旧校舎の少女

チャロコロ

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言い伝え

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 「ああ、縷々子さんな。あんなもんはこの学校の都市伝説みたいなもんだろ?」
 落ち着いた様子の鈴原。それに対して笹原が少しムッとした。
 「鈴原。お前、縷々子さんのこと全く信じてないだろ?縷々子さんて言うのはなあ、ウ
 チの高 校の旧校舎で目撃される女の幽霊で……」
 「あー、分かってる。分かってるよ。その話を知らない奴なんかウチの生徒でいないだ
 ろ」
 鈴原は呆れた様子で笹原の言葉を遮った。
 縷々子さんとは、相当古い時代に実在していた生徒らしい。
 当時縷々子さんには好きな男子生徒がいたが、その男子生徒が何らかの原因で死んだことで相当なショックを受けてしまい、旧校舎の2階で自殺してしまった。
 それ以来、旧校舎の2階では縷々子さんを見たという目撃談が相次ぎ、恐怖から登校拒否になってしまう生徒まで現れたことから、それを重く受け止めた学校側が旧校舎の2階を出入禁止にして、新校舎を建てたという話だ。 
 鈴原は縷々子さんに関する噂を一通り思い出してみた。彼はあまり幽霊というものを信じるタチではない。
 「そう言えば。縷々子さんを見た人は、その後死んでしまうって話も……」
 いつもは強気な君島も不安げな表情を隠せない。
 「そんなん噂に決まってんだろ。だいたい、ウチの生徒が現役中に死んだなんて話訊い
 たことあるか?」
 バカバカしいといった様子で、鈴原が鼻で笑う。
 「そうそう、人はいずれ死ぬんだから。変な夢を見ただけだよ。うん間違いない」
 笹原にいたっては興味が失せたのか、欠伸をしている。
 君島も2人の会話に少し安堵しながらも、自分の身に起きた出来事を絶対に夢だと断言できるほど楽観的ではなかった。緊張が解けると、彼女は尿意を催して席を立って教室を出て行った。
 「なあ……、咲良ちゃんは本当に見たのかな?」
 君島が教室を出たのを確認しながら、笹原が呟いた。
 「どうだろうな、分からねえよ」
 鈴原は興味なさげに応えたが、内心は少しひっかかっていた。
 「鈴原も知ってるっしょ?縷々子さんの話には、よく分からない言い伝えが二つあるっ
 て。
  1つは縷々子さんは12月に、それも旧校舎にしか現れない。もう1つは……」
 「もう1つは……、3つの魂を抜く」
 鈴原が縷々子さんの話を、単なる噂や都市伝説的なものとして扱うことができない理由に、この2つの言葉があった。
 縷々子さんを見た人は死ぬ、彼女の目撃談が相次いだせいで旧校舎が使用できなくなった等という類の話は、地域や学校で多少の違いはあっても全国の至るところに似たような怪談話は受け継がれている。だが、この2つの言い伝えは、単なる怪談話にしては具体的で、噂に尾ヒレが付いたものとしては少し曖昧な気がした。
 それに今日は11月30日だ。
 縷々子さんが12月にしか現れないという話が本当なら、細かいことを言えば彼女が姿を現すには1日早い。
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