ヒロインらしく恋をしろ? 時給いくらですか? ー貧乏一家出身キャバ嬢は厄介事に愛されるー

宮苑翼

文字の大きさ
100 / 109
第二章 そして舞台の幕が開く

99話 脳裏を過ぎるのは

しおりを挟む

 「失礼します」
 「おや、聖女様。どうなさいましたか? 本日も書庫におられるものとばかり」

 精が出ますな。そう言って微笑むのは、大神官だ。初めてお会いしたときと変わらぬ、穏やかな笑みを浮かべている。

 学園は冬期休暇に入った。私は領地への帰省を諦め、教会へと身を寄せている。調べなければならないことがあったからだ。
 本来であれば、16歳の誕生日を祝ってもらうはずだったが。致し方ないだろう。

 連日書庫にこもっていたが、進捗は芳しくない。目ぼしい書物が無かったのだ。
 時間ばかりが過ぎていく中、思い切って方法を変えることにした。
 
 書物が駄目なら、人に尋ねればいい。私より長く生きる大神官なら、何かしらヒントを貰える可能性もあるだろう。

 そう考えて、大神官の執務室へとやって来たのだが。予定を尋ねるのを失念していた。忙しいようなら、出直さなければ。

 「突然お邪魔し、申し訳ございません」
 「いえいえ。急ぐ用はございませんから。良ければ、お茶でもいかかでしょうか?」

 ルーファスとオーウェンも座りなさい。二人にそう促すと、大神官は腰を上げた。
 どうやら、お茶の用意をしてくれるようだ。鼻歌を口ずさみながら、お茶菓子を並べていく。随分と歓迎してくれるらしい。

 「さて、これでいいでしょう。長いお話になりそうだ。お茶でも飲みながら話すとしましょう」
 「気づいておられたのですか?」

 全てを見通すかのような言葉に、私は驚きの声を上げる。まだ用件は伝えていなかったのに。
 そんな思いで目を丸める私に、大神官は髭を撫でて笑った。

 「はっはっは。歳を取ると、ある程度のことは察しがつくものです。若者が年寄りを訪ねるなど、それなりの事情があってのことでしょう」

 お茶の誘いなら、急いで来ることもありますまい。そう言うと、大神官はお茶菓子に手を伸ばした。

 この方は案外甘い物好きだ。お茶より先に、お菓子へ手を伸ばしている。少年の様な姿は、相変わらずのようだ。

 「さて、今回はどういったご用件でしょうか?」

 お菓子を飲み込み、大神官が話を切り出す。
 予定を変更してまで調べていたのだ。少しでも手掛かりが得られればと、口を開いた。

 「私が聞きたいのは、東方にあるジェノーネ帝国のことです」

 その言葉に、大神官は目を細める。それがどういった反応なのかは分からない。
 けれど、引き下がることもできなかった。

 「以前学園長に伺ったところ、あまり詳しくないご様子でした。通常の書庫では情報を得られないのでしょう。
 そのため、この休暇中は教会へ身を寄せることにしました。書庫を確認したかったのです」
 「なるほど。学園長であれば、おおよその書物にはあたれるでしょう。国が所有しているものについても、一般人よりは閲覧できるはずです。
 その学園長ですら、容易に見ることができない書庫。そこに情報があると考えたのですね?」
 「おっしゃるとおりです。教会の書庫は、関係者以外立ち入ることはできません。それこそ、従者であるルーファスたちが入室できないように」

 そう。教会の情報管理は極めて厳格だ。祈信術が門外不出であることがいい例だろうか。情報が漏れないよう、徹底した管理がされている。

 仮に、帝国のことが教会の書物にしか記載されていないのであれば。学園長が詳しくないのも説明がつく。

 「しかし、目的は達成できなかったと」
 「ええ。教会の書庫を探しましたが、見つかりませんでした。簡単な記載はありますが、エクセツィオーレに比べるとあまりに少ない」

 隣国であるというのに、なぜここまで情報がないのか。その理由は不明だが、現時点で無いものは仕方がない。
 それならば、他の手を考えるしかなかった。

 「無いものねだりをしても仕方がありません。そこで、大神官を訪ねたのです。私よりも遥かに見識に富むあなたであれば、何かご存知のことがあろうかと」
 「……なるほど、そういうことでしたか。聖女様にそこまで頼られては、この老いぼれも腰を上げねばなりませんな」

 そう言って、大神官は朗らかに笑った。
 しかし、その表情はすぐに陰ることとなる。何か気掛かりがあるのだろうか。

 「ときに聖女様、帝国についてお調べになっているのは、以前ご連絡いただいた件が関係しているのでしょうか」
 「はい。手紙に記したイグニールの件です。学園長に遺体を見せてもらい、帝国に伝わる呪術が関係すると判明しました。
 もっと言えば、ベント子爵領の一件。あれも、同様の手口によるものと考えております。
 もちろん、帝国が犯した事件だとは考えていませんが」

