう絶対とり憑かない」
 「花子、無事でよかったわ!私はあなたのためなら何もいらない」
 私はキリッとした顔つきで語りかける。内心はおもしろくて仕方ない!
 「美奈、心配してくれてありがとう」
 「いいのよ、浅野君に夢中で花子の身体をいたわらなかった私が悪かったの」
 目に涙を溜める花子の上半身を持ち上げる。
 「ううん、私も奈美の気持ちを考えてなかった。ごめんね」 
 私も思わず涙が溢れてくる。自分のことばかり考えて花子のことを全く考えてなかった。
 「これで仲直りだね」
 花子が小指を差し出してきたので、小指を絡める。
 私達はケンカをしても後腐れがない。いいコンビになるだろう。
 痛みがひいてきた花子は目線を移すと、壁をさすりながら呟く。
 「どうして壁をすり抜けることができなかったんだろう?」
 花子をさりげなく見ていると、身体が少しづつ見えなくなっていく。見えない?透明になっているのか?
 花子が私を見つめると、花子は驚愕した顔をする。
 「ん、何?」
 私の問いに答えようと、花子は口を一所懸命開いているが、声は聞こえてこない。口パク状態だ。そうこうしている間に花子は消えていく。
 花子は私の霊魂なので、霊力が弱まったら消えるのは当然だろう。休息すれば元に戻る。
 私も体力の衰弱が著しい、早く身体に戻らなければ。
 「うわっ!出た」
 声のした方に顔を向けると、浅野君がこちらを向いている。
 その視線は明らかにこちらを見ている。
 浅野君はトランポリンに乗った時のように身体を飛びあがらせて、目を見開いている。
 「あっ、浅野君!やだー、まるでオバケを見ているみたい」
 自分で言っておきながら冷や汗が出てくる。もしかして浅野君には私が見えてる?
 浅野君は「……何かしゃべった」と言いながら後ずさりして壁にへばりついている。
 やばい!
 急いで机の上にある鏡で顔を確認してみると、私の顔がボヤケながらも映っている。
 彼が怖がるのも当然だ。
 「まずい!」
 思わず声を上げる。
 しまった、私としたことがこんなミスをするなんて!
 浅野君の前だというのに髪型が乱れている。すぐに手グシで髪を整える。乙女にとって髪型が決まっているかどうかという点は非常に重要だ。
 いや、違う。今はそれどころじゃない。
 私の顔がばれる前にここから脱出しないといけない。
 すぐにクラウチングスタートの姿勢をとると、部屋の扉を開けて階段を下りた。
 私は田舎道を走りながら、アニメのヒロインのように満面の笑みをこぼす。
 今回の作戦は失敗だったけど、次こそは必ず浅野君のハートをゲットするわ。必ず。
 次はどんな作戦を実行しようかな?
 これからも正々堂々浅野君にアタックするわ!
 思いっきりジャンプをすると、右腕を振り上げた。そして足を捻ってしまった。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

焔と華 ―信長と帰蝶の恋―

歴史・時代
うつけと呼ばれた男――織田信長。 政略の華とされた女――帰蝶(濃姫)。 冷えた政略結婚から始まったふたりの関係は、やがて本物の愛へと変わっていく。 戦乱の世を駆け抜けた「焔」と「華」の、儚くも燃え上がる恋の物語。 ※全編チャットGPTにて生成しています 加筆修正しています

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...