惑いの森のリアン

和多留

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王様の悩み

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“暗くなったら早くおうちに帰りなさい。
   ……さもないと惑いの森の魔女が
   お前達を攫いに来るよ────”



そうやって人々が恐れ、子供たちに早く家に帰るようにと教訓として教えこまれる惑いの森の魔女は他の国で代わりに言われている化け物と違って本当に存在する。

とはいえ、ここ10数年くらいは惑いの森の魔女は特に問題を起こすことなく大人しいため、若い者の間では若干恐怖の対象からは外れかかっているようだが。

人々が束の間かもしれない平和を楽しんでいる間、そう楽観的になれないのが惑いの森が存在する国、ミリスタニア王国の王、ロラン3世である。

実際、惑いの森の魔女は気まぐれで、名を轟かせ始めてからの約500年間ひっきりなしにこの国に厄災をもたらしてきた訳では無い。

今回のように10数年大人しくしていたかと思えば、突然に国中に疫病を流行らせたことだってある。
その時の魔女の言い分は、国民が魔女の話題を挙げなくなったから、などというふざけた理由だった。

つまりは、しょうもない理由で国を混乱に陥れる魔女の機嫌を以下にとるかが目下最大の王の悩みなのである。


「本当にどうしたものか……
    機嫌を取ろうにもあの魔女は
    森に他人が入るのを厭うらしいし
    使者を無駄死にさせるのも……」


空が明ける気配すらない宵の時間。
薄暗い私室で深くため息をつく王様は普段臣下に見せる威厳の欠けらも無い。
それほどまでに魔女とは厄介な相手なのだ。


「……あやつを使者として送るしかないのか」


長い時間悩んでいた王様の瞳に決意の色が現れる。


「どうか、あやつが魔女の機嫌を損ねませんように……」
 

窓の外が白んでいく中、王様はいるかも分からない神に祈りを捧げた────。

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