 王都など主要部ならともかく、学園を襲う理由がありません。そう語る私に、大神官は深く頷いた。

 「聖女様の予想は、おおよそ正しいでしょう。
 とはいえ、私自身も彼の国については詳しくないのです。理由は分かりませんが、驚くほどに情報統制がされているようで」
 「情報統制、ですか」
 「さようです。聖女様は、帝国の交易品を見たことがありますか?」

 その問いに、首を横へ振る。懇意にしている商会で、帝国の品物を見たことはない。

 「残念ながら。そもそも、東方と取引がある商会は極めて限られていると聞いています」
 「そのとおりです。大々的に取引しているのは、我が国ではローナイト商会でしょうか」
 「ローナイト商会……たしか、ルーファスの同室者がそこの出だったわね?」

 入学直前に、スピネル寮のサロンでお茶をしていたときのことだ。
 ルーファスは無事に友人を作れるのかと心配したことがあった。平民出身の特待生というだけで目立つのに、この性格。友人付き合いに支障が出るのではという話になったのだ。

 その際、同室の者について教えてくれた。相手はローナイト商会の出で、平民同士気が楽だと。

 「よく覚えていたね。とはいえ、本人は三男で、商会には全く関わっていないようだ。魔力持ちということもあり、勉強しろと親にせっつかれたらしい」
 「平民の魔力持ちは珍しいからな。金銭不安が無いのであれば、勉学を優先させるのは当然だろう」

 ルーファスの言葉に、オーウェンが頷く。
 平民では希少な能力だ。しっかり扱えるようになれば、より家に貢献できる。親御さんが勉学を優先させるのも自然な流れだ。

 「なるほど。同学年にローナイト商会の者がおられるのですか。それなら話は早い。
 帝国は、商売ですら限られた相手としか交流しません。販路が少ない以上、物品を目にすることも難しい。
 情報統制と相まって、謎に包まれた国となっているのです」

 基本的に、交易は我が国からの輸出が主なようですから。そう続ける大神官に、私は思考を巡らせる。

 帝国が輸入を目的とするならば、なおさら帝国の物品を見る機会はないだろう。輸出したいと考えていないのだから当然だ。

 しかし、そこまで交流がないとは。まるで日本の鎖国のようだ。そう考えながら、私は口を開く。
 帝国が情報統制する理由は一体どこにあるのか。

 「情報統制の理由が分かりませんね。そもそも、帝国と我が国の関係は何と表現すべきでしょうか? 敵対しているという話は聞きませんが」
 「おっしゃるとおり、敵対国ではありません。停戦状態にあるわけでもなければ、過去戦争に発展した記録もない。政治史のみを見れば、単なる没交渉というべきでしょう。
 ジェノーネ帝国は大国です。我が国と比べ、国土は大きく、歴史も長い。我が国を小国と捉え、相手にしていないのかもしれません」

 我が国は建国して千年を越えたが、あちらには到底及ばない。情報がないため、詳細は不明だが。長い歴史を積み重ねてきたのは確からしい。
 彼の国から見れば、我が国は取るに足らない小国ということか。

 「ときに大神官、一つお聞きしても?」
 「もちろんだよ、ルーファス」

 何かな? そう問いかける大神官に彼が口を開く。その質問は、極めて重要な問いだった。

 「大神官のお話には、若干の含みがあるように思えます。政治史のみと限定したのはなぜでしょうか」

 その問いに、室内の空気が変わる。自然と私の表情も引き締められた。

 「さすがはルーファス。相変わらず賢い子だ。君の言うとおり、私の発言は含みがあるだろう。
 今語ったのは、あくまでも政治面の話に限られる。これが、宗教的に見ると少々変わってくる」
 「宗教的、ですか?」

 ルーファスは眉を寄せて聞き返す。大神官は一つ頷くと、重い口を開いた。

 「あの国は、多神教なのだよ」
 「……あー、それは……」

 大神官の発言に、私は思わず声を漏らす。
 なるほど、それは難しい関係と言えるだろう。何とも言えぬ表情を浮かべる私に、ルーファスは首を傾げた。

 「多神、教……? どういうことだ? 君は分かるのか?」
 「おおよそはね。その顔を見る限り、オーウェンもよく分からないといったところかしら」
 「お恥ずかしながら……多神教というのがよく分かりません」

 一体どういう意味です? そう尋ねるオーウェンに、私は一つ頷く。
 彼らの反応は無理からぬことだ。この国で祀られるのは、女神様のみ。一神教の国であり、それが建国以来深く信じられてきた。
 一千年以上続く価値観の上で育った彼らに、多神教と言ってもピンと来ないだろう。

 私が理解できるのは、前世の記憶があるためだ。八百万の神々が信じられていた日本。その国で生きて来たからこその話である。

 「多神教とは、その名の通り多数の神々を信仰することよ。祀るべき神が多くいると考えればいいわ」
 「神がたくさんいる……?」
 「それはなんというか、不思議です、ね……?」

 二人の言葉から、混乱しているのがよく分かる。
 無理もないだろう。この辺りは何を常識にしてきたかで変わる。優劣の問題ではない。どのような文化で生きてきたかの話だ。

 「今二人が感じているのと同じように、あちらから見ても私たちの信仰は理解し難いものでしょう。
 そういった意味では、難しい関係と言えるでしょうね。信仰の違いというのは、ときに大きな問題に発展する。
 ……距離を置いている今が理想的だと思えるような、そんな日が来るとも限らないわ」

 帝国については分からないことが多く、実際に争いへ発展するかは不透明だが。センシティブな話題であるのは事実だ。取り扱いには注意せざるを得ないだろう。

 「聖女様のおっしゃるとおりです。ボタンの掛け違い一つで、争いになり兼ねない。
 だからこそ、情報が制限されているのは都合のいいことでもある。争いの火種を作るより、余程穏当な在り方といえるでしょう。相互理解ができるならそれに越したことはありませんが……」
 「世の中に絶対はない。距離を縮めた結果、酷い顛末を迎えることもあるでしょうね」
 「ええ。政治面はともかく、我が国と彼の国で価値観が異なるのは事実です。
 それもあり、微妙な関係という他ありません。信仰が異なる以上、我が教会も彼の国とは繋がりがないのです。
 エクセツィオーレとの大きな違いはこの点でしょう。あの国は我が国と信仰を同じくする者も多いですから」

 息を吐く大神官に、私は黙したまま頷く。このような関係ならば、教会も帝国を知る術はないだろう。
 情報を取れなかったのは痛手だが、何も手に入らなかったわけではない。最低限の事情は知れた。

 後は、最も知りたい箇所についてだが。これも難しいかもしれない。

 「大神官。帝国には死体を操る術があるそうですが、ご存知でしょうか」

 そう。私が最も聞きたかったのはこの件だ。
 今まで起きた魔獣の襲撃。その全てに関連していると思われる術のこと。それを知ることができれば、帝国については置いておけば良い。

 元より、帝国による策略とは考え難いのだ。事件解決に必要な情報さえ集まれば十分だろう。

 「ふむ。確かにそのような術があると聞いたことがあります。死者の眠りを妨げるというのは、私としては許し難いことですが……
 いえ、これ以上は言いますまい。あくまでも、ごく個人的な感想です」

 深い息を吐き、大神官は顔を伏せる。感覚や文化が違うものを、一概に責めてはならないという自戒だろうか。
 暫しの間口を噤むと、静かに顔を上げた。

 「死者を操る術。帝国で使われる呪術の一種でしたか。それ自体は、聞いたことがあります」
 「本当ですか? 一体、どういった術なのでしょう」

 私の問いに、大神官は腕を組む。古い記憶を思い出すかのように、ゆっくりと語り始めた。

 「正直なところ、詳細は分かりません。その点は御承知おきください。
 まずは、力を持つ者しか使えないということ。これは我が国の魔術と同じですね。魔力持ちでなければ、魔術は使えません。あちらも同様に、力を持つ者以外は呪術の行使ができないそうです」

 燃料がなければ車を動かせないように、力がなければ呪術は使えないようだ。この辺りは、魔術と同じだ。

 「また、死体を操る術については、より術者が限定されると聞いています。一般に広まるような術ではないようです」
 「帝国ですら、広く普及していないと?」
 「ええ。死体を操るという行為の性質ゆえでしょうか。一定の代償があるようです」
 「代償、ですか?」

 不穏な言葉に、私は眉を顰める。魔術であれば魔力を消費するが、そういったものではないのだろう。

 「死者を生者かのように錯覚させるほどの術。その際に用いられるのは術者の魂だとか」
 「術者の魂……」

 声が自然と固くなった。魂を使用するとは、具体的に何を意味するのか。正直、嫌な予感しかない。

 「理解しやすい語に置き換えるなら、寿命でしょうか。術者の寿命を利用し、死体を動かすのだそうです」

 その説明に絶句する。あまりの衝撃に言葉が出てこなかった。
 死体を動かす以上、そう簡単にできることではないだろうが。わざわざ、自身の寿命を代償にしてまで、死体を動かしたというのか。

 「……最悪の展開ね」

 奥歯を強く噛み締める。
 本当に、最悪の展開だ。ブリジット嬢の様子から、あまり猶予はないと考えていたけれど。それどころの話ではない。

 急がなければ、この事件は迷宮入りしかねないということだ。術者死亡で証拠隠滅など笑えない。裁くためには、生きているうちに捕らえなければ。

 「術者の寿命というのは、どの程度削れるものなのですか?」

 ルーファスの問いに、大神官は眉を下げる。さすがの彼も、そこまでは知らないようだ。

 「正確なことは分からん。私も、又聞きに過ぎんからな。
 だが、決して軽いものではないはずだ。禁術になっていても可笑しくない術。発動するに足る代償が必要だろう」

 寿命が削れる量については把握ができない。少なくないことはたしかだろうが、詳細は不明だ。

 しかし、一つだけ予想できることがある。

 術者に残された時間が、そう多くないということだ。
 ベント子爵領の事件が起きたのは、7年以上前の話。既に寿命を大きく削られている可能性が高い。

 「オーウェン」
 「はい、聖女様。至急王城へ連絡いたします」

 オーウェンはすぐに部屋を辞し、足早に去っていく。遠ざかる足音を聞きながら、私は小さく息を吐いた。

 本当に面倒な事ばかりだとぼやきたくなる。言っても詮無いことではあるが、ため息くらいは許して欲しい。

 ティーカップへ手を伸ばし、口をつける。紅茶は既に冷めていた。それだけ話に集中していたのだろう。

 むしろ、冷めていて良かったかもしれない。怒涛の情報に疲れた頭が、強制的に起こされるのを感じる。

 「そういえば、もう一つお聞きしたいのですが」
 「もちろん。いくらでもお聞きください」

 ティーカップを離し、大神官へ視線を向ける。彼は朗らかに微笑んで頷いた。
 それに微笑み返すと、今までの話で気になったことを口にする。

 「大神官はあの術について、どなたからお聞きになったのですか?」
 「ああ。実は、相手のことはよく分からないのです」
 「分からない?」

 困ったように眉を下げる大神官に、私は首を傾げる。彼の回答を聞き、風の噂程度かと思ったのだが。どうやらそうでもないらしい。

 「以前慰問へ向かった際、現地の子どもと話す機会がありましてな。歳は8歳程度でしょうか。黒髪の落ち着いた少年でした。
 周囲の大人をよく手伝い、雑務を助けてくれましてね。せっかくだからと、治療の合間に話をしたのですよ。
 そのときに、あの術について話を聞いたのです」
 「その少年は、よく術のことを知っていましたね」
 「親戚が帝国出身の方だと言っていました。国交を断絶しているわけでもありませんし、あり得ないことではないでしょう。ローナイト商会を筆頭に、一部の民はやり取りがありますからね。
 ……教義的には許されませんが、婚外子だったのではないかと」

 ため息を吐く大神官に、私はドキリと胸を鳴らす。隣にルーファスがいるからだ。大神官は彼の正体を知らないが、正直心臓に悪い。

 「少年はとても痩せておりましてね。手も足も枝のように細かった。
 教義上、我が国は不貞を認めません。それゆえに、隠された子どもだったのでしょう。生かしはしても、真っ当に育てるつもりはなかったのかもしれません」

 あの年頃の子どもであれば、もっと安全な場所にいるべきだというのに。そう語る大神官に、私は目を細める。安全な場所とは、一体どういうことか。

 いや、もっと早く確認すべきだったのかもしれない。
 慰問に行った先で、大神官自ら治療を行うとは考え難い。まだ若い頃の話か、それほど逼迫した事態だったのか。

 脳裏に過ったのは、ある事件だ。

 「大神官。その話は、26年ほど前に遡るのでしょうか」
 「ああ……もうそれほど時間が経ちましたか。御想像のとおり、スタンピードが起きたときの話です。本当に、酷い有様だった」

 随分と月日が経ったものだ。そう語る大神官に、私はゴクリと喉を鳴らす。

 嫌な符合だ。そう思わずにはいられない。もちろん、単なる偶然という可能性はあるけれど。
 ちらりと横を見ると、ルーファスも唇を噛んでいた。

 スタンピード。我が国の歴史に刻まれた、痛ましい事件。未だ民の心に暗い影を落とす、悲しい記憶。

 その戦地となったのは、我が国の東部、ケンドール辺境伯領だ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました

チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。 王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。 エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。 だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。 そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。 夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。 一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。 知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。 経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

〘完結〛ずっと引きこもってた悪役令嬢が出てきた

桜井ことり
恋愛
そもそものはじまりは、 婚約破棄から逃げてきた悪役令嬢が 部屋に閉じこもってしまう話からです。 自分と向き合った悪役令嬢は聖女(優しさの理想)として生まれ変わります。 ※爽快恋愛コメディで、本来ならそうはならない描写もあります。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

処理中です